入試が終われば自由なんですがね。
月の都は科学技術が発達しており2000年代の地上の比べても雲泥の差だ。
見た目古い扉は触れずに開き、本に書かれた文字は拡大縮小自由自在。まるでドラえもんの生まれた未来都市のようだ。
それにも関わらず神霊や妖怪の存在が信じられていることがかなり特異であった。
月の都は中国の都市に近く、開祖の月夜見曰く、高天原に似せて作った結果、偶然にも中国っぽくなったという。
月夜見は名目上、月の都の王であるが実質的な権力は持たない。現代日本の天皇制に近い形を取っているようで、政治は人間に丸投げである。
武力はかなり高く"宇宙戦○ヤマト"や"スタ○ウオーズ"に酷似した武装を使っている。なるほど、これだけあれば普通の神霊であるならば太刀打ち出来ない。
「しっかし外敵のいない月でこれだけの兵器が必要かの?月夜見よ」
白夜叉はお子様の姿に戻ってヤマ○風の戦艦を見ながら呆れていた。一体何と戦うつもりなのだろうか。
「なんだ?ガミ○スと戦いながらイスカ○ダルに放射線除去装置を取りに行くのか?」
「・・・なんだその壮大なお伽話は?」
「超科学技術を駆使して空間跳躍するつもりか?」
「白夜王が何言ってるかさっぱりだが科学技術だけで空間跳躍とか無理だ」
白夜叉は史上最速の速度で月夜見に振り返って『そんな馬鹿な』と言いたげな瞳で見つめた。
「いや・・・そりゃ神の御技とか霊能力とか使えば大丈夫だが科学技術のみで空間跳躍するならこの宇宙にあるエネルギーの十倍は必要だ。永久機関とかない限り無理だ」
白夜叉の夢を木っ端微塵に打ち砕いた。ついでに時間旅行も無理だと告げられてうなだれた。
立ち直って月の都の最大の広場に出た。そこは一面の花畑で中央には一人の女性の銅像が建てられていた。
近くの塚には、『大英雄
「・・・まだ地上に人間がいた頃、私が月の都を開く時に、ある問題が起きた。世界すべての妖怪達が攻めてきた事があった。私は先に月にいたから逃れたが地上にまだ残っていた人間達が妖怪達に襲われた。軍隊が足止めしたが数が多すぎた。これでは人間達が月に逃げる時間が足りない」
月夜見は銅像を見上げながら話を紡いだ。
「そこに、当時軍隊の総裁である、彼女、輪廻朔が他の軍隊を全て下がらせて、ただの一人で妖怪に立ち向かった。結果として彼女を除いて月への移住は完了した」
「・・・それで、彼女は?」
月夜見は涙を流しながら答えた。
「最後に、地上都市の地下にあった廃棄されたはずの核爆弾を使って妖怪諸共自爆。死体すら残らなかった。私はここに来るたびに、胸をかきむしられるようになる」
輪廻朔は、月夜見の良き理解者だった。友人の少ない月夜見にとって初めての親友と呼べる存在だった。
月夜見は、彼女を見殺しにしたと考えていた。もう会えない、声も聞けない。後悔の念ばかり押し寄せてくる。
普段の白夜叉ならば笑って励ますのだが、月夜見の繊細な性格もあって何も言えなかった。
今日は月夜見の自宅に一泊する事になった。月夜見が料理を振る舞ってくれた。味は美味しかったし栄養バランスもばっちり。
しかし白夜叉は不満だった。
「・・・どうせなら可愛いメイドさんの手料理が良かったの・・・何が悲しくて野郎の飯なんぞ食わねばならぬのだ・・・美味しかったけど」
「フッフッフ、何を勘違いしている白夜王?いつ私が野郎の手料理だと言った?」
白夜叉は疑惑と不満の目を向けた。白夜叉の言いたいことを言うなら、『何言ってるんだこの戯け』。
「私は・・・女だ!!!!」
「・・・は?え?」
「女だ」
「な、なんだってえええぇぇぇぇえええ⁉︎」
白夜叉は今までの人生で一番驚いていた。ぶっちゃけ白夜叉になってた時より驚いている。
「そう!その表情!その驚愕な満ちたその表情を見るのが最高に気持ち良い!」
「そんな馬鹿な⁉︎前々から女顔だなとは思っていたがまさかガチモンのかッ⁉︎そんなッ⁉︎胸は⁉︎」
「月にはこういう格言がある・・・『貧乳はステータスだ、希少価値だ』とな」
「姉の方は結構あるのにの」
「だからこそ、希少価値なのだ・・・ってなんで服に手をかけて・・・まっ、まさか!」
「いや、信じられないから降ろして確かめようかと」
白夜叉は月夜見の服を降ろそうとするが月夜見の必死の抵抗に阻まれる。
「ならばこうだっ」
「え?ちょ、燃すな!熱い熱い!」
「あっちょっと見え———」
全焼すると同時に白夜叉の頭にげんこつが降ってきた。
白夜叉、今晩の収穫。げんこつで気絶しているふりして撮影した月夜見の赤面ヌード写真。
かつてのお宝写真、天照の入浴シーン、須佐之男のたくましい筋肉(これは月の本屋で写真集にして売ったら結構儲かった)。
月夜見の性別については"裏話"の回で書きましたので対して驚きとかはないと思います。