ボクとネトゲと黒歴史   作:ChiRu708

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ドッフルギャンガフフフフフフフフ

いつもの狩りを終えて、

今日も沢山のプレイヤーで溢れかえったゲフェンダンジョンの広場へやってきた。

 

最近はレベルも底上げされているせいか普段目にしないプレイヤーもちらほら見える。

 

ダンジョンツアーを目的にパーティーで来ていたり、

始めてきたであろう、初心者プレイヤーの初々しい姿などもあり、

なんだか昔の自分を見ているようでとても懐かしい気分に浸っていた。

 

とはいっても大部分はボス厨達の溜まり場であり、

この辺は相変わらずといったところであろうか。

 

ついこの前まではここに来る目的は"狩り"ではなく、ほとんどが大道芸の披露が目的だったが、

弓を使って戦えるようになってから、ようやくまともに狩りができるようになった。

 

そしてレベル99までどこで過ごすか考えたときに

多くの時間をゲフェンで過ごしていたという愛着があったのか、

特に迷うこともなくゲッフェンダンジョンを最終狩場として選んだ。

 

最近では「ゲフェンの珍速シーフ」という二つ名で噂され、ちょっとした有名人になってしまい、

ツアーで来ているプレイヤーからお願いされ、例の大道芸を披露することが多くなっていた。

 

Tohya123:おっ、来たな有名人。

Just Like Heaven:やあ、ちるちる君。

Mari!KoDoMo!:こんこんーばわばわー。

ray#:昨日ぶり~。今日も精が出るね~

 

広場に来るとすぐにたくさんの知り合いが声をかけてくれる。

いつもどおり一人一人に丁寧に挨拶を返すとすぐに雑談がはじまり、

日々の狩りの進捗やたわいのない世間話で盛り上がる。

狩りに疲れるとこうした雑談はいい気分転換になるため、積極的に皆との会話に参加していた。

 

Nimda:そういや、今日のDOP時間知ってる人いる?

ChiRuChiRu:すみません。ボクは分からないですー。

Rachel:まあでも時間になったら誰か飛ぶでしょ。

Kurofu:前回倒したのって誰なん?

Fast:暗殺っぽいね。どうせムキ辺りが倒したんじゃない?

 

DOPは人気のMVPボスのため、毎日のようにプレイヤー同士による争いは起こっていた。

特に会話に上がったmukky(ムキ)やWhiteMoon(ホワイトムーン)の二人はこのサーバー屈指の廃アーチャーもあり、二人ともほぼ毎日のようにDOPに張り付いていたたため、彼らを出し抜いてMVPを手にすることは容易ではなく、競争率は激化の一途を辿っていた。

 

そんな殺伐とした環境に身をおくことに慣れて無いというか、

駆け引きを含めた争いを苦手としてるため、ボス狩りにはあまり興味を持てず、

MVPアイテムはコツコツお金を貯めてから入手しようと考えていた。

まあ、いつになるかわからないのだが。

 

Fast:ところでちるちる君はボス狩りとかしないん?

ChiRuChiRu:いやーボクは争いごとがあまり好きじゃないので…

Fast:へー変わってるね。欲がないというか。

"rein":でもやっぱり一応はシーフなのでダマスカスはほしいよね。

ChiRuChiRu:まあ、欲しいですが…やはり競争率が高いのは…

Chorux:てか、ボスなのに簡単に狩られすぎだよなー……

pika:確かに。ソロ倒される"ボス"って雑魚モンスターと変わらんやん。

kaname00:でも私は仮にPTでボスレアドロップしたら分け前とかで揉めそうだからイヤだな~……

Nimda:だよねー。自分で使いたいアイテムだってあるし、お金に変えて分配するのはダルイよ。

Kurofu:あー、あと横殴りしてくるやつウザイね。最近Chikapo(ちかぽ)のヤツがかなり酷いよ。

Fast:つってもボスは一応横殴りOKなわけだから、仕方ないけどね。

"rein":でもファーストアタックとったらほとんどMVPとれるんじゃないの?

Chorux:いやいや商人を甘くみたらいかんぜよ。メマーなら結構簡単に捲くれるぜ?

Kurofu:ふーん。まあ、オレは横殴りはしないかな。揉めると面倒だし。

 

各々、現行の"ボス狩り"に関しては皆、様々な意見を持っており、

徐々に雑談から議論になり討論になってきた。

元々ボス狩りなんて縁のないことだとはなっから決め付けていたため、

彼らの交わす主張にはほとんど傍観者のように聞いていた。

 

「…だからー!そうじゃないんだってばー!」

 

「いやいや、その考えは間違っている。」

 

がしかし…会話はさらにヒートアップしてきており、

いよいよ収拾がつかない状態になってきた。

 

「あ、あの……すみません。そろそろ自分は狩りを再開してきます。」

 

申し訳ないが争いに巻き込まれるのはごめんであるため、狩り向かうことにした。

白熱しすぎた口論に巻き込まれずに済んだことにほっとしながら、

ダンジョンの奥にある廃墟へと向った。

 

***

 

ゲフェニアの廃墟のエリアは壁に囲まれていてる。

入口は西と東二つあり、いつもどおり、西門から廃墟エリアに進入した。

廃墟エリアは文字通り廃れた建物がいくつも並んでおり、中には教会らしき建物も存在する。

 

エリアの南東には地下三階へ向かう階段もあるが

未実装のため奥の階へは進む事ができない。

つまりここはゲフェン二階の出口であり、そして行き止りなのである。

また、このエリアはマップの中で最も大きい広場で、

モンスターも沸きやすいため、狩りをするときは必ずここを通る。

 

ここを掃除した後は再び入口に向かって引き返しながら、

道中のモンスターを倒していくといった具合に周回を重ねるのが

どこのダンジョンにおいてもいえる狩りの基本である。

 

そしていつもどおり、廃墟に溜まっているモンスターの掃除をはじめた。

レベル90にもなると弓の攻撃はもはや中堅アーチャークラスのダメージを叩き出す。

シーフの使う弓は本職よりも攻撃速度が遅いという欠陥があるにせよ、

珍速型であればそれも気にならない。

 

よもや非力なシーフがここまでの強さを手に入れることが出来たのは

ひとえに先人達の気づいてきた知恵や経験の賜物であることはもはや言うまでもないだろう。

 

「ヒィイイイイイイイン!」

 

などと言ってる間に二匹のナイトメアと交戦中に

さらに追加で三匹の別の雑魚モンスターが横沸きした。

 

余裕だった顔が少しだけ歪む。

さすがに五匹に囲まれるとシーフの回避性能も損なわれてしまう。

 

シーフにはアーチャーのダブルストレイフィングや剣士のバッシュ、

そして商人のメマーナイトといった瞬間的火力的スキルがない。

 

そのため、交戦中のモンスターの数を少しでも減らすよう

弱いモンスターを優先的に殲滅するのが囲まれたときのセオリーである。

 

他にも囲まれるリスクを避けるために壁を背にして戦ったり、

狭い場所に誘いこんで各個撃破するといった

AGI型の職業であれば誰しもがやることをきっちりとやることが大事である。

 

ようやく一匹目が断末魔をあげると焦りの色は顔から消え、"余裕"を取り戻した。

そして続けざまに二体目、三体目と異界送りにした後、

残りのナイトメア二体をゆっくりと料理することにした。

 

「ヒィイイイイイイイン!」

 

ナイトメアの眉間を貫くと同時に目の前を覆っていた巨大な影が消えた。

同時に視界から敵の姿は消え、辺りから敵の気配を感じなくなったことを確認すると、

誰もいない廃墟のどまんなかで「ふー。」と額の汗を拭った。

 

こういったピンチは長い時間狩りをしていれば何度も訪れる。

辛く苦しいことではあるが、ピンチ切り抜けたときの爽快感は

なんとも言いがたいものがあるし、こういった緊張感を持ちながら狩りするのは

高いモチベーションを保つには最適でもあった。

 

そして廃墟の掃除終え、次のエリアに向かおうと今度は東門に向かって歩き出した途端──

 

「ヒュンヒュンヒュンヒュン!」

 

不可解な風斬り音が自分の直ぐ近くなら鳴り響き始めた。

 

「ん…?なんだこの音は…」

 

薄暗い闇の中で響き渡る”それ”はスプラッタ音のように思えて思わず身構える。

 

──次の瞬間。

 

「ぐああああっ!」

 

同一のリズムを刻んでいた風斬り音の一つが「ザクッ!」と

肉を抉るような気持ちの悪い音を鳴らすと、自分のHPが削られた。

 

「斬られた!?」

 

その音は剣士が繰り出す斬撃音であることは他ならない。

そして再び鳴り響く風斬り音を頼りにようやくその音の発生場所がどこにあるのか気づいた。

 

そう、その音はさっきから自分の目の前で鳴り響いていた。

 

すぐに気づけなかったのはダンジョン内が暗闇に覆われているせいもあるが、

大きな原因はコイツのせいである。

 

見た目は金髪の男剣士の姿をしているが、闇の中に溶け込むぐらい透けている。

そのため目を凝らさないと気づくのがとても難しい。

 

この薄気味悪い音の正体、それは──

遥か昔、災厄によって地下に沈んでしまった都市ゲフェニアを徘徊する魔族の悪霊であり、

そしてこのゲフェンダンジョンのボスである

 

──ドッペルゲンガーであった。

 

 

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