和耶戦争終戦から三日後、仏門立会いの元、出雲大社でヤハウェは今後の処遇について話し合っていた。敗者であるヤハウェに発言力はあまり無いのだが天照にきちんと相手の言い分も聞くように白夜叉は伝えてある。
白夜叉は一時的に神ではなくなったので出雲大社に入れず外でお子様状態になって、望遠鏡で女湯を覗いていた。現在、女湯には大国主命の正妻である須勢理毘売命が入浴している。
問題児シリーズの白夜叉ならば堂々と突撃しそうだが中の人が違うので変態のベクトルもまた違った方向にある。この白夜叉は『Yes!エロス、Noタッチ』の原則を持つ変態である。
暫くして出雲大社からヤハウェが出てきた。白夜叉は望遠鏡を仕舞ってヤハウェの方を向いた。
「さてヤハウェよ。布教するにあたって一つ忠告がある」
「なんだ?と言うかやはり布教の許しは白夜王の入れ知恵だったのか」
白夜叉はニシシと笑った。
「正直言うと、おんしらにとって日本で布教しないほうが幸せかもしれん。日本人に聖書の教義は肌に合わん。唯一神という考えもな・・・」
日本人は神道、八百万の神を信仰しており多神教である。あらゆるものに神性を見出す事のできる人間であるためキリスト教の唯一神も外国の神の一柱と考える。
しかしキリスト教は他の神の存在を認めない。故にあまり浸透しない。
仏教は形を変えて馴染んでいったがキリスト教は"形を変える=異端"であるため馴染める形に変えることができない。
キリスト教の教義ではキリスト教を信仰しないと地獄に堕ちるという物が存在し、先祖崇拝を基本とする日本社会では、「キリスト教徒になって自分が救われても、先祖が救われないのでは意味がない」と考えられた。
禁教とされる可能性も十分にある。
別にキリスト教が悪いというわけでは無い。その教義は素晴らしい。
日本人が悪いというわけでは無い。ただ、肌に合わなかっただけである。
「それでも、布教する覚悟があるのであるならば私は止めない」
「・・・そうか。ところで白夜王よ」
「ん?」
「随分と小さくなったのだな」
「・・・こっちのほうが楽での」
ヤハウェはそう言って此処を後にした。
後に白夜叉の忠告は現実のものとなる。江戸幕府によって禁教とされることになった。
ヤハウェは特に介入することもなく、事を見守っている。しかし日本には時折訪れている。それには訳があった。
メタトロンが戦争前に行方不明になった。そもそも斥候部隊としてメタトロンと兵を日本に向かわせたのだが戦争前に連絡が途絶えた。日本神群は特に何もしていない。
メタトロンはサンダルフォンと並び立つ強い天使だ。殺られたとは考えにくい。
そして、ヤハウェはついに見つけた。しかしその姿は変わり果てていた。
十字架に磔にされ虫の息。瀕死の重傷だったという。幸いにも一命を取り留めた。が、犯人は不明。
その後、日本神群にも似た様な事件が起こった。
夜刀神(祟り神)が簀巻きにされ、吉備津彦命(桃太郎のモデル)が海に浮かんだ。謎の事件だ。両者共に死んではない。
そして、日本神話において最強クラスの妖怪、八岐大蛇が殺られた。
そもそも八岐大蛇は須佐之男に退治されたが死なずに生き延びた。その分力は落ちているだろうが簡単に殺られるはずがない。
八岐大蛇が殺られる時に須佐之男は犯人の殺気を感じ取り駆けつけたのだが逃げられたそうだ。しかし、正体はわかった。
太古より存在し黒い太陽と須佐之男が称したその名は、空亡。
闇から現れる黒い太陽という中学二年生大暴れの設定を持つ謎の妖怪である。
この妖怪が八岐大蛇を殺害した二日後、伊吹弥彦が幻想郷から姿を消した。
これでこの章は終わりです。この話は前話に纏めておけばよかったとすこし後悔。お陰で次章にすこし触れてもこんなに短い!なんということでしょう!
次章は・・・伝承に詳しい人は察しが付くかもしれませんね、弥彦が幻想郷から姿を消した理由。あと空亡はゲームの『大神』とは関係無いので悪しからず。そもそも大神とか最近知ったしやった事もないのですよ。
そろそろ弥彦に視点を移さないと忘れ去られるかも。と言う訳で次章は弥彦がキーパーソンです。八岐大蛇もキーパーソンかも。死んだけど!色々伝承の独自解釈とか目立ち始めそう。