◇◆side速水凛香◆◇
鶴久と桃花が私達の分の飲み物を買いに行って戻って来ない。桃花は夏祭りで鶴久に告白するといってたけど今がそうなのかな。
チクッと胸に痛みが走る。
「あれ、鶴久君と矢田さんは?」
「お兄ちゃんと桃花さん、私達の分の飲み物を買いに行ったんですけど……」
渚やクラスの皆が集まり始めた。花火が始まりそうだから集合場所は決めていたし当然の事。その合流したクラスの皆の中に鶴久と桃花の姿が無い事に更に胸が痛くなった。
「私……ちょっと離れるから優奈の事、お願い」
「え、速水さ……」
渚達が合流したから私は優奈を任せて、その場から離れた。
この後、帰ってくる鶴久と桃花を見たくなかった。
「はっ……はっ……」
渚達から離れて、屋台の間を駆け、人垣を走り抜ける。
誰にも会いたくない。誰にも見せたくない。瞳からジワリと熱を浴びるのを感じる。
E組に落ちる前から人付き合いが苦手だった。そんな私でもE組に行ってから仲良くなった桃花や倉橋と遊ぶ機会が増えたし、千葉みたいにスナイパーとして互いに高め合う仲間も出来た。
そして私にとって一番心が許せる……鶴久が来た。
最初こそ変な奴だと思っていたけど、いつでも誰かを笑わせる。気が付けば誰かの隣に居る。傍にいて落ち着ける奴。
気が付けば私は鶴久の事を目で追っていた。
私はいつからか鶴久と一緒にいる事に違和感を感じなくなっていた。一緒に居るのが当たり前。そんな事はあり得ないのに。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
気が付けば私は祭りの場から林の中まで走って来ていた。もう誰もいない様な場所まで走って来て、息切れを起こして胸が痛い。
ううん、違う。痛いのは息切れしたからじゃない。
鶴久と桃花が付き合うのが間違いないから。
桃花は私と違って明るくて、スタイルが良くて、誰とも仲良く出来て……鶴久と仲が良いし、優奈とも仲が良い。
鶴久も桃花に告白されたらきっとOKするに違いない。
好きな人と親友が付き合う。本当は祝福しなきゃいけないんだけど……
私はそんな二人を見るのが嫌だったからあの場から逃げ出した。
「はぁ……ふぅ……う…あ……」
だからこそ、この目から溢れそうな涙を抑えられそうになかった。
「つる……ひさ……」
桃花が鶴久に告白すると言ってから私は自覚した。
私は……私も鶴久の事が好き。自覚してしまったら後はもう認めるしかなかった。
だからこそ今がツラい。こんな自分が嫌になる。
もっと素直に鶴久と話をすれば良かった。
もっと早くに自覚して告白……は出来なかったかも。
私は自己主張が苦手で誰かに頼まれた事は断れない性格だった。そんな私が鶴久に自分から告白する姿なんて我ながら想像出来ない。
そんな自分が嫌に……
「速水……やっと見つけた」
「え、鶴久……?」
自己嫌悪に陥りかけて背後から声が掛かり振り返る。其処には私が会いたかったけど今一番会いたくない好きな人が汗を拭いながら歩み寄って来ていた。
めちゃくちゃ間が空いてしまいました。コミックス読み返して再度更新していくつもりです。