一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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日間(加点式・透明)で一位、ルーキー日間で九位になっていました。
本当にありがとうございます。m(_ _)m


第8話 ユウキヲ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、頑張る…。この思い、伝えてみるよ…るりちゃん…!」

 

 

「!…」

 

 

両手を握りしめ、決意を口にする小咲と、目を見開いて決意を秘めた小咲の瞳を見つめるるり。

 

この状況を説明するには、少し前まで遡らなければならない。

 

この状況から三十分ほど前、小咲とるりは廊下の壁の影に隠れて何かを盗み見していた。

二人の視線の先にいるのは、楽と千棘である。

 

実は、今日の昼休み、千棘はプールでおぼれた時楽が助けてくれたのだと初めて知ったのだ。

そしてそのお礼を言うために千棘は今、楽に今回で三度目のトライをしている。

 

三度目とは何か?

千棘はここまで二回、楽にお礼を言おうと試みているのだ。

結果、二回とも失敗。だがこの三回目、ついにいい感じで話が弾んでいる、様に見える。

 

これは、成功するかもしれない。

 

…そう思って見つめていたのだが。

 

 

「何考えてんのよこの変態もやしがぁあああああああああああああ!!!」

 

 

「何でーーーーーーーーー!!?」

 

 

千棘が楽を殴り飛ばし、憤慨しながら小咲とるりの元に戻ってくる。

 

話が進んでいると思っていたのだが、千棘はプールから引き上げてくれたことを話していたのに対し、楽は千棘はあの人工呼吸未遂について話していると考えていたのだ。

 

その結果が、先程のあの殴打である。

 

 

「も~信じらんない!あんな今世紀最大のあほにお礼なんてありえないわよ!ほんっとバカ!いっぺん死ね!」

 

 

「ま、まあまあ…」

 

 

荒れる千棘、宥める小咲。そして千棘を眺め、何か考え込むるり。

 

考え込んでいたるりは、不意に千棘に口を開く。

 

 

「ねえ桐崎さん。桐崎さんて、本当に一条兄君と付き合ってるの?」

 

 

「え…」

 

 

(る、るりちゃん…)

 

 

るりの問いに、千棘も、真相を知っている小咲も言葉を失う。

 

だが、かろうじて千棘は口を開いて言葉を絞り出そうとする。

言い訳の言葉を絞り出そうとする。だがその時、最近楽が言っていた言葉を思い出す。

 

 

『秘密を守れる友達になら話しても━━━━』

 

 

小咲はすでに真相を知っているが、ここまで話が漏れた様子はない。

小咲といつもいるるり、そしてここまでるりと話している所を思い出す千棘。

 

彼女ならば、言ってもいいのではないだろうか…。

 

 

「…あのね」

 

 

千棘はるりに真相を説明する。当然、やくざとギャングの戦争云々を除いて。

 

 

「…え?付き合ってないの?ていうか小咲、あんたその事を知ってたの?」

 

 

「う、うん…。ごめんねるりちゃん、今まで黙ってて…」

 

 

「いや、気にしてはないけど…」

 

 

楽と千棘が、本当は付き合っていないという事。そしてその事を小咲が知っていたという事に驚愕するるり。

 

 

「じゃあ、一条兄君のことは…」

 

 

「はっ!あんな奴、恋人なんて解消よ解消!こんな事情さえなければ誰があんな奴と!」

 

 

ハッキリ言い切る千棘。幸運なことに今、周辺に人がいない。

もし誰かに聞かれれば、全てがぱあになる所だという事をこの時の千棘は考えていなかった。

それ程、つい先ほどの楽の態度が気に障ったのだろう。

 

 

「あ!でもこの話、内緒にしてよね!?」

 

 

「ラジャー」

 

 

「わかってるよ」

 

 

千棘が、小咲とるりに釘を差す。

 

 

「でないと、街が一つ滅んでしまうので…」

 

 

「…千棘ちゃんちってどういう家なの?」

 

 

「普通の家です」

 

 

思わず漏れたつぶやきは、小咲とるりの耳に届いていた。

るりが千棘に問いかけるが、千棘はすぐに誤魔化す。

 

 

「とにかく、そういうことだから二人とも約束よ?じゃあ、私用事あるから行かなきゃ」

 

 

「わかった」

 

 

「またねー」

 

 

千棘は大きく手を振りながら教室を出て行く。

残された小咲とるりは、目を合わせて話し始める。

 

 

「あの二人、付き合ってなかったのね。まあ、どこか怪しいと思ってたけど…」

 

 

「そ、そうかな…?仲良さそうに見えてたんだけど…」

 

 

るりは、前から楽と千棘の二人を怪しんでいた。本当に、あの二人は付き合っているのだろうかと。

楽と千棘は顔を合わせればケンカをするし、ケンカするほど仲が良いという言葉もあるが、それにしても多すぎると感じていたのだ。

 

 

「…そう言えば小咲。私、昼休みの時に一条弟君が女の子にコクられてたところ見たよ?」

 

 

「…えぇ!?」

 

 

いきなり何を言い出すか。だが、その言葉の衝撃の大きさにツッコむことも忘れ小咲は驚愕する。

 

コクられてた、つまりそれは告白されたという事。

誰が?それはもちろん、るりの言った通り陸だ。

 

 

「ちょ、るりちゃん!それ誰!?誰に告白されてたの!?」

 

 

「落ち着け小咲。頭振らないで」

 

 

るりの両肩を掴んで、グワングワン揺する小咲。

 

表情に変化はないが、冷静に小咲の動きを止めたるりは小咲の問いに答えるべく口を開く。

 

 

「名前は知らないわ。でも、D組の子だという事は確かだわ」

 

 

「っ」

 

 

陸が女の子に陰ながら人気があることは知っていた。

というより、知らされていた。中学の時、るりとは違う友達に。

 

陸に告白したいという友達から、その時はたまに話す程度だった小咲は、場をセッティングしてほしいと頼まれたことがあるのだ。

 

 

「小咲、あんたこのままでいいの?早くしないと彼、取られちゃうかもよ?」

 

 

小咲は知らないが、るりは知っている。

高校に入ってから、陸は今回で初めて告白されたという訳ではない。

 

入学直後、同じ中学だった女の子に一度告白されたという事もるりは聞いていた。

今回は、高校に入って同じ学校になったという女の子。

 

ともかく、陸は実はモテるのである。

他人に裏表を見せない性格に、決して悪くはない、どちらかと言えば整っている顔立ち。

運動神経も良く、成績も学年でも上位に入る。まさに優良物件である。

 

だからこそ、るりは小咲に早く行動に出てほしいと思っている。

今は女の子に興味ないという風に見える陸だが、いきなり気分が変わるという事だってあり得る。

 

 

「…そうだね。その通りだと思う」

 

 

「え…?」

 

 

いつもの小咲なら、頬を真っ赤に染めて『なななな、別に私は…』と言って恥ずかしがり、その場を誤魔化すのが通常だ。

 

だが、今日の小咲はいつもと違った。

だからこそこの言葉を言い、るりを驚かせるのだった。

 

 

「るりちゃんから、陸君が告白されたって聞いたとき…、私、とても嫌だって思った」

 

 

あの時も、中学の時も。告白したいから、場のセッティングをしてほしいと頼まれた時も。

嫌だと感じた。

 

 

「もう、こんな思いしたくない…」

 

 

こんな思いをするくらいなら…、このなけなしの勇気を振り絞る。

 

 

「私、頑張る…。この思い、伝えてみるよ…るりちゃん…!」

 

 

「!…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに…、ついに小咲が決心した。

陸に、小咲の胸に秘める思いを打ち明けると、決意した。

 

心の中で驚き、同時に喜ぶるり。

中学の頃は、ずっともじもじして陸と話すことすらままならなかった小咲。

だが少しずつ、挨拶を交わすようになり、自分からも話しかけられるようになり…。

 

今では良く、二人で下校することもあると小咲から聞いているるり。

 

そしてついに…、小咲が、告白する━━━━

 

 

「はうっ」

 

 

「っ!?」

 

 

感動していたるりの隣で、不意に爆発を起こす小咲。

 

小咲は、顔を真っ赤に染め、瞳を涙で潤ませてるりを見る。

 

 

「ど、どど、どうしよう…。想像したら、急に恥ずかしくなってきた…」

 

 

「あんたね…」

 

 

前言撤回。

やっぱり、小咲は小咲である。

 

とはいえ、ようやく小咲が告白すると決意を固めたのだ。

ここで小咲を引き返させるわけにはいかない。というより、そんなことになれば傷つくのは小咲自身なのだ。

 

何か話して、恥ずかしさを緩めつつ、なおかつ決意を緩めさせない話題を…。

 

 

「そうだ。ねえ小咲?一条弟君のどこを好きになったの?」

 

 

「…え?」

 

 

前から気になっていたことである。

 

他の子の様に、かっこいいとか運動ができるとか、そういう在り来たりな理由でも何でもいい。

ただ、純粋に小咲が何故、陸を好きになったのか。それをるりは知りたかった。

 

 

「ずっとあんた達を見てきたけど、私にはさっぱりわからん。悪い奴じゃないということはわかるし…、皆が言うかっこいいとか、運動ができるとか、そういうのもまあわからんでもないけど…」

 

 

「…えっと」

 

 

正直、小咲が陸のどこを良いと思って好きになったのかわからない。

問いかけられた小咲が、目を斜め上に上げて考え込む。

 

 

「う~~ん…。優しい所というか、良い人な所というか…。分かってるんだけど…、何て言葉にすればいいんだろ…?」

 

 

「私が知るか」

 

 

あぁ、ダメだ。聞いた私が馬鹿だった。

 

るりは内心で、これが当然の結果じゃないかと自分に言い聞かせる。

約二年も片思いして、未だに思いも告げられないでいた小咲が、どこに好きかなど詳しく言える訳もなかったではないか。

 

 

「あれ?小野寺、宮本。今、帰りか?」

 

 

教室の扉が開く音を聞き、小咲とるりが振り向く。

それと同時に小咲とるりを呼ぶ声が耳に届く。扉付近で立っていたのは、目を丸くして二人を見ている陸だった。

 

 

「一条君…!」

 

 

「っ」

 

 

小咲が、呆然と陸を呼ぶ中、るりはすでに行動を開始していた。

 

陸の姿を認識したと同時に、自分の机に向かって鞄を手に取る。

そして、扉付近で立ち止まると小咲の方を向いて口を開く。

 

 

「じゃーね小咲。私急用があるからすぐ帰らなきゃ。ばいびー」

 

 

(る、るりちゃあああああああああああああん!!!?)

 

 

陸が現れた途端、すぐ帰るるり。

もう、彼女の内心は手に取るようにわかる小咲。内心で絶叫する。

 

 

「宮本の奴、凄い勢いで帰ってったな…。相当大事なようなんだろうな…」

 

 

(るりちゃんのバカぁ~…)

 

 

こんないきなり…、想いを伝えると決めたとはいえ、心の準備というものが…。

 

内心でごちる小咲は、扉の影からのぞき込み、凄い形相で小咲を睨んでいた。

まるで、逃げるなよと小咲に釘を差しているかのごとく…。

 

 

(えええええええ…。る、るりちゃん…)

 

 

「?何で宮本、戻って来たんだ?」

 

 

小咲は、るりに見捨てられたかのように悲壮に顔を染め、陸は頭の上に疑問符を浮かべる。

 

陸が未だ疑問符を浮かべている中、小咲はるりがいた扉の影から視線を外して俯く。

 

今まで経験したことのないほど、顔どころか体全体が熱い。

心臓がばっくばっくと高鳴る。いつもなら、話しかけることくらいはできるのに。

それすらできないほど、緊張して仕方がない。

 

 

(ど、どうしよう…。やっぱり、今日いきなり告白なんて無理だよ、るりちゃあん…)

 

 

心の中で弱音を吐く小咲。

実際、告白すると決めてその日に、こんなシチュエーションで告白できる人の方が少ないだろうが。

 

 

「ん?小野寺、お前顔赤いぞ?」

 

 

「え…?」

 

 

その時、疑問符を外した陸が小咲の顔が真っ赤になっていることに気づく。

 

 

「どうした?風邪か?」

 

 

「あ、いや…。これは…」

 

 

風邪じゃない。だが、陸に告白したいけどできないくらい恥ずかしくて顔が赤くなっているなど言えるはずもない。

上手い言い訳が思いつかないまま、小咲の額に陸の掌が当てられた。

 

 

「…っ!!!?」

 

 

「お!?おい、めっちゃ熱いぞ!す、すぐ帰るぞ!家まで送るから!」

 

 

「お、落ち着いて一条君!」

 

 

小咲が、落ち着くように言うが、陸からしたら何で小咲がここまで元気にいられるかがわからない。

 

 

「お前、40℃くらいあるんだぞ?すぐに帰るか保健室に行くかしないと」

 

 

「ち、違うの!違うの一条君…」

 

 

小咲の容体を心配して、どうするかを考える陸。

 

そんな陸を見ながら、小咲は心の中でつぶやく。

 

 

(これだよ、るりちゃん…。私が好きなのはね…、こういう所なの…)

 

 

「待ってろ小野寺、今、薬買ってきてやるから」

 

 

「わああああ!待って一条君!」

 

 

駆け出そうとする陸の手を小咲はつかむ。

足を止めた陸が振り返る。陸の腕を掴んだ小咲と陸の視線が、交わる。

 

瞬間、二人の心臓がとくん、と鼓動する。

 

 

「あ…」

 

 

「…小野寺?」

 

 

さすがの陸もわかる。小咲の様子が、今までとは違う。

 

陸の視線を受けながら、小咲は唇を引き締める。

 

今なら…、言えるかもしれない…。

 

 

「一条君…、私ね…?」

 

 

言え。言え、私…!

 

 

「実は、ね…?」

 

 

恥ずかしいし、怖いけど…。言うんだ…!

 

 

「今までずっと、言えなかったんだけど…。一条君のこと…!」

 

 

「っ…」

 

 

心臓が爆発する。そう思えてならないほど、少し離れている所にいるにも関わらず、陸に自分の心臓の鼓動が聞こえているのではないかと思ってしまうほど。

 

小咲の心臓は大きく鼓動を続けていた。

 

 

「ずっと…、ずっと…!」

 

 

好き…

 

その二文字は、言えたのか、言えなかったのか。小咲にはわからない。

 

だが、その言葉を口にしようとした時、傍らの窓から破砕音が響き、二人の間に硬球の野球ボールが飛び込んでくる。

 

 

「うわっ、やべー!!」

 

 

「誰か当たってないですかー!!?」

 

 

窓下のグラウンドから、声が聞こえてくる。

 

先程までのどこか緊迫した、それと同時にどこか色のある空気が霧散する。

それと同時に、陸は歩き出しボールを拾うと、大声と共にボールを投げおろす。

 

 

「気をつけろこのやろー!あぶねーだろーが!!」

 

 

「うわっ!ご、ごめんなさあああああい!!」

 

 

「…!…!」

 

 

陸がグラウンドにいる野球部員に怒鳴る中、小咲は傍の机にしがみついて心臓の鼓動を落ち着けていた。

 

言えた…?私、言えたの?言えなかったの?

 

どちらかわからない。…けど、多分陸には届かなかっただろう。

それだけは、わかる。

 

 

「小野寺、俺ちょっと先生呼んでくるから」

 

 

「あ…、ひゃい…」

 

 

「あ、ガラスは触んなよ?」

 

 

そう言い残して、陸は教室を去って職員室に向かっていった。

 

陸が立ち去ったのを見届けると、小咲は机から手を離して床にへたり込む。

 

 

(うそ…。こ、こんな事ってある?ひどいよ神様…)

 

 

内心でショックを受ける小咲。胸に手を当てて、深呼吸をする。

 

陸が戻るまで、小咲は深呼吸をし続けていた。

 

陸が戻ってくると、床に散らばったガラスの破片の掃除を始める。

 

 

「あ、指、気をつけろよ?」

 

 

「う、うん。大丈夫」

 

 

二人は口を開かない。教室にはカチャカチャと破片を拾う音だけが響き渡る。

 

掃除を始めて十分後、破片を片付け終える。

 

 

「じゃあ小野寺。俺、職員室に片付け終わったこと言いに行くから帰っていいぞ」

 

 

「え、でも…」

 

 

「大丈夫だから。それに、体調悪そうだったし、帰った方が良いって」

 

 

まだ、小咲の体調が悪いと思っていたらしい。

小咲の体調を気にする言葉を言い残して、再び陸は職員室へと向かっていった。

 

小咲も、今日また陸と顔を合わせる勇気が残っておらず、その言葉に甘えて帰ることにした。

 

校舎を出て、校門に差し掛かった時…。

 

 

「あ…」

 

 

校門で誰かが立っている。その人影を見て、小咲は顔を上げる。

 

 

「るりちゃん…」

 

 

「…どうだった?」

 

 

どうだった、とは小咲の告白の結果を聞いているのだろうか。それとも告白できたのかと聞いているのだろうか。

 

だが、どちらでも変わらない。

 

 

「ごめんね…。やっぱり言えなかった…」

 

 

結局、思いを告げられなかったことをるりに伝える。

るりは、そう、とだけ返すと小咲から視線を外して前を向く。

 

 

「このヘタレ。ま、所詮あんたじゃそんな事だろうと思ってたけどね」

 

 

「うっ…」

 

 

るりの容赦ない言葉は、小咲の心に容赦なく突き刺さる。

 

せっかく、チャンスを用意してくれたのに、無駄にしてしまった。

 

 

「…でも、私も急かし過ぎた気もするしね。小咲は頑張ったと思うよ」

 

 

「るりちゃん…」

 

 

「けど次、同じ失敗したら絶交するから。そのつもりで頑張るのよ」

 

 

「ええーーー!?」

 

 

慰めてくれたと思ったら、小咲を突き落とするり。

だが、そんな言葉にも優しさが含まれていることに小咲は気づいている。

 

 

「ったく」

 

 

るりも、期待していた分もあっただろう。

ため息をつきながら小咲の一歩前を歩き出す。

 

そんなるりの後姿を眺めてから、小咲は夕焼けに染まった空を見上げた。

 

るりに悪いと思っているのだが、小咲は陸に思いを告げられないで終わったことに何処か安心していた。

自分の気持ちを知ってほしいという思いは今でも変わらない。

だが、今の関係がもう少し続いてほしいと思っている自分がいるのだ。

 

しかし…

 

 

(でも…、次はきっと伝えるからね…。一条君)

 

 

小咲はそう、決意を固めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼しました」

 

 

ガラスの破片の片づけを終えたことを報告し、職員室を出た陸。

 

陸は、カバンを取りに教室へと向かう。

 

 

(…小野寺、帰ったかな?あんな事あって、何か顔合わせづらいからな…)

 

 

鈍い陸といえども、さすがに気づく。

先程、小咲が何を言おうとしていたのか。陸は気づいていた。

 

それでいて、気づいていない振りをした。

 

怖かった、から。

 

 

「…ダメだよ小野寺。俺なんかを好きになったら…、絶対にダメだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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