仮面ライダークウガ-白の執行者-【完結】   作:スパークリング

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こんにちは。

ようやく……ようやく書きたかったお話を書くことができました。
こんな時間に何人読んでくれているのかな? ちょっと気になったり。


第16話 『違和』

 1月24日。時刻は午前10時52分。

 場所は東京都多摩市、西多摩警察署。

 建物の前に立って番をしている1人の巡査が、怪しい人影を捉えた。はて、なんだ? と目を凝らして見る。

 その人影の正体は男だった。きちっとした黒い軍服を身に纏った、大男。黒い口紅をしたその顔を僅かに顰めており、かなり厳格な雰囲気を醸し出している。

 姿勢よく、堂々と歩く大男はどんどん自分の元へ迫ってくる。横断歩道を渡り、門を越え……ついに警察署の入り口まで辿り着いた。

 

「ちょっと、止まりなさい」

 

 何の用があって警察署に来たのか、尋ねるために大男の前に立ち、通せん坊をする巡査。

 

綺麗に死ね(ビセギビ ギベ)

 

 しかし、男から返ってきたのは訳のわからない言語。何を言っているんだと聞こうとした巡査だったが、それを言う前に絶句してしまった。その大男の姿、身体の輪郭が見る見るうちに変わっていき……真っ黒なボディに紫色の瞳、そして額から1本の太い角が生えた、まるでカブトムシのような姿をした怪人になってしまったのだ。

 怪人は胸の辺りに付けていた装飾品の1つを引き千切ると、それを1本の大剣に変えた。

 

「ひっ、ひいっ」

 

 あまりの出来事に腰が抜けてしまった巡査。彼が最後に耳にしたのは、電流が流れたような、バチッバチッという音だった。

 それから10分が経過し、時刻は午前11時2分。

 西多摩署内。

 

流石だな(ガグ ガザバ)

 

 バグンダダ片手に周囲を見渡してカウントしながら、怪人ゴ・ガドル・バを褒めるドルド。西多摩署内の床一面には、男性警察官たちの屍が散乱していた。その数なんと106人。1分間で10人以上、6秒で1人以上を殺している計算だ。

 

「他愛もない。もっと強い、リントの戦士はいないのか……」

 

 落胆したように肩を落とし、立ち去っていくガドル。思った以上に手応えがなく、本当にこいつらがあのバベルを怯ませ、さらにユニゴを殺しかけたのかと、疑問に感じたのだ。

 

「……ガドル、どうしてここの人たち、殺したの?」

 

 ガドルが去ったあと、ドルドの背後からスッと現れるユニゴ。彼女の疑問に答えるように、ドルドは懐から1枚の金の板を取り出し、ユニゴに渡す。受け取ったユニゴはそこに書かれている言葉を読み上げた。

 

「……戦士?」

「そうだ。ガドルが定めたゲゲルの獲物は……リントの戦士だ」

 

 今回の未確認生命体第47号こと、ゴ・ガドル・バのゲゲルのターゲットはユニゴの真逆、『リントの戦士』、すなわち『男性警察官』だ。だからガドルは、この警察署を襲い、女性警察官を無視して男性警察官だけを殺した。それがドルドのユニゴの疑問に対する答えだった。

 

「違う、そうじゃなくて……ううん、なんでもない」

「……?」

 

 また、何かを考え始めたユニゴに首を傾げるドルド。ユニゴがドルドに訊いたのは、ガドルのターゲットを知りたいわけではなかった。もっと純粋に「どうして、警察官を殺したのか」。それを知りたかっただけなのだ。

 

「追うぞ、ユニゴ。ガドルのゲゲルは続いている」

「……ん。ごめん」

 

 こくりと頷き、ドルドと共にユニゴはこの西多摩署から出て行く。

 倒れている男性警察官達を眺めながら、なにか自分の中にもやもやしたものが出てきたが、その正体はまだわからなかった。

 

 

     ――――・――――・――――

 

 

 時刻は午前11時26分。

 多摩市一ノ宮三丁目、工場跡地。

 第47号の爆破ポイントまでなんとか誘導することができたが、その代償は凄まじいものだった。

 停まっている14台のパトカー。その開いたドアからは7人が、そして外には16人の警察官が身体の至る所から血を流して亡くなっており、現在この場で生存している警察官はたったの5人しかいない。

 その5人の警察官たちは後ろに下がりながら、この地獄絵図を作り出している元凶(ガドル)に向けて拳銃を発砲する。が、当然の如くちっとも効果はなかった。神経断裂弾が開発されて早くも1ヶ月が経ったわけだが、その弾数はやはり少ないため普通の警察官には支給されていないのだ。

 

「これでガドルの殺したリントの戦士は169人、残りを片付ければ174人だ。順調だな」

「…………」

 

 工場の階段に立って、ガドルが5人の警察官たちに迫る光景を眺めているドルドとユニゴ。ここに来る前にも、誘導していた警察官を何人も殺していたため、ゲーム開始から30分で既に被害者は150人を優に越えていた。

 

「それにしても、ガドルも上手いことを考える。相手は警察。我々が出たら必ずやって来る。つまり、ガドルが少し暴れるだけで、獲物が勝手に来るという仕組みだ。これならば、軽く目標を達成できるだろう。おまえを苦しめた、あの弾さえ気をつければな」

「……そうだね」

 

 ドルドと共に見守っているユニゴは、どこか適当にそう返した。ガドルのゲゲルが始まり、彼が西多摩署の男性警察官を皆殺しにしたときからずっと抱いていた違和感。それが気になって、ドルドの言葉が全く頭に入ってこないのだ。

 そのもやもやの発端はなんとなく思った、彼女のガドルに対する疑問、「どうして、警察官を殺しているのか」というもの。ユニゴは単純に気になったのだ。どうしてガドルが警察官をターゲットに選んだのかを。

 威風堂々と正面から真っ向勝負するガドルのことだ。単純に強い相手と戦いたいからなんて、そんな理由なんだろうなとは察することはできた。ガドルとの付き合いは長いほうなのだ。大体のことはわかる。だが問題なのはそこではない。だからと言ってなぜ、『警察官』をターゲットに選んだのだろうか。ユニゴはそこに疑問を抱いていた。

 確かに『警察官』をターゲットにすれば、ガドルにとって有利だ。聞こえちゃいなかったが、先程ドルドが言ったとおり、向こうから勝手に獲物がやってくるのだから。ゲゲルを円滑に進めることはできるだろう。

 だけど、多分ガドルはそんなことは考えていない。そういう性格ではないのだ彼は。自分と違って、ゲゲルの効率性を求めるような性質ではない。むしろ彼は生粋のハンター気質。いかにゲゲルを難しくするかを考えているだろう。

 ああそうか。自分にとんでもないダメージを与えたあの不思議な弾目当てか。あの弾の存在もあって、ガドルは警察官をターゲットにしたんだ。納得した。

 

「…………」

 

 なのに、なぜだろうか。

 ガドルが警察官を狙う理由はわかったのに、それでも胸の内のもやもやが晴れる気配を見せない。「違う」「そうじゃない」「そういう意味じゃない」と、心の中の自分が訴えている。もっと根本的なものが、違うのだ。

 一度思考をクリアし、もともと自分は何に対して疑問を感じていたのかを思い返す。ああそうだ。「どうして、警察官をターゲットに選んだのか」だった。えっと、なんでガドルは……っと、そう考えては意味がない。また同じ結論に至ってしまうだけ。

 そうだ、ここは……逆に考えてみよう。さっきからガドルのことで考えていたからダメなんだ。ここは逆に、殺されるリントたちのことで考えてみよう。いわゆる発想の転換だ。すぐにユニゴは頭を切り替える。

 今回不幸ながら、ガドルのゲゲルの対象になってしまったリントたち。それは皆、『警察官』という職業についているリントだ。

 ユニゴの頭の中での『警察官』。それは、ただ単に自分たちのゲゲルを妨害する存在……だけではなかった。おそらく他のグロンギ以上にリントに精通し、リントの世界を見て回り、知識を身につけ、作戦を企てるのが得意で、情報を誰よりも収集していたユニゴだからこそ、別の見方ができるのだ。

 困っているリントを助けたり、悪いリントを捕まえたりする。それがユニゴのイメージする『警察官』だった。幼稚園生、低学年の小学生並みの認識だが、それは、本質を見抜くことが自然とできるほどに純粋な性格をしているユニゴらしい認識だった。

 困った人に救いの手を差し伸べる『良いリント』。かつて自分が行ったゲゲルのターゲットである『悪人』……つまり、『悪いリント』を捕まえる『良いリント』。

 

「……あれ?」

 

 ここで1つ、新たな疑問がユニゴの中に浮かんだ。

 「どうして、そんな良いリントたちが殺されないといけないんだろう」。

 これがユニゴの中に浮かんだ、新たな疑問。今までリントたちに自分のゲゲルを認めてもらうために、殺しても良いリントと殺してはいけないリントを仕分けていたユニゴだからこそ、抱いた純粋な疑問。

 ゲゲルをしないといけないとはいえ、あくまでこれは自分たちの勝手な事情だ。リントのことなど一切考慮していない、一方的な虐殺。そのことはユニゴだって気がついていた。遥か古代から。だけど、やらないと自分の命がないことも知っていたし、生まれてから今までずっと当然のように繰り返し行ってきたことだ。今更、やらないと言うことなどできず、生き抜くために渋々ゲゲルに参加した。というか、だからこそ自分のゲゲルをリントに認めて貰おうと、受け入れて貰おうとあれこれ工夫したのだ。

 やがてその疑問は、こんな疑問に変わった。

 「どうして自分たちの勝手な理由で、良いリントたちが殺されなければならないんだろう」。

 

「っ」

 

 そこまで考えた瞬間、ようやく、ようやく彼女は気がついた。気がついてしまった。今まで彼女が抱いていたもやもやの正体を。

 そして恐る恐る、さらにワンランク上げて、最終的な疑問を浮かべた。

 

「どうして自分たちの勝手な理由で、リントたちが殺されなければならないんだろう」、と。

 

 ……ギリッ。

 ユニゴは強く歯を食いしばり、そして彼女の意識は現実に引き戻された。今までの思考時間、僅か15秒。15秒でここまでの結論を出したユニゴの回転の速さはこの際置いておこう。

 思考の海の中から現実という陸地に上陸したユニゴの目の中に飛び込んできた風景。それは、ガドルが警察官たちの前まであと少しで到達するという風景だ。彼の右手にはしっかりと、大きな剣が握られている。そしてその刃が届く位置まで迫り……ついに右腕を振り上げ始めた。

 

「……? ユニゴ?」

 

 ここで初めて、彼女の異変に気付いたドルド。しかし、彼がユニゴを呼びかけたときには既に、さっきまで自分の隣にいたはずのユニゴの姿はなかった。

 そして再びガドルの方を見てみると……そこには、驚きの光景が広がっていた。

 

 

     ――――・――――・――――

 

 

 少しずつ迫ってくる『死』と言う恐怖。彼らはそれを、今この瞬間に強く感じていた。

 未確認生命体第47号を爆破ポイントまで誘導した。ここまではよかった。しかしそこからは自分たちが、なんとかして未確認生命体第4号ことクウガが駆けつけてくれるまで時間稼ぎをしなければならない。が、自分たちには未確認生命体を止める手段なんてない。神経断裂弾はおろか筋肉弛緩弾すら、持っていなかった。

 ならばどうやって未確認生命体に対して時間稼ぎをするのか。それは、もう自分たちの命を犠牲にするしかなかった。どうにかして、1分1秒でも長く、殺されないようにしながら、クウガが来るのを待つしかないのだ。

 次々とやられていく仲間達を見ながら、少しずつ後ろに下がって距離を取り、時間稼ぎをする。それが今の彼らの使命だった。

 

「くっ、来るなぁっ!」

 

 パァンッ。

 震える声で拳銃に火を吹かす1人の警察官。それがたとえ、目の前の恐怖に一切通じないことがわかっていたとしても、そうせざるを得なかった。

 怖かった。

 自分は何も悪いことをしていない。むしろ今まで、一般市民の役に立ちたいと必死で頑張ってきた。なのに……。

 未確認生命体の背後に倒れている自分の仲間達の亡骸を見て、さらに恐怖が高まる。それはこの警察官だけでない。横一列に並んで、未確認生命たちに拳銃をぶっ放しているほかの4人の警察官たちだって同じだった。

 全員、効かないとわかっていながらも藁に縋る思いで拳銃を向け、撃つ。もしかしたら、これだけで倒せるかもしれないという、1パーセントにも満たない希望を抱いて、彼らは拳銃1つで懸命に戦う。しかし、それはやはり無意味だったと言うことを、彼らは思い知る。

 後ろに下がっていくにつれ、迫ってきていた未確認生命体以外のもう1つのもの。それは『行き止まり』だった。彼らはついにその行き止まりに差し掛かってしまった。もうこれで、彼らは後ろに下がることはできない。だからと言って前に進むこともできない。横に進むにしてもやはり、逃げ切れるだけのスペースはない。せいぜい小柄な女の子が1人通れる程度にしか、スペースがなかった。

 そんな自分たちを無視して、迫ってくる未確認生命体。紫の目をした怪人のその右手には、巨大な剣が握られている。

 

綺麗に死ね(ビセギビ ギベ)

 

 何を言っているのかはわからないが、未確認生命体が伝えたいことはわかった。「死ね」、または「殺す」。そう、言っているのだ。その証拠に、未確認生命体の剣を持つ腕がどんどん上がっていく。今からその剣を振り下ろし、自分たちを切り裂こうとしている。

 彼らは『死』を覚悟した。

 あと数秒もしないうちに、自分たちも倒れている仲間たちと同じ、物言わぬ屍と化してしまうのだろうと。頭を守るように両手で頭を抱え、少し丸くなって背中を晒す警察官たち。

 ヒュッ。

 それを待っていましたと言わんばかりに、風を切るような音がした。怪人が剣を薙ぎ払ったのだろう自分たちの背中に向かって。すぐに彼らにはわかった。……しかし。

 

「……?」

「あ、あれ?」

 

 おかしい。

 仲間の叫び声が聞こえない。なにかで肉を貫いたような音も聞こえない。そして自分の身体の……おそらく背中に来るだろう激痛すら襲ってこない。これが『死』という感覚なのだろうか? 確かめるために、目を瞑っていた5人の警察官たちは恐る恐る、未確認生命体がいるほうを見る……と。

 まず彼らの目の前に飛び込んできたのは、あの恐ろしい姿をした未確認生命体ではない。彼ら最初に見たもの、それは……『白』だった。

 時期に似合わない真っ白で清楚なワンピース。そして真っ白なサンダルを履いた女性のものであろう綺麗で細い生脚。それがまず、彼らの目に飛び込んできた。そして少し頭を上げて視線も上げると、次に目に入ったのは綺麗に光るセミロング程度に伸びた金色の髪の毛。日本人の染めたことがバレバレなそれとは違う。完全に天然で自前なのだろう、とても自然な光沢を放つ髪の毛だった。

 そこまで見た瞬間、彼らは思った。この姿、自分たちはよく知っている、と。

 1ヶ月前、3996人の『悪人』を殺害し、ぱたりと犯行を止めた未確認生命体第46号。その人間態の特徴と、全く同じなことに。そこまで理解し、彼らは更なる恐怖に駆られる。ただでさえ自分たちでは力不足だった第47号に加えて、第46号まで現れてしまった。鬼に金棒ならぬ、鬼にマシンガン、または鬼に相棒である。

 しかし、一度覚悟していた『死』が来なかったことにより逆に頭が冷えた彼らは、この状況が妙なことに気がついた。もし第46号が第47号に加担しにきたとしたら、どうして第47号の前に立っているのだ? しかも自分たちに背中を向けて、第47号と向き合うような体勢で。これではまるで、第47号の邪魔をしているようではないか。

 そういえば、自分たちに向かって振り下ろされたあの剣はどこに行った? 目を動かして探すと……見つけた。

 禍々しい形をした灰色の大剣。それは、少女の左掌の中にまるで吸い込まれるように、綺麗に掴まれていた。これではっきりした。

 第46号は第47号に加勢しに来たわけではない。第47号の妨害をするために、来たということに。

 

「なんのつもりだ。……ユニゴ」

 

 日本語で、第47号が第46号に問いかける。『ユニゴ』なんて名前の人物は自分たちの中にはいない。つまり、この第46号の名前なのだろう。

 

「……わからない」

 

 ユニゴと呼ばれた第46号は……静かにそう答えた。

 

「まだ全部、わかったわけじゃない。ほんの少ししか、リントのこと、わからない。だけど――」

 

 第46号が最終的に行き着いた数々の疑問、そして、今まで自分がやってきたこと。まだ、全部が全部、わかったわけじゃない。完全な答えには行き着いてはいない。

 しかし……これだけは、第46号こと、ユニゴはわかった。理解した。

 

 

「――私たち、間違ってる。……ンッ」

 

 

 たったの一言、第47号ことガドルに返事をすると、ユニゴはすかさず人間態のまま(・・・・・・)回し蹴りをガドルに喰らわせる。

 

「ぐっ!?」

 

 例え人間の姿だとしても、その蹴りが必殺級の一撃であり、肉体戦法ならばユニゴの最強の一撃なのは変わらない。

 とんでもない力の篭った彼女の蹴りはガドルの胸に直撃。遥か後方へ吹き飛ばし、燃料タンクと思われる場所へと突っ込ませる。衝撃を受けたタンクは爆発するが、この程度でガドルが死ぬはずがない。

 

「逃げてっ!」

 

 回し蹴りを仕掛け、警察官たちのほうへ振り返ったユニゴは短く、彼女らしくなく無表情を崩して必死な顔で、そして大きな声で叫ぶ。これで警察官たちは彼女が一体誰の味方なのかがはっきりするも、やはり戸惑ってしまう。

 

「っ。い、行くぞ!」

 

 誰か1人が叫んだ瞬間、5人一斉に駆け出し、誰も乗っていないパトカーまで一直線。

そんな彼らを逃がさんと言わんばかりに、ガドルが突っ込んだ場所からボウガンのようなものが放たれる。が、それもやはりユニゴの右腕が押さえ込み、勢いを消してしまう。その隙に彼らはパトカーの中に乗り、全速力で走らせてこの場から退場した。

 

「……ぬぅ」

 

 彼らが去ったのと入れ違いに、遠くの燃料タンクの中から2本足で余裕そうに出てくるガドル。その瞳は緑色に変わっていた。

 ユニゴはそんな彼の前に立ち、鋭い視線を向ける。

 

「……本当に変わったな、ユニゴ。そんな顔をするとは、初めて見たぞ」

 

 珍しいユニゴの表情を見て、興味深そうに言うガドルだが、いつも以上に声色が深い。そのままの声で、ガドルは「だが」と続けた。

 

「あろうことか、他人のゲゲルに乱入し、台無しにした罪。許されるものではないぞ……」

「上等。私の勝手で悪いけど……、もう、リントを殺させはしない。そして私は、償う。――ダグバを殺して、私も死ぬ!」

「不可能だ。おまえにダグバは殺せない。――今、ここで死ぬのだからな」

「っ!」

 

 キッと、一際強くガドルを睨みつけたユニゴは、その姿を変えていく。厚い装甲を身に纏い、3本の角が生え、紫の瞳をした剛力体へ。ガドルもまた、瞳の色を紫に変え、射撃体から剛力体に変わった。そしてユニゴは腰の、ガドルは胸の装飾品を乱暴に引き千切り、同時にそれぞれの得物へ変化させて構える。

 

「――ッ」

「――ッ」

 

 共に駆け出す2体のグロンギ。

 今ここに、『ゴ集団』のナンバー1と元ナンバー2、実力者同士の戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 

 

     ――To be continued…


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