仮面ライダークウガ-白の執行者-【完結】   作:スパークリング

19 / 34
こんにちは。

今回わざと、とある人物のグロンギ語を翻訳していません。
どんな意味なんだろうと想像しながら、読んでいただけると面白いと思います。
答えは、後書きに掲載します。


第18話 『激怒』

 時は遡り、午前11時31分。

 多摩市一ノ宮三丁目、工場跡地。ユニゴとガドルの『ゴ集団』二大巨頭が壮絶な戦いを繰り広げられている中、別の戦いがそこで行われようとしていた。

 雄介との連絡を済まし覆面パトカーの無線機を戻した一条が、ふとなにかの気配に気が付いて上を見上げると、廃工場の屋上に1つの大きな人影。

 

「B9号……!」

 

 それは黒いニット帽を深く被り、口元を白い布で覆っている大男、未確認生命体B9号だった。『ゴ集団』のゲームの時にはいつも、そのプレイヤーの後を付けてその手に持つ巨大な計算機を使って測定している謎の未確認生命体だ。

 一条は彼の姿を見た瞬間、覆面パトカーに仕舞ってあった1丁の狙撃中を両手に、彼を狙撃できる場所まで全速力で駆け上がる。そして辿り着いたのは非常螺旋階段の屋上だった。屋上からはB9号の姿をはっきり見え、彼の仕草、声まで確認することができる。

 

ゲゲルはしばし(ゲゲルパギダギ)休みか(ジャグリバ)……」

 

 下……第46号と第47号の戦いを見ながら手に持つ計算機を白い布の中に隠すB9号。その後彼は、首を縦に「うんうん」と振りながら、こう言った。

 

「ラガバ ギグドゴシ ビ バスドザバン バルバ」

 

 どういう意味なのか、一条には全くと言ってもいいほどわからなかった。が、この2人の戦いを見て何かに納得しているとは雰囲気からしてわかった。

 呟いたB9号は身を翻しここから立ち去るためか、歩き出す。その瞬間――パァンッ!

 

「っ!?」

 

 ガシャンッ! 回れ左をして一瞬だけ自分のほうにB9号が無防備な正面を晒したのを見計らって、一条は狙撃銃を発砲。その銃弾はB9号が右手で隠すように持っていた計算機を破壊し、B9号の右脇腹にめり込んだ。

 

「…………」

 

 狙撃されたことに気が付いたB9号は、その視線を破壊された計算機から撃ってきた方向……一条へ移す。

 自分を狙撃し、計算機を破壊されたことに逆上したB9号は怪人体に変身。真っ黒な身体に白い服を着て、背中に一対の翼が生えている、まるでコンドルのような顔をした怪人に。

 

「ふんっ」

 

 勢いをつけるためか、少し大きく声を上げてジャンプしたB9号はそのまま猛スピードで飛行。変則的にジグザグ飛びながら狙撃銃を構える一条に体当たりを食らわせた。

 

「うわっ!」

 

 タックルを喰らった一条は吹き飛ばされ……螺旋階段の柵を乗り越えて落ちていってしまう。一条が螺旋階段から落ちたのを確認したB9号……ラ・ドルド・グは小さく頷くと、そのまま空遥か彼方まで飛び立っていってしまった。

 一方、落とされた一条は地上で変わり果てた姿を……してはおらず、螺旋階段のパイプを必死に掴んで落ちないように踏ん張っていた。両手がパイプを掴むと、今度は左腕を力点に右腕を伸ばして螺旋階段の柵に掴まり、そのまま勢いで左腕も柵に掴まり、腕に力を込めて身体を引っ張り、そして最後に右腕を伸ばして柵の手摺りに掴み……身体をその手摺りの上に滑らせて螺旋階段の上まで辿り着かせた。

 

「一条おおおぉぉ――っっ!!!」

 

 あとから覆面パトカーで駆けつけた杉田が名前を叫びながら、一条が休んでいる場所まで一気に駆け上がってきた。

 

「助かったかっ。よかった……下から見てたときはもう……」

「すみませんでした……」

 

 無事な彼の見た杉田は力が抜けて座り込み、急いで階段を走ってきたことによる疲れゆえに、荒い息を吐く。謝る一条だが、安堵と疲れで頭がいっぱいな杉田には聞こえちゃいない。

 

「もう少しで五代くんが来る! 後は俺たちだけだ……さぁ、行こう!」

 

 脚を叩いて促す杉田に一条は頷き、急いで階段を駆け下りていく。ユニゴがガドルの『ゼンゲビ・ビビブ』を喰らったのは、丁度その頃だった。

 

 

     ――――・――――・――――

 

 

「五代!」

「あっ、一条さん!」

 

 時刻は午前11時54分。2人が落ち合ったのはユニゴが立ち去って10分ほど経過したときだった。

 爆発ポイントだった工場跡地で、五代はビートチェイサーに跨って一条を待っていたのだ。

 

「第46号と第47号は?」

「それが……2人ともどこかに行っちゃったんです」

「どこかに行った?」

「はい」

 

 第47号は「確かめたいことがある」と言って、そして第46号ことユニゴは「またね」と言ってそれぞれ去っていってしまったことを、一条に話す。

 

「そうか……。ところで、どっちが押していた?」

「それは第47号でした。俺が来たときにはもう決着がついていたんですけど、ユニゴ……第46号がかなりの深手を負っていましたから」

 

 自分との戦闘ではちっともダメージを受けていなかったあのユニゴが、ほとんど一方的にやられて、ボロボロになって倒れていた。それは雄介にとって忘れられない光景だった。

 

「あの46号に深手を……それほどまでに強力なのか……」

 

 嫌な汗が一条の額に流れた。

 紫の金の力はおろか、赤の金の力すらまともに通用せず、神経断裂弾すら、ダメージを与えることはできても殺しきることができず、おまけに一度耐え抜いた攻撃は二度と効かない能力を持っていた第46号。そんな圧倒的な防御力を有した彼女を、自分の力のみで蹂躙した今回の第47号は間違いなく強敵であった。

 

「あとそれから、第46号が俺に頼み事をしてきたんです」

「頼み事?」

「はい。今はそのときじゃないけど、でも近いうちにそのときが来るから、そのときにやってほしいことがあると」

「やってほしいこと……一体なんなんだそれは?」

「……すいません。まだ、わかりません」

 

 すぐにどっかに行ってしまったために、具体的な内容を聞くことができなかった雄介。あの無表情だったユニゴがあんなに必死な顔をして、そしてほとんど一方的に自分の用件だけを伝えてどこかへ消えてしまった。それほどまでに、彼女は追い詰められてしまっていたのだ。

 

「一条さんのほうは何か、新しい情報は掴めましたか?」

「ん? ああ。B9号に対して、科警研で新しく開発されたマーキング弾を撃ち込むことに成功した。これで次にゲームが行われる場所や、集まって何かをしている場所を突き止めることができる」

「ということは、先回りができるんですね!」

「そうだ」

 

 本当なら、前回の犯行場所が全くわからないゲームをやっていた第46号に使いたかったのが本音だった。第46号の動きがあまりにも早過ぎて、完成する前にゲームを完遂されてしまったが、だからと言って使い道がなくなったわけではない。以前から他の未確認たちにピッタリ張り付いていたB9号に撃ち込むことで、今後の彼らの動きに対応させることができるのだ。

 ピィーッ!

 

『本部から全車! マーキング弾の反応分布から、敵の予測位置を割り出しました! 世田谷区駒沢のセントラルアリーナです!』

 

 笹山からの連絡がビートチェイサーの無線に繋がり、2人に伝わった。早速、マーキング弾の効果が現れ、B9号がいる場所がはっきりしたのだ。

 

「五代、行くぞ!」

「はい!」

 

 ビートチェイサーのキーを差し込んでエンジンを入れ、走らせる雄介。そしてそれに続くようにサイレンを鳴らしながら御馴染の黒い覆面パトカーを走らせる一条。

 行き先はただ1つ。世田谷区駒沢のセントラルアリーナだ。

 

 

     ――――・――――・――――

 

 

 時刻は正午12時ジャスト。世田谷区駒沢のセントラルアリーナにて。

 無人のアリーナ内のスタジアムに3人の人影が丁度、正三角形を作るようにして立っていた。

 

嫌な臭いだ(ギジャバビゴギザ)

 

 変な臭いに不愉快になったのは、今ゲゲルをしている未確認生命体第47号のゴ・ガドル・バだ。

 

「ドルドが、リントの戦士に汚されたからだ」

「…………」

 

 そんな彼に、臭いの原因を教えたのが2つ目の人影、ラ・バルバ・デ。そして3人目が、その臭いの発生源であるラ・ドルド・グだ。

 

「そんな奴がいたとはな……獲物として仕留めてみたいものだ」

 

 感心するガドルだったが、すぐにそんなものは晴れてしまう。ガドルにはどうしても、どうしても訊きたいことがこの2人に……特にドルドにあったのだ。

 

「聞きたい事がある」

「なんだ?」

「なぜ、ユニゴの乱入を止めなかった?」

 

 ドルドに厳しい視線を向けながら、ガドルはストレートに問いただした。

 

「確かにユニゴは『ラ』になった。……だが、だからと言って、なんでもしていいわけがなかろう。他人のゲゲルを妨害したユニゴを、なぜ止めなかった?」

 

 どんな理由があれ、どんな人物であれ、不正者には厳しい罰を与えるのがゲゲルの管理者であり進行役である『ラ』の役目だ。それなのに、あの場にはしっかりとドルドがいたはずなのに、明らかに不正な行為を行ったユニゴを止めようとせず静観していた。ガドルはそれが気になったのだ。

 

「バルバに、指示されたからだ」

「なんだと?」

「ユニゴがもし、おまえのゲゲルに割って入っても手を出すな、とな」

「…………」

 

 ドルドに信じられないことを告げられたガドルは、次にバルバのほうに視線を向ける。ゲゲル開始前に、最後の『ラ』の仕事の一環として、昇格したユニゴが付いてくることはバルバを通して知っていた。そしてそのバルバがユニゴに自分からドルドに付いて行くように提案したのも、ゲゲル開始前に挨拶してきたユニゴから伝わっていた。

 ますますわからなくなった。

 もしドルドの言うことが嘘でなく本当のことだとすれば、バルバは最初からこうなることがわかっていてわざとユニゴをドルドに付けさせていたことになる。ゲゲル進行役の『ラ』の2人がグルになって、ユニゴの自分のゲゲルへの妨害を後押ししたことになる。

 

「これはダグバが望んだことだ」

「ダグバが?」

「そうだ」

 

 どんなにガドルに厳しい視線を向けられても、全く動じずに涼しい表情を崩さないバルバは、少し面白そうに笑って続けた。

 

「奴はどうしても、変質したユニゴと戦ってみたいらしい。だから、私に指示を出してきた。ドルドと共におまえを見守らせ、その後にユニゴがなにをしても黙認しろ、とな」

「!」

 

 ガドルは目を見開いて驚いた。なんと『ラ』の2人とダグバがユニゴの暴挙を止めなかった理由は、ザギバス・ゲゲルを棄権し『ラ』となったユニゴを自らの意思で撤回させ、ザギバス・ゲゲルへ進ませるためだったのだ。

 その結果、まんまと彼らの思惑通りに事が進み、ユニゴはグロンギ族から離反。今の彼女は、ザギバス・ゲゲルへ進んでダグバを殺し、全てを終わらせようとしている。

 

「ユニゴは自分の意思で『ラ』になったはずだ。おまえたちも、自ら進んで『ラ』になったのだから奴の気持ちくらいはわかるだろう」

「だが、ユニゴの意思でおまえを妨害したのも事実だ。それに私は一度、ユニゴに忠告をした。だが、ユニゴはその忠告を聞かず、自らの疑問を探求し続けた。その結果がこれだ。私たちはユニゴの疑問の答えに辿り着くように、少し後押しをしたに過ぎない」

 

 ああ言えばこう言う。ガドルは、自分のゲゲルとユニゴの疑問に付け込み、利用したバルバやダグバに対しての怒りが膨れていく。しかし、ここで怒りをぶつけるわけにも行かず、握り締めた拳を解いて深呼吸をした。

 

「……いいだろう。こちらも、新たな力の強さを再確認できた。相手はユニゴだ。相手として不足はないばかりか、充分すぎる相手だった。それにあの程度の妨害、俺のゲゲルには全く以って支障はない」

 

 バルバたちでなくガドル自身に、自らの怒りをなんとかして沈めるために、言い聞かせるように目を瞑って呟くガドル。

 

「ゲゲルを再開する」

 

 少しして、ようやく怒りが収まったガドルは気持ちを入れ替え、目をしっかり開いてドルドに提案した。……が。

 

「ゲゲルは、やり直しだ」

「バグンダダが破壊された」

 

 「やり直し」宣言をしたバルバに続くように、破壊されたバグンダダを白い布から取り出してガドルに見せるドルド。

 ゲリザギバス・ゲゲルは殺害したリントの人数を、ドルドが数えたバグンダダによって算出するのがルール。よって、そのバグンダダが破壊された今、ガドルの今まで殺害したリントの人数の確認ができなくなり算出不能になってしまったため、振り出しに戻ってしまったのだ。

 

「…………」

 

 ブチンッ。なにかがガドルの中で切れた。

 

「いいだろう。……だが」

 

 ギロリとドルドを睨むガドル。その視線には明らかに、殺意が含まれていた。

 

「ゲゲルを台無しにした責めを負い、貴様には死んでもらう」

 

 ユニゴを利用して自分のゲゲルを妨害した挙句、バグンダダを破壊されて自分のゲゲルを完全に水泡に帰されたガドルはもう我慢できなくなった。怒りが頂点に達してしまったのだ。さっきまで我慢しようと抑え付けていた分、余計に。そしてその怒りの矛先を全て、バグンダダを壊されるという過失を犯したドルドに向けたのだ。

 そのガドルからの申し出を受けたドルドは。

 

「応じよう」

 

 二つ返事で了承した。それを見たバルバは、少し離れた場所まで歩く。あの2人の邪魔をしないようにするためだ。

 彼女が離れたタイミングを見計らって、ガドルとドルドはそれぞれ怪人体へと変身。片やコンドルの特性を備えた怪人に、片やそれに対抗するために瞳の色を青く変色させて俊敏体と化したカブトムシの特性を備えた怪人に。

 ドルドは両手で胸の装飾品をそれぞれ1つずつ引き千切ると、それをトンファーのような武器に変え、ガドルもまた、胸の装飾品を1つ引き千切りそれを黒い棍棒のような武器『ガドルロッド』に変えた。

 

「ふんっ!」

「ふっ!」

 

 共に得物を構えて駆け出す2体のグロンギ。

 今日だけで二度目の、『ゴ集団』のトップと『ラ集団』の実力者の戦いが始まった。

 

 

     ――――・――――・――――

 

 

 東京都品川区、品川火力発電所。

 時刻は午後12時11分。

 ガドルとドルドの一騎打ちが行われている時間、そこに1つの小さな人影が脚を運んでいた。

 

「ガドルを倒せないと……ダグバには勝てない……」

 

 少し破けてしまったワンピースを着て、身体の至る箇所に火傷のあとがある人影の正体は、約30分前にガドルとの戦いに敗れたラ・ユニゴ・ダだった。

 もう完全にダメージは癒えているらしく、しっかりとした2本足で、いつものふらふらとしたどこか無気力な歩き方でそこに訪れていた。

 

「3時間……ううん、その半分……1時間半で、済ませる」

 

 ガドルが1ヶ月かけて手に入れた力をたったの1時間半で手に入れようとするユニゴ。

 無茶を言っているように聞こえるが、ユニゴにはガドルと違って自身の身体限定で絶大な力を発揮する物質を再構築する力(モーフィングパワー)、通称『適応能力』がある。自分の身体を一番に理解しているユニゴは、クウガとの戦いで、そして先程のガドルとの戦いで受けた電気に対する抗体が完成していることを知っていた。

 後は自分の身体に馴染ませるように、適度な量の(・・・・・)電気を浴び続けることができたら、ガドルと同じあの力(・・・)を手に入れられる。耐性があり、ある程度の電気を吸収することができる身体になったユニゴは、それに掛かる時間を脳内計算して、多少の無理をすれば1時間半で充分と踏んだのだ。

 

「ダグバ……後悔させてあげる……」

 

 頭がいいユニゴは、もう自分が答えに近づいたことがダグバの策略だということに気が付いていた。自分と一緒にいたドルドが仲裁に入らなかった時点で、監視しているドルドが黙認し、更に自分に話を持ちかけたバルバが彼に指示を出したことを悟ったのだ。当然バルバが自分から進んでこんなことをするはずがない。だとすれば、バルバにそうするように指示を出した黒幕がいるということ。

 と、なればまず真っ先に思い浮かんだのがあの戦闘狂(ダグバ)だった。

 自分がザギバス・ゲゲルに進まないことを快く思わなかったダグバがバルバに指示を出し、自分の疑問の答えに近づけさせたのだ。自分が答えに近づけば、絶対にダグバを止めるためにザギバス・ゲゲルに進んでくると見越して。

 ガドルが黒幕と言う可能性もあった。自分のゲゲルの難易度を上げるためという名目で。だが、彼の性格上そんなことをするとは思えないし、それに黒幕だとしたらあのときにとどめを刺さずに見逃すのは変だ。

 よって、バルバやドルドを操ることができる『ン』の称号を持つダグバの仕業だと、ユニゴは気が付いた。

 

「必ず越える。そしてそのあと……」

 

 ダグバの手の内で踊らされているのはわかっている。

 しかし、もうユニゴには後戻りはできないのだ。自分のやってきたことが間違いだと気が付いてしまった以上、ユニゴは止まらない。

 遠い目をしながら決意を固めたユニゴは、鋭く目を細めて発電所の中へ入っていった。

 

 

 

 

     ――To be continued…




 「ラガバ ギグドゴシ ビ バスドザバン バルバ」
訳、まさか いうとおり に なるとはなの バルバ
 「まさか、バルバの言う通りになるとはな」

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。