仮面ライダークウガ-白の執行者-【完結】   作:スパークリング

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こんにちは。

ついに……お気に入り件数1000人を越えました! 
それから昨日投稿した第16話には様々な意見が寄せられてきました。賛否両論、どちらもあって私は当然だと思っていますし、賛成・反対意見をもらえて嬉しいです。

評価をしていただいた皆様、そして感想を書いてくれる皆様。本当にありがとうございます!
どんな評価、感想を貰っても、私のテンションは上がりっぱなしです!


第17話 『電撃』

ピィーッ!

 

『聞こえるか、五代!』

「はい、聞こえていますよ一条さん!」

 

時刻は午前11時28分。

もう少しで未確認生命体第47号のいる工場跡地に到着するというところで、ビートチェイサー2000を走らせている雄介は一条から通信が入った。

 

『たった今、現場にいるのだが……そこで、第47号と第46号が激しい戦闘を行なっている!』

「えっ!?」

 

雄介は素で声を上げて驚いてしまう。

今回の敵、第47号が警察署を襲撃したことにも驚いた雄介だがそれ以上に、ゲームを成功させたはずの第46号……ユニゴが、今ゲームをしている第47号の邪魔をしていることのほうが驚きは大きかった。

 

「味方同士で争っているんですか!?」

『詳しくはまだわからない。だが、第46号は第47号から警官達を護り、逃走の手助けもしたという情報も入っている! とにかく現場に到着次第、ゲームを行っている第47号の方を重点的に狙え! 第46号は後回しだ! 俺も少し、やることをやってからすぐに現場から立ち去る!』

「わかりました!」

 

 どうしてユニゴが仲間のゲームの最中に乱入してきたのかはわからないが、おかげで第47号を爆発ポイントで足止めすることができた。しかも、一条以外の避難も完了していて、その一条もすぐに避難すると言った。

 雄介はビートチェイサーを運転しながらクウガに変身。最初からライジングマイティフォームだ。

 あの電気ショックを受けてから1週間、科警研で実験を重ねてみたところ、ライジングフォームの使用制限時間がなくなっていたことが発覚した。緑のクウガことペガサスフォーム以外の、全ての形態で永続的にライジングフォームの力を使えるようになっていたのだ。……が。

 雄介はまだ気がついていない。椿が自分の身体に施した2回目の電気ショックが、もう1つ、新しい力を覚醒させていたことに。

 

 

     ――――・――――・――――

 

 

 多摩市一ノ宮三丁目、工場跡地。

 時刻は午前11時33分。

 立ち上る黒い煙を背景に、2人のグロンギが戦いを繰り広げられていた。

 

「ふんッ……」

 

 1人はカブトムシの特性を持つ『ゴ集団』最強のグロンギ、未確認生命体第47号ゴ・ガドル・バ。

 瞳の色を紫色に変え剛力体となって、169人の警察官の命を奪ってきた灰色の大剣を振り回し、敵対するもう1人のグロンギを牽制する。

 

「ぐっ……」

 

 もう1人はユニコーンの特性を持つ元『ゴ集団』のナンバー2、未確認生命体第46号ラ・ユニゴ・ダ。

 彼女もまた、瞳を紫色に染め剛力体となり、右手に3996人の悪人の命を奪ってきた三叉戟を構えてガドルに応戦している。

 戦いはガドルが押していた。伊達に『ゴ集団』のリーダーをやっているわけではない。その圧倒的な攻撃力を誇る腕で振るわれる大剣は何度もユニゴの身体を斬り、戦い慣れた身体を上手く捻らせて彼女の三叉戟や蹴りを躱し続けている。が、ユニゴも押されっぱなしではない。彼女だって、伊達に『ゴ集団』のナンバー2をやっていたわけではないのだ。ガドルとは対照的に圧倒的な防御力を誇るユニゴの身体は、見事にガドルの攻撃を耐えることができている。衝撃を受けて少し後ろに下がることはあるが、所詮はそれまで。ユニゴの身体は傷1つ作らされていないし、ダメージすら碌に通っていない。攻撃を受けた後には隙を突いて、ガドルに回し蹴りを入れようと反撃のチャンスを随時窺っていた。

 攻めと受け、それぞれに特化したガドルとユニゴの戦いはまさに矛と盾。ガドルの圧倒的攻撃はユニゴの圧倒的防御の前に沈黙し、ユニゴの反撃は全てガドルに躱される。どちらも自分の得意な戦術を取れているばっかりに、決定打にならない。軽い無限ループが生じてしまっていた。

 

流石はユニゴ(ガグガ ユニゴザ)その強さは変わらないな(ババジャバ イサゴ ボ ジバサバ)……」

褒めても(ゾレデ ロ)私は譲らない(ジュズサバギ バダギ ザ)

 

 剣と槍を交合わせ、至近距離で話し合う2人だが、当然の如く戦いは続行。互い武器を弾かせて後ろへ跳び、次の攻撃の準備をし、相手よりも早ければ先制攻撃を仕掛ける。

僅かに着地する瞬間が早かったのは……ユニゴだった。

 着地したユニゴは三叉戟を捨て、すぐに持ち前の脚力を用いてガドルに接近し一回転ジャンプ。くるりとガドルの方を素早く振り返った瞬間に右脚を綺麗に伸ばし、彼に向かって鮮やかな空中回し蹴りを放つ。

 

「っ」

 

 ほんの数秒の、自分と敵との行動のタイムラグ。それは戦いにおいては重要かつ、恐ろしい時間だ。その刹那の瞬間に、致命的な傷を負わされてしまうかもしれないからだ。

 通常形態の格闘体や人間態のときでも、充分過ぎるほどの威力を誇るユニゴの伝家の宝刀(回し蹴り)。喰らえば最後、剛力体のガドルでさえ呆気なく吹き飛ばされるほどの衝撃が発生する。そんな彼女が格闘体の完全上位互換である剛力体で、装甲を厚くしたせいで重量が上がり、攻撃力も上がった姿で、その必殺の一撃(回し蹴り)を放てばどうなるか。その攻撃を自分が受けたことはないが、結果がわからないほどガドルはバカではない。

 なんとかしてそれを避けようとするが、もう間に合わない。

 

「ぐあっ……!」

 

 着地に遅れ、更にユニゴが突然武器をあらぬ方向に捨てたことが気になって、それを思わず目で追ってしまったばっかりに反応まで遅れてしまったガドル。そんな彼の胸にユニゴの右脚が綺麗に吸い込まれた。鋭すぎるほどに洗練されたユニゴのキックを真正面から受けたガドルは、まるで猛スピードで走る大型トレーラーに撥ねられたかのような強い衝撃と共に吹き飛び、再び廃工場の中にダイブしていった。この一撃は、ユニゴにとって結構な自信があった。自分の中での最強の技と言っても過言ではない。握力があってもパンチ力が低いユニゴはその代わりとして、最高の脚力とキック力を持って生まれてきた。この蹴りこそ、彼女の切り札なのだ。

 

「…………」

 

 上手く隙を突いて回し蹴りを喰らわせ、ガドルが突っ込んでいった廃工場をじっと見つめるユニゴ。まだ彼女の中では戦いは終わっていない。いくら自信のある一撃を叩き込んだとはいえ、油断は決してしない。相手は自分よりも上の相手『ゴ集団』のリーダー、ゴ・ガドル・バなのだ。一発では決められない可能性だって充分ありえる。

そのユニゴの予感は的中した。

 ボロボロと崩れ落ちた瓦礫が吹き跳ぶと、その中からゆっくりと黒い影が2本足で立ち上がる。

 

「ぬぅ……」

 

 ボキボキと首を鳴らして砂埃舞う瓦礫の中から堂々と抜け出し、再び工場の外へと歩いてくるガドルは胸を擦っていた。

 

「今のは効いたな。だが……蹴るなら、こう蹴れ」

「……?」

 

 ある程度の距離のところまで詰めたところで、ガドルは立ち止まり……紫色だった瞳の色を金色に変えた。金色の瞳。そんな色を、ユニゴは見たことはなく首を傾げる。

それからしばらくして、バリッバリッと、何か電流が流れるような音がしたかと思うと、ガドルの身体全身に雷のようなものが纏わり始める。そして彼が力を入れるように拳を硬く握ると……ガドルの体に変化が現れた。

 黒味の強い茶色だった腹筋が、銀色だった両手の爪が、そして真っ黒だったはずのベルトもバックルが、全て金色に輝き始めたのだ。

 

「そ、それは……クウガの……っ」

 

 「雷の力」と、ユニゴが言う前にガドルが駆け出す。動揺してしまったユニゴは足が竦み、逃げるのが遅れてしまった。もはやガドルの攻撃を真正面から受け、耐えるしか選択肢がない。

 力を込めて胸を前に出し、両腕を後ろに引いて構えるユニゴ。ガドルは両足に電流のような迸りを纏いながら駆け、そして丁度良いところで跳び上がり空中前転をすると、なんと全身を高速回転させた。そしてそのまま両足をしっかりと伸ばし、ユニゴの胸に雷の力が込められたキックを決める。

 

「んぐぅっ!?」

 

 思った以上の衝撃を受け、先程自分が蹴りを入れたガドルのように吹き飛び、備品倉庫の中に突っ込むユニゴの身体。今度は丸々立場が逆になった。

 ダグバと戦うために用意したガドルの第5形態、『電撃体』。

 クウガが雷の力を使ってパワーアップを果たしたことによって、「もしかしたら自分もそれで強化できるのでは?」と疑問を持ったガドルが1ヶ月に渡って電流を浴びた結果、習得した新たな力だ。そしてその必殺技の1つが、今ガドルが披露したクウガのライジングマイティキックに相当する『ゼンゲビ・ビブブ』だ。

 その威力は……言葉で説明するよりも、受けたユニゴの反応を見てもらったほうが早いか。

 

「あっ……、ああっ……」

 

 倒壊した備品倉庫の中から出てくるユニゴ。しかし、その足取りはふらついて千鳥足になっており、両手に持つ三叉戟を杖のように地面に突けて身体を支え、時にビクンッと身体をビクつかせていた。

 キックを喰らった両胸から全身に伝わる、まるで電撃を受けたような痺れと焼けるような熱、そして鋭い痛みに襲われ、更に感染(うつ)ったのか、パリッパリッと蹴られた割と大きな胸から放電させ、そのたびに身体がビクッビクンッと痙攣していた。

 

「う……あっ、ああっ……あうっ」

 

 大きすぎるダメージに身体が堪えられなくなったユニゴはバランスを崩し、怪人体すら維持できなくなったために人間態に戻って、石が敷き詰められた地面に倒れこんでしまった。しかし気絶はしておらず、ガドルを睨みつけながら「はぁ……はぁ……」と荒い呼吸を繰り返している。

 

「どうだ? これがダグバに対抗するために、手に入れた力だ」

 

 変身を解き、人間態に戻ったガドルはそんなユニゴを見下ろす。

 絶対の守備力を誇るはずのユニゴをいとも簡単に吹き飛ばし、彼女の固有能力である『適応能力』を無視して人間の姿に戻してしまうくらいの大きなダメージを与えたガドルの新しい形態、『電撃体』。ユニゴはその圧倒的な攻撃力の前に敗北してしまった。……否。それ以前に、自分の最強の技である剛力体の回し蹴りさえ、あまり通用していなかった。自分の攻撃力の低さ、そしてガドルの防御力の高さでも、負けてしまったのだ。

 生き残るには最適な、密かに誇りに思っていた頑丈な自分の身体を簡単に傷つけられ、そして最高の攻撃がまるで通じなかったユニゴ。『完敗』だった。

 

「今のおまえではダグバはおろか、俺にも勝てない。そこでしばらく、頭を冷やすといい」

 

 あることが気になったガドルはユニゴを放置して、歩き出す。『ゼンゲビ・ビブブ』がユニゴに通じたと知っただけでも、ガドルにとっては充分すぎる収穫だった。それにここまで力の差を示し、かつ頭を冷やす時間を与えれば、もう刃向かってこないだろうとも判断した。最後の最後で、情けをかけたのだ。

 

「ガ……ドル……ッ!」

 

 歯を食いしばって、悔しそうに表情を歪ませながら立ち去っていくガドルを睨むユニゴ。もうこれしか、今の彼女にできることはなかった。そして思い知った。これほどの屈辱を、自分はクウガに与えてきたのかと。

 殺せるはずなのに殺さず、情けをかけられて生かされる。人間に近くなってきたとはいえ、根幹が戦闘部族のグロンギ族であるユニゴにとって、死ぬよりもキツい仕打ちだった。

 

「くっ……」

 

 なんとか両腕を使って身体を起き上がらせようとするユニゴだが、思うように力を込めることができない。痛みは既に引いている。時間は掛かったが、身体が適応してしまったのだ。ではなぜ身体が動かないのか。それは、『ゼンゲビ・ビブブ』を受けた際に身体の中に直接流れてきた電撃のせいだ。身体の筋肉が痺れ、一時的であるが麻痺してしまっていたのだ。

 人間ならば1A(アンペア)程度で致死量に達する電流は、人間の身体がベースとなっているグロンギ族にも充分に効果があったらしい。すぐに適応することはできなかった。結果、少し起こした身体さえまともに支えることができず、彼女は再び倒れこんでしまう……と、そのとき。

 

「……この、音……」

 

 聞き覚えのある音が少し遠くのほうから聞こえてきた。自分がゲゲルをやっていたとき、一番に警戒していたバイクの音だ。その音にガドルも気がついたのか、立ち去ろうとする足を止めてその音がするほうに目を向ける。

 2人して視線を向けた場所……丁度この廃工場の正面出口からに1台のバイクが走ってきて、停まった。そのバイクに乗っていたのは――

 

「クウガ、か」

「クウ……ガ……!」

 

赤い金の力で現れたクウガを見て、ガドルは呟き、ユニゴは弱々しく口を動かし「逃げて」と視線で訴える。

 

「! 第47号……!」

 

 一条から聞かされた第47号の人間態に酷似している軍服をきちっと着こなした男、というより第47号本人を見て、クウガはバイクから降りて、今から戦うぞという構えをする……が。その今から戦おうとしている第47号ことガドルは静かに首を横に振った。

 

「悪いがクウガ。おまえと戦っている時間はない。確かめるべきことができたのだ、早急にな」

「え?」

「失礼させてもらおう」

 

 戦う意欲が今はないことを告げ、青い目をした怪人体……俊敏体に変身したガドルは、一瞬でこの場から姿を消してしまった。

 

「…………」

 

 本当に逃げてしまったことに少し呆然とするクウガ。

 第46号といい第47号といい、今までの敵と違って形振り構わず自分とは戦わず、自分の目的を優先させようと理性的に行動している。そこが今までの敵とは違う一線と言うわけか。

 

「……! ユニゴ!」

 

 我に返ったクウガの目に飛び込んできたもの。

 それは先程ガドルがいた場所よりも少し離れた場所……見覚えのある三叉戟が突き刺さっている場所に倒れている、小さな白い人影。金色の髪の毛と真っ白なワンピース。それだけでそこに倒れている人物が第46号ことユニゴだと気がついた。

 雄介は変身を解いて彼女の元へ走る。ボロボロになって倒れているユニゴを見て、相当なダメージを受けたことを悟って介抱しようとしているのだ。……しかし。

 

「ダメッ!」

 

 大きく響く制止の声。それを聞いた雄介は走っていた両足を止める。

 驚いたのだ。まさかあの、いつも無表情で物静かなユニゴが、あんなに必死そうに顔を歪めて、張り上げるような声を発するとは。第47号のゲームの妨害をしたことや、自分に完勝した彼女が傷ついて倒れているだけでも充分に驚いた雄介だったが、今の彼女の叫び声のほうが衝撃的だった。

 足を止めた雄介を見て、ユニゴはいまだに変化したままの自分の三叉戟を右手で掴む。

 

「助けようと……しないで、クウガ。私は……クウガの敵……」

「えっ、でも……ユニゴは刑事さんたちを守ってくれたんだろう? だったら――」

「ううん、敵。だから、助けようとしちゃ、ダメ……。戻れなく、なる……」

「!」

 

 「私を助けたら、私たちと戦えなくなるぞ」。そう、ユニゴは雄介に喝を入れた。

 ユニゴは気がついていた。このクウガに変身する青年が、とても心優しい青年だということに。だから、ここで自分を介抱してしまったら、この先の戦いに迷いが出てしまうかもしれない。そう、危惧したのだ。もし迷いが出てしまったら、ユニゴは自分の最終目的を達成することができないのだから。雄介も彼女の「戻れなくなる」の意味を理解したらしく、もうこれ以上彼女に近づこうとはしない。しっかりと自分の言ったことが伝わったと認識したユニゴは「それでいい」と心の中で呟く。

 

「それに……私は、クウガに助けられるほど、弱くない……!」

 

 その言葉は雄介に言ったというより、自分に言い聞かせているようだ。

 右手が握った三叉戟に、更に左手が追加される。そして両腕の力を引き出して上半身を起こし、今度は白いサンダルの底を地面に着かせて力を込め、ふらふらしながらも頑張って立ち上がろうとしていた。その姿は、初めて両足で立ち上がる赤子の瞬間に似ていた。まだ痺れはあるものの先程よりは和らぎ、ようやく身体が電撃に適応してきたことが彼女の頭に伝わった。もう大丈夫、動ける。

 ゆっくりと両膝を伸ばして、三叉戟を杖代わりにして立ち上がったユニゴは、その緑色の瞳を雄介に向けた。

 

「あなたには……やってもらいたいこと、ある」

「やってもらいたい……こと?」

「ん……でも、まだ……今はまだ、そのときじゃ、ない……。そのときは近いうちに、必ず来る。だから……それまで……どうか、待っていてほしい」

 

 ピクピクと小さく身体を痙攣させながら、言いたいことを全て言い切ったユニゴは俊敏体に変身。

 

「また、ね」

 

 別れの言葉を短く告げ、彼女もまたガドルと同じように超高速でこの場から立ち去っていった。

 

「やってもらいたい、こと……」

 

 なにか、覚悟と固い決意が込められた視線を向けて自分に言ってくれたユニゴの言葉。一体彼女が何をしようとしているのか、自分に何を求めているのか。

 雄介はしばらくの間、そのことを考えた。

 

 

 

 

     ――To be continued…


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