ボクとネトゲと黒歴史   作:ChiRu708

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ナナとハチ

広場は多くのプレイヤーが眼光炯々(がんこうけいけい)とした威圧感を放ち、不穏な賑わいを見せる。

嵐の前の静けさであろうか、誰一人として口を開かずに真一文字でかみ締めながら、

"そのとき"を待っていた。

 

その様子をまったくもって場違いなレベル63のシーフが一人、

広場の端っこでポツンと腰を下ろして眺めていると、西の方角から暗闇を掻き分けるようにして

二人のプレイヤーが広場にやってきた。

 

「いやぁ~今日は結構頑張ったねん~。でも、もうくたくたん~。」

 

「うふふ、ナナさんお疲れ様。少し休憩にいたしましょう。」

 

その二人は座る場所を探すため、周囲を見渡すと「あっ」と何かを視界に捕らえた。

そのうちの一人が、ボス待ちのプレイヤーの間をスルスルと抜け出すと、

タタタっと小気味よく足音を立てた。

 

やがて、足音が止まると、丸い帽子を被ったポニーテルの女アーチャーが目の前にいた。

 

「こんばんわんー、ちるちるさん、昨日ぶり~?」

 

彼女はこちらの眼前に前のめりになりながら顔を寄せると、親しげに挨拶をしてきた。

その直後、女アーチャーの後を追ってきた、もう一人プレイヤーである

銀髪の女剣士がゆっくりとこちらに近づく。

 

「ごきげんよう。ちるちるさん。」

 

突如現れたこのペアに、照れくさそうにしながらも挨拶を返す。

 

「こんばんわ、ナナさん、パプチーさん。」

 

卑屈な気分になりかけていたところにようやく"顔見知り"に現れ、ほっと胸をなで下ろす。

しかし、"顔見知り"とは言っても、出会ったのは実は昨日が初めてである。

 

きっかけはもちろんナイトメアとのタイマンの後で、

自分に興味を持ってくれたnana.a(ナナ)さんに話しかけられると

彼女の気さくな性格もあいまって、自然と会話(チャット)も弾んだ。

 

その後、ナナさんの相方のPaputy(パプチー)さんを交え、

夜遅くまで会話(チャット)を楽しみ、親交を深めていったわけである。

 

その話の流れで彼女達のパーティーにも誘われたが、

今の事情をありのまま話すと二人とも「それじゃあしょうがないね」とあっさりと引いてくれた。

 

そんな昨日の出来事をきっかけに知り合ったナナ&パプチーのペアであるが、

女キャラ同士なのに相方関係らしく、今日も二人仲良く狩りを楽しんでたようだった。

 

それにしてもゼノさんはしきりに二人からのパーティーの勧誘に

『せっかく綺麗なお姉さん達からのお誘いなのに勿体無い~』とか、

『ちるっち、ハーレムを作るチャンスだぞ!』とか、

『据え膳食わねばなんとやらだ!ヤっちまえ!』などと終始言いたい放題であった。

 

確かに、二人の会話の節々からは面倒見の良い、大人な女性のイメージを勝手に抱いていたが、

実際のところは踏み込んではいけない世界であるため、確認するような真似はしなかった。

 

「おとなり、しっつれんー。」

 

「お隣よろしいかしら?」

 

「あっ…はい、どうぞどうぞ。」

 

挨拶も早々に彼女達は疲れた様子でゆっくりと腰を下ろす。

すると、もの凄い違和感──というか圧迫感が襲い、途端と自分の周囲が窮屈になる。

 

「あの~…」

 

「ん~?どうしたのかなん~?」

 

「いかがいたしました?ちるちるさん。」

 

「あの~…何ゆえ、ボクはお二人に挟まれてるんでしょうか…」

 

二人は何故かこちらの座ってる場所の両サイドを挟むようにして座り込んできた。

 

「い~じゃん、男の人はこうしてあげた方が喜ぶらしいよんー。」

 

「あらあら、ちるちるさんは両手の花にはご不満ですか?」

 

「いえ、良し悪しを聞いているわけでは…そのなんというか…」

 

必死になって身を縮こませ、二人に触れないようするも、二人はその抵抗を簡単に突破してきた。

 

「えっ…!?」

 

何故か、腕を絡めてくるナナさんとパプチーさんに慌てふためく。

ゆっくりと這うように腕の周り進むその彼女達の腕に

目を瞑り必死にその感触を堪えようとしたが、こちらの心臓の高鳴りが止まなくなり、

限界を迎えようとしたその瞬間──。

 

「はい、じゃあ、おしまいん~!」

 

二人は同時にぱっと手を離した。突然失った両腕の感覚を確かめるように

瞑っていた目を恐る恐る開けると視線の先にはしてやったりとした表情のナナさんの姿が映った。

 

「あはは、ちるちるさんって意外と純情なのかなん~?」

 

「ふふふ、ナナさんも悪戯(いたずら)が過ぎますよ。」

 

「なっ……」

 

すっかり手玉に取られてしまったことで頬を赤らみ、耳の先まで浸透する。

途端と恥かしくなり、顔を伏せるも──

 

「おねぇさん、そんな純朴なコは嫌いじゃないよんー」

 

と耳元で囁くと、ふーっと息を吹きかけられた。

 

直後の取り乱しようはご想像の通りである。

 

 

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