一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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今回から文化祭編です。







第78話 カイサイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏の暑さはどこへやら。時には心地よい涼しさ、時には突き刺すような寒さ。

そんな涼やかな秋空の下、凡矢理高校は周りの寒さとは裏腹に、熱い盛り上がりに包まれていた。

 

校舎には色とりどりの装飾が施され、生徒たちも普段の制服を着ている者もいれば、仮装をしている者も多数いる。

 

 

「おーい一条ー!このバケツに水汲んできてくれー!」

 

 

「あいよー」

 

 

陸たちのクラスも、開会式前の仕上げを行っていた。

 

陸たちのクラスが行うのは縁日。

他に、コスプレ喫茶という案が出たのだが、隣のクラス…楽たちのクラスとのジャンケンで負けてしまい、結果、縁日を行うという事で決着したのだ。

 

 

「よっ、と…」

 

 

陸は、水道の蛇口を捻って閉める。水を汲み終わった二つのバケツを、両手で持ち上げて教室へと戻る。

 

廊下を歩きながら辺りを見渡せば、制服を着ている生徒はほとんどいない。

着ている者は、生徒会や開会式で進行を行う人達だろうか。

 

もちろん、陸も制服を身につけずに仮装している。とはいっても、和装をしているので家にいる時と全く変わらないのだが。

 

黒の浴衣に、青い半被を肩にかける。これは、寒い時期に着ているいつもの服装である。

 

クラス内で、“祭”と書かれた半被を揃えようという話が出たのだが。残念ながら本番までに間に合わず。

人数分の半被は出来なかった。

 

陸を含めて、約半分のクラスメートたちは半被を着ることができていない。

もちろん、和装はクラス一同で固定されていることだが。

 

 

「ちょっと、扉開けてくれ」

 

 

教室の前まで来て、両手が塞がっているため丁度傍にいたクラスメートに扉を開けてほしいと頼む。

すぐに扉を開けてくれ、陸はありがとう、と一言口にしてから教室へと入り、汲んだ水をビニールプールの中に入れる。

 

縁日内でやる出し物は、ヨーヨーすくいに射的、それと食べ物を出すためにタコ焼きと焼きそばの材料を用意してある。

 

陸の役目は料理の方に割り振られており、他の出し物の手伝いをしながらも食材の整理も手伝っている。

というか、料理グループのリーダーは陸と言っていいだろう。

本番前に、たこ焼きと焼きそばの味付けをクラスメートに教えたのは陸なのだから。

 

 

「おい一条!何か呼ばれてるぞ!」

 

 

「は?」

 

 

バケツをしまい、まだ段ボールから出していない食材を出そうとそちらに足を向けた時、教室の扉の傍にいたクラスメートに呼ばれた。

 

陸を呼んだクラスメートとすれ違い、開いた扉から廊下を覗く陸。

 

 

「ん、何だ。皆勢揃いで」

 

 

教室の前で陸を待っていたのは、楽に小咲に千棘に、先日、一条家に泊まっていった、ポーラ以外の一同が廊下で立っていた。

 

 

「お、陸。…てか、お前も和服なのな。家にいる時と何も変わってねえじゃねえか」

 

 

「お前が言うな」

 

 

廊下に出た陸に話しかけてくる楽。

陸が着ている和服を見てそう言ってくるが、楽も家にいる時と同じ和装なので、楽だけにはそれを言われたくなかった。

 

 

「あぁ、お前のクラスはコスプレ喫茶だっけ?…俺らからぶんどった」

 

 

「はっはっは!ぶんどったとは心外だなぁ。僕は正々堂々とジャンケンで勝っただけだよ?」

 

 

「わかってるって。冗談だ」

 

 

先程も言ったが、陸のクラスも楽のクラスと同じコスプレ喫茶を案として出していた。

結果、ジャンケンで負けてしまいコスプレ喫茶を譲る事となったのだが。

 

 

「…?小咲、春ちゃん、どうした?」

 

 

「「…」」

 

 

集と冗談を言い合っていた陸は、ふとこちらをぼぉっと見つめている小咲と春に気が付いた。

 

春は、仮装の代名詞といえる魔女の服装。

そして小咲は…、いわゆるゴシックロリータというやつで、スカート部にリボンが付いた黒のドレスに黒の厚底ブーツ、頭には黒のカチューシャ。

 

 

(…うん。可愛い)

 

 

何とか口からは出さなかったものの、春も小咲も…特に小咲は似合いすぎている。思わずにやけてしまいそうだ。

だが、小咲本人としては恥ずかしいだろうし、何とか表情に出さないようにする。

 

 

「あ、あの、先輩…」

 

 

「陸君、その服装…」

 

 

「これか?俺のクラスは縁日やるからな。ちょっと、作業が間に合わなくて服を統一できなかったんだけど、和装は絶対って決まったから」

 

 

「「…」」

 

 

呆然と、陸は知らぬことだが、陸の姿に見惚れる小咲と春。

二人が我に返ったのは、基本的に鈍い千棘がどうしたの?と、二人に聞いた後の事だった。

 

 

「そ、そうだ!先輩、お姉ちゃん!私たちのクラスでやってるお化け屋敷に来ませんか!」

 

 

「お化け屋敷?」

 

 

すると春が、陸と小咲を誘う言葉を口にする。

 

春のクラスがやる出し物は、お化け屋敷だという。春の服装からわかる通り、陸のやっている縁日の和風とは逆に、洋風のお化け屋敷のようだ。

 

春は魔女の服装で、他に風ちゃんが吸血鬼、ポーラは…何故か猫娘だという。

洋風とはいかに。

 

 

「俺、午前中は空いてないんだよな…。午後からは空いてるんだけど、小咲は?」

 

 

「私も、午後から空いてるかな。午前中はシフトが…」

 

 

どうやら、陸も小咲も午前中は空いていないようだ。

そのため、昼休みに昼食を取ってから合流し、春のクラスに行くという事で決定した。

 

 

 

 

 

 

「一条―。午後から、俺達と回らねえか?」

 

 

開会式を終え、午前の部を済ませた昼休み。

昼食を食べ終えた陸に、上原含む五人の友人たちが誘いに来た。

 

 

「悪い、もう先約がいる。そいつと一緒に回る約束してるんだ」

 

 

もちろん、先約とは小咲の事である。まだ春のクラスのお化け屋敷に行くと約束しただけで、文化祭を回る約束まではしていないのだが…、咄嗟にそう口にして断りの返事をしてしまった。

 

 

「…」

 

 

「へぇ…。おい一条、その先約って小野寺の事だろ?」

 

 

「!?」

 

 

弁当箱をしまおうとした陸の動きがぴたりと止まる。

そして、そんな陸を見た友人たちがにやりと笑みを浮かべる。

 

 

「やっぱりかー。…なあ、お前マジで小野寺さんと付き合ってねえの?」

 

 

「付き合ってない」

 

 

「ぶっちゃけ信じられねえんだよなー。あんな仲睦まじい姿を見せつけられてたら」

 

 

「見せつけてない」

 

 

友人たちが陸をからかい始める。

陸はそんなからかいを一言で受け流し続けるが、僅かに頬が染まっていることに陸自身気が付いていない。

だが、友人たちはそのことに気付いており、だからこそからかいの勢いがさらに増していく。

 

 

「いい加減にしろ!そろそろ午後の部が始まるから、俺は行く!」

 

 

「はいはーい」

 

 

「いいねー、彼女持ちは」

 

 

「俺たちは男だけで寂しく文化祭を回るとしますか」

 

 

「だから違ぇっての!」

 

 

冷静な陸ならば絶対にしない、不自然に話を切って離脱するという行動。

だからこそ、珍しく怒鳴った陸を見ても友人たちの笑みは浮かんだまま。

 

だが、一人だけ。上原だけは、からかいが始まってからもずっと、神妙な面持ちのまま陸を見続けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

「春ちゃんはA組だっけ?」

 

 

「うん」

 

 

教室の前で合流した陸と小咲は、階段を降りて一年の教室が並ぶ廊下を歩いていた。

春のクラスであるA組の教室へと、すぐに辿り着く。

 

 

「お姉ちゃん!先輩!」

 

 

陸と小咲が教室の前に着いてからすぐ、教室内から春が出てきた。

一瞬、教室の中が見えたのだが、お化け屋敷らしく真っ暗で、春がすぐに扉を閉めてしまったため、中の詳細な様子は良く見えなかった。

 

 

「すいません、すぐに案内したいんですけど、あそこの列に並んで待っててください」

 

 

「うわ、長いな…」

 

 

「わかった。ほら、行こう陸君」

 

 

春が指差した方には二十人くらいが並んでいる。

まあ、二十人が一人ずつ入るわけではないため、待ち時間はそれほど長くはならないと思うが、それでも人数が人数のため列がかなり長く見える。

 

最後列に陸と小咲が並んでから、およそ二十分ほどだろうか。

長くは待たないという予想に反して、長く待つことになったがそこで陸と小咲の一つ前のグループが教室内に入っていく。

 

大体、一グループが出口から出て来るまで四、五分といったところ。

もうすぐ、陸と小咲の番がやってくる。

 

 

「うおぉ…、マジで怖かった…」

 

 

「やべぇって…。あれはやべぇって…」

 

 

「「…」」

 

 

大体、予想していた通り五分くらい経っただろうか。出口から男子たちのグループが出てくる。

 

出口から出てくるグループの様子は、並んでからずっと見てきたのだが…その度に、仲がどうなっているのか気になってしまう。

 

正直、文化祭レベルだし、大したことないだろうと考えていた陸と小咲。

息を切らせ、顔色を悪くして出てくる人達を見続ければ、心配になるのも仕方ないと言えるだろう。特に小咲は。

 

 

「はい、次の人どうぞー」

 

 

陸と小咲が呼ばれ、教室の中に入る。

 

中は薄暗く、装飾もかなり凝っており不気味さ満載だ。

 

 

「…かなり凝ってるな。大丈夫か、小咲?」

 

 

「う、うん…」

 

 

小咲の返事の声が弱弱しい。まあ、先程も言った通り出口から出てくる人たちの様子が尋常ではなかったため、その反応も仕方ないのだが。

 

しかし、このまま立ち止まっていても他の人に迷惑になるため、早速進み始める陸と小咲。

だがそのすぐ、扉のすぐ近くに立てかけられていた障子から、いきなり両手が飛び出した。

 

 

「きゃぁあああああああああああ!!!」

 

 

「うぉっ」

 

 

突然の事に驚く陸と小咲。

陸は体をびくりと震わせ、小咲は陸の胸へと飛び込む。

 

跳び出てきた両手は、障子に空いた穴の中へと戻っていく。

 

 

「びびび、びっくりしたぁ…」

 

 

「いきなりか…。…」

 

 

警戒という警戒をしていなかった陸は、いきなり驚かされてしまった事に情けなく感じると同時に悔しく感じる。

 

次からは、絶対に驚かねぇ、と決意を固めた陸は警戒心を強くする。

 

 

「「あ」」

 

 

その時、ふと陸も小咲も、今の自分たちの体勢に気が付く。

 

小咲は陸の胸に頭を当て、両手を陸の背に回している。

陸もまた、その両手を小咲の肩に乗せている。

傍から見れば、抱き合っているようにしか見えない体勢。

 

呆けた声を、陸と小咲は同時に漏らし、そして同時にばっ、と体を離す。

 

 

「ご、ゴメンね陸君!」(わぁー…、私ったら思わず…!)

 

 

「い、いや、大丈夫だから…」(な、何だこのベタ展開…)

 

 

陸も小咲も、頬を染めて顔を互いから背ける。

 

 

「ど、どうする?無理そうなら出るか?」

 

 

「う、ううん。大丈夫」

 

 

いきなりの小咲の怖がり様から、ちょっと大丈夫なのかと心配になった陸。

そのため、陸は問いかけるが小咲は首を横に振る。

 

 

「ほら、去年の林間学校でも私、陸君に迷惑ばかりかけてたでしょ?だから、ほら…リベンジっていうか…」

 

 

「…」

 

 

そういえば、林間学校でも同じことがあったなと思い出す陸。

あの時も、ここに入って最初に驚いた時と同じように、抱き付いてきていた。

 

ただあの時は今と違って、恥ずかしいと思う暇もなく小咲の腕の締め付けの強さにひたすら痛がっていたが。

 

 

「それにもう油断しませんから!迷惑かけませんから!」

 

 

両手を体の前で振りながら謝ってくる小咲。

 

ていうか、先程もそうだが小咲の仕草は一々可愛すぎる。

仕草を見せられるこっちの身にもなれと思うのは、陸の勝手である。

 

 

「よーしっ、もう何が来ても驚かないからっ」

 

 

(…驚いてほしい)

 

 

張り切る小咲を見て、そう思ってしまうのはダメだろうか…。

 

 

「ふ?」

 

 

と、そこで張り切ってすぐ、小咲の顔に何かが張り付いた。

小咲はそれを掴み、何なのかを確かめた。

 

 

「…きゃぁあああああああああああああ!!!こんにゃくぅううううううううううう!!!」

 

 

「え…?こんにゃ…」

 

 

小咲の顔に張り付いたのはこんにゃくだった。天井から糸で吊るされているこんにゃくだった。

陸は知らない事だが、小咲はこんにゃくが苦手である。それも、ただ苦手なのではない。

 

再び陸に抱き付く小咲。さらに直後─────

 

 

ぺたぺたぺたぺったん

 

 

さらに複数のこんにゃくが二人の服に張り付く。

そしてその、ぺったりとした不快な感覚は服を通り越して体に伝わってくる。

 

 

「きゃ───────────!こんにゃくやだぁあああああああああああああ!!!」

 

 

「いててててて…。こ、こんにゃく嫌だ?え?食べられないとかじゃなくて…」

 

 

小咲の、あまりのこんにゃくの嫌がりようを見て察する。

 

小咲は、こんにゃくを食べるのが苦手なのじゃない。こんにゃく自体が苦手なのだと。

 

その後も、次々とお化け屋敷の仕掛けが小咲を襲う。

先程のこんにゃく攻めでダメージを負った小咲は、陸から離れることができず、ただ仕掛けに怖がることしかできず。

 

リベンジを誓ったものの、結果は林間学校の時と何ら変わらないものとなってしまった。

 

 

「あ…、おい小咲。もうすぐ出口だぞ?」

 

 

「ほ、ほんと…?」

 

 

陸の胸に顔を埋めながら顔を見上げてくる小咲。

頬を紅潮させ、目の端に涙を溜める小咲の表情は、いい意味で陸の心に突き刺さる。

 

 

「あ、あぁ。本当だから。もう少しだから頑張れ」

 

 

「…うん」

 

 

本当に怖いのだろう。それでも笑顔を浮かべながら、頷く小咲。

 

止まっていた足を動かし、出口に向かって歩き出す二人。

 

 

「グォオオオオオオオオオオオオオ!!!…リア充くたばれ」

 

 

「きゃぁああああああああああああああああああ!!」

 

 

不気味な影が、陸と小咲の前に飛び出してくる。

 

もうすぐ出口、最後の仕掛けという事だろう。

ゾンビのマスクを被った人影は、最後に何か呟いてから去っていった。

 

再び悲鳴を上げる小咲。陸の体に思い切り密着する小咲。

だがその際、小咲の足が陸の足に引っかかってしまった。

 

 

「え」

 

 

「あっ…」

 

 

陸と小咲の体がよろけ、重力に従って床に倒れる。

 

 

「いたた…」

 

 

「ん…、小咲、大丈夫…か…」

 

 

床に倒れた陸の体勢は、四つん這いの状態だった。

何とか両手を床に突いて体が床に叩きつけられることは防いだが、床に打った膝がジンジンと痛む。

 

陸は、膝の痛みを我慢して、思わず閉じた目を開ける。

 

そこで、一緒に倒れた小咲は大丈夫だろうかと問いかけようとする陸だ。

 

しかし、開いた陸の目に飛び込んできた光景を前に─────固まってしまった。

 

四つん這いになった陸の両手両足。そこに挟まれるように、小咲が仰向けに倒れている。

要するに、陸が小咲を押し倒したようなそんな体勢になっているのだ。

 

 

「…あ…」

 

 

固まった陸をよそに、小咲の目も開いた。そして、陸と同じように動きが固まる。

 

みるみる、二人の顔が赤くなっていく。

 

 

「え、えっと…」

 

 

「…あっ、わりぃ!すぐどく!」

 

 

小咲が、真っ赤な顔で困った表情になる。

そこで陸は、自分がどかなければ小咲は動けないという事に気が付く。

 

すぐに立ち上がって、小咲から体をどかせる陸。

 

その際に小咲から視線を逸らしてしまったため、目にしたわけではないが小咲も立ち上がったことが音で分かる。

 

 

「えっと…、とりあえず、出ようか…」

 

 

「…そうだな」

 

 

小咲が声をかけてくる。その言葉に陸も同意して、二人は出口から教室を出てお化け屋敷をゴールした。

 

ゴールする直前、多数の殺気が感じられたのは気のせいではないだろう。

 

 

「…本当にごめんね。私、テンパってばかりで…」

 

 

「いや、俺もビビったし…。ていうか、俺こそゴメン…。あんな…っ」

 

 

お化け屋敷を出て、廊下に座り込んでしまう二人。

そして互いに謝り合うが、その時に先程の体勢を思い出してしまった陸と小咲は再び顔を真っ赤に染めてしまう。

 

 

「…おい小咲。その腕」

 

 

「え?…あ」

 

 

視線を逸らしてしまった陸だが、不意に視線を小咲に戻すと、ふとある事に気が付く。

 

 

「さっき転んだ時に擦りむいたんだな」

 

 

「はは…、大丈夫だよこれくらい」

 

 

「ダメだ。絆創膏貰ってくるから、ここで待ってろ」

 

 

大丈夫だと小咲は言うが、腕を擦りむいてしまったのは自分のせいだと自責の念を感じる陸。

小咲にここで待ってるように言ってから、陸は保健室に絆創膏を貰いに行くために立ち上がって歩き出す。

 

 

「あ…、先輩…」

 

 

「春ちゃん?」

 

 

その時、教室から出て廊下にいた春の姿があった。

春は陸の姿を見た途端、何故か悲しげに表情を歪める。

 

 

「…お化け屋敷楽しかったよ。良く出来てて驚いた」

 

 

「…それは良かったです」

 

 

春は微笑んで返事を返してくるが、表情が悲しげなのは未だ変わらない。

 

 

「ちょっと小咲が怪我してな。保健室で絆創膏貰いに行ってくるから、その間、小咲のこと見ててくれるか?」

 

 

「はい、わかりましたー」

 

 

陸は春にそう言い残して、再び歩き出す。

 

だが…、先程の春の悲しげな表情が頭に浮かんでどうにも気になってしまう。

 

 

「…なぁ春ちゃん。何か元気ない?」

 

 

「え…」

 

 

「疲れてんなら、あんまり無理すんなよ」

 

 

声をかけてきた陸を呆然と見てくる春。

そして、陸は春を案じる言葉を掛けてから今度こそ保健室へと歩き出す。

 

階段を降りるために角を曲がる陸。

そのためだろう。ずっと、陸がいた場所を見つめ続けていた春の視線に気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

「…ふふふ。明日、二日目…。この僕の計画は遂に花開く!」

 

 

文化祭一日目が終了し、誰もいない、夕陽が射し込んだ教室内に一人、男子生徒が立っていた。

その男子生徒は、一枚の紙を見つめて、何やらほくそ笑む。

 

 

「ふふ…。計画成就のためにも、二人には協力してもらうよ…」

 

 

そして、その紙にはこう書かれていた。

 

<特別審査員 一条陸 小野寺小咲>と。

 

そして、男子生徒はかけている眼鏡を奥で目を細めながら、小咲の名を見てさらに笑みを深めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




陸の服装のイメージは、ぬらりひ〇んの孫のリ〇オですね。
まさに、ザ・和!といった感じで好きです。
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