仮面ライダークウガ-白の執行者-【完結】   作:スパークリング

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こんにちは。
昨夜は本当にすみませんでした。というか、バッドエンドを見てみたいと言われて驚きました。完結……トゥルーエンドを書き終えてから、バッドエンドのほうも書いて行きたいと思います。

コメントも100を超え、お気に入り件数も800人に迫り、しかも投票者数も100人に迫っています。まさか、ここまでヒットするとは思いませんでした。
皆さん、本当にありがとうございます!


第11話 『影響』

 この日、東京全体は騒然としていた。

 ある人間がとある掲示板に張られている写真の人物と同じというだけで、街中を行く人々は遠巻きに冷たい視線をその人間に向けながら陰口を叩いている。

 

「(くそ……俺はしっかり罪を償った。なのにどうして……)」

 

 その視線の的になっている男はフードを深く被って心の中で毒づく。

 男は過去高校生のとき、無免許で車を運転し、そして事故を起こして相手ドライバーの右脚を失わせている。しかし、年齢と過去何回も運転を繰り返していたことにより運転の技術があったことが裁判で認められ罪が軽くなり、少年院に少し入れられた程度で済んだ。罪が軽くなってラッキーと、心の中でガッツポーズをしたのをよく覚えている。そのツケが、今になって巡ってきた。

 未確認生命体第46号。

 社会の中に紛れ込んでいる『悪人』ばかりを狙う未確認生命体。その第46号が立ち上げたスレッドに、男の顔写真と名前が載ってしまったのだ。

 掲載者は右脚をなくした相手ドライバーの息子だ。

 右脚をなくしたドライバーの男は、なんと野球選手だった。補欠とはいえ、彼の夢だった誇りに思っている職業だった。そんな父親の夢を一瞬で奪われた。父親はもういいと言っても、息子はそうは行かなかった。

 許せなかったのだ。父親の夢を奪われ、しかもその事故を起こした犯人は少年法に守られてまともな判決が下されなかったことに。いつか復讐してやる。そんなことを思った矢先に現れたのが第46号だった。

 

「……もう、ダメだ」

 

 男の心はついに折れた。耐えられなくなったのだ。自分を見つめる、赤の他人の冷たい重圧に。例えフードを深く被っても、一度気付かれてしまったらもう隠せない。フード越しに聞こえる陰口、自分に向けられる冷たい視線、カシャっと誰かが偶然持っていたカメラで撮った音まで聞こえる。

 ふらふらと、男が向かったのは今自分が働いている職場でなく、近くにあった警察署だった。その警察署には……他にも何人もの人間が訪れていた。

 

 

     ――――・――――・――――

 

 

 場面は変わってとある高校。

 ここはとある女子校だった。

 偏差値も高く、ここを出て東大へ進学した学生も多い、近所でも親たちの間でも評判の女子校だ。

 しかし、そんな人気の学校にも闇がある。それは……

 

「ったく、なんだってのよ……」

 

 そこへと通う1人の女学生。

 彼女は朝から数々の生徒の視線の的となっていた。この女学生が知っている顔も、知らない顔も、自分のことを見てなにやらひそひそと小声で話をしている。

 その視線の正体は、この女学生もわかっていた。わかっていたからこそ、怒りが頭の中に巡っていたのだ。

 校舎に入って上履きに履き替え自分の教室に入れば、またそこでも視線の的。しかも今まで道中で来た視線とは少々異なり、そこには哀れみの感情もプラスされ、この女学生の怒りを更に掻き立てる。

 ズカズカと教室に入った女学生は自分の席に荷物を乱暴に投げ、そのまま窓際のほうに座っている眼鏡をかけたクラスメイトの胸倉を掴んだ。

 

「あんた……あんたでしょっ!?」

「なっ、なんのことですか、矢田さんっ」

「惚けないで! あの掲示板に書き込んだの……あんたなんでしょっ、三上!?」

 

 無理矢理立ち上がらせた女学生……矢田は、眼鏡のクラスメイト三上を窓に叩き付けて詰め寄る。あの掲示板とはなんなのか、それはこの2人のやり取りを聞いていたクラスメイトの全員が知っていた。

 

「しっ、知りませんよっ! どうして私があんなことをっ!?」

「そんなのあんたしかあんな書き込みするやつ、いないじゃない!」

「わっ、私は違いますっ!」

「嘘言うんじゃ――」

「矢田! 矢田はいるか!」

 

 いよいよ矢田が三上を殴り飛ばそうとしてもおかしくないほど、剣呑な雰囲気になったところでタイミングよくこのクラスの担任が教室に駆け込んできた。

 

「なによ、先生。今取り込み中なんだけど」

「おおっ、よかった! 家から出たと聞いたときには焦ったが……無事に来れていたんだな! よかったよかった……。あの子ですよ」

 

 ほっとした様子の担任は、ドアの影に立っていた2人の男を呼び、矢田を示した。

 「わかりました」と片方の男が短く言うと、2人は三上を掴んでいる矢田のほうへ少し足早に向かう。慌てた様子で、矢田は三上を解放してその2人を見た。

 

「矢田美穂さんですね?」

「そ、そうですけど……」

 

 確認をしたもう片方の男は、胸ポケットから……警察手帳を取り出した。

 

「警察の者です。あなたを保護しにきました。署までご同行、願いますか?」

 

 

     ――――・――――・――――

 

 

 時刻は午前7時12分。

 警視庁へ向けて走る銀色の覆面パトカーの中。

 運転する桜井と、とある高校の女子生徒の隣に座る杉田はほっとしていた。

 この女子生徒の家に向かって「出かけた」と言われたときには焦った。もし掲示板を見て第46号から逃げるために姿を眩ましてしまっていたら、保護することは困難。もし東京のどこかに隠れているとしたら、第46号の格好の的になってしまうからだ。

 

「どうして……私だけなんですか?」

 

 不機嫌そうにぶすっとした顔で後部座席の真ん中に座る女子学生……矢田は、杉田と桜井、どちらに聞いたのかわからない質問をした。

 運転中の桜井に気遣い、杉田がその質問に返す。

 

「君だけじゃない。第46号が立ち上げたスレッドに載せられたほかの人間も、全員こうして保護するんだ。大丈夫だ。次に奴が犯行を行う時刻は午後5時。それまでの間に君たちを東京から避難させることはできる」

「そうじゃなくて!」

 

 自分の望んだ解答に答えなかった杉田に、矢田は叫んだ。

 

「どうして三上は連れて行かないのよって聞いてんのよ! あいつでしょ!? 掲示板に私のこと書いたの!」

「はぁ……それはまだわからない。今は人命が優先なんだ。書き込んだ犯人を突き止めている時間はない」

「絶対あいつよ! ねぇ、アレって犯罪なんでしょ!? どうして捕まえてくれないのよ!」

 

 詰め寄ってくる矢田に、杉田は「落ち着いて」と諭す。運転している桜井だが、時々バックミラーで2人を伺っている。いざというときには車を停めてでも止めないといけないからだ。

 

 

「ざっけんじゃないわよ、第46号も警察も! たかが(・・・)イジメで殺されて、逮捕されてたまるかってのよっ!」

 

 

 ……ぶちっ。

 「やばっ」と桜井は瞬時に判断して車を路肩へ停めるがもう遅い。

 杉田は矢田の頭を掴んで睨みつけていた。その形相はもしかしたら、第46号に向けて放っていた怒りよりも強烈なものなのかもしれない。

 

「そのたかがイジメで、何人の人間が今までに自殺してると思ってんだっ!? 知ってんのか!? ああんっ!?」

「す、杉田さん、落ち着いて!」

 

 シートベルトをはずして静止を訴える桜井だが、杉田は止まらない。

 

「200人だ。1年間で200人、イジメを受けた子供たちは自ら命を絶ってんだよっ! 親にも教師にも、俺たち警察にも、誰にも言えずに1人で全部抱え込んでその人生を閉じてんだよ!」

「それがなんだっていうのよっ! 誰にも相談できずに死んで逃げた奴なんて、知ったこっちゃないわよ!」

「うるせぇ! 誰にも頼らせないほどにまでそいつを追い込んで、自殺させる原因を作った奴はもう立派な人殺しだ! わかるか!? 人殺しなんだよ!」

 

 警察官ならば誰でも一度は思ったことだろう、イジメについての嫌悪感。矢田の考え無しに言い放った自己中心的な発言は、杉田を刺激するには充分すぎた。

 杉田なら間違っても暴力は振らないと信じている桜井だが、今朝からずっとご機嫌斜めな彼だ。もしかしたら、そう考えると桜井はもう気が気でならない。

 

「法律がどうとか、犯罪かどうかなんてもんはこの際関係ねぇ! 人間として、永遠に『人殺し』のレッテルを貼って生きていかなきゃなんねぇんだ! もしおまえがイジメをしていた相手が死んじまったらどうする!? 人間死んじまったらそれで終わりなんだ。終わりなんだよ! もうやり直すことなんざできねぇんだよ! わかったら二度と、たかが(・・・)イジメなんてふざけたこと抜かすんじゃねぇぞゴラァッ!」

 

 それだけ言って杉田は矢田を解放し、掴んでいた右手で自分の太ももを強く叩いた。スパァンッと物凄い音が車内に響く。

 解放された矢田というと、杉田の剣幕にやられて目を限界まで開かせて小刻みに震えながら「ごめん……なさい」と小さな声で誰かに向かって謝っていた。今は未確認生命体についての捜査をしている杉田だが、彼の本業は捜査一課。つまり殺しの犯人を捕まえて自供させるのが仕事で、杉田はそのベテランだ。そんな刑事から飛び出した『人殺し』は、彼女のイジメへの軽い認識を揺るがすには充分すぎた。

 

「……悪いな桜井。時間を潰した。もういい、出してくれ」

「は、はい……じゃあ」

 

 ようやく収まった杉田の怒りにほっとした桜井は、停めていた車を再び警視庁に向けて発進させた。

 

 

     ――――・――――・――――

 

 

 午後12時31分。

 一条は椿から連絡を受け、関東医大病院に向かっていた。雄介の意識が戻ったのだ。

 本来ならば大川の命令に従って、掲示板に載せられた人間達を集めないといけなかったのだが、近くでやり取りを見ていた杉田と桜井が行って来いと背中を押され、結果、悪いと感じつつも彼の元へ向かっていたのだ。

 どんな顔で会えばいいのか、はっきり言ってわからなかった一条だが、今回の事件に関してどうしても雄介に言わないといけないことがあった。当然それは、第46号に二度と同じ技が効かないかもしれないことではない。もっと別のことだ。

 関東医大病院に辿り着いた一条は駐車場に車を停め、どう話を切り出そうかを考えながら院内を歩く一条だが、結局特に良い案が浮かばないまま、雄介がいる病室に辿り着いた。

 こんこんとノックし、「はい」と返事が来るのを待ってから静かに病室に入る一条。

 

「あっ、一条さん」

「五代、大丈夫……じゃ、まだなさそうだな」

 

 一条に気付いて呼びかけてくれた雄介だが、彼はまだ寝たままだった。首すらも動かせないらしい。

 心配する一条に、彼よりずっと前から病室にいた椿が言う。

 

「心配は要らない。回復すれば元に戻る……が、少なくとも今日1日は動けないだろうな。15回は死んでいるほどのダメージを負ったんだ。今日は絶対安静だ」

「そうか……よかった」

「すみません、一条さん……俺、また……」

「いいんだ、五代」

 

 二回挑戦しても、今自分ができる最強の技を駆使しても届かなかったことを悔やむ雄介に、一条は少し頬を緩ませる。責めるつもりはないし、責める権利もないと一条は感じていたからだ。それに今は、雄介が峠を越えたことと、今日1日休めば元の身体に戻れることを知った喜びのほうが大きい。

 

「ユニゴは……第46号は、どうしていますか?」

「ああ……朝に悪徳金融会社を襲撃して12人を殺害。その後、ネットの掲示板を使って一般人の中から揺さぶりをかけてきた。今の東京は大混乱だ」

 

 何台ものパトカーが町中を回ってはネットに掲載された次のターゲットとなりうる人物を保護し、後に来る護送車で都内から逃がすという警察のプランを、一条は雄介に話した。

 

「いいじゃないっすか。46号のターゲットを減らせますし」

「ああ。そう、なんだがな……」

 

 確かにこの作戦は、普通に考えれば良い作戦だ。有効かつ、犠牲者を減らすことができる。だが1つだけ欠点がある。それは……この作戦自体が、あまりにも普通すぎることだ。都内の標的を狙うならその標的を逃がせば良い。そんな誰でも考え付くような簡単な作戦なのだ。

 今まで人間の心理を上手く利用して、第46号ことユニゴは、たったの3日間で3912人の人間を殺害している。一歩先を行く第46号の頭脳に、果たして自分たちの平凡な作戦が通用するのか。それが、一条達が大川に反発した大きな理由だ。

 

「大丈夫ですよ! 警察の皆さんだって、頑張ってるんですから! きっと成功しますよ!」

「……そうだな。今更、悩んでも仕方がない。中途半端にはしないさ」

 

 なぜだろうか。

 雄介の笑顔を見た一条は今まで悩んでいたこと、心配していたことが少しだけであるが晴れた。何の根拠もない「大丈夫」であるが、雄介が言っただけでどこか安心することができた。

 そういえばそうだった。今までもこの青年は笑顔を使って何かをするたびに、周りを笑顔にさせてきた。そういうある意味、カリスマに似たような力が雄介にはあるのだ。だから、雄介は第46号とも話をすることができた。

 最初に向こうが接触してきたとき、普通の人間なら罠だと思って行こうともしなかっただろう。仮に行ったとしても警戒して、クウガに変身した状態で行くだろう。だが、雄介はそうはしなかった。「クウガとして」ではなく「五代雄介」として第46号と向き合い、彼女の考えや立場をしっかりと受け入れることができたのだ。

 そんな心優しい青年に戦いを強いるなんて。

 また一条はそのことを考え、少しだけ罪悪感を抱くのだった。

 

「五代、今回は休んでいてくれ。第46号は俺たちが止める」

「え……どうしてですか? 俺は戦えますよ! 平気ですって、あと少し休めば!」

 

 自分の身体のことを労ってくれていると思った雄介。しかし、一条は「違うんだ」と断じた。そしていつも以上に真面目な顔になって雄介に問うた。

 

 

「おまえは……第46号と本当に戦えるのか? 戦って殺すことはできるのか?」

 

 

「……っ」

 

 ようやく一条が言おうとしていることがわかった雄介は目を見開いた。

 一条は、雄介が第46号を倒せないほど弱いと言ったわけではない。もしそれを言うなら最初に「戦えるのか?」ではなく、「倒せるのか?」と訊くはずだからだ。ではなぜ、「戦えるのか?」と訊いたのか。それは……

 

「五代、おまえは優しすぎる(・・・・・)。そんなおまえが第46号と……いや、ユニゴ(・・・)と戦って殺せるほど、非情になれるのか?」

 

 2回目で、一条は核心を突いた。

 雄介は……優しすぎる。それが彼の最大の長所であり、最大の弱点だった。

 優しいゆえに、物事を広い視野で見ることができるし、要領もよく物事を捉えることができる。だから……敵であるはずの第46号を「ユニゴ」と名前で呼ぶほど理解してしまい、同時に彼女に対して同情もしてしまっていた。

 

「…………」

 

 雄介は固まってしまった。言い返せない。一条の質問に「はい!」「勿論ですよ!」と、言い返せない。

 何度も覚悟を決めたはずだった。

 1回目の戦いのときも、2回目のときも。覚悟を決め、2回とも本気で彼女を殺しにいった。だけど……結果は惨敗であった。彼女を追い詰めることはおろか、ダメージすら碌に与えることが叶わなかった。

 それどころか、向こうは2回とも命を助けてくれている。すぐに殺せるはずの自分を、ただ一方的に甚振るだけでとどめだけは絶対に刺さなかった。こっちは命を取るつもりで戦いに挑んだというのに、向こうは命を取る気で戦いに望もうとしない。しかも第46号がクウガを舐めているわけではない。純粋に心の底から、殺したくないと、戦いたくないと言って命は奪わないようにしてくれている。今までの敵のように上から目線に、自分のことをただのゲームを面白くさせるための敵キャラとして捉えられたほうが、どれだけ戦いやすかったか。

 

「五代。今回の第46号は……()は、おまえにとって最悪の相手だ。おまえの優しさが、奴を殺そうとするたびに足枷となってしまっている。仮に奴をおまえが倒したとして、おまえはそのあと今まで通り(・・・・・)戦いに望めるか?」

「それは……」

 

 これも、否定できなかった。

 第46号を倒して、この事件を解決したとしても。おそらく雄介はずっと彼女のことを引き摺ってしまう。

 ただただ生きたいという理由で、それだけのために殺戮を繰り返すしか方法がなかった彼女を殺してしまえば、それは雄介にとって、一生背負い続けるであろう重い十字架になる。それほどまでに、雄介は優しすぎた。

 

「奴は俺たちが殺す(・・)。おまえの手を汚させはしない。おまえにこれ以上、余計な負担をかけさせはしない」

 

 一条の視線はまっすぐだった。

 今まで雄介に戦ってもらっていたことに対する感謝、いつまでも雄介に守ってばかりには行かないという彼の警察官としての意地、そして、雄介の心の負担をかけるわけには行かないという彼なりの気遣いが込められていた。

 

「わかり……ました」

 

 自分を信頼し、第1号の事件からずっと一緒に戦ってきた戦友にここまで言われたのだ。雄介は素直に受け取った。しかし、それでもどこか諦め切れていない雄介は「だけど」と続けた。

 

「俺もこの休んでいる間に力をつけようと思います」

「……ああ、わかった」

 

 なにをしようとしているのかはわからないが、雄介なら大丈夫だろう。きっとこの第46号の事件が終われば、またいつもの雄介が戻ってくる。

 一条はそう信じて、短く返した。

 

「じゃあ、俺はもう行く。しっかり休んで、戻って来い」

「はい! 忙しい中、ありがとうございました!」

「……なんてことはない」

 

 最後はやっぱり笑顔でサムズアップをしてくれた雄介に、一条は自然と笑みを浮かべてサムズアップを返し、病室から去っていった。

 

 

 

 

     ――To be continued…

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