一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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第79話 ミスコン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凡矢理高校文化祭、一日目が終了。

本日は二日目なのだが、この二日目は午前はクラスの出し物が中心に行われるが、午後からは体育館で大きなイベントが催される予定だ。

 

そのイベントとは…その名も、<ミス凡矢理コンテスト>

これは自由参加であり、見学をするもしないも生徒の意思に任せてはいるが、毎年ほとんどの生徒たちがこのコンテストを見るために体育館へ押しかけるほどの人気イベントだ。

 

現に今、昼休みもまだ余裕があるというのにかなりの人数の生徒たちが体育館への移動を始め、体育館入り口に長い列ができている。

 

 

「で?俺と小咲はその特別審査員とやらに選ばれた、と…」

 

 

「そうそう!だから、お二人さんにはこの椅子に座ってミスコンを見守っていただきたいと…」

 

 

「おい集、それはいつ決まった?少なくとも昨日までには決まってたよなぁ。それで、俺達には黙ってたと?」

 

 

「痛い痛い、陸、痛い。このままじゃ頭割れちゃぅうううううううううううううう!!!」

 

 

そして陸は、そんな人が入り始めた体育館の中。アリーナの脇に建ててある運営のテントの中にいた。

隣には小咲、目の前には陸の手に頭を握られている集が悲鳴を上げていた。

 

 

「い、いやだって!前もって二人に言ったら断られるって思ったから!特に陸はこういうイベントってあまり好きじゃないだろ!?」

 

 

「…まぁ、断るわな」

 

 

「何も参加しろなんて言わないって。大体お前男子だし。ただ、審査員として協力してくれってだけなんだ」

 

 

「…」

 

 

集が言っているのはただの言い訳だ。言い訳なのだが…的を射ているのが微妙に陸の中に刺さる。

 

しかし、一つだけ陸の中で疑問があった。

 

 

「ていうか、何で俺と小咲なんだよ。他の人を適当に選んだって良かったじゃんか」

 

 

そう。何故、自分たちなのか。

断られるとわかっているのなら、何故他の人を選ばなかったのか。

何故、そこまでのリスクを負ってまで自分たちを選んだのか。

 

陸はその理由を集に問う。

 

 

「ほ、ほら、二人は去年、ロミオとジュリエットの役を演じただろ?あの時の盛り上がりってお前らが思ってる以上に凄かったわけよ。今年も、ロミジュリに勝るイベントは出て来るかっ!?て話題になるくらい。だから、そんな有名なお二人に審査員として出てもらったら盛り上がるかなって…。それより陸さん、そろそろ離してくれませんかね」

 

 

「…」

 

 

一応、ちゃんとした理由だった。これで下らない理由だったら、本気で集の頭を握りつぶすところだったのだが…。

 

 

「私は…、審査員くらいなら…。別に参加するわけじゃないし…」

 

 

「え」

 

 

「ほ、本当に!?小野寺、ありがとう!」

 

 

どうするか、陸が悩んでいると、小咲がそう口にした。

陸は目を見開いて小咲へと振り返り、集は顔を輝かせながら小咲に礼を言う。

 

 

「ほらほら~。小野寺は承諾してくれたぞー?これは陸も受けてくれないと~」

 

 

「頭がパァーンてなりたいか?」

 

 

「すいませんそれだけはやめてくださいでも審査員は受けてくださいお願いします。」

 

 

「…はぁ」

 

 

ちょっと調子に乗った集を脅し、ため息を吐いてから頭を離す。

 

まぁ、小咲の言う通り参加するわけでもないし、それに飽くまで審査員。司会としてイベントをまとめる訳でもない。

 

 

「…俺もやるよ、審査員」

 

 

「おぉ!さすが陸殿!ありがてぇありがてぇ…」

 

 

陸が審査員を受けると、集が両手でごまを擦りながらぺこぺこ頭を下げてくる。

 

とまぁ、このような経緯で陸と小咲は、特別審査員をすることとなったのだ─────

 

 

 

 

 

 

そして、昼休みも終わり、体育館に設置された椅子全てが人で埋まり、それどころか壁に寄りかかってみようとしている人もたくさんいる中、ついにその時がやってくる。

 

 

『え―…大変長らくお待たせいたしました。ミス凡矢理コンテスト!!まもなく開催いたします!!』

 

 

「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」」」

 

 

司会の集が開催を宣言すると、会場内にいる生徒(全て男子)達が雄叫びを上げる。

 

その前からガヤガヤと騒がしかった館内がさらに騒がしくなっていく。

生徒達がどれだけコンテストを楽しみにしていたのかが良くわかる。

 

その間にも、実況席に座る集ともう一人の男子生徒が何やら世間話を始める。

陸はテーブルに肘を突きながらその話をぼーっとしながら聞いていたのだが、不意にマイクを持った集がこちらを向く。

 

 

『ではここで、本コンテストの特別審査員を務める、一条陸さんにお話を伺ってみましょう』

 

 

「っ!?」

 

 

ばっ、と集の方を向く陸。

その顔は、<おい、聞いてないぞ!?>と、ありありと語っている。

 

だが、目の前の集は猫口で笑っている。それだけではなく、いかがですか?と、本当に話を伺いながらマイクを向けてきている。

 

 

「あ、えっと…。去年は僕、このイベントの事を知らなかったのですが…、ここまでの規模とは思いませんでした。なので、どのようなコンテストになるのか楽しみです」

 

 

『ありがとうございましたー!』

 

 

とりあえず、何か言わなければと焦りに駆られた陸は、思っていることとそうでないことを混ぜてコメントした。

 

コメントを終えた陸は、再び司会の仕事に戻る集をちらりと睨む。

 

後で、〆る。

 

 

『それでは皆さん!ミス凡矢理コンテスト、スタートで~す!!』

 

 

陸が決心を固めていると、遂に集がコンテスト開催宣言を行った。

 

そこからは展開が早く、早速エントリーナンバー一番の娘が呼ばれ、イベントが進んで行く。

 

基本的に、ステージに上がった女の子は自己紹介をした後、アピールポイントを聞かれ、それからは人それぞれ違った質問をされる。

その質問は、今の所全て、集が出しているのだが…何故そこまでポンポン次々にネタを出せるのか。不思議に思いながら、陸はステージに上がる女の子を眺める。

 

 

『それでは次の方参りましょう!エントリーナンバー十二番!ご入場ください!』

 

 

空気が変わったのは、この時だった。

これまではひたすら盛り上がっていた会場が、その女の子が入場した途端、ほぉっ、とため息にも似た吐息に包まれる。

 

ステージには、可愛らしい和装の売子姿に身を包んだ女の子が上っていた。

 

 

「…え、あれ、春ちゃん?」

 

 

「春!?出場してたの!?」

 

 

さらに、何と売子姿の女の子は春だったのだ。

春がコンテストに出ていたことに驚愕した陸と小咲は、ただ目を見開くことしかできない。

 

 

『何ともキュートな女の子が入ってきました!それでは、学年とお名前をお願いします!』

 

 

こういうイベントにはあまり積極的に参加しない人だと思っていた陸。

 

 

(あ、うん。何か、春ちゃん自身が出たいと思って出たわけじゃなさそうだな…)

 

 

マイクを渡された春は、ステージ上であたふたしている。

明らかに、自分の意志で参加したわけじゃなさそうだ。

 

しかし、出場したことには変わりない。このまま何もせずに、ステージを降りることはできないのだ。

 

 

『え、えーと…。一年A組、小野寺春です。よろしくお願いひま…あっ』

 

 

自己紹介をしようとした春。途中までは良かったのだが、最後に噛んでしまった。

途端、春の姿に魅了されていた人たちが盛り上がり始める。

 

 

「かわいいぞー!」

 

 

「頑張れー!」

 

 

男子も女子も関係なく、春を応援する声がこだまする。

 

 

「あぁ、春~。だ、大丈夫かな?大丈夫かな~…」

 

 

「落ち着け…」

 

 

そして、陸の隣に座る小咲も、春が心配で仕方ないらしく。

あわあわ体を揺らして、今にもステージに飛び出していきそうな空気を醸し出している。

 

 

『それでは、自分のアピールしたいことをどうぞ!』

 

 

『あ、アピール?』

 

 

続いて、他の女の子も聞かれていたアピールポイントを問われる春、

 

春は、どちらかというとあまり自分に自信が持てないタイプな上、当初はコンテストに参加するつもりもなかったようだし、あまり考えていないだろう。

 

困っている春を見た小咲がさらに心配を深くし、さらには席から立ち上がろうとしている。

 

 

「春…春…」

 

 

「はいはい春ちゃんが心配だなー。…てか小咲って、こんなキャラだったか?」

 

 

妹が心配過ぎてキャラが崩壊している小咲の手首を掴んで止める陸。

そうしている間に、何か思いついたのか、春が口を開いた。

 

 

『えっと…。私の家は、凡矢理商店街で和菓子屋を営んでまして…。上品で優しい味わいをモットーに、四季折々の素材を活かした和菓子を取り揃えております。和菓子のご入用の際はぜひ、和菓子屋おのでらをごひいきに…て、すみません。ただの宣伝です…』

 

 

何を言うのかと思っていると、春は家の和菓子屋について語りだした。

しかも、アピールというより、宣伝になってしまったが…まぁ、会場は盛り上がっているので結果オーライといった所だろう。

 

集も、特に指摘するつもりはない様だ。

 

 

「頑張ってんなー、春ちゃん」

 

 

ステージ上で頑張る春を眺めながら、不意に呟いた陸。

隣の小咲も、涙を流しながらぱちぱちと拍手している。

…どうしたというんだ、小咲。

 

 

『では特別審査員の一条さんは、何か質問などありませんか?』

 

 

『…はい?』

 

 

油断していた。そうだ、集はこういう奴だった。

 

先程、何ら打ち合わせしていなかった事を<一度>したからって、もうそれで打ち止めだった事などなかったというのに。

 

 

『あー、えーと…』

 

 

マイクが向けられている以上、あまり時間はかけられない。

とはいえ、好きな食べ物は?等のベタすぎる質問は会場の空気を下げてしまう。

 

 

(こうなったら…、春ちゃん、すまん)

 

 

心の中で春に謝罪をしてから、陸は口を開いた。

 

 

『では…。恋をするなら、年上と年下。どちらがいいですか?』

 

 

あぁ…、遠目でもわかる。春の顔が真っ赤になっている。

 

本当にゴメン、ともう一度心の中で謝ってから、陸は春の答えを待つ。

 

 

『…と、年…上?』

 

 

何度も口を開閉しながら、遂に春が答えた。

途端、会場内で喜びの叫びと悲鳴が入り混じる。

 

 

『何と!春さんは年上が好みのようだ!僕もこんな後輩が欲しぃー!エントリーナンバー十二、小野寺春さんでした!皆さん、暖かな拍手を!』

 

 

今までで一番といっていい盛り上がりを見せた春のアピールは終了。

 

それからは順調に…とはいかず、色々トラブルが起こる。

 

まず、春の次に出てきたエントリーナンバー十三の人。

銀髪で、クールな服装を着こなした少女…ていうかポーラが現れたのだが、集の質問に答えず、自己紹介もせず、ひたすら無言のまま、しびれを切らした集がポーラのターン終了宣言をしてしまった。

 

そして、そのポーラの次に出てきたのは何と万里花だった。

何やらマントを纏い、衣装を見せずにステージに上がった万里花は、マイクを係の人からぶんどり、楽の物宣言しながらマントを取って身に着けた衣装を見せつける。

瞬間、会場内にいたほとんどの者の頬が染まる。万里花が身に着けた衣装は、何ともきわどいビキニ水着だったのだ。

 

会場内の男子を魅了し、中には鼻血すら出す者もあらわれたのだが…、布の面積が規定違反と判断され、万里花は失格扱いにされてしまった。

 

会場内の男子達はため息を吐いていたが、当然だろう。

飽くまでこれは高校の文化祭。布の面積が小さすぎればそれは失格になってしまう。

 

以降はトラブルは起きず、平和にイベントは進んで行った。

 

予選も無事に終了し、投票を行い、本選に進む五人を選出。

その結果、春が選ばれたことを聞いた小咲は滅茶苦茶喜んでいた。

 

さらに本選も進み、五人の更なるアピール。

春も、どんな心境の変化があったのか、他の人と同じ、いや、それ以上の真剣さで本選に臨んでいた。

 

そしてついに…その時が来る。

 

 

『それでは、結果発表!』

 

 

本選も終わり、最終投票も終わり、残すは結果発表のみ。

 

集や、他の係の人達の集計も終わり、ようやく最後の生き残り…優勝者が発表される。

 

 

『第二十三回、ミス凡矢理コンテスト!栄えあるミスの栄冠に輝いたのはー…』

 

 

会場の生徒達が息をのむ中、集は口を開いた。

 

 

『エントリーナンバー十二!小野寺春さんです!』

 

 

会場内が、沸いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




かなり中途半端な終わり方になってしまいましたが…、長くなりそうなのでここで切る事にしました。
次回で、文化祭編は終了となります。
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