仮面ライダークウガ-白の執行者-【完結】   作:スパークリング

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はい、こんにちは。

作業用BGMを聞きながら書いていたらこんな時間に出来上がってしまったでござる。
タイトルなんですがこれしか浮かばなくて……すみません。
というわけでどうぞ。


第25話 『一条』

 時刻は午前10時24分。

 栃木県風早小学校。雄介はそこに訪れていた。

 ここは、今の雄介を育て上げた恩師がいる学校。心の整理をするために、一条に断ってここにきたのだ。

 

「いいですね、(ひらく)くんの字」

 

 以前東京に1人で家出をしてきた少年……霧島拓が書いた『希望』の2文字を見て、雄介は隣の席に座っている人物に話しかけた。

 雄介と同じ笑顔が良く似合う、人柄のよさそうな男性。彼こそがかつて、五代兄妹が通っていた立花小学校の元教師であり、今はこの風早小学校の教師をやっている雄介の恩師、神崎昭二。戦場カメラマンだった雄介の父親の訃報に接した雄介に、今の彼のトレードマークであるサムズアップを教えた人物であり、雄介が2000年までに2000個の技を作るという約束をしたのも、この神崎だ。彼がいなければ今の五代雄介はいなかったであろう、雄介の人生観に多大な影響を与えた人間だった。

 神崎は雄介の言葉に「ああ」と頷いた。

 

「なんていうか見てるとこう、『希望』って感じがしてくるだろう」

「あっはは。そのまんまじゃないですか、先生。俺は見てるとなんかこう……『希望』って感じですねやっぱ」

「なんなんだよおまえ!」

「いや、『希望』って感じですよね」

 

 それ以外の気の利いた言葉が浮かばず、結局同じセリフを繰り返してしまった雄介。少しの間2人で笑いあい、いよいよ本題に入った。

 

「先生。今日はちょっと、お伝えしたいことがあって」

「ん? どうした」

 

 表情が真剣なものに変わった雄介を見て、神崎も聞く姿勢を取った。

 

「俺、明日までにこの戦いにケリをつけようと思っているんです」

「! ということはもしかして……未確認生命体たちの殺戮は、もうなくなるのかい?」

「はい。もう、起こることはないと思います。第46号が、そう言っていましたから」

「第46号……ああ、あの『悪人』ばかりを狙っていた」

「はい。彼女は……嘘を言うような、悪い子じゃありませんから」

「……そうか」

 

 少し安心したように、神崎は笑う。雄介が「悪い子じゃない」と言った人間が、悪者なわけがないからだ。

 

「はい。明日までにきっちり決着をつけて、そしたら俺、しばらく冒険に行こうと思っています」

「! そうか」

 

 神崎は心の底から嬉しく感じた。また雄介が、自由な冒険に出ようとしている。もう雄介が、こんな悲しい戦いをする必要はない。暴力を振るう必要がない。それは、未確認生命体の殺戮がなくなる以上に、嬉しかった。

 

「今度は、いつ会えるかわからないんで、それだけ言いに来ました。……じゃあ先生。これからも」

 

 グッと笑顔で、雄介はサムズアップを自分に向ける。ああ、大丈夫だ。いつもの五代だ。これなら、絶対に大丈夫だ。この戦いを終わらせて、元気に冒険の旅に出かけるだろう。

 

「ああ! みんなの、笑顔のためにな」

 

 神崎もまた、笑顔でサムズアップを返した。

 

 

     ――――・――――・――――

 

 

 時刻は午後1時19分。

 千葉県柏市、科学警察研究所。通称、科警研。

 雄介は次に、そこに訪れていた。

 

「そっか。……そのまま冒険に出るんだ。寂しくなるね」

 

 丸眼鏡をかけた白衣を纏った女性が、本当に寂しそうな表情を作る。

 彼女は榎田ひかり。この科学警察研究所の責任者で、『特殊マーキング弾』や『神経断裂弾』を開発し、また、ゴウラムの保存や、新しい力を試すための部屋まで貸し出し、今までの戦いに尽力してきた人間の1人だ。

 出されたコーヒーを飲みながら、榎田に戦いが終わったらそのまま冒険に出ることを伝える雄介。ふと机の上を見ると、そこには子供が写った1枚の写真が。

 

「おっ、これが(さゆる)くんですか! かわいいっすねぇ! どうですか、冴くんとは!」

「うん? まっ、いい感じかな」

 

 榎田には冴という1人息子がいた。前の夫とは離婚して、引き取ったたった1人の息子だ。しかし、立て続けに起こる未確認生命体の事件のせいで、分析やら開発やらで碌に家に帰ることもできずに家事が疎かになってしまい、約束していた授業参観にも行けなくなってしまって、寂しい思いをさせていたのだ。

 

「でも、最近も家に帰れてないんですよね」

「うーん。あっ、でもね。ある程度まで進んだところで家に帰って、一緒にホットケーキ作ったの」

「おっ」

「失敗したけどね」

「あぁー……」

「あっそうそう、散歩も行ったよ」

「おっ。……失敗したけど?」

「えぇっ!? ちょっ、ちょっと、散歩でどうやって失敗するってのよ! どぶに嵌っちゃうって言うの?」

 

 『散歩で失敗』という場面を想像し、どぶにではなくつぼに嵌ってしまった榎田はおなかを抱えて笑い、雄介もつられて一緒に笑う。何気ない会話をここまで楽しくさせてしまうのは、きっと雄介の才能なのだろう。彼を取り巻いている人間たちは、誰もがみんな、どんな事情があっても最後には笑顔になるのだから。

 

「いやー、でもよかった。俺も負けずに頑張りますよ」

 

 座っていた椅子から、雄介は立ち上がって最後の戦いを望む。それを見た榎田は「大変だよね」と、少しくらい顔をした。

 

「未確認と、早く終わらせたいと思ってこれを作ったけど」

 

 雄介から視線を外した榎田が見つめる先にあったのは、パソコン画面に移されている『強化型神経断裂弾』のデータ。昨日、未確認生命体第47号ことゴ・ガドル・バを倒した直後に、ようやく完成した『神経断裂弾』を更に強力にしたもの。ライフル用にまで大きくしてしまった新型神経断裂弾を、威力はそのままに普通のリボルバー式の拳銃で使用できるようにしたものだった。

 

「『強化型神経断裂弾』、でしたっけ?」

「うん。だけど……それが私の役目とはいえ、こんなもん作っちゃって良かったのかな……」

「え?」

「今までもずっと、前よりも強い武器を作り続けてきたけど……必ずそれよりも強い敵が出てきて。またそれを殺すために新しいの作って……」

 

 もともと、科学捜査・犯罪防止・交通警察に関する研究や実験を行うとともに、警察内外の関係機関から依頼された証拠物等の科学的鑑識・検査を行うことを主な任務だった榎田。

 しかし、未確認生命体が出てきてから、ずっと彼らを殺すことを目的とした兵器ばかりを作り出してしまったことに対し、本当にこれを作っても良かったのかという疑問が彼女の中に出来てしまったのだ。未確認生命体を殺せるということは当然、人間なんて一発で殺せるわけで。下手をしたら、軍事目的に悪用されてしかねない、そんな危険性も秘めていたのだから。もしかしたら自分が作った武器のせいで、戦争が勃発してしまうのかもしれないのだから。

 

「大丈夫! もうじき、戦いが終わりますから! そしたら、今度作るのは冴くんとの、思う存分のホットケーキですよ! ね?」

 

 グッと、相変わらず似合う笑顔を浮かべながらサムズアップをする雄介。

 なんでだろうか。そんな彼の言葉と笑顔を見ただけで、榎田は少しだけ安心することが出来た。何が大丈夫なのか、根拠はない。だけど不思議なことに、それでも何故か、安心することが出来た。

 ……そうだよね。今ここで悩んでも仕方ないよね。今はとにかく、この理不尽な殺人ゲームを阻止することが大事なことだよね。一時の気休めなのかもしれないけど、それでも榎田にとっては自分のやってきたことが正しかったと思うには、自信を持つには充分なものだった。

 

「うん!」

 

 榎田もまた、笑顔になってサムズアップを返した。

 

 

     ――――・――――・――――

 

 

 時刻は午後2時41分。

 東京都新宿区、関東医大病院。

 雄介は次に、そこに訪れていた。

 

「そうか。……ま、はっきり言って、俺は山より海が好きだ」

「え?」

「だから行くなら、冬でも泳げる海にしとけ。俺としては、着いて行くならそのほうがいい」

「椿さん」

 

 少し経って、雄介と椿は可笑しくなって吹き出してしまった。

 

「またまた、冗談ばっかりもう」

「やっぱり、バレちまったか」

 

 戦いが終わったらそのまま冒険に出ることを聞いた椿は、まるで自分もついていくようなことを口走ってしまったのだ。無意識のうちに。なんだかんだ言っても、椿も榎田と同じく、雄介がどこかに行ってしまうことを寂しく感じているのだ。出会ってから1年も経っていないけど、それほどまでに雄介と過ごした時間は濃く、そして同時に楽しい時間だった。

 

「だがなぁ、おまえのその身体に関しては、俺は世界でただ1人のかかりつけの医者だぞ」

「はい。ほんっとうに、感謝しています」

 

 傷ついて倒れたときは常に適切な処置をしてくれて、自分の身体のことを気遣ってくれて、偶然とはいえ金の力をくれて、しかも自分の我儘に応えて更なる力『アメイジングマイティフォーム』まで覚醒させてくれた。椿は雄介にとって、感謝してもしきれない人間の1人なのだ。

 

「まぁ、俺はいいさ。あいつがな……不器用なんだよあいつ」

 

 遠い目で、椿はどこかにいる誰かを見つめる。雄介は「え?」と首を傾げた。

 

「この1年、奴らに殺された人たちの遺体を、数え切れないくらい見た。夢や希望や、可能性に満ちていたその人たちの命がもう戻らないと思うと……どうしようもなく腹が立った。だから……」

「大丈夫です、椿さん」

 

 誰のことを不器用と言ったのかはわからなかったけど、今椿が言おうとしていることはわかった。「だから」の後に続くセリフ。それはきっと、「おまえまで死んじまったら、俺は憤死しちまうぞ」とか、そんなことだろう。どこまでも、自分の身を案じてくれる人だと、雄介は自分を見てくれた医者が椿だったことを誇りに感じだ。

 

「本当に、色々ありがとうございました」

 

 サムズアップを椿にする雄介。それを見て安心したのか、椿はふっと笑う。そして……「そういえば」とあることを思い出した。

 

「おまえに1つ、隠していたことがある。未確認生命体第46号……奴の最大の特徴だ」

「えっ? 第46号の最大の特徴、ですか?」

「ああ。第46号は……ある特別な能力を持っている。一条が、おまえにあのとき戦線離脱を伝えたのは、その能力のせいだ」

 

 あのとき。一条が自分に戦線離脱を告げたあのとき。いつも以上に一条が厳しく的を射たことを言ってきたことを、雄介はずっと気になっていた。きっと、色んな事情があるんだろうなと思っていたが、まさかそれも自分に関係しているとは思わなかった。

 

「第46号は……一度受けた攻撃を、二度と受け付けない能力を持っている」

「え……それってつまり……」

「ああ。一条の話で、おまえの赤い金の力が敗れたって聞いた。つまりもう、あのときのおまえには、第46号に対してなす術はなかったんだよ。……いや、1つだけあった。それは『凄まじき戦士』になることだ」

「!」

 

 そうか。だから一条さんは……。雄介は全部を理解した。

 

「当然、そんなことをさせるわけには行かない。だから一条は、おまえを第46号の戦いから身を引かせて、このことは俺と一条、そして榎田さんの3人だけの秘密にしたんだ」

「そうだったんですか……」

「悔やむことはない。そんなバカげた反則みたいな能力、初見じゃどうすることも出来なかったんだからな。おまえのせいじゃない」

 

 ここまできても、椿は自分を庇ってくれる。雄介は今更ながらに、自分がたくさんの人たちに心配され、そして大切に思われていることに気がついた。

 一条に、桜子に、椿に、杉田に、桜井に、榎田に、神崎に、玉三郎に、奈々に、妹のみのりに、ゴウラムの研究をしていたジャンに、そして……あのグロンギの少女にも。

 

「いいか? もしこれからまた第46号と戦うのなら、必ず一撃で仕留めろ。それか、奴の身体が適応する前に力で押し切れ。奴は思った以上に、しぶといぞ。限界を超えた上で、さらにその上にいかなければ倒れないほどに、『生』に執着している頑丈すぎる身体を奴は持っているぞ」

 

 『生』に執着した頑丈すぎる身体。それを聞いた雄介は少しほっとした。そんな身体をしていれば、本当に第0号を倒せるかもしれない、と。

 

「……はい。わかりました。俺、そろそろ行きます。最後まで、ありがとうございました」

「ふっ。冒険から帰ってきたら、また顔を出せ。健康診断程度なら、無料でやってやる」

「はい!」

 

 グッと、雄介は椿にサムズアップ。

 椿もまた、笑顔になってサムズアップを返した。

 

 

     ――――・――――・――――

 

 

 東京都江東区。

 時刻は午後3時41分。

 一条はとある廃ビルまで訪れていた。

 なぜ彼がこんなところに赴いたのかというと、1時半頃にこの江東区内の防犯カメラに未確認生命体B1号と思われる人物を捉えたからだ。

 その報告を受けた一条は現場に急行して桜井と合流。『強化型神経断裂弾』が込められた拳銃片手に二手に分かれて、B1号の捜索をしていたのだ。そして辿り着いたのが、この廃ビルだった。別に、この廃ビルにB1号が居るという連絡を受けたわけではない。ただ本当に、なんとなく気になったのだ。理由としては『刑事の勘』というやつであろうか。だが決して侮ってはいけない。『刑事の勘』と『女の勘』の2つの勘だけは、時に絶大な鋭さを生み出すこともあるのだ。

 螺旋階段を上っていくと……3階の扉が、何故か破壊されていた。廃ビルの中に入った一条は、拳銃を右手に、懐中電灯を左手に構えて探索を開始する。雨漏りが酷く、廊下は水浸しで、強い雨の雫の音が外ほどとは言わないものの響いている。そして……1つの部屋の中に入った。

 そこは、大量の本が山積みになっている部屋だ。なぜここに入ったのか。それは、ここのドアが最近、誰かが開けたような痕跡があったからだ。しかも唯一、雨漏りがしっかりしている。

 

「…………」

 

 より一層、警戒を強くした一条。懐中電灯で本の背表紙を見ると、そこには絵画や骨董についての資料がほとんど。当やら美術品関連の本を取引していた会社だったらしい。

 

「……!」

 

 と、一条はあるものを発見した。それは謎の模様が書かれている1枚の毛皮のようなもの。そこに描かれている模様の内の2つには見覚えがあった。

 真っ白なバラのような紋章、そして4本角のものは……究極の闇を齎す者『ダグバ』の紋章だ。ということは、これは間違いなく……と。

 カツン……カツン……。

 

「!」

 

 何者かの靴音が、この廃ビル内に響き渡る。しかもあろうことか、どんどんこの部屋に近づいてきている。一条は手に持って懐中電灯を消し、静かに後ずさって物陰に少しだけ隠れた。

 カツン……カツン……。迫りくる靴音に少し恐怖を抱きつつも、覚悟を決めて息を潜める一条。靴音は2階から3階へ、踊り場から廊下へ、そして廊下からついにこの部屋の前まで辿り着いて……ギィ……。閉まっていた扉を開けて、この部屋に入ってきた。

 靴音の主はさっき一条が見ていた毛皮が置いてある場所まで到達し、その姿を現す。

 

「……やはり、おまえか」

 

 主は白い服を着た、額には白いバラのタトゥのある女……未確認生命体B1号こと、ラ・バルバ・デだった。ここに一条がいたことはわかっていたらしく、そして、その一条が自分に拳銃を向けているのも承知で、余裕そうに微笑みかける。

 

「『究極の闇』の目的はなんだ? ここに書かれていることと関係はあるのか? 答えるんだ」

 

 左手に持つ、例の謎の模様が描かれた毛皮をバルバに見せた一条は詰め寄る。しかし、それでもバルバは余裕そうな笑顔を崩さない。

 

「リントも、私たちと等しくなるだろ――」

「おまえたちと我々は違うッ! おまえたちのような存在が居なければ――」

「だがおまえは、リントを狩るための、リントの戦士のはずだ」

「…………」

 

 セリフを遮って否定しようとする一条だが、さらに遮られて否定されてしまった。リントを狩るための、リントの戦士。バルバの言おうとしていることはすぐにわかった。

 確かに、自分たちはリント(悪人)狩るための(逮捕する)リントの戦士(警察官)だ。それは、とある未確認生命体と酷似していた。

 未確認生命体第46号、ラ・ユニゴ・ダ。世間に迷惑ばかりをかける『悪人』ばかりをターゲットとし、善良な一般人には一切手を上げなかった未確認生命体。死者は3996人というとんでもない人数を叩き出したが、一般市民と警察官の死亡人数は0人だ。バルバは警察というものを、ユニゴとやっていることが全く同じ『リントを狩るためのリントの戦士』と認識していたのだ。

 

「……答えろ。これにはなんと書いてあるんだッ!」

 

 まさかの反論に一瞬だけ押し黙ってしまう一条だがすぐに我に返って、追究を続けるために毛皮をバルバに近づけた。……その瞬間。バルバは右手を使って一条を突き飛ばし、そのまま毛皮を力ずくで奪ってしまった。そしてそのまま、一条の方を見向きもせずに再び歩き出す。

 

「ぐっ!」

 

 とんでもない力で飛ばされた一条の身体は、部屋の隅に置いてあった段ボール箱の中に突っ込み痛みに苦しむが、視界からバルバが消えたことに焦って無理矢理段ボール箱から脱出。バルバを追いかける。普通に歩いていたはずのバルバだが、気がつけばもう廃ビルからは抜け出しており、公道を傘も差さずに静かに歩いていた。螺旋階段から飛び降りて、着地したのだ。

 もうこれ以上逃がしてたまるかという情熱から、一条は急いで螺旋階段を駆け下りた。その間にもどんどんバルバは自分から離れていく。ようやく地面まで辿り着いた一条は、バルバが向かっていった方へと走り……見つけた。海沿いをゆっくりと歩く、バルバを。

 走りながら拳銃を構えた一条は……バシュッバシュッ!! バルバ目掛けて『強化型神経断裂弾』が込められた拳銃の引き金を2回引いた。その2発の弾はバルバに直撃し、そして貫通した。

 

「っ」

 

 撃たれたバルバはビクッと立ち止まり、そして一条のほうへ、身体を振り向かせる。

 バシュッバシュッ!!

 

「っ、っ」

 

 さらに一条は発砲。その弾もまたバルバの身体を捉えた。

 3発、そして4発目を撃たれたバルバは衝撃からか、痛みからか後ろに半歩下がる。が、バシュッバシュッ!! まだ一条による狙撃は終わらなかった。5発、ラストの6発。拳銃に込められていた『強化型神経断裂弾』を全てバルバに喰らわせた。

 撃ちきった一条は銃を下して、荒い息でバルバを見つめる。

 

気に入った(ビビギダダ)おまえとはまた会いたいものだ(ゴラゲド パラダ ガギダギ ロゴザ)

 

 口から血を流しながらやはりまだ笑っているバルバは、グロンギ語で面白そうに告げた後、

 

「ユニゴを……よろしく頼んだぞ」

 

 日本語で、真剣そうな顔で一条に言った。

 その後、力が抜けたように目を閉じ、僅かに身を捻らせたバルバは……海のほうに倒れていく。バルバの身体は海に投げられ、大きな水飛沫を上げた。飛沫が収まると、もうそこにバルバの姿はなく、彼女の赤い血が付いた謎の毛皮だけが荒れ狂う海の上に流されていった。

 未確認生命体B1号ことラ・バルバ・デは、一条の前から姿を消した。

 

 

 

 

     ――To be continued…


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