ボクとネトゲと黒歴史   作:ChiRu708

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ゼノ姐さん

"にゃんこ団"のゲストとして溜まり場に出没するようになって一週間が過ぎた。

 

溜まり場自体は復帰地点(セーブポイント)と同じ、"砂漠の都市モロク"にあり、

街の西に位置する通称"モロク酒場"の目の前にある広場を利用していたため、

狩りから戻って気軽に立ち寄れることもあり、頻繁にお邪魔していた。

そしてその都度、"にゃんこ団"のメンバーやゲストを紹介してもらい、交流を深めていった。

 

このパーティーメンバーのほとんどがレベル80台以降の中級者以上のプレイヤーで構成されていた。

 

まずはミズキさん、

レベル83の支援バランス型のお下げ髪の女アコライトで、

"にゃんこ団"のリーダーであり、マスコットであり、ムードメイカーでもある存在。

みんなからいじられっぷりから少しドジっ子な天然キャラっぽいところがあるが、

気遣い、愛想、面倒見など色々な面でバランス感覚に長けているため、

なんだかんだで大人な様相を醸し出しているプレイヤーである。

 

そんなミズキさん相方であるエスはレベル80のバランス型の赤髪の剣士。

本人はステータスは失敗したと嘆いて、今は別キャラクターを育成してるが、

ミズキさんと公平狩りをするため、結局はメインキャラとして動いている。

感情に左右され、猪突猛進型の行動が思いつきで先走るため、よくミズキさんに迷惑をかけている。

しかし、そんな向こう見ずだが、ある側面ではとても熱血漢溢れる性格が

時として皆を励ましたり、勇気づけてくれることもあり、自分はそんな彼に救われた一人である。

 

さらに、ミズキさんのリアルの友人であるkyou(キョウ)さんもメンバーの一員であり、

レベルは分からないが恐らくエスと同じぐらいの強さを持つ青髪の女剣士である。

あまり会話をせず、物静かで落ち着いた雰囲気が漂っているが、

なんとなくこのパーティーを遠くから俯瞰しながら様子を見ている気がしてならない。

 

他には男マジシャンのChristopher(クリストファー)さん、

一匹狼で寡黙な男剣士のMuramasa(村柾)さん、

喋り出すとネタに走りまくる男商人のRevery(リベリー)さん、

といったバラエティに飛んだパーティー構成となっている。

 

また、自分と同じようにゲストとしてこの溜まり場を訪れるメンバーもいる。

 

そのうちの一人がzenots(ゼノ)で、レベル80後半の金髪の女シーフである。

同じ職業ということもあり、話が合うことも多いのだが、

フレンドリーで姉御肌な彼女は色々相談にも乗ってくれるよい先輩である。

その性格のおかげで多くのプレイヤーとの交流があり、とても顔が広い。

また、"迷宮の森"と呼ばれる難関ダンジョンを狩り場にしているだけあって、その強さも相当なものである。

なお、"さん"付けは禁止されてしまったので呼び捨てである。

 

そして、もう一人のゲストがとんでもないプレイヤーで

()リーダーのエルドラドが以前、目標としているプレイヤーに挙げていた

ケイオスサーバー四大VIT剣士の一人である──Gelt(ゲルト)さんであった。

彼は"ピラ4"を主戦場としていて、その強さ…いや、堅さから

どれだけの数のモンスターに囲まれようとも決して倒れることはなく、

昼夜を問わず"ピラ4"で数多のモンスターを打ち倒していたことから

"ピラの守護神"という二つ名がついていた。

 

そんな有名プレイヤーも在籍するこの溜まり場では、他にも多くのプレイヤーが訪れ、活気に溢れていた。

いつ顔を出しても誰かしらが座っていて、そこでは和気藹々(わきあいあい)とした会話が繰り広げられていた。

 

にゃんこ団のメンバーは基本的にはソロでの活動が多く、

唯一ペアで狩りに出掛けているのは相方関係のエスとミズキさんぐらいで

大人数でどこかに出かけたりといったことはほとんどせずに

各自の狩りが終わったら溜まり場に集結するという形態を取っていた。

 

今までとほとんど変わらない馴染み深い、このスタイルは今の自分にとっては過ごしやすく、

心を落ち着けるには最適の居場所だった。

 

「それにしても何故(なにゆえ)、"にゃんこ団"なんだろう…。」

 

──その謎を解くことは永遠になく、闇に葬られた。

 

***

 

ある日、同じシーフ仲間のゼノさんと職業(シーフ)の話をしてたときに

こちらのステータスに興味を持ったのだろうか、色々と質問攻め合った。

 

「しっかし、そんな偏ったステじゃレベル上げとかどうしてるわけ?」

 

「さすがにこのステじゃもうずっとゲフェン地下一階でキノコ狩りですね…」

 

照れくさそうに苦笑いをすると、ゼノが苦虫を噛み潰したような表情で若干引き気味になる。

 

「うげぇ…それは辛くない?…ちょっとはSTRに振ったらどうなの?」

 

「まあ、それも少しは考えています。だけど今はとりあえずAGI99(カンスト)に向けて我慢しようかなぁと。」

 

「マゾいねぇ…まあ、でも、ワタシはそういう考え方は好きよ。

こだわりってのは大事にした方がいいに決まってるしね!

まあ、ワタシのシーフはテンプレ型だから説得力ないかも知れんけど。」

 

ゼノさんの言うテンプレ型というステータスは以前、

ナイトメアと戦った際に助太刀をしてくれた白米さんのようなステータスで、

攻撃面ではSTRを高くし、防御面ではAGIを少し低めにして回避性能をスキルで補い、

残りを各ステータスにバランスよく配分するといった形である。

攻撃スピードは多少落ちるものの、命中率、耐久性能、クリティカル率など隙のない強さを誇り、

シーフをメインとするプレイヤーの多くがこの"テンプレ"型を目指していた。

 

テンプレを没個性と揶揄すれば聞こえは悪いが、

狩りをするのにはテンプレほど強いステータスはないわけで。

ステータスや装備以外でキャラクターに個性を持たせることが出来ないところが

まだこの世界が発展途上であるということも伺える。

 

「でも、ゼノは十分強いステータスだと思うよ。ボクなんて(ナイトメア)にたったの"1"ダメージだからね。」

 

「うわぁ…それだとナイトメア倒すのにどんだけかかんの…。」

 

「さ、さあ…、何せ倒したことないですし…。」

 

その言葉にゼノさんはふいに視線を下げ、その場で考え込んだ。

そして何かを思いつくと直ぐに顔を上げ、口を開いた。

 

「よしっ! じゃあ、倒しにいこうぜ!」

 

「…えっ?」

 

と訊き返すと彼女はこちらの意思決定を無視して話を進めだす。

 

「アタシ、ちるっちがナイトメア倒すところ見てみたいもん。 んじゃ、今からゲフェンね。決定ー!」

 

突然の彼女の思いつきにたじろぐ。

知り合ってまだ十日程度というのに彼女の強引な性格は重々知っていた。

それが自分の身に火の粉となって降りかかってこようとは…

 

「んー?イヤなん?」

 

覗きこむ目がまるでヤンキーのよう座っているため、諦めて要求に従うことにした。

 

「は、はい…わかりました! でも…囲まれたら助けてくださいよ?」

 

「おっけー!んじゃま、いっちょデートとしけこみますかね。」

 

嬉しそうに準備を始めるゼノさんの後ろで大きくため息をつきながらヤレヤレと嘆いていたが、

久しぶりに誰かと狩りにいくことに少しだけワクワクしていた。

 

こうしてこの強引すぎる狩りの誘いに巻き込まれ、二度目のナイトメア退治に向かうことになった。

 

この男勝りのような豪快な性格はなんとも言えないが、

きっと中身は自分より年上のおねーさんなんだろうなぁと

持ち前の"リア女レーダー"を使って勝手に想像していたのであった。

 

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