外の世界では明治時代に入った。すなわち文明開化の時代。
人間が妖怪を畏れなくなった。安定した清潔な生活。夜道を照らす明るいガス灯。怪異を否定する思考。不思議に頼らない科学技術。
妖怪は恐れが無ければ消滅する。まぁ自然現象に対する恐れ(地震、雷、水害等の本能的に恐るもの)から発生する妖怪は消えることは無いがそれでも多少なり悪影響が出る。
白夜叉は妖怪であるが、種族が星霊という部類であり正確には妖怪とはまた違った存在である。
妖怪と分類するのは人間であるため若干ずれたものが入るのは仕方ない。例えば星霊とか幻獣とか。
話を戻そう。幻想郷は外の世界とは隔絶した存在であるため江戸時代の政策の影響もほとんど無ければ年貢の義務も無かった。ゆえにまだ文明開化の波は来ないが、それも時間の問題だろう。
妖怪たちの方では『今こそ妖怪の底力を見せ、恐怖を思い出させる時』とし戦争を目論むものがいる。
当然、神ではあるが妖怪(若干ずれてはいるが)であるが故に誘いがかかる。
「・・・馬鹿な真似はよした方がいいの」
「怖じ気付いたか!」
「あんたも妖怪だろう!」
「畏れと共に霊術すら捨てた人間なんざ十把一絡げよ!!!!」
「さぁ、それはどうかの・・・人間の知恵というのは侮れん。おんしらが束になってかかった所で確実に対策を考えつくであろう」
白夜叉の言い分に少々納得し、引き下がった者も一部おり、それは人間によって傷つけられた者、小妖怪や木っ端妖怪に多い。
しかし、大妖怪やプライドの高い妖怪は違う。
「ならば我らこそ貴様を越え、人間共を駆逐する者であると知らしめてやろう!」
一匹の妖怪が白夜叉に向かって牙を向け、襲いかかってきた。それを白夜叉は懐から取り出したあるモノで迎撃した。
バン!
その音とともに妖怪の肩は撃ち抜かれた。
「グッ・・・それは・・・?」
「何、人間が作り出した武器にすぎん」
それは、ゾロターンS-18/100。つまりは対戦車ライフルである。
この時代にはそんなモノは無いが人間の力を見せつけるには十分である。
さすがに大妖怪クラスになるとミサイルやダイナマイト持ってこないといけないが。
「これはほんの一例だぞ?さらに言うとまだ人間には神がついておる。神も信仰が無くなれば消えるがそれに関してまさか神界が対策を立てておらぬと思うのか?」
神霊は信仰が無くなれば消える。妖怪への恐怖心とともに神への信仰も消えていく。
しかし神群にはそれを回避するためのシステムを作り上げている。
白夜叉を初めにとする全権領域の者(白夜叉、釈迦等)や、各神群の主神、最高神、創造神(オーディン、ゼウス、ヤハウェ)、賢神と呼ばれる神(ミネルバ、思兼神)が集まり、総力を結集してアカシックレコードの改変を行った。
アカシックレコードとは元始からのすべての事象、想念、感情が記録されているという世界記憶の概念が記されているもの。便宜上、記されていると表記したが紙に書かれているモノではなく世界に刻まれているモノ。すなわち万有引力などの絶対に覆らない法則そのものである。
アカシックレコードを改変するのは上記の神が集まっても小規模にしかできないし、その一端しか観測することができない。
アカシックレコードの改変によって神霊の存在に多少の修正がされた。
『神は信仰によって発生し、無くなれば消滅する。しかし、神界にいる場合最悪消滅は避けられる。
同じ神群に所属している場合、信仰を分割し与えることができる』
さらに信仰に関するハードルもかなり下げられた。
ここまでくればなんとかなる。地上にしか住むことを許されてない神(神奈子、諏訪子、大国主、地蔵菩薩)もいるがそこは信仰の分割でなんとかなる。
そして、多くの神群は一つの神群にまとまった。二千年代の人間の国際連合のように、
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さて、このように神様大改革の事実を知ってなお、人間に戦争を仕掛けようとする者が多くいた。
そこで、紫と協力して博麗大結界を張った。
博麗大結界は"常識の結界"であり、外の世界の常識は幻想郷の非常識に、外の世界の非常識は幻想郷の常識と置く論理結界。物理的なものではないため科学兵器で壊す事はできず、人間が人間の常識を信じている限り如何なる高性能レーダーでも結界とその内部を認識できなくなるのである。
ちなみに、そのエネルギーの供給源はコッペリアである。コッペリアが謀反を起こし、供給を切った時のことも考えて供給源が失い次第、次の供給源として白夜叉が選ばれるようなシステムにしている。
そしてその結界の起点は博麗神社であり幻想郷をすっぽり覆うため神社を幻想郷の端っこに移動。そのおかげで参拝客が減った。
博麗大結界は綻びが出やすい。システム上。そのため博麗神社と紫達八雲組が共同管理アンド修復を行うことになった。
これで万全かと思いきや、そうは問屋がおろさなかった。
「やはりそうなりましたね」
白雪姫はそう言いながら眼下の騒動を見ている。
博麗大結界によって幻想郷から外の世界に出るのも困難になり、人間を思うように襲えなくなった妖怪達が暴動を起こした。
人里を襲おうとする者がいないだけ良しとする事にした。
地底にもなんらかの影響がありそうだが、何があっても地底の主では無いがヤクザの組長的役割をしているらしい鬼の弥彦がなんとかしてくれる。白夜叉と弥彦は長くあってないが。
幻想郷には食人を行う者もいる。そんな妖怪のために外から人を攫ってくる事にした。
手法は、死を切望した者を富士の樹海を含む自殺の名所に引き寄せ、そして紫の能力で神隠しするというモノ。あとは勝手に幻想郷に迷い込んだ者で賄う。
そうなると、飼われている状態に近い妖怪は必ず弱体化する。それを最小限に抑えるための手段を白夜叉は考えていたが、まだ時期尚早として保留とした。
「さて、幻想郷も少しおとなしくなったの。変化の無い生活は妖怪、人間にとっても悪影響。弱体化の対策と並行して考えていた案は、いつ公布してもよい状況になるのか・・・」
白夜叉は手に一枚の羊皮紙を持ち、呟いた。