ボクとネトゲと黒歴史   作:ChiRu708

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ゲフェン地下ダンジョン

ゲフェンダンジョン──正式名称は"ゲフェン地下ダンジョン"であり、

ピラミッドダンジョンとは違い、地下に潜る階層構造になっている。

 

ダンジョンまでの道のりは簡単である。

ゲフェンタワー内に入り、奥に向かって南下することでダンジョンの入り口に着くことができる。

 

ちなみに道中にある下り階段は幅が狭いため、

上手く下りることが出来ずに右往左往してしまったプレイヤーも多いことだろう。

かくいう自分もいきなりこのトラップにはまってしまったのだが。

 

プレイヤーにとってダンジョンに挑戦するということは

新たな冒険の始まり、つまりは第二ステージに突入することを意味する。

 

フィールドはアクティブモンスター自体があまり存在せず、

いたとしてもそれほど出現数は多くないため、大して苦戦もしない。

 

対して、ダンジョン内はそれこそ尋常じゃないほどのアクティブモンスターが出現する。

モンスターに囲まれることなんていうことは当たり前のことであり、

今回の回避率低下の仕様変更はさらに難易度をあげてしまったことになってしまったのだろう。

 

また、このゲフェンダンジョンは他のダンジョンと違い、一層目から強力なモンスターが出現していた。

それは"ハンターフライ"という、ハエの形をしたモンスターで、

見た目は低レベルモンスターの"チョンチョン"を真っ赤にしただけだが、桁違いの攻撃力とスピードを誇る。

そんな強さとその見た目からプレイヤーの間では別名"シャア"と呼ばれていた。

 

こんなモンスターが一層目に配置されていてはとてもじゃないが狩りにならない。

そのうえ、あのArip(アリプ)がたまに遊びに来てはトレイン狩りをしていたため、

初心者プレイヤーが全く寄りつく事が出来ず、このマップは過疎化していた。

 

しかし、そんな不人気ダンジョンも今回の仕様変更と共にモンスターの配置も見直され、

地下一階からはついに"シャア"はいなくなったのだ。

それは何故だ!? それは坊や──ではなく、さすがにダンジョン入っていきなり

最強モンスターが襲ってきたら大抵のプレイヤーは嫌がることこのうえなく、

むしろこの配置変更はさっさとやるべきであった。

 

元々、"ポイズンスポア"というキノコ型モンスターが配置されていたが、

アクティブモンスターがこのモンスターだけになったおかげで

ゲフェンダンジョンの地下一階は初心者にとって大分レベルの上げやすいマップとなっていた。

 

一番の魅力はなんと言っても経験値のメインとなるポイズンスポアの数が多いことである。

このモンスターは対してHPも高くなく、防御力も低いため、ダメージも通りやすい。

経験値はそれほど高くはないにしても数を倒せばそれなりに稼ぐことができため、

今では多くの初心者プレイヤーが集まり出し、賑わいを見せていた。

 

それにしても"初心者お断り"が一変して、"初心者御用達"のダンジョンに早変わりしてしまうのだから、

この世界の神のバランスの取り方は非常に極端であると言わざる得ない。

 

まったく、神の気まぐれにも困ったものである。

 

***

 

ダンジョン内に入ると、毒キノコの群れがプレイヤーにまとわりつくように襲い掛かっていた。

その様子を尻目に奥へと進んでいく。

 

地下洞窟ということもあり、ほの暗くしっとりとした空気が漂い、

毒キノコが放つ胞子のせいなのか薄気味悪いもやのようなものが視界を悪くしていた。

それでも地面に点在する僅かに光る鉱石のような紫色の光が

ダンジョン内を照らしてくれたおかげでなんとか道は見えていた。

 

この雰囲気こそが「ああ、これがダンジョンなんだ」という良い意味での緊張感を与えてくれる。

 

一層目は洞窟のようになっており、狭い通路を抜けた先に広場がある構造である。

通路と比較して広場は特にモンスターが溜まっている場合が多く、

油断をしているとあっという間に取り囲まれてしまう。

慎重に歩を進めながらも、地下二階へ続く階段を目指した。

 

せっかく配置変更になったこの一層目で狩りをするのも良いのだが、

今回はAspdの仕様変更の試し切りが目的である。

 

もちろん"ポイズンスポア"相手でもよいのだが、このモンスターはHPがそれほど高くないため、

恐らくものの数秒で倒してしまい、以前との比較があまり出来ないだろう。

それならばと考え、強力なモンスターが出現する地下二階へ向かうことを決めていた。

 

マップの中央の入り口から時計周りにぐるりと回りこみながら

北へ向かうと地下二階へ続く階段がある。

道中、広場を二つほど通り抜けたが、既に交戦しているプレイヤーのおかげで

特に苦労せずにその場所に到着した。

 

地下二階は地下一階と違い、モンスターの質がガラリと変わる。

ソルジャースケルトンやアーチャースケルトンといった人間の骨の形をした

モンスターやグールといったアンディット系の上位モンスターも登場する。

しかし、このモンスターはATK(攻撃力)、DEF(防御力)共にもそれほど高くはなく、

せいぜい中級クラスのモンスターであるため、今の自分でもそれほどほとんど苦労しないだろう。

 

今回ターゲットとなるのは地下二階に出現するモンスターの中で、

恐らく最も強いモンスター──"ナイトメア"である。

 

"ナイトメア"は荒れ狂う馬の悪霊のような姿をし、

高HP、高ATK、高DEF共と三拍子揃った、まさに"悪夢"のような強さを誇る。

また、回避に必要なFLEEも高く、レベル80台後半ないしはレベル90台の高レベルプレイヤーが

ようやく"ソロ狩り"の対象にできる。そんな攻略難易度の高いモンスターである。

 

そんな強敵に対してまだレベル60にも満たない自分がソロで挑むというのは些か無謀であるが、

AGI特化という自分のキャラクターはFLEEだけなら既にレベル90台クラスである。

加えて、シーフはスキルによってさらにFLEEは上昇しており、タイマンなら恐らく回避可能なはずである。

 

「よしっ!」

 

当たらなければどう──という期待を込め、大きく息を吸って、自分に活を入れる。

 

そして、いよいよ地下二階へ突入する瞬間がやってきた。

地下二階へ続く階段をゆっくりと下りると、目の前が暗転する。

 

視界が開けて、僅かな光が少しずつ見えると、先ほどの洞窟のようなエリアが一変し、

広大な地下世界のような景色がそこにはあった。

 

「ここがゲフェニアの遺跡か…」

 

地下のなのにどんよりとして黒い空のようなものが辺りを包みこみ、

その雰囲気たるや、アンダーグラウンドのような暗く重厚な様相を呈していた。

 

その光景に未知なる世界への挑戦という高ぶりと好奇心が自然と湧き出し、

期待に胸を膨らませていた。

 

 

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