ボクとネトゲと黒歴史   作:ChiRu708

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ピラミッドダンジョンへ 前編

リプレさんとの口論の翌日──

 

ゲフェンのカプラ倉庫の目の前で一人、ああでもない、こうでもないとぼやいていた。

 

"ピラ4"への挑戦を決めたものの、ペアで狩りはこれが初めての経験である。

一緒に狩りをするパートナーの足を引っ張るなんていうのはもってのほかで、

ましてや一緒にいく相手はあのハルカさんである。

ただ普通に狩りをするのではなく、"カッコイイところ"も見せたい。

そんな思いから普段よりかなり早くログインし、入念な下準備に力を入れていた。

 

普段、ソロ狩りの場合、回復財として使用するのは"芋"である。

回復量は多くないが、価格も安く、また重量も軽いためたくさん持てるメリットがある。

長時間の狩りをする際にはいつも所持重量ぎりぎりまで所持しており、

狩りのお供としては非常に優秀な回復アイテムである。

 

しかし、今回の行き先は"廃人"共の巣である"ピラ4"である。

 

今までの狩り場とは違い、モンスターのレベルも高く、

"芋"などの安い回復財では、回復が間に合わない場合が十分に考えられる。

そのため、回復財は芋ではなく少し奮発して"ポーション"にするかどうかを悩んでいた。

 

回復アイテム一個あたりの"回復効率"だけでいえば圧倒的に"ポーション"の方が高い。

ポーションには四種類の色があり、白、黄、紅、赤との順に回復量が多く、値段も高くなる。

しかし、回復量に比例して、アイテム一つ当たりの重量も増えるため、

アイテム一個あたりの"重量効率"が悪くなり、長時間の狩りには向かないというデメリットがある。

 

そんな所持重量との兼ね合いを色々と思案しながらも

ひとまず、芋と黄ポーションをそれぞれ同じだけの重量分を持ち、バランスをとることで落ち着いた。

 

まあ、自分のSTRの値が高ければ、最大所持量も増えるため、

もう少し持ち歩くことが出来るのだが、それは言っても始まらないわけで。

 

そんなこんな小一時間ほどしてから、ようやくこちら(・・・)のピラ4行きの準備だけは整った。

あとはハルカさんがログインするのを待つばかりであるが、

はたして、今日はログインしてくるのだろうか。

昨日はあれから結局ログインしてして来なかったから、もしかしたら今日も──

 

そんな不安をかき消すようにフルフルと頭を振る。

 

「今日は必ずログインしてくる。」そんな根拠のない自信を持ち、

一人、溜まり場でハルカさんが元気にログインしてくるのを待っていた。

 

***

 

数分後──

 

ログインメンバーが一人しか表示されていないパーティーウィンドウを食い入るように見つめていると、

ようやく一人、メンバーがログインしてきた。

すかさず「こんばんわー」と声を掛けるとパーティー会話(チャット)返事(ログ)が流れた。

 

「あ……ちるちるさん、お久しぶりです。」

 

ログインしてきたのはラヴィさんであった。

普段からどこで何をやっているのかさっぱり分からない彼ではあるが、

こうして声だけでも聞けたことになんとなくほっとする。

 

「いやー、ラヴィさん、最近ログインしてこないから結構心配してたんですよ。」

 

「すみません、色々とやる事がありまして、こっちのキャラは少しおざなりになっていました。」

 

「そうでしたか、でもこうしてログインしてくれるだけでも嬉しいですよ。

最近は一人で──いやまあ…もう一人いるか。」

 

不意に昨日の出来事を思い出し、意気消沈する。

こちらの語感から彼は察したのか「あはは…」と苦笑いをした。

 

「それにしても今日のちるちるさんはログインが早いのですね。」

 

「ええ、ちょっと今日はダンジョンに挑戦するために、早めにログインして準備をしてたのですよ。」

 

「えっ? ダンジョンってどこに行くんですか?」

 

「一応、今日はピラミッドダンジョンの四階に挑戦しようと思ってます。」

 

「ほうほう、"ピラ4"でしたか…って ソロじゃないですよね?」

 

「ええ、もちろん。 まだそんなレベルじゃないですし、どうせならパーティーで行こうかと思いまして、

ハルカさんがログインして来たら誘おうと思ってたんです。」

 

「あ~…、そうだったんですね。 なるほど…なるほど…」

 

「あれ? どうかしましたか?」

 

「いや、えー、まあそのなんでしょう、うーん弱ったな…」

 

いつもは明快な口調のラヴィさんが途端と歯切れが悪くなる。

 

「えーと、なんかボク、変な事言いましたか…?」

 

そんな彼の態度が気になり、不安そうに尋ねてみると。

 

「いや、別にちるちるさんが悪いというわけでは…なく、

そのハルカさんが来なかったら、"ピラ4"には行かないのかなー…と思いまして。」

 

その言葉でようやく彼が何を言いたいのかを理解した。

残念だが仕方ないと思い、声を掛ける。

 

「ああ、そういうことですか。 でしたらラヴィさんも一緒にいかがですか? 

火力は二人いるほうがこっちとしても安心ですので。」

 

「あ~…えーと、僕は…大丈夫です。 ハルカさんと二人で行って下さい。」

 

せっかくの誘ってみたもののあっさりと断られてしまった。

てっきり「僕も"ピラ4"に連れて行ってくださいよ」と暗に言っているんだと思っていたが、

どうやらそれは勘違いのようだった。

 

だとすれば一体何故こんなにもラヴィさんはおぼつかない口調で

焦っているのだろう。思い切って尋ねてみると──

 

「あの──」

 

「あ~…えーと、ちょっと用事を思い出しましたので、

今日はちょっとログアウトします。"ピラ4"頑張って下さいね。」

 

質問が遮られると、それ以上パーティー会話のログが進むことなく、

彼は慌てるようにして──いや、どちらかといえば逃げるようにログアウトしていった。

 

こうして、ログインしているパーティーメンバーはまた自分一人になってしまった。

 

「一体、どうしたんだろう…?」

 

何か良からぬことを言って、彼の気分を害してしまったのだろうか。

いや、彼は自分の意見ははっきり言う性格である。

仮に自分が変なことを言ったのなら、それには対してはきちんと物申すに違いない。

 

しかし、文句一つ言わず、まるで答えに窮するようにしてた彼の態度が気になり、

心当たりを必死に探してみたものの、結局答えが出なかった。

 

さらに数分後──

 

ラヴィさんと入れ替わるようにしてハルカさんがログインしてきた。

ようやく待ち人が現れたはずなのに、気分は釈然としないままであった。

 

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