紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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第二話 蘇る魔物、激闘の始まり

都内の博物館にて「大古代展」という化石や発掘品を展示する会の開催準備がなされていた。

 

その中でも注目なのは、ミイラの顔が出ている謎の大きな石。それを確認していた職員の後ろからファンガイアが現れ、吸命牙を突き刺してライフエナジーを吸い取ってしまう。

 

アリジゴクの性質を持つ、アントライオンファンガイアだ。

 

アントライオンはそのまま逃げ惑う人々から次々とライフエナジーを吸い取っていく。しかし、アントライオンをキックで外まで飛ばす。

 

「しっちゃかめっちゃか食べるなんて、行儀が悪いわ!」

 

アガートラームを纏ったマリアだ。マリアは開かれる大古代展について展示品の中に本物の聖遺物がある可能性を考慮して、S.O.N.G.のエージェントとしてやって来たのだ。

 

それがこの騒ぎにすぐに対応出来た理由だ。

 

マリアは歌いながらアームドギアの短剣を両手に持って一気に接近し、右手の短剣で一閃し更に体の回転を加えた連続斬撃でアントライオンに反撃の隙きを与えない。

 

しかし、その戦いに呼応するかのように石が震え砕け散り中から怪人が現れる。

 

それはミイラ男のような姿をした、マミーレジェンドルガだ。自分の体からマスクを飛ばし、近くの人間たちを次々と吸収。

 

「俺が甦ったという事は、“あのお方”が覚醒しつつあるという事か・・・ん?」

 

マミーは外でマリアとアントライオンが戦っている現場を目撃。そのまま歩いて展示会の外に出る。

 

そして背後からアントライオンを攻撃し一撃で気絶させる。マリアはマミーに聞く。

 

「新手のファンガイアか!?」

 

「ファンガイアだと?俺をこんな下等生物と一緒にするな。俺はレジェンドルガ、この地球という星の真の支配者たる種族!」

 

「レジェンドルガ!?まさかここで会うとはね・・・」

 

マリア達はクロードの誕生日の後、直人からレジェンドルガ族の概要や復活しているという話を聞いていた。

 

「我が下僕となれ」

マミーはアントライオンの顔に自分のマスクを付けて、己の同族として支配下に置く。

 

そして二体がかりで襲いかかる。

 

マリアは距離を取ろうとするが、アントライオンは素早く動きマリアの足を掴んで動きを封じその隙にマミーは包帯を鋭く伸ばし槍の様に突き刺そうとする。

 

マリアは体を無理矢理動かし、足を前に出してアントライオンを盾にして離れる。

 

マミーの放った包帯に貫かれ、アントライオンは体が砕け散り死亡する。

 

マミーはアントライオンに全く気にかけず、フンと軽く息を吐いてそのまま興冷めとばかりに転移魔術で去っていく。

 

残されたマリアは数秒周囲を警戒。何もない事を確認してから、シンフォギアを解いて駆けつけたS.O.N.G.の他エージェントと協力して事後処理に当たっていく。

 

そして、大古代展の開催中止が決まったのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

約十日後の七月下旬。学生達は夏休みに入ったばかり。

 

「あったかい物どうぞ」

 

デスクで作業していたオペレーターの藤尭に、同僚の友里がコーヒーのカップを差し出した。

 

「あったかい物どうも。珍しいね」

「一言余計よ」

 

お互い軽口を交わしつつ、二人が作業中のモニターに視線を向ける。そこには、海外の様々な場所で救護活動をしている装者達の姿が映っていた。

 

「二課がS.O.N.G.として再編成されてからは、主な任務は災害被害からの人命救助。

 

それと国連非公式だけど、共存反対派のファンガイアへの対処・・・って感じか」

 

「国連非公式と言っても、政府には斯波田事務次官や現総理のように、私達の味方になって共存反対派のファンガイアへの対処を支援してくれている方達がいるでしょ」

 

「だよな・・・ま、俺としてはこのまま無事に生きて定年まで給料貰えたら万々歳なんだけど・・・今はレジェンドルガって奴らが復活したって言うし、それを何とかしないとな」

 

藤尭がそう口にした瞬間、指令室の中に警報が鳴り響く。すぐさま二人がモニターを見て状況を確認すると、モニターに未知の反応を示している事が表示される。

 

「横浜港付近に未確認の反応を検知!」

 

友里がそう言い終わるのとほぼ同時に、謎の反応が途絶えて警報が鳴り止んだ。

 

「消失!?・・・急ぎ、司令に連絡を!」

「了解!」

 

二人は目の前の端末を操作し、先程の反応について調査を開始した。

 

同時刻。紅家に大勢が集まり、テレビの前にある机には色とりどりのお菓子が並べられていた。

 

「・・・で?どうして直人ん家なんだ?」

 

眉間に皺を寄せてそう訊ねるのは、紅家の住人のクリス。

 

「すみません、こんな時間に大人数で押しかけてしまいました」

「ロンドンとの時差は約八時間!」

 

「チャリティドッグフェスの中継を皆で楽しむためには、こうするしかない訳でして・・・」

 

クリスの問いに答える安藤、寺島、板場。そして三人以外に響、未来、調、切歌の姿もあった。

 

「ま、直人さんから許可は貰ってるし頼れる先輩ってことで!」

 

そう言って、響は笑顔でクリスに近づき、その手に持ったコップを積んだトレーを受け取る。

 

「それに、やっと夢を追いかけられるようになった翼さんと奏さん、そしてマリアさんのステージだよ!」

 

「・・・皆で応援、しない訳にはいかないよな」

 

響の言葉に、クリスもようやく難しい顔を収めて笑みを浮かべた。

 

ちなみに、直人は数日前から、とある理由で東京を離れており今は不在。友人を招く許可は電話で取ったものだ。

 

「うん、ツヴァイウィングと歌姫マリアのコラボ」

「歌姫のロンドンステージ、開幕デス!」

 

切歌がそう言った直後、テレビ画面の映像に動きがあった。立っていた響とクリスは、素早くテレビ前に設置した椅子とソファーに座り、その場に居る全員がテレビ画面に集中。

 

真っ暗な会場を、観客達が手にしたサイリウムの輝きだけが照らす。

 

万を超える人間が存在する会場内に鳴り響いた前奏と、会場の中央にある大型ライトの点灯。

 

その直後、ステージ衣装を纏った三人の歌姫達・・・風鳴 翼と天羽 奏、マリア・カデンツァヴナ・イヴが歌声を響かせながらステージの中央に現れた。

 

美しい歌声が響いた直後、一瞬にして三人の歌声はその場を支配し、観客達の心を掴み取る。

 

三人は舞いながら歌い少しして会場のドームが徐々に開き、ロンドン橋と沈みゆく太陽が現れると同時に、ステージ中央が海面と一体となった水上ステージとなる。

 

水の上をスケートを滑るように舞い踊る三人の姿は、湖の上で踊る妖精を思わせる。そして曲がサビに入ると太陽は完全に沈み、今度は夜空の星々が現れる。

 

歌姫達とタイミングを合わせ、観客達も共に歌う。次々と姿を変貌させるステージの光景も相まって、素晴らしい光景となっていた。

 

それを見ていた観客はもちろん、テレビやネットで見ていた人々も魅了し熱狂させた。

 

 

そして同時刻、横浜港近辺の真夜中の暗い道を黒いローブを纏った少女が息を切らせながら走っていた。

 

その足元に金色のコインが飛来して、金属音と共にアスファルトに着弾。

 

少女はすぐさま近くに在った公衆電話の影に身を隠し、息を整えながらその腕に抱えた箱を見る。

 

(ドウェルグ=ダインの遺産・・・全てが手遅れになる前に、早くこの遺産をシンフォギア装者に届けないと・・・!)

 

決意を再確認して少女は再び夜道を駆け出す。その様子を、すぐ近くの建物の屋根から見下ろす人影が二つあった。

 

スレンダーな体の黒髪の女と、ミイラの様な姿の怪人だ。

 

「私に地味は似合わない・・・だから次は、派手にやる」

 

女は言い終えた直後、コインを数枚指で弾くとそのコインは道路を運転中のタンクローリーのタンクを貫く。

 

更に逃げていた少女を巻き込む狙いで後輪のタイヤを破壊し、運転中のタンクローリーは制御が効かなくなり横転。

 

運転手が逃げ出した瞬間、破壊されたタンクから漏れ出たガソリンに火花が接触、それが引火しエンジンに火が及ぶとタンクローリーは爆発を起こした。

 

 

そしてその爆発によって生じた火災の事を響とクリス、調と切歌に通信で伝える弦十郎。

 

『第七区域に大規模な火災発生。消防活動が困難なため、応援要請だ』

 

火災現場に向かう為、上空を飛んでいるヘリに搭乗している響、クリス、調と切歌の四人に通信で弦十郎が現状説明をしている。

 

『付近一帯の避難はほぼ完了。だが、このマンションに多数の生体反応を確認している』 

 

「まさか逃げ遅れた人が!?」

 

『防火壁の向こうに閉じ込められているようだ。さらに気になるのは、被害状況は依然、四時の方向に拡大していることだ』

 

「じゃあこれは、意図的に起きたって事・・・?」

「どっかで赤猫が暴れていやがるのか?」

 

『響君は救助活動に、クリス君、調君、切歌君は被害状況の確認に当たってもらう』

 

「「「「了解!」」」」

 

火災現場の真上まで近づくと、ヘリの出入り口のドアを開ける。

 

「任せたぜ、響!」

「任された!」

 

響はヘリから飛び降りギアのペンダントを掲げて詠唱を歌い、ガングニールのギアを纏った。

 

響は拳で火災現場のマンションの屋根を穿ち、そこから内部へと侵入。既に火の手が上がっていて、煙で視界が利きにくい為、S.O.N.G.にナビを依頼する。

 

「友里さん、誘導をお願いします!」

『了解、任せて!』

 

そして友里の誘導に従い、壁を壊しながら最短距離で逃げ遅れた人達の所まで向かい、救助を行う。

 

そして最後の一人である少女を外に出して救急隊員に救急車に乗せてもらい無事に救護を完了。

 

一息ついた響だが、まだ火が上がっている場所を発見。万が一人がいる可能性を考えその現場へ向かう。

 

響はその現場で人を見つけた。とんがり帽子を被り、魔法使いを思わせるようなローブをきた小さな少女を見つけた。

 

十歳位の金髪少女は燃え盛るマンションの炎を目にしていた。感情の籠もっていない目で淡々と・・・。

 

「そんなところにいたら危ないよ!」

 

下から響が呼び掛けていたが、少女は全くの無反応。

 

「パパとママとははぐれちゃったのかな?そこは危ないから、お姉ちゃんが行くまで待って・・・」

 

「・・・・・・」

 

少女はようやく響の方を向いたと思ったら円を描くように緑色の魔法陣を展開させ、その中心から竜巻を発生させて響に放つ。

 

響は間一髪のところで避けるが、竜巻の攻撃を受けた地面は抉られており、突然それ程の攻撃をしてきた事に戸惑う。

 

そこにクリスから通信が入る。

 

『敵だ!敵の襲撃だ!そっちはどうなってる!』

「敵!?敵って・・・共存反対派のファンガイア?」

 

『違う!ファンガイアじゃねぇ、でも人間離れした変な女だ!』

 

それは敵襲を知らせる物だった。その隙を見逃さず少女は複数の金色の魔法陣を展開させる。

 

「邪魔だ、死ね」

 

冷たい声で宣言した少女は複数の魔法陣からエネルギー波を一つに纏めて放つ。

 

響にそれが当たると思われたその時、別の人物が響を抱きかかえ横に避難。エネルギー波は地面を抉ったが響は無事であった。

 

その人物は同じエネルギー波を少女に放つが、少女は後ろにジャンプしてそのまま姿を消してしまう。

 

「ったく、好き勝手してくれるな!」

 

響を救った人物は、背丈も顔も声も全て先程の少女と同じだった。違うのは服装で、赤いTシャツに短パンという動きやすい、ボーイッシュな服装をしている事位か。

 

少女は響を安心させるように、明るい表情で尋ねる。

 

「大丈夫か?」

「う、うん・・・って、え、あの子と同じ顔・・・姉妹?」

 

「違うって。確かにオレには妹がいるが、あれはオレでも妹でもない」

「???」

 

首を傾げる響の様子がおかしいのか可愛いのか、フフ、と笑う。そして響の顔を見て頷く。

 

「よし、ビンゴ。お前が立花 響だな。直人から話は聞いてるぞ」

 

「え!?直人さんの知り合いなの?」

「もちろん知ってるさ」

 

少女は太陽の様に明るい笑顔で自己紹介をした。

 

「オレはキャロル・マールス・ディーンハイム。紅 直人の・・・()()()()()だ!」

 

「・・・・・・・・・・・・ゑ?」

 

どう見ても十歳位の少女が直人の姉を名乗る事に、ポカンとしてしまった。

 

すると、もう一人のキャロルは少し離れた箇所から響達のいる場所の地面に結晶を投げる。それは勝手に割れて地面から何とノイズが現れた。

 

ノイズが現れた事に、響もS.O.N.G.で弦十郎達も驚き慌てている。

 

「え・・・ノ、ノイズ!?どうして!?」

 

「これはお前達の知っているノイズではない。アルカノイズ・・・ノイズのレシピを基に錬金術によって生み出したノイズの亜種だ。

 

パヴァリアという組織が作ったんだが・・・まぁ詳しい話は後だ。オレと一緒に戦ってくれるか?」

 

「うん、もちろん!」

 

キャロルの共闘の申し出に即答する響。もう一度シンフォギアを纏い、キャロルと一緒に戦い始める!

 

 




次回予告

新たな魔は、自動人形達と共に襲いかかる。それは装者達を絶望に落とすのだろうか・・・。

第三話 傀儡の舞闘、分解の兵器

結局、止まらない。世界に残る過去の悲劇の残滓は、今を蝕み始める・・・。


ーーーーーーーーーー


魔界城の王とGXの話を書くにあたって、響を助けたキャロルは味方です。

ですがもう一人のキャロルとオートスコアラーは敵です。
そして、響を攻撃したもう一人のキャロルは誰でしょうか?

これらの理由は本編で明かすので、お待ちください。
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