例外少女とギルガメッシュのFate/EXTRA 作:雨宮ラキ
決戦場は大きな船の上だった。周りは暗闇と言ってもいいほど暗い海の中で、沈没船をイメージしてあるのだろうことはすぐにわかった。
「燈月よ、貴様は貴様らしく戦えば良い。」
「うん、わかった。」
「天宮!貴様には生きてるのが耐えられないくらいの赤っ恥をかかせてやるよ。」
「おや、勝つだけでなく恥までかかせると?強欲だねぇ慎二。いいよ、ロープの準備をしておこう。」
「間違っても手を抜くなよエル・ドラゴ、この僕に歯向かったんだ、かける情なんてひとつもない。」
「アタシは情けなんざ持ち合わせてないよ。」
「情けをかけられるほど小物になったつもりはないから、安心して本気でかかって来てよ。こっちも……出せる限りの力を出して戦うからさ。」
ギルガメッシュは宝具を今は使えない。そのため、本気とは言わないでおいた。
「さあ、破産する覚悟はいいかい?嬢ちゃん。一切合財、派手に散らそうじゃないか!」
ギルガメッシュは剣をとり出し、ライダーは銃を構え、向かい合う。
「フッ…雑種は雑種らしく、跪いてればいいものを!だが、これも面白い。かかってくるが良い、海賊!」
ライダーはギルガメッシュの言葉が終わると同時に弾を放つ。
「その程度………フッ!」
ギルガメッシュはその弾を剣で払い、そのままその剣をライダーに向けて投げる。
「おいおい、武器を投げる奴がどこに居るってんだ。流石、規格外だねぇ。
手を抜いちゃ要られないね。…派手に使いきるとしようか!――
ライダーはそれをかわし、自身に攻撃力向上の補正をかける。
―が、ライダーの後方で素っ頓狂な叫び声が聞こえた。
どうやら、ライダーのかわした剣が慎二のほうに飛んでいったようだ。
「っわあ!おい、ライダー!お前がかわしたせいで僕に飛んできたじゃないか!」
「と、済まないねぇ慎二。でも、かわさなきゃ今頃やられてる。慎二でもかわせるだろう?」
「ギリギリだよ!髪少し斬れたから!」
「髪ぐらい、問題ないよ!」
ライダーは慎二の方を向き、怒鳴る。
「どこを見ているか!余所見ばかりしていたらすぐに首を斬られるぞ。」
ギルガメッシュはライダーが少し慎二の方を向いた隙に近付き、新しく取り出した剣で斬る。
「っ……危ないねぇ。」
が、それを、間一髪でかわし、空振った為にできた隙に追い打ちをかける。
それをギルガメッシュはほんの少し下がることでかわす。
そして、ギルガメッシュは一秒も開けずに剣をまたも振るう。
さすがにかわせないと思ったのか、ライダーは銃でソレを防ぐ。
「甘いわ!」
そう来ることを読んでいたのか、左手に隠し持っていた短剣でライダーの顔を突く。
「っ…くぅ。」
ライダーは顔を横に傾けて回避しようとするが、ギルガメッシュは真ん中を狙っていたために完璧に回避することは敵わず頬に掠れてしまう。
この近さならば銃よりも物理の方が良いのかと思ったのか、ライダーは銃の持ち手の部分でギルガメッシュに殴りかかった。
まさかの攻撃に戸惑ったギルガメッシュは瞬時にかわせず、肩に当たってしまう。
…と言っても、鎧のおかげか大したダメージは受けなかったが。
至近距離だと、戦いづらいため、二人はお互いに距離をとる。
「ギル、大丈夫?きついなら回復するけど。」
「問題無い、これぐらいで回復してたら貴様の体力が持たんぞ!」
「チッ…手強いなお前。まぁ、いいや。どうせ勝つのは僕なんだからね。」
慎二は手元を弄り、礼装を発動させる。
その名の通り、敵のサーヴァント…この場合はギルガメッシュの幸運を低下させるコードキャストだ。
それを燈月は気付いたがかけられたコードキャストを払い除ける礼装など持ち合わせてはいない。
打開策を考えようとするが思い浮かばない。
ライダーは慎二のコードキャストを待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべる。
「っ…まずい!ギル、防御に入って!」
「砲撃用意!藻屑と消えな!」
燈月がそう叫ぶが、少し遅かっただろうか…
ライダーのスキル"カルバリン砲"が弾をギルガメッシュに向けて撃ち放っていた。
撃ち終わったカルバリン砲からでる煙が爆風で舞い、周りが灰色に染まり上がる。
「…ギル、大丈夫?」
煙が視界を覆っている中、キラリと輝く黄金の鎧が見える。
その鎧は所々しかみえないが影を見るにどうやら立っているようだ。
「ああ、問題ない。今回ばかりはいい判断だったぞ、褒めて遣わす。」
「そう、でも一応回復しておく!」
それに安心した燈月は黒く染め上げたマフラーに付属されていたコードキャスト、healを使いギルガメッシュの体力を回復させる。
「ちゃんと喰らってくれたみたいだねぇ。」
「防がれてるじゃないか!」
「そうみたいさね。判断力の高い嬢ちゃんだ。」
少し経ち、薄くなったと言っても、見えて精々サーヴァントの二人だ。それよりも奥にいる慎二の姿は見えない。それは向こうも同じようでギルガメッシュが攻撃を防いだことはすでに確認済みのようだ。
「…無理でもかわしておくべきだったか、我の鎧に傷ができてしまった。
――スキルは使わずしても勝てるが、この怒りをぶつける為に使おうぞ!」
ギルガメッシュは叫び、ライダーへ突撃する。
剣を振るった。そう思った瞬間、視界を覆っていた灰が割かれ、視界がクリアになった。
ギルガメッシュの振るった剣はライダーの肩を切り裂き、血が滴る。
「ぐ――っぅ。」
このスキルは"風を放つ"の上位互換のようなもの。今朝、燈月が協会に行き、魂の改竄をしてもらった際にギルガメッシュの元に戻ってきたスキル…"嵐を払う"だ。
「っ…ライダー!」
慎二は慌てているが、攻撃食らっていて肩だけというのは幸運な方だ。
なぜならギルガメッシュは首を狙い放ったのだから。
……ライダーが幸運だからなのか、ギルガメッシュの運が低下しているからなのかはわからないが。
「流石さねぇ、英雄王。」
「ほう…我の真名にたどり着いておったか。」
「当たり前だろ?なんたって、天才の僕が居るんだからね!」
フフンと胸を張りドヤ顔をする。
戦場でこんなにも自分らしく振る舞える彼はある意味すごいのかもしれない。
「…なら、ライダーの真名に辿りつけた私も天才かな。」
ポツリと呟いた言葉は慎二には聞こえなかったが、ギルガメッシュには聞こえたようだ。
「そんな訳無かろう!燈月、貴様は凡人以下だ。」
「凡人以下!?」
「記憶がないのだ。当然であろう。」
そんなふうに燈月と会話をしているが、ギルガメッシュはライダーの銃弾を燈月の方に行かないように弾きながら、あらゆる武器を投げて応戦している。
「…ちょっと傷付いたんだけど………まぁいいや。――はっ!」
燈月はできる限り近付き、何処からか刀を取り出しライダーに向けて、投げる。
ギルガメッシュはその刀が自身の横に来る瞬間を狙い、似たような武器をいくつか投げる。
「…っちぃ!」
ライダーはそれを辛うじて避けようとするが、燈月の投げた刀をかわすことはできなかった。それも、ギルガメッシュのフォローが上手かったためだ。
燈月が投げた刀は守り刀…これも礼装の一つだ。スキルスタンという効果が付いているため、それをまともに食らってしまったライダーはスキルは使えないはずだ。
「ちぃと、辛くなってきたねぇ。…シンジィ!―そろそろ勝ちにいっていいかい?」
「ああ、見せてやれよエル・ドラゴ!僕の力の程ってやつをさぁ!」
「っ…しまっ…!」
慎二の余裕そうな顔、そして先程の言葉。
今さっき、燈月がスキルは使えないようにしておいた。
―――だが、宝具は使える。
「消費量が半端無いけど…やるしかない!」
それを瞬時に確信した燈月はギルガメッシュをコードキャストで回復させ、相手の宝具が終わった後、いつでも回復させられるように準備する。
燈月が感付いたならば、ギルガメッシュも宝具を使ってくと気付いている。
いや、燈月が感付く前にギルガメッシュのほうが気づいているだろう
ギルガメッシュは急ぎで作った時ような防御体制とは違う、本格的な防御体制をつくる。
「アタシの名を覚えて逝きな!」
ライダーは空高く跳び、どこから現れたのか、大きな海賊船…あれがゴールデンハインドだろう…に乗り込む。
「テメロッソ・エル・ドラゴ!
――――太陽を落とした女、ってなぁ!」
その言葉と共にライダーが手を振り下ろすと、船に付いている大砲から幾多もの爆撃がギルガメッシュに降り注ぐ。
「っ―おのれ!」
本来の力を取り戻せてない故か、全ては避けきれず、攻撃を食らってしまう。
ギルガメッシュは船から飛び降りたライダーに向かって、沢山の武器を投擲する。
その間に燈月が回復する。ギルガメッシュは燈月が回復させるということを見越して、標準がブレないように飛び掛かりたいのを抑え、その場で武器を投擲してくれたのだろう。
燈月が回復したと同時に、ライダーにとびかかった。
「ッチィ!こいつはヤバイね。」
ライダーはギルガメッシュの斬撃を防御することに専念したためドンドン圧されていく。
「何やってるんだよライダー!」
そこですかさず慎二がコードキャストを使う。
「―スタンか、やってくれるな、雑種!」
慎二がコードキャストを使った瞬間、ギルガメッシュはその場で止まる。
動きたくても動けない。と言うような状況のようだ。
「っ―ギルガメッシュ!」
慎二が使ってきたコードキャストはshock。相手に麻痺付属のダメージを与える技だ。
そこまで麻痺―スタンは続かないが、この場合はまずい。
ギルガメッシュは動けないが故に防御も出来ず、ライダーの連続攻撃を食らっている。
弾がなくなったのだろう、ライダーが銃弾をためているときに運良くスタンが解けた。
相手にも疲労が見える。そろそろ残り体力も少なくなって来たのだろう。
それをギルガメッシュが見逃すはずも無く、手にしていた槍をライダーに投げる。
「何!?もう解けたっていうのかい!」
「我を舐めるではない!そんな小細工、通用せんわ!」
ギルガメッシュがスタンを食らっていた時間は十五秒ほど。確かに通用しないと言えばそうなのだろう。
驚きなのか、身体が固まってしまったライダーの胸にギルガメッシュの投げた槍が突き刺さる。
「………っかは!」
ライダーは口から血を吐き出し胸を抑える。刺さっていたはずの剣はもうどこにも姿がなく、ポッカリと空いた穴から向こうの景色が見える。
「……こりゃ…いいの、貰っちまったね…。」
「う、嘘だろ?ライダー!おい、ライダァ―!」
慎二はぺたりと座り込んで、悔しさに顔を歪ませる。
「な、なんで僕のサーヴァントが負けるんだ!どう見ても僕のほうが優れてる!天才の僕が!こんなところで負ける訳にはいかないのに!」
慎二はキッとライダーを睨み付け言葉を続ける。
「そ、そうだ!全部お前のせいだぞエル・ドラゴ!お前が不甲斐ないからこんなことになったんだ!」
「うん?…なんだい、ボロボロのアタシに鞭打つかい。さっすがアタシのマスターだ。」
ライダーは胸を抑えたまま慎二に軽口を叩く。
流石英霊というところか、一度死ぬという体験をしているからなのか慎二のように恐怖に顔を歪ませたりはしない。
「そうだ!全部!全部全部!お前のせいだ!」
「済まないねぇ慎二。もう少し戦ってやりたいところなんだけど…アタシ、心臓撃ち抜かれちまってねぇ。そろそろこの体も消えるみたいだ。」
「な、なんだよそれ、勝手に一人で消える気か!?僕はお前のせいで負けたのに!」
「そうさね…負けたのはアタシのせいかもねぇ。運がなかったのか、アタシが弱かったのか
――ま、なんでもいいさ。人生の勝ち負けに真の意味での偶然なんてありゃしない。
敗者は敗れるべくして敗れる。向こうのマスターのほうが劣ってるように見えて、なにかがアタシらには足りなかったんだろうね。」
「な、何いってんだよ、僕は完璧だった!
こんなはずじゃなかったのに…とんだハズレを引かされた!」
つまらない、つまらない!そういう慎二が燈月には哀しそうに見えた。
「つまらんな、かえるぞ、雑種よ。早く帰って寝るとしようではないか。」
「……そう、だね。もう見てられないし……。」
帰ろうとするギルガメッシュの後をついていく。が、それを慎二が呼び止める。
「ま、待てよ!お前に話があるんだ。僕に価値を譲らないか?」
「…何言ってるの?慎二。負けた人間は次に進めないっ……て、そう言峰が言ってたじゃない。」
「はぁ?お前らが勝ったのはどう考えてもまぐれだろ!」
そう言って慎二が近付いてくる。が、それを拒むかのように赤い壁が出現した。
「な、なんだよこれ!」
が、慎二が驚いていることはそれじゃなかった。慎二の手が、足が、どんどん消えていっているのだ。――まるで、敗者は要らない。そうムーンセルが言っているかのように。
「僕の体が!消え、消えていく!?し、知らないぞこんなアウトの仕方!」
「っ、慎二!」
燈月は慎二に駆け寄ろうとするが、それを壁とギルガメッシュに阻まれる。
「よせ、こうなってしまってはもう元には戻らん。憐れなだけだ、帰るぞ。」
「で、でも!」
慎二のそばにいるライダーもどんどん消えていこうとしてる。
「……聖杯戦争で敗れたものは死ぬ。シンジ、アンタもマスターとしてそれだけは聞いていたよな。」
「そ、そんなの脅しだろ!?電脳死なんてある訳!」
「そりゃ、死ぬだろ普通。戦いに負けるってのはそういうことだ。」
燈月の視界がグニャリと歪む。幾ら、慎二の言動や行動に苛ついたとしても、彼は予選で友人だった男だ。
敗者には死――それは分かっていた。理解していたはずだった。なのにこんなにも誰かが死ぬのが辛いのはなぜなのだろう。
「――燈月。行くぞ。」
「……っう、ん。」
ギルガメッシュが燈月のマフラーを引っ張って出て行く。
「た、助けてくれよ!なぁ!僕は、まだ死にたくないんだよ!まだ8歳なのに!なんで!僕が死ななきゃいけないんだよ!」
燈月が決戦場から出るとき、慎二のそんな叫びが頭に残って離れなかった。
ああ、やっと、一回戦が、終わりましたよ!
二回戦からは少しでも短めに出来ればいいんですけどね。流石にゆっくりしすぎました。
いくら原作通りに進めるって言ったって流石に全部見ていくのはあれですね。
二回戦はもう少しサクサクーっと、見やすいように書けるように頑張りますね!
燈月ちゃん、慎二にワカメやらなんやら言っておいての最後は悲しみの涙です。
つまりはツンデr…。
………ツンデレキャラはギルガメッシュだけで良かったはずなんだけどな…あれぇ。
な、何はともあれ、確か一章は終わりだったはずです確か。もしかしたら次回も一章かもしれません。