紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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第十三話 少年と出会い、偶然か必然か

カ・ディンギル跡地での戦いから数日後。

 

響はカ・ディンギル跡地での戦いで魔皇力と合わせたガングニールからもたらされた力でネフィリムを倒した。しかし、その代償は大きい。

 

 

響の心臓を中心にガングニールが全身に侵食しており、その進行は速い。

 

後二・三回ガングニールをシンフォギアとして纏えば、響は全身がガングニールに侵食されつくし、死亡する。あるいは生きた聖遺物となってしまう。

 

 

この結果を見た弦十朗は、響に対ノイズ戦を含む一切の戦闘を禁止した。

 

響は本音を言うならば戦いたいが、弦十朗は心配して決めたことであるのは理解している為、了承した。

 

一応ランニングなどの筋トレはこなしているものの、以前のようなシンフォギアを纏っての訓練は不可能になってしまった。

 

 

「響、ちょっといい?」

「どったの未来?」

 

「明日、私と一緒に遊びに行かない?気分転換も兼ねて」

 

「本当!?行く行く!未来とデートだぁ!」

「そう言うと思った。特に行くところは決めてないけど、気の向くままブラブラ歩くのも悪くないかなって」

 

「もちろんOK!」

 

 

未来は響の今の事情は全て知っており、少しでも響の心の救いになればと思い遊びに行くことを提案。

 

響も未来と一緒に行ける事を喜び、即了承した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

翌日。二人とも可愛らしい私服に着替えて、二人で一緒に街中を歩く。

 

更に未来は今日の為にとお弁当を作って持ってきていた。

響と直人の為に、と花嫁修行を頑張っている未来はお弁当を作れる位になっていた。

 

 

ちなみに、現時点での料理の上手い女の子をランキングで表すと・・・。

 

 

一位、調

 

二位、セレナ

 

三位、マリア

 

四位、切歌

 

五位、未来

 

六位、クリス

 

七位、響

 

八位、翼

 

 

以上のようになっている。

 

 

「・・・・・・ッ」

「翼さん!?急に絶唱顔になっていますよどうしたんですか!?」

 

「私は・・・最下位・・・ガクッ」

「翼さあぁぁぁん!?」

 

急に絶唱顔となって倒れた翼を、必死に介抱する緒川だった。

 

 

ちなみに、元F・I・S組が上位を独占しているが、これはナスターシャ教授のお陰である。

 

直人と別れた後に、ナスターシャ教授によって料理を含む様々な花嫁修行をさせられたからであり、そのスキルの高さは響、翼、クリス、未来を上回る。

 

 

 

 

そんな事は一切知らずに、響と未来は二人で楽しい時間を過ごす。

 

 

ゲームセンターで、"幻夢コーポレーション"製のゲーム、「ゲキトツロボッツ」のアーケードゲーム版で遊んだり。

 

 

「よし!これでフィニッシュ!」

 

《GAME CLEAER!》

 

「やったー!響ちゃん大勝利ー!」

「響はこういうゲーム得意だよね」

 

 

動物と触れ合える店に入って、動物と触れ合ったり。

 

 

「うーん・・・この全体が白くて耳にリングが付いていて目が赤い生き物は・・・」

 

「響!その子に近づいちゃダメ!契約して魔法少女になっちゃダメ!」

 

「えぇ!?いやいや何の話!?」

 

 

未来によって強制的に引き離される響は、「きゅっぷい」という鳴き声を聞いた・・・ような気がした。

 

お昼は自然公園にレジャーシートをひいて二人で食べる。未来の作ったお弁当を響は絶賛しながら食べていく。

 

 

食べ終わった所で、二人は再び歩き出したのだが・・・そこで二人は、一人の男の子を見つけた。

 

ベンチに座り一人寂しそうだった。男の子が顔を上げると、涙を流した後が見える。

 

響は放っておけず、駆け寄って声をかける。

 

 

「大丈夫?何か悲しい事があったの?」

優しく声をかけた響を見て、男の子はそっと言う。

 

「お姉ちゃん・・・いない・・・」

 

「お姉ちゃんとはぐれちゃったんだ。じゃあ、私が一緒に探してあげるね。そういうわけで、ごめんね未来」

 

「大丈夫。私も一緒に探すから」

「ありがとう。あ、私は響っていうの。こっちは私の親友の未来」

 

「未来です、よろしくね。君のお名前、聞いてもいいかな?」

 

 

 

「・・・クロード」

 

「クロード君、私達が一緒にお姉ちゃんを探してあげる。絶対に見つかるから」

「・・・・・・うん」

 

男の子・・・クロードは頷いた。響と未来がクロードと手を繋いで一緒に歩く。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

今日のクロード・グラトリンは、精神状態が安定していた。

 

それを受けて外に出た姉のレティアに同行したが、レティアが少し目を離した隙にクロードはフラフラしてしまい、気付いた時には迷子になってしまっていた。

 

困っていた所に声をかけてきたのは、以前かくれんぼで遊んだ響だった。

 

自分と話がしたいと言ってきた響の事は印象に残っていたのか、彼女の事は覚えていた。

 

今は戦う気は無いが、それ以外に声をかけてくれたのを嬉しく感じ、自己紹介もした。

 

響と未来というもう一人の人間と手を繋いで一緒に歩く中、クロードは繋いだ手と胸が暖かくなるのを感じていた・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

しばらく歩いたが見つからず、休憩も兼ねて公園のベンチに座る。

未来が近くのボックスカーを改造したクレープ屋を見つけたので、三人分購入して食べていく。

 

 

「私達ね、学園祭・・・学校でやるお祭りの事なんだけど、そこでクレープ屋さんをやったの」

 

「作っては味見して作っては味見して作っては味見して・・・いやぁ、天国でした!」

 

「何で太らなかったの?」

「鍛えてますから!シュッ」

 

「ウラヤマシイ・・・ネタマシイ・・・」

「ヒイィィィ!未来が怖い顔になって黒いオーラが!?」

 

「・・・・・・(モグモグ)」

 

 

響と未来の会話よりクレープに夢中のクロード。両手でクレープを持ち、ちょっとずつ食べるその姿は小動物を思わせる。

 

「「かわいい・・・」」

 

響と黒いオーラを出していた未来も、クロードの小動物的かわいさにホッコリとしていた。

 

 

「あ、クロード君。ちょっと動かないでね」

響はポケットティッシュを取り出して、クロードの口についたクリームを拭き取る。

 

クロードはその間大人しかったが、響の顔が近かったり指の触れる感触にドキドキして、顔が赤くなった。

 

「はい、綺麗になったよ」

「・・・うん」

 

クロードは恥ずかしさから、俯きながら返事したが、少しして上目遣いで。

 

 

「ありがとう・・・」

 

小さい声だが、響にちゃんとお礼を言えた。ちなみに、クロードは上目遣いで照れているためか顔も赤い。

 

可愛い系の男の子の表情に・・・。

 

 

((か・・・かわいいい!!キュンキュンしちゃう~~~!!))

 

響と未来のハートにキュンと来た。母性本能や庇護欲などが大いに刺激され、二人は思わずクロードの頭を優しく撫でたり抱きしめたりした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

クレープを食べ終えたところで、響は聞き忘れていた事を話す。

 

「そうだ!クロード君、お姉さんの名前を聞いていい?」

 

「お姉ちゃん・・・?お姉ちゃんは・・・」

 

 

 

 

「「レティア・グラトリン」」

 

 

クロードの声に、女性の声が重なった。その瞬間、響の肩に手が置かれる。振り向くと、そこにいたのは革命団幹部の一人、レティア・グラトリンだった。

 

「あな・・・たは」

「QUEENS of MUSICの会場で、宣戦布告をした・・・!?」

 

「お姉ちゃん・・・!」

 

「そう、私よ。革命団幹部、レティア・グラトリン。クロード・グラトリンの姉よ」

 

「クロード君が、あなたの弟・・・!?」

 

「そうよ。ついでに、クー君も幹部の一人よ。装者達を廃病院で夢の世界に閉じ込めたのも・・・ね」

 

レティアの言葉に頷き、クロードはテイピアファンガイアの姿に変わった。その事実に響も未来も驚きを隠せなかった。

 

「クロード君が、あの時のファンガイア!?革命団の幹部!?」

 

 

「ま、今回はこの子の姉として礼を言っておくわ。クー君の面倒を見てくれてありがとう。

 

お礼と言っちゃあ何だけど、今日はライフエナジーを喰らう為に来たけど、それは取り消すわ。誰も襲わず、大人しく帰るわ」

 

レティアは響の肩から手を離して、響をの正面に立って響をまじまじと見る。

 

 

「ふーん、あなた、相当侵食を受けてるわね。それでも止まらない?」

 

「もちろんです。例えシンフォギアを纏えなくても、私は私に出来る事をやるだけです」

 

響はレティアを恐れること無く、正面から見つめて言う。

 

 

「・・・さっきからクー君の手を繋いで離さないのは?」

 

「私にはわかります、クロード君はとてもいい子です。クロード君と接した時間は短いですけど、それでもわかるんです」

 

「・・・・・・体を聖遺物に侵食され、クー君の正体を知って。私達ファンガイア、共存反対派の驚異を知っていて。それでも変わらないのか。

 

ネフィリムとの戦いは私も見ていたわ。あの時みたいに腕を失っても前に進むのね」

 

響は真剣な表情で立ち上がり、レティアに自身の決意を語る。

 

 

「もちろんです。例え腕が一本だけでも、残った手で誰かを救うために手を伸ばす!

 

両腕が無くなっても、足で走って駆けつけます!手足が無くなっても、言葉で誰かを励ましてあげたい!言葉が喋れなくなっても、心を届けたい!!」

 

響は恐れも迷いも無く言い切った。

 

 

"己の掲げた信念を現実にするために、諦めずに前に進む覚悟"。

 

 

これについて、響は直人の影響を多大に受けていた。

 

直人の掲げた、人間と他魔族の共存。これを現実にするために様々な困難や壁を乗り越えてきた直人の姿に、響は強烈な羨望と尊敬と信頼を抱いた。

 

直人のように、それでいて自分自身の掲げる信念を自分自身の想いで現実にしようと決意した。

 

 

直人の掲げる、人間と他種族の共存。

響の掲げる、皆と手を繋いで、わかり合えるようになる事。

 

二人の理想は、言い方が違うだけで内容は同じだった。

"手を繋ぎ合って共に生きる"。そういう事なのだ。

 

だからこそ、響が直人の影響を大きく受けるのは当然と言えた。

 

 

「・・・私が共存反対派にいるのは、クロードの為なのよね」

響の決意を聞いて、レティアは己の戦う理由を語り出した。

 

「クロードは精神崩壊状態。今日は安定しているから本来の性格で過ごせているけど・・・普段は"アレ"よ?

 

そんなクロードは、人間が支配種である今の世界では生きられない。人間は異形の存在を否定し排除する。"かつての青空の会"しかり・・・ね」

 

 

啓介や恵、嶋がいたら間違いなく「耳が痛い」と言う事を言ったがそれは事実である。

 

青空の会は人間と魔族の共存を援助する組織になったが、かつてはファンガイアを含む他の魔族を排除する組織だったのだから。

 

 

「だからこそ、私は共存を否定する。クロードが安心して暮らせる世界は、ファンガイアが支配し人間は食料として飼う・・・そういう世界だけよ」

 

 

「クロード君の為に・・・。やり方は間違っていますけど、あなたは優しいです。弟想いの優しいお姉さんです」

 

「当然でしょ。私はクー君が大好きだから」

 

 

レティアは語ることはもうない、と言うように背を向ける。クロードはもうレティアとはぐれないように、人の姿になってレティアと手を繋いだ。

 

 

「じゃあね、立花ちゃん。次会ったら戦う事になるでしょうね」

 

「・・・」

 

 

レティアは魔術でワープする・・・直前、クロードは響に向けて小さく手を振った。響も小さく手を振って別れの挨拶を済ませた。

 

ワープして姿を消したグラトリン姉弟。

その場を動かない響と未来だったが、先に声を出したのは響だった。

 

 

「・・・未来、今日はもう帰ろう。デートはまたの機会にね」

「うん・・・」

 

流石に今日はこれ以上お出かけできる感じでは無くなったので、二人は寮へ帰ることに。

手を繋いで歩く中、未来は先程の強く決意を露にした響の事を考えていた。

 

 

響は強くなった。力も心も。そんな響の隣に立つ自分は今のままで良いのだろうか?

 

以前響とケンカをした時に、直人から教えてもらった事は忘れていない。

 

「響の帰る場所を守り、響の心を守る・・・それが、小日向 未来の力であり、戦い」という事を。

 

しかし、直人との対話で無くなった筈の"力への渇望"が、先程の響を見て再び出て来てしまった。

 

 

(私は・・・どうすれば良いの・・・?)

 

未来は悩む。親友の為に力を得るべきか否か。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

戻ったクロードは、レティアと別れてアジトの自室に戻ってから、急に響と未来の事で頭がいっぱいになった。

 

出会ってから自分に優しくしてくれた。姉を探してくれた。手を繋いでくれた。

 

美味しいクレープを食べさせてくれた。口を優しく拭いてくれた。

 

優しく頭を撫でてくれた。優しく抱きしめてくれた。自分がファンガイアと知っても手を繋いでくれた。

 

それは暖かくて、レティアと一緒にいる時と同じ暖かさで・・・。

 

「ありがとう・・・響お姉ちゃん、未来お姉ちゃん」

 

 

響と未来を、新しい姉と認識した。それがクロードに、周りにどんな影響を及ぼすか・・・誰にもわからない。

 

 




次回予告


この日、レティア・グラトリンは動き出す。ノイズと水と氷の乱舞を披露する。激しく、美しく、残酷に。


第十四話 幹部出陣、水と氷の舞


己が欲の為に舞い踊り、美しく残酷な華を咲かせましょう。

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