アジ=ダカーハ改めザッハーク(人間形態の時はそう呼べと言われた)と別れて白夜叉と白雪姫はヨーロッパに着いていた。
よくよく考えると大陸を横断しているぞ。
現在は妖怪と悪魔の街の宿に宿泊している。
「白夜叉様。おにぎりください」
「・・・白雪よ。夕食はさっき食べたばかりだぞ?」
「いや、パンでは無く米食べたいです。パンはボソボソして牛乳が無いと飲み込めません」
確かにこの時代のパンはボソボソしている。しっとりパンなどはなさそうだ。
仕方なく能力でおにぎり(何故か具がこんにゃく)を渡した。
なんともうまそうに食べるものだ。・・・ちくしょう!可愛いじゃねぇか!
「それにしても白夜叉様。何故我々は他国の言語が分かるのですか?」
おにぎりを頬張りながら白雪姫が尋ねる。
「今更感丸出しだの・・・それは、具がこんにゃくだろう?それは、『翻訳こんにゃく』と言うものでの。食べれば一週間はあらゆる言語が分かるというこんにゃくだ」
まんまドラえ○んだが気にするな!
一週間置きにこんにゃくが出てたのはそのためかと納得する白雪姫。
今夜は満月。しかも月が紅い。何か魅力的で不思議な夜。そんな夜でも太陽運行を司る白夜叉にとっては自分の世界である。
窓の外をふと見ると、ざわざわと騒がしい。この窓の下は路地裏になっておりイザコザが多発するものだが、この騒ぎはそんな感じではなさそうだ。
声を聞くと、
『ぐへへ、可愛いねーちゃん。おいら達と楽しい事しようゼェ!』
『断る』
『威勢がいいねぇ!俺、嫌いじゃないぞ!』
『断る』
どうやら強姦しようとしてるらしい。大抵アタフタするのだが、この女性は違う。気丈である。
「白雪」
「はい?」
「おんしは襲われかけている女を見かけたらどうする?」
「当然助けますが?」
「よし。今から助けてくる」
え?という白雪姫の声を無視して窓を開けて着物の裾を抑えて飛び降りた。因みに五階である。
「ひゃっほぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉ!」
「「「え?」」」
落ちてきた白夜叉は強姦2名の上に落下する。
女性は呆然と落ちてきた東洋系の銀髪美女を見た。
「すまぬ。クッションと間違って落下してしまった☆」
「「嘘つけ!」」
なんだ生きてたのか。流石妖怪はタフである。見た目人狼のようだ。
「ウホッ、いい女。俺らと一緒に、」
「「ヤラナイカ?」」
その刹那、白夜叉は強姦2名の股間を蹴り上げてどっかに飛ばした。どこいったかは知らん。
「さて、」
白夜叉は女性の方を見る。
「こんな夜更けに路地裏に居るのは不用心極まりないぞ?」
その女性は、美麗な金髪を特注のリボンで結んで、紅いレザージャケットに拘束具を彷彿とさせるロングスカートを着用していた。さらに、口元から鋭い犬歯が見えている。
「(ちょっと待て。こやつ・・・見た目が問題児のレティシアにそっくりではないか!)おんし、名前はなんという?」
「私は・・・レティシア」
白夜叉の想像通りでしたよ。
「性の方は?」
「性・・・捨てた」
「は?」
「つまり、家を出奔したという事だ」
よく見るとレザージャケットの胸の部分にこの土地の妖怪貴族を表す印があった。
日本の家紋みたいな物だと思えばいい。
「ともかく、こんな夜更けに女の一人歩きは危ない。真上が私の泊まってる部屋だから今夜はそこにいるといい」
レティシアの話を詳しく聞くと、レティシアはスカーレット家という吸血鬼の一族のお嬢様で、両親が吸血鬼主義(吸血鬼は凄い偉い。尊いという考え)を自分に強要させようとしたため、家が嫌になって飛び出したという。
「本当に、あの両親傲慢でな。誇り高い?あれはただ周囲を見下してるだけだぞ」
「そんなに嫌っておるのか・・・」
それから小一時間ほど彼女の愚痴をうんうんと頷きながら聞いていると、外から地響きと建物が壊れる音と叫び声が聞こえてきたので白雪姫が窓の外をみて、驚愕した。
「し、白夜叉様・・・」
「どうした?」
「り、龍が・・・馬鹿でかい龍が・・・!」
白夜叉も外を見ると、
「Guruuuu・・・」
山かと見間違う程の巨大な龍、巨龍が宿の白夜叉の部屋の窓から中を覗いていた。
「えぇぇぇぇぇ!龍種の純血だと⁉︎」
龍種の純血。神霊、星霊と並ぶ最強種の一種で超巨大な体を持つ。
巨龍の力は絶大であり、彼らにとって「ただ動いただけ」の飛翔は嵐風を起こし全ての生物を天空へ巻き上げ、疾走すれば暴風を、雷雨を、地鳴りを起こす。また彼らの鱗は一枚一枚から巨亀や大蛇などの新種を作りだす。
「あぁ、すまない。あれは私のペットでな・・・」
レティシアの発言で三秒間沈黙。
「「ペット⁉︎」」
「とはいえ、だいぶ気が立ってるから早急に止めねば」
巨龍のをなだめるのって一体どうすれば・・・
「こんなところで暴れられたら大惨事だぞ!気絶させれば止まるかの?」
「ん?そうだろうな・・・おい待て」
白夜叉はレティシアの返事も聞かずに飛び出し、
「オンドリャァァァァ!!!」
全力でぶん殴り頭を浮かせる。まだまだ止まらない。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!」
とにかく殴り殴って殴って。これだけ下から殴り続ければいつかは脳震盪で気絶すると考えていた。
が、世の中そんなに甘くなかった。
白夜叉は蝿を叩き落とすかのように巨龍にはたき落された。
(体格差激しいすぎてダメージが通らん!殺すのは簡単だがレティシアのペットとあってはそれも出来ぬ!・・・生命の波長を読み取ってからの・・・クラップスタナーだ!)
白夜叉は巨龍の目の前に飛び出し、
「スゥッ・・・ガアァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」
思いっきり叫んだ。さけび声は空気をビリビリと震えさせ、街中の陶器、ガラス製品を砕いた。
すると、巨龍は白目を剥いて気絶した。
白夜叉が使用したのはクラップスタナーと呼ばれる技術である。生命体の意識には波長があり、波の山が大きければ大きいほど敏感だ。その最も大きな波の山の時に音波の最も大きな山をぶち当てる。ビビるとかのレベルではなく上手くすれば気絶にまで追い込める。ようするに、すごい猫騙しである。
巨龍は図体がでかいのでかなり大きな声を出さないといけない。
気絶した巨龍に近づく白夜叉。そこにレティシアと白雪姫がやってきた。
「まさか腕力で頭蓋をかちあげた挙句に声だけで巨龍を止めるとはな・・・」
「流石ですね。ところで、レティシア殿の巨龍が暴れた原因は・・・」
白夜叉が巨龍の口の中を覗くと、奥歯の部分が異常に傾いている。これは・・・
「・・・親知らず・・・だの」
原因。親知らずが変な風に生えたから。
白夜叉は巨龍の口の中に入り、親知らず(牙)を引っこ抜いた。血がドバドバ出るが傷口を熱で消毒、能力で作った糸(後で消えるタイプ)で縫合した。
「さて、これで親知らずの治療はしたからおとなしくなると思うの。ところで、この巨龍どうやって飼ってたんだ?」
「普段は霊的存在で空中に漂っている。それを召喚して実体にしているんだ」
因みに、レティシアの能力には『龍を操る程度の能力』が有る。これで飼うことができたのだろう。
「この街も破壊されたことだしの。私達は別のところに行くかの。今日はおんしのペットのおかげで中々楽しかった。そうだ、餞別をやろう」
白夜叉はギフトカードから極夜双頭剣を取り出した。
「これには極夜の力がこもっている。夜行種である吸血鬼にはうってつけだろうの」
「それはありがたいが・・・いいのか?」
「いいのだ。私は、」
白夜叉は引っこ抜いた巨龍の親知らず(牙)を指差す。
「これを貰っていく」
龍種の純血の遺骨や遺物は、その存在そのものが強力な物だ。
レティシアは東に向かうそうで、白夜叉とは正反対の方向だ。
ここでお別れだが、また会える気がした。