紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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第十六話 終末の魔女、月の呪縛

特異災害対策機動部二課最奥区画「アビス」。

 

 

そこに、一人の美女が立っていた。

 

完全聖遺物、ネフシュタンの鎧を身に纏うフィーネだ。

 

 

フィーネの目的は、アビスに保管されている完全聖遺物の一つ「デュランダル」だ。

 

 

フィーネはその扉のロックを解除するため、持参していた通信機をパネルに翳そうとする。

 

しかし、その通信機は緒川の放った銃弾によって破壊される。

 

それが最後の一発だったのか、緒川は拳銃を捨て両の拳を構える。

 

「デュランダルは渡しません!」

 

緒川に連れられて一緒に避難していた未来は、緒川の邪魔にならない所に隠れて、両者を見ている。

 

 

道を阻まれたフィーネは静かなる怒りを抱く。それを象徴するかのごとく、ネフシュタンの両方の鞭が角のように逆立っていく。

 

 

しかし、それを邪魔するように、風鳴 弦十郎が床を突き破って緒川とフィーネの間に着地した。

 

 

「それ以上はさせないさ。フィーネ・・・いや、了子君」

 

 

「その名で呼ぶか・・・いつ気付いた?」

 

 

 

フィーネの正体・・・櫻井 了子は動揺無く冷静に訪ねた。

 

 

「調査部だって決して無能じゃない。米国政府のご丁寧な道案内で、お前の行動はとっくに気づいていた。

 

後はいぶり出すため、敢えてお前の策に乗り、シンフォギア装者を全員動かして見せたのさ」

 

 

「陽動に陽動をぶつけたか・・・食えない男だ。

良いのは体だけではないということか」

 

「両方、鍛えているからな・・・だが」

 

 

弦十郎は悲しみを抱きながら、フィーネに言う。

 

 

「今回程、俺の考えが間違いであって欲しい・・・そう思った事はなかった」

 

「甘い、甘過ぎる」

 

僅かな間の沈黙。それを先に破ったのはフィーネだ。

 

 

 

「この私を止められるか、人間!」

 

「応とも!話はベッドで聞かせてもらおうか!!」

 

 

 

両者が戦闘を開始した。

 

 

弦十郎がフィーネに接敵すると同時、フィーネも鞭を振るって攻撃。

 

だが弦十郎はそれをかわし、更にフィーネのもう一方の鞭を大きく跳んでそれを回避し、天井のパイプを掴み、その勢いを利用して急降下し、拳を振るう。

 

 

弦十郎の拳をフィーネは回避したが、床に穴をあけるほどの威力を持った弦十郎の拳による衝撃は、ネフシュタンの鎧の一部にヒビを入れた。

 

ネフシュタンの機能である再生能力によって修復されるが、衝撃によってフィーネにもダメージはあった。

 

「チッ!!」

 

 

フィーネは舌打ちし、両方の鞭を弦十郎に振るう。

 

だが、縦横無尽に動き回る鞭の軌道を読んだ弦十郎はその両方を掴み、逆にフィーネを引き寄せる。

 

 

引き寄せられ、がら空きになったフィーネの懐に弦十郎の拳が打ち込まれ、宙に浮いたフィーネは弦十郎の背後に倒れ落ちる。

 

 

 

「ぐっ・・・生身で完全聖遺物を退ける!?以前から不思議に思っていたが・・・お前は本当に人間か!?」

 

 

 

振り向き、それを聞いた弦十郎は口の端を親指で弾き、言い放つ。

 

 

 

「知らいでか!飯食って映画見て寝る!男の鍛錬は、そいつで充分よ!!」

 

「いや、その理屈はおかしい」

 

フィーネは真顔でツッコミを入れた。

 

 

 

しかし、すぐに気持ちを切り替えて、持っていたソロモンの杖でノイズを召喚しようとする。

 

 

しかし、弦十郎はそれを阻止した。床の欠片を蹴り飛ばし杖に当てて弾いたのである。

 

ソロモンの杖がクルクルと回りながら、宙を舞う。そして天井に突き刺さる。

 

 

「ノイズさえいなければ!」

 

弦十郎は追撃をかけようとしたその時・・・。

 

 

 

「姐さんはやらせねぇぜ?」

「「っ!?」」

 

 

突然響く第三者の声。その直後に、両者の間に光線がいくつも降り注ぐ。

 

 

その隙をついて、フィーネはソロモンの杖を回収し、後方に下がる。

 

 

「待っ-」

「てめぇはここで一旦お休みだ」

 

声の主は突然現れ、弦十郎の腹を剣で刺した。

 

緒川と未来の目の前で、口から血を吐きながら倒れる。

 

 

悲鳴を上げる未来。緒川はすぐに弦十郎に駆け寄り、傷を塞ごうとする。

 

 

声の主である金髪をツンツンにしている少年は、フィーネに弦十郎から奪った通信機を手渡す。

 

 

「ほらよ」

「礼を言う」

 

「構わねぇよ。ほんじゃ長居は禁物だし、ばいならー」

青年はフィーネの元を去る。

 

 

 

「じゃあな、フィーネの姐さん。もう会うことは無いだろうよ」

 

小さな声で呟きながら。

 

 

 

 

フィーネは青年の呟きは聞こえなかったらしく、そのまま奥へ進む。

 

奪った通信機によってデュランダルの保管されている最深部へと入り込み、パネルを操作する。

 

 

 

「目覚めよ、天を突く魔塔。彼方から此方へ現れ出でよ!!」

 

 

そして、ついに塔が目を覚ます。

 

 

 

 

地上・リディアン校舎前。

 

 

 

日が落ち、月が現れる夜となった時間だが、月は月本来の色である白と、血のような赤が入り混じった薄紅色の月になっていた。

 

 

 

リディアンに残った未来からの救援を求める通信を受け、リディアンに戻ってきた直人、響、翼、クリス。

四人は目の前に広がる惨状に言葉を失っていた。

 

 

 

 

リディアンの校舎やその周辺も、崩壊し無残な姿となっていた。

 

ノイズの進行による、大切な場所の変わり果てた姿だった。

 

 

 

「未来ーーー!!みんなぁーーー!!」

 

校舎に向かって声を張り上げる響。

 

だが、それに答える声は無かった。

 

 

 

しかし、四人はリディアンの校舎正面の上に立つある人物を見つける。

 

それは櫻井 了子だった。

 

 

「櫻井女史?」

「了子さん!」

 

翼と響が声をかけるが、了子は答えない。しかし、突然語り始めた。

 

 

 

「この星には、知的生命体はいくつも存在するが、その中でも特に知能が発達している者達がいた」

 

「え・・・!?」

 

 

「その者達は独自の進化を遂げ、独自の文明・文化を築き、暮らしていた」

 

「了子さん・・・?何言ってるんですか?」

 

 

語る了子に困惑したまま訪ねる響だが、了子は響に答えない。

直人と翼とクリスは鋭く睨む。

 

 

「そして、その者達は進化と闘争の果てに代表するべき十三が残った。それが、十三魔族」

 

 

「了子さん!」

 

 

「人族、ファンガイア族、キバット族、ウルフェン族、マーマン族、フランケン族、ドラン族、マーメイド族、ホビット族、ゴースト族、ギガント族、ゴブリン族、レジェンドルガ族」

 

 

全ての魔族の言い当てた了子。了子は眼鏡を外し、横へ投げ捨てた。

 

 

 

「今から約六百年前、十五世紀初頭。

 

ゴブリン族は世界制覇に乗り出したファンガイア族と最初に対立、死闘を繰り広げた。

 

しかしサガの鎧を纏った初代キングとチェックメイトフォーが率いたファンガイアの軍勢により、種を根絶された」

 

「・・・」

 

「その後もファンガイアは多くの魔族を根絶させる為に戦争を繰り返した。

 

当時のサガの鎧を纏った初代キングの力は絶大なもので、人間を含むあらゆる種族の恐怖の象徴になった」

 

「了・・・子、さん・・・?」

 

 

「あぁ、言いたいことはわかるぞ。何でそんなことを知っているか、だろう?

 

見たことがあるからだよ。六百年前の戦争を実際にな」

 

 

「やはりそうか。あなたの事を考えれば当然の事だ。

今世に蘇った、《終末の魔女》」

 

「フィーネッ!!」

 

 

直人とクリスが了子の正体、フィーネの名を呼んだ瞬間、了子の・・・否、フィーネの身体全体を光が包む。

 

 

 

「嘘・・・」

 

 

響がそう呟いた直後、光が消えて金色のネフシュタンの鎧を纏い、白金に変色した髪をした彼女の本来の姿となってフィーネが現れた。

 

「嘘ですよね?そんなの嘘ですよね!?だって了子さん、私を守ってくれました!!」

 

 

「あれはデュランダルを守っただけのこと。稀少な完全状態の聖遺物だからね」

 

「了子さんがフィーネというのなら・・・本当の了子さんは!?」

 

 

 

「櫻井了子の肉体は、先達て喰い尽くされた・・・いや、意識は十二年前に死んだと言っていい。

 

超先史文明期の巫女"フィーネ"は遺伝子や魂に己が意識を刻印した。

 

 

本来、魂が輪廻転生をして新しい命に生まれ変わった際、前の記憶や人格はリセットされてしまう。

 

まぁ、ごく稀に僅かに残したままの者や何らかの要因で思い出す者も出るらしいが・・・。

 

 

私はそれを防ぐため、自身の血を引く者がアウフヴァッヘン波形に接触した際、その身にフィーネとしての記憶、能力が再起動する仕組みを施したのだ。

 

 

つまり、私が開発した本来の輪廻転生とは異なる、"フィーネ専用輪廻転生システム"だ。

 

 

十二年前、紅 直人と風鳴 翼が偶然引き起こした天叢雲剣と天ノ羽々斬の覚醒。

 

同時に実験に立ち会った櫻井了子の内に眠る意識を目覚めさせた。

 

その眼覚めし意識こそが・・・私なのだ!」

 

 

「まるで・・・過去から甦る亡霊!!」

 

「ふっはっはっは!!六百年前の戦争の時も、当時の人物に転生をしたからこそ立ち会えたのだ。

 

それに、フィーネとして覚醒したのは私一人ではない。

 

歴史に記される偉人、英雄、世界中に散った私達は、"パラダイムシフト"と呼ばれる技術の大きな転換期にいつも立ち会ってきた」

 

 

 

「っ!シンフォギアシステム・・・」

 

「そのような玩具、為政者からコストを捻出するための副需品に過ぎぬ」

 

 

「お前の戯れに・・・奏は命を散らせたのかッ!!」

 

「私を拾ったり、アメリカや共存反対派のファンガイア連中とつるんでいたのもソイツが理由かよ!!」

 

 

 

翼は今亡き親友の命を己の野望の為に利用された事への。

 

クリスは自分へ向けた優しさが自身の利になる故に与えたものだった事実への。

 

 

それぞれ怒りを露にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「天羽 奏、か。あいつは・・・いや、今は『あれ』の事を考えている暇は無いな」

 

 

 

 

誰にも聞こえない程の小さな声で呟くフィーネ。

その声は、奏者達には聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィーネは気持ちを切り替えて、高々に宣言した。

 

 

「そう。全てはカ・ディンギルのため!!」

 

 

 

 

フィーネが両手を広げた瞬間地響きが起こり、特異災害対策機動部二課本部から塔が突出する。

 

そして、地下から伸びたそれはまさしく高みの存在、天を仰ぐほどの塔に相応しい。

 

 

「地より屹立し、天にも届く一撃を放つ荷電粒子砲」

フィーネはテンションを上げて高々に言う。

 

 

「これが、カ・ディンギルだ!」

 

 

 

そのカ・ディンギルの表面は二課本部へ降りる際のエレベーターから見えていた二課本部に描かれた奇抜的な文様と同じものだった。

 

 

「カ・ディンギル・・・・・・コイツで、バラバラになった世界が一つになると!?」

 

 

クリスは、かつてフィーネが言っていた世界から争いを失くすために必要だと言っていた力を目の当たりにし、疑問を投げかける。

 

 

「ああ。今宵の月を穿つことによってな!!」

 

 

フィーネの言葉はあまりにも突拍子もない答えだった。

 

 

 

「月を!?」

 

「"穿つ"と言ったのか!?」

 

「なんでさ!?」

 

「月を穿つ事によって、呪いを解きたいから」

 

 

少女達が疑問を問いかけるなか、直人が答えた。直人以外の四人の視線が直人に集中する。

 

 

「ファンガイアが保管している過去の書物の中に、太古の時代を調査していたファンガイアが書いた、当時の出来事の研究を記した本。

 

それと、月とそれによって発生している"バラルの呪詛"というものの研究資料が残っていた」

 

「・・・続けろ」

 

続きを促すフィーネ。直人は語る。

 

 

 

「太古の時代。神と言われる存在がいる所へと届く塔をシンアルの野に建てようとした。

 

しかし神は、人の身が同じ高みに至ることを赦しはしなかった。

 

神の怒りを買い、雷帝に塔が砕かれ、人類は交わす言葉を・・・統一言語を奪われた。

 

神の領域に許し無く立ち入ろうとした罰、それが"バラルの呪詛"だ」

 

直人は月を見上げる。

 

 

「月が何故古来より不和の象徴と伝えられてきたか。

それは月こそが"バラルの呪詛"の源だから。

 

人類の相互理解を妨げるこの呪いを、月を破壊することで解くつもり。

 

そのために必要な兵器を作った。それがカ・ディンギル」

 

 

直人が語り終わると、フィーネは軽く拍手をした。

 

 

 

「正解だ。ファンガイアは長命な分、色んな物を残したり知っていたりするものだ」

 

フィーネはだが、と付け加えるように語る。

 

 

「そもそも何故、私が神の領域に向かおうとしたか。

それは、神に・・・あのお方と並びたかった。共に居たかった。ずっと一緒に・・・。

 

当時の私は若くてな。そんな恋する乙女みたいなことを思い、実行した。しかしその結果と代償がこれだ!

 

その後、私は決意した。どんなに長い年月がかかろうとも、どんな対価を払っても、必ずあのお方の元に行くと!!」

 

「共存反対派のファンガイアと手を組んだのは、ファンガイアの持つ技術や情報が欲しかったから」

 

「そうだ。ファンガイアの技術は、私を持ってしても解析や使用は困難だったが、苦労しただけの価値はあったよ。

 

そのお陰で、予定よりも早くカ・ディンギルを完成させることが出来たからな!」

 

 

 

 

「呪いを解く?あのお方ってやつに想いを伝える?」

 

「ん?」

 

「それは、お前が世界を支配するってことなのか!!?

安い・・・・・・安さが爆発しすぎてる!!」

 

 

叫ぶクリス。フィーネは鼻で笑う。

 

 

 

「ふん。何とでも言うがいい。私は止まらないし、止まれない。天上の頂きに行けるなら、この世界がどうなろうと、知ったことか」

 

 

 

 

フィーネの言葉が終わった直後、四人は聖唱を歌い、シンフォギアを身に纏う。

 

そして、フィーネの野望を阻止するための戦いを始めた。

 

 

 

クリスの放ったイチイバルの矢がフィーネに殺到する。

フィーネは全てかわし、校舎の上から地上に降りる。

 

 

そして降り立ったフィーネに攻撃を仕掛ける四人。

 

クリスの腰部アーマーから追尾式小型ミサイルが一斉発射される。

 

 

眼の前に迫るミサイルの大群に臆することなく、フィーネは鞭を振るうことによってそれら全てを打ち落とす。

 

 

それを見たクリスは直人に目配せして、直人が翼に目配せし、それを受けた翼は響を見る。

 

そして二人はミサイルの爆発によって巻き起こった煙を眼眩ましとして、その煙から飛び出す形でフィーネに攻撃を仕掛ける。

 

 

響の蹴りが炸裂するが、フィーネはバク転でかわし、カウンターで鞭を当てて吹き飛ばす。

 

今度は、刀を手に翼がフィーネに斬りかかる。

 

 

フィーネは鞭の先を硬化させ、剣のようにして翼の刀を受け止める。

 

そして鍔迫り合いになっていた刀の刀身を鞭で巻き付け、空高く放り投げる。

 

 

翼はフィーネの鞭をかわし、"逆羅刹"によって対抗する。

フィーネも鞭を回して盾とする。

 

 

「・・・っ」

 

「はぁっ!」

 

フィーネの左側から攻めてきたのは、吹き飛ばされた響。

更に、右側から直人が攻めてくる。

 

 

降り下ろされた拳と降り下ろされた剣がフィーネに迫る。

 

 

フィーネは再び鞭を盾にしようとするが、防げたのは響の攻撃のみ。

 

直人の一閃は鞭のスキをついての攻撃だった。

 

更に、クリスが一発の銃弾を精密な射撃で撃ち、フィーネに更なるダメージを与えた。

 

 

傷はネフシュタンの鎧の再生効果で治ったが、フィーネ本人に少なからずダメージが通った。

 

その時、カ・ディンギルが光だす。チャージが終わった証拠である。

 

 

「・・・はは、ははははははははは!どうやら、カ・ディンギルのチャージが終わったようだ。

 

もう発射は止められない!月は破壊され、バラルの呪詛は消える!」

 

 

「いけない!早く止めないと!」

「私が-」

 

 

 

 

「兄さん!!」

 

 

 

 

クリスが行動を起こそうとした瞬間、直人が叫ぶ。

 

そして、巨大な蛇のモンスター、『ククルカン』が現れる。

 

その上には、サガの鎧を纏った登 大牙が立っている。

 

 

 

「お義兄様!」

「お義兄ちゃん!」

「アニキ!」

 

 

「裁きの蛇・・・現キングか。サガの鎧を見るのは六百年ぶりだ・・・」

 

「直人とは、魔術で密かに連絡を取り合っていたのでな!」

 

サガはククルカンの頭部をカ・ディンギルの発射軌道上に向かわせて、二つの物を取り出した。

 

 

ひとつは、古い本。もうひとつは、バスケットボール位の大きさの宝石だ。

 

 

 

サガは本の方を放り投げてジャコーダーの鞭で攻撃、本がバラバラになり全てのページが滞空する。

 

そして、すぐに宝石も投げてそれもジャコーダーの攻撃で破壊する。

 

すると、砕けた宝石から力が解き放たれ、それが散らばったページ全てに行き渡る。

 

 

ページが均一に丸く並び、巨大な魔方陣が浮かび上がる。

 

 

 

「あれは魔術書か?魔皇力の結晶を砕いて中の力を利用して・・・まさか!?」

 

 

サガが利用したのは、ひとつは魔術書。

 

ファンガイアが書いた魔術に関する本であり、記された魔術を使用可能とする物である。

 

 

使い捨てタイプと永久使用タイプの二つがあり、今サガが使ったのは前者だ。

 

 

もうひとつは、魔皇力の結晶。

 

魔皇力を凝縮して物質化させたもので、結晶の中の魔皇力を使用することで、足りない分を補ったり大規模な魔術を使えるようになる。

 

 

サガはその二つを使用して、ある大規模魔術を使用した。

 

 

それは、強大な魔皇力収束砲撃。

 

魔皇力の結晶に蓄えられたかなりの量の魔皇力を使い、魔皇力収束砲撃を放つのだ。

 

 

サガがククルカンに退却の指示を出したと同時、カ・ディンギルと魔皇力収束砲撃が同時に発射され、激突した。

 

激突し、拮抗する。

しかし、カ・ディンギルの方が押し始めている。

 

これほどの巨大な塔に収束されるエネルギーは、月を破壊できるほどの力量を持つ。

 

いくら魔皇力収束砲撃と言えど、長くは持たない。

 

やがて、魔皇力収束砲撃を打ち破り、カ・ディンギルの砲撃が月へ向かっていく。

 

 

しかし、砲撃は月を破壊しなかった。

 

魔皇力収束砲撃によってカ・ディンギルの砲撃の軌道がずらされて、月の一部・・・斜め下のごく少しの範囲を砕くだけでしかなかった。

 

 

「破壊し損ねた!?軌道を逸らされたのか!?」

驚愕の余り、動けなくなってしまうフィーネ。

 

 

発射の衝撃で吹き飛ばされたサガ。ククルカンと共に地面に激突し、変身が解ける。

 

 

「ぐっ・・・あの魔術書、数冊しか残ってない貴重品だったが・・・まぁ良い。月の完全破壊は防げたんだから」

 

 

「兄さん!」

「お義兄様、大丈夫ですか!?」

 

「あぁ・・・サガの鎧が無かったら、即死だった」

 

直人と翼の肩を借りて立ち上がる大牙。響とクリスも、大牙の無事を確認して安心した。

 

 

大牙は亜空間からもう一個の魔皇力の結晶を取り出して、ククルカンに向けて投げる。

 

サッカーボール位の大きさである。

 

 

ククルカンはそれを口でキャッチ。噛み砕く事なく、口に加えたままだ。

 

 

「・・・頼んだぞ」

 

ククルカンは、キングからの命令を実行する。

高速で動き、カ・ディンギルの発射口へ向かう。

 

 

「あの個体は、もうすぐ寿命を迎える老体でな。

あれが、最後の仕事だ。あいつの体には、爆発の魔術式がたくさん刻まれている」

 

 

フィーネはククルカンを止めようと、ネフシュタンの鎧の鞭を伸ばすが間に合わず、ククルカンはカ・ディンギルの内部に侵入。

 

 

 

「そして、口にくわえた魔皇力の結晶を噛み砕けば、蓄えられた魔皇力がククルカンの体中に行き渡り、魔術が起動・・・」

 

 

ククルカンはカ・ディンギルの中央付近で止まり、口の結晶を噛み砕く。そして魔皇力が全身を行き渡り、魔術が起動。

 

 

体に魔術式がたくさん浮かび上がり、そして・・・。

 

 

 

 

「内部から、カ・ディンギルを破壊する爆弾になる!」

 

 

 

全てが一気に爆発。その威力は凄まじく、内側からカ・ディンギルを破壊していく。

 

 

いかにファンガイアの技術を持って作られようと、それはフィーネによるコピー。しかも粗悪なデッドコピーにしかならない。

 

本来の予定より少し頑丈になり、早く完成出来た程度でしかない。

 

 

魔皇力による内部からの高威力の爆発には耐えられない。

 

 

カ・ディンギルが一気に壊れていき、数秒で完全に崩れ去り、瓦礫の山になった。

 

 

 

「・・・・・・貴様ら・・・よくもやってくれたな!!」

 

 

フィーネが、強い怒りを抱いて直人達を睨む。

その怒りは、フィーネの表情を歪ませる。

 

 

直人、翼、響、クリス、大牙はフィーネをにらみ返す。

 

 

 

 

まだ、この戦いは終わらない。

 

 

 




次回予告


「忌々しい限りだっ!!」

「手を繋いで、一緒に!」

「暖かい歌・・・!」


第十七話 皆の心、祈りの歌


Wake up!運命の鎖を、解き放て!



月の破壊阻止、カ・ディンギルの破壊は、オリジナルの展開にいたしました。


次回は名護さんを出しますし、皆が決意を見せます。
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