ボクとネトゲと黒歴史   作:ChiRu708

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ロールプレイイング

このゲームの出来ること。

 

それはモンスターを倒し、経験値を手に入れることでレベルが上げること。

そしてモンスターから入手したアイテムを売買することで

通貨(ゼニー)を手にし、さらに強い装備やアイテムを揃えることで強くなること。

さらに今度はより強いモンスターを求め、冒険をすること。

 

まさにどこにでもあるRPGそのものである。

 

そしてRPGには決められたストーリーに沿って冒険を進めるといずれエンディングに辿りつく。

 

しかし、MMORPGの多くはプレイヤーの最終目標であるエンディングがないのだ。

このROの世界においてもご多分に漏れずエンディングは用意されていない。

つまり最終目標はプレイヤー自身が決め、選択しなければならないのだ。

 

では仮にレベルやステータスがカンストしたり、

強力なモンスターを倒し、希少なレアアイテムを入手することを最終目標に設定し、

見事に成し遂げたとしよう。果たしてそれで冒険を終わりに出来るのだろうか。

 

大抵のプレイヤーはそのままなんとなしに今いる世界に生き続けるだろう。

そんな日々をただ繰り返していたら、いずれは飽きがやって来る。

 

それを防ぐにはゲームシステムによって用意された目標だけではなく、

ゲームをより楽しむための何かの目的を用意するといった違った楽しみを見出す必要がある。

 

その違った遊び方の一つとして思いついたのが"ロールプレイング"である。

 

何故そんな、一般人からするとドン引きしてしまうような遊び方を思いついたのだろうか。

 

それはこのROを始める前にはまっていたPSOに理由がある。

PSOはROと違い、MMORPGというよりももう少し規模が小さいMORPGというジャンルのゲームだ。

ロビーと呼ばれる共通のエリアはあるものの、そこからは個別に部屋を作り、

その中でオンライン上のゲームを楽しむがMOであるPSOの特徴である。

 

そんなPSO時代に自分はは黒髪のポニーテルの髪形をした、

身長の小さな女エルフの格好でプレイしていた。

 

口調も女言葉を徹底しており、語尾を『~』などと伸ばしたり、

『♪マーク』や『^^(ニコニコ)』を駆使し、

いかにも女性のプレイヤーらしい振る舞いをしていた。

 

そう、いわゆるネカマプレイである。

 

最初はなんとなく、男口調が女キャラクターに合わないことに違和感があり、

それならばオンラインゲームというバーチャルの世界において

キャラクターを演じることもゲームを楽しむ要素の一つであると考え、

思い切って初めてみたのがきっかけである。

そしてこれが思いのほか受けが良かったのだ。

 

プレイしてる側から見ても自画自賛できるほど

可愛く女らしいキャラクターを完璧に演じながら

PSOというバーチャルの世界の住人になりきっていた。

 

そんなネカマプレイにはまっていたある日、

一緒にプレイをしていたフレンドからまさかの愛の告白をされてしまった。

もちろん、中の人の性別を話したことは一度もない。

なるべくリアルの話題に触れることも避けてたし、

あくまでPSOの世界の住人として接していたに過ぎない。

 

そんな、自分自身で楽しむために始めたネカマプレイが

完璧だったゆえに大きな勘違いを引き起こしてしまったのだ。

 

そうは言ってもその告白してきた男は、

ことある毎にリアルの出会いを求めてくるような軽薄な"ヤロウ"で、

「写真交換しようよ」とか「リアルで会おうよ」などとしつこく付きまとっていた。

最初はうまく誤魔化していたのだが、

彼はいよいよ逃げ場を作らせないための強硬手段に出たのだった。

 

それがこの愛の告白である。

 

「みちるちゃん・・・オレ、君の事が好きなんだ!も、もし良かったら電話番号を教えて!」

 

言うまでもないが、ここでいう"みちる"とは自分のことである。

ちなみにこの名前の由来も飼っているもう一匹の牝猫の名前で、

女っぽい名前が思いつかずに仕方なくつけただけである。

 

そんなわけでせっかく勇気という名の下心満載の告白には物理的にも生理的にも出来るわけがないので

ここまでしつこいようならもういっそのこと正直に正体(性別)をばらす方が

変に付きまとわれなくて楽なのかもしれないと考えた。

 

しかし、ここまで徹底して完璧なキャラクターを演じてきたのに

たった一人の軽薄な出会い目的のプレイヤーにそれが汚されるのは我慢ならず、

彼の告白に対して"イエス"とも"ノー"とも取らない選択をした。

 

そう、それは正体を告げずに彼の目の前からいなくなることだった。

こうすれば、彼の思いは届かないにしても、妄想の中に"みちる"という存在はあり続けるし、

何よりも自分が作り上げてきた完璧なキャラクターが汚されずに済む。

 

長い時間かけてきた遊んできた世界だったし、

それなりに労力を費やしたので思い入れもあったが、あっさりと捨てることが出来た。

ネットゲームで築き上げてきた世界や関係なんて崩れるときはこんなにも脆いものである。

 

その後、この事が原因でネット上でハンドルネームを公開するときや

アバターを選択する際には必ず男と分かるよう意識するようになった。

と同時にネットのようなバーチャルな世界にリアルの世界を持ち込まないことを徹底した。

もちろんこのルールは画面の向こうにいる相手に対してでもある。

リアルとの境界線を守り、必要以上に他人のリアルの領域には踏み込まないこと。

これがPSOで起こった出来事で学んだ、鉄の掟である。

 

ロールプレイングは自らに課したバーチャルの世界での掟を守るための処世術でもあり、

この世界をより楽しむために必要な一つの遊び方なのである。

 

そして、ROという世界において"ちるちる"は一体どういうキャラクターであるべきなのだろうか。

 

最初にシーフという職業を決めた理由の一つに"ちるちる"がナンパ猫だった点がある。

であれば、同様にROでの"ちるちる"の性格はナンパキャラで良いのではないだろうか?

 

ナンパな性格というキャラであれば、気軽に話しかけることは造作もないし、

自らから進んで話かけるようにすればコミュニケーション能力の向上にも繋がる。

そして何よりもロールプレイを楽しむうえで大切である、

"自由にキャラクターを構築できる"点がこの設定の一番のメリットでもある。

 

無論、"ヤロウ"みたいにしつこく迫ったり、リアルに出会いを求めたりということはしない。

あくまでもこの世界で"ちるちる"というキャラクターを演じ、

楽しむための設定であるということを肝に命じる必要があるだろう。

 

そして、もう一つ大事な設定を忘れてはいけない。それはキャラクターの口調である。

 

MMORPGをする上で会話(チャット)は欠かすことの出来ないコミュニケーションの一つである。

話し方一つでキャラクターのイメージというものが作られてしまうため、

ここの設定は間違えてはいけない重要なポイントである。

 

世間一般での男であれば当然一人称は"オレ"であるが、

しかし、ちるちるの髪型である"栗毛"の見た目はどうみてもショタっぽくて弱々しい。

そのため、"ボク"という一人称の方がしっくりくるし、何よりも可愛らしくてこっちの方が好みである。

まあ、PSOのときに演じていた"みちる"も"ボクっ子キャラだったため、

慣れているというのもあるのだが…

 

こうして完成した"ちるちる"というキャラクターは

ナンパで女好きな性格のちょっと可愛いボクっ子キャラということになった。

 

しかし、この複雑怪奇な設定を完璧に演じきれる自信は─

 

…まるでない。

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