東方白夜王   作:ザイソン

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ラスト・エンブリオ 閉鎖世界の場合

でかい壁に囲まれた都市があった。出口は無い。

 

否、出口はあったのだがそれは標高数千メートルという頂きに作られた小さな小さな鉄門だ。

 

ここを出て外に出るためには壮絶な旅に出なければならなかった。

 

しかし、誰も挑戦するものは居なかった。

 

別に無駄だと思った人は居ない。

その価値を見出せなかったわけでもない。

 

しかし、

 

その都市に住む人々はそれ以前に、挑戦する気が起きなかった(・・・・・・・・・・・・)

 

理由を率直に述べると、この都市は完成された"理想郷(ユートピア)"だった。

 

ある学者は理想郷の定義を簡潔にこう述べた。

『国民の全てが平均的な所得を貰い、差異の無い家屋を建て、胸にささやかな信仰心を秘めて、日々を安寧に過ごせる場所である』と。

それが理想郷の定義ならばこの都市こそ理想郷だった。

 

物資の均等化が行われているここででは宝石の石ころが同価値で扱われる。つまり、物価という概念が無い。

あらゆるものが望むだけ手に入るここでは希少性というものは存在しない。

ゆえに、独自性は育まれず、個が存在しないここでは闘争を行う意味が皆無。

 

だから、敗者も勝者もない。完全な平等社会に競争社会という概念が無い。

 

ゆえに彼らは幸せだった。

不幸でないのなら幸せだろう。

 

しかし、ここを作り上げた創設者はそうは思わなかった。

 

『ここは・・・閉鎖世界(ディストピア)でしか無い』

 

いつ来るかもわからない、この世界を終わらせる勇気ある者を待ち続けている。

 

 

 

グレートブリテン島(現在のイギリスの一番でかい島)

 

白夜叉と白雪姫がグレートブリテン島に上陸して3日程で見つけたのは、

 

「・・・壁?」

「でかいの・・・」

 

天まで届くかのような巨大な壁だった。てっぺんが見えない。

 

(ディストピアが初めて単語として現れたのがイギリスの人の口からだったからここにきたが・・・ビンゴかもの)

 

都市を一周ぐるっと囲ってみたが、入り口は存在しない。

 

「・・・入れませんね」

「壊す・・・のは論外として・・・この壁を飛んで越えるのは・・・」

 

疲れるに決まっている。

 

「よし!決めたぞ!」

 

白夜叉は立ち上がって白雪姫を見る。

 

「今日はおんしは留守番!」

「えぇ!何故⁉︎」

「この壁は侵入者を寄せ付けぬ物。入ったら何が起こるかわからん。コソコソ行動するにも、苦手だろう?」

 

反論できなかった。白雪姫は諦めてこれを了承した。

 

「よし、行くぞ!」

 

全力ジャンプして取り敢えず成層圏まで飛ぶ。

壁は標高5,000mもあり、どうやって作ったのか知りたかった。

 

壁の上に乗って飛び降りる。

 

飛んでふんわりと着地した白夜叉は潜入の伝統であるダンボール箱に入った。

 

「こちら白夜叉。都市内部に潜入した」

 

お前は誰に言っている?

そしてそれは某金属の歯車で有名なスネークの真似か?

【ほっとけ】

ナレーションに干渉すんな。

 

白夜叉は都市の様子を見て唖然とした。

 

行き交う人々は皆同じ服。同じ髪型だった。個性が無い。店も無い。ただ、同じような家屋がずらっと並んでいる。

 

段ボール箱に入ったまま移動しても同じような光景。

 

「この都市の人々は不幸そうには見えない・・・だが、「幸せそうにも見えない。だろ?」ッッッ⁉︎」

 

段ボール箱が持ち上げられ白夜叉の姿が露わになる。

 

段ボール箱を持ち上げたのは、高身長の好青年に見える、灰色の肌で紫の瞳で黒い髪、蝙蝠の様な羽が四枚の、人ならざる者。

悪魔と呼ばれる種族だった。

しかもその力は強そうで、大悪魔と呼べるだろう。

 

「お?お前さ・・・白夜叉って名前だったり?」

「如何にも私は白夜叉だが「やっぱり?マジかヒャッホウ!」

 

大悪魔は目をキラキラさせてはしゃぐ。

 

「・・・おんしはいったい・・・」

「ん?俺は、ディストピア。このユートピア(ディストピア)の創設者death!」

 

語尾にdeathつけんなや。

 

「ディストピア⁉︎閉鎖世界のか⁉︎」

「この俺こそ人類最終試練の一角!最強の神殺しのディストピアにて候!」

 

やけにテンションの高いこの悪魔、ディストピア。

 

「ふーん・・・やっぱ俺たちと同じ境遇なのかな・・・よし!白夜叉!今から俺んちで茶飲みだ!紅茶と緑茶のどっちがいい?」

 

文だとそうでも無いがこれは心理的に茶飲みに付き合うことになります。

 

「・・・紅茶で」

「よしきた!」

 

ほら、茶飲みに付き合うことになった。

 

ディストピアの家、この場合はモノクロの館に近い。

館は標高数千メートルもある所に設置してある出口の隣にあった。

 

「・・・で、ようこそモノクロ都市へ」

「何故モノクロ都市なのだ?」

「人々が無個性だから」

「・・・一つ、聞いてもいいか?」

「どうぞどうぞ」

 

ディストピアは紅茶を淹れながら白夜叉の質問に答える。

 

「・・・おんしは、転生してディストピアになったのか?」

「うん。そうだね。その口ぶりは自分もそうだと言ってる感じだね」

「少し前にザッハーク、アジ=ダカーハとあったがそいつも同じ転生して三頭龍になったようだ」

「え⁉︎閣下(アジ=ダカーハの愛称)にあったのかい⁉︎いいなぁ!」

 

ディストピアは四枚の羽をパタパタさせながら瞳を輝かせる。

 

「やっぱり、白夜叉も閣下も俺たちと同じ転生者か。どっかの二次創作の神様転生みたいだな!」

「私は日本でリアル神さまやっとるがな・・・ん?俺たち(・・)だと?」

「あぁ、行ってなかったな。この都市のすべてのエネルギー、主に作物を育てる生命エネルギーを無限に作り出すヤツがそう。問題児シリーズを知ってるなら、わかるぞ〜」

 

無限にエネルギーを生み出す。これで白夜叉はピンと来ていた。

 

まさか、

 

同時に二人の人類最終試練に巡り合うとは。

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