例外少女とギルガメッシュのFate/EXTRA 作:雨宮ラキ
「おい、気を付けろ。嫌な気配がする。」
ラニに言われて三種類の遺物を燈月が用意した次の日の夕方。
燈月がアリーナに行こうと廊下に出ると、ギルガメッシュが忠告してくる。
「確かに…何だか視線を感じるね。でも学校で死闘は禁止されてるし…大丈夫じゃない?」
「万が一のことがあるだろう。用心しておけ。」
「……わかった。」
燈月はギルガメッシュに言われた通り、慎重に一階に行くための階段を降りる。
"慎重に"していても人間、誰しも怖気づいてしまうものである。
来る。そう思っていても対処できないものが絶対にあるのだ。
燈月自身、そうだった。
一階に降りると同時にくる殺気。
それに恐怖してしまい足が…いや、身体全体が動かなくなってしまったのだ。
内臓が働くことをやめたのかと錯覚してしまうほどだ。
だが、それは杞憂に終わる。人っ子一人いない静か過ぎる廊下で聞こえてくるのは自身の心臓の音。
「狙われているようだ。…小癪な手を使うサーヴァントよな。
燈月よ、合図をしたらアリーナに向かって走れ。そこで返り討ちにするぞ。」
ギルガメッシュの発した音は静かな廊下に反響して燈月の耳に入った。
それが幾分か心のゆとりになったのだろう。自分には頼もしい仲間がいると。
ギシギシと…ロボットのような音がなるのではないかと思うほどゆっくりと頷く。
燈月は落ち着こうと目を閉じる。聞こえてくるのはギルガメッシュと自分の規則正しい呼吸と、バクバクと落ち着かない心臓の音。
深呼吸をし、落ち着かせる。
ハァー…そう息を吐き、目を開けると同時に聞こえてくるのはギルガメッシュの声。
「落ち着いたようだな、では走れ!」
その声に感化されるようにいつの間にか足が動き出す。
全速力で走り、アリーナの扉を開け、飛び込むように入る。
「ここで戦うのは些か問題がある。広い場所まで向かうぞ。」
いつもなら燈月の後をついていくのだが、今回は燈月の前を走り、エネミーを薙ぎ払いながら押し進む。
二回はこの道を通っているためか、あまり入り組んでいないためか、すんなりと広めの場所に行けた。
「予想通りだな。わかりやすくて助かったぜ。」
その声と共に風を切る音が聞こえてきた。
息も絶え絶えで先ほどとは違う意味で心臓が煩い燈月はその主に顔を向ける。
がそう思った時にはすでに遅く、あと2メートルというところまで矢が近づいてきていた。
「っ!?」
だが、ギルガメッシュにはそんなもの見切っていたのだろう。
矢を弾くようにして剣が振るわれ、その剣を敵に向かって投げる。
――カツン!
剣が何かに当たり、威力が半減されながらも的に向かう。
ギルガメッシュが投げた寸前であればかわせなかっただろうが、その時よりも確実にゆっくりとしていた剣は軽々とかわされてしまう。
「っちぃ!バレてたか。…流石にこれは分が悪ぃ。退散と行きますか!」
そうポツリとつぶやく声が聞こえ、まさかと思い声の主が居たであろう場所に目を向ける。
だが、そこには誰も居なく、ギルガメッシュの剣があるだけだった。
「…初めてアーチャーなんだなってことが思い知らされたよ。」
その的確な射撃能力に惚れ惚れしてしまう。
今までも、その能力は活躍してきたのだが今回のは頭が2つほど飛び出るような活躍だったからだろう。
「フッ…これぐらい我にかかれば容易いことよ。」
「そうだね。まあ、英雄王って言われるぐらいなんだから当たり前か。
…何はともあれ、これで敵のクラスがわかったね。」
「そうだな。アーチャー以外有り得んだろう。」
燈月たちは今回入手した情報を確認し帰路につく。
個室に戻った燈月は椅子に座り、持ち帰ったものを取り出す。
大きめのハンカチで何重も包まれたソレはアーチャーが燈月を射ろうとした時に使った矢だった。
「貴様は何を持って帰ってきておるのだ。」
「みてわかるでしょ。」
「そういうことは聞いておらん。」
呆れながらも、取り出した矢をしげしげと眺める。
燈月が矢を触ろうと手を伸ばしたが、ギルガメッシュに腕を捕またため、触ることは出来なかった。
「毒が塗られている。ココでは問題ないとは思うが万一ということがある、触るではないぞ。」
「毒?……やっぱりイチイかな。んー……わからないこと悩んでてもあれだ。今はわかることを考えよう。」
燈月はそう言い、毒矢を窓から投げ捨てる。それは良いのかと思うが放置していて触ってしまうよりはマシだ。
それにセラフがどうにかしてくれるだろう。
「今のままだと、アーチャーということしか分からなかったと思うが?」
「確かにサーヴァントのことはそれしか分からないよ。
私が気になるのはダン・ブラックモアのことだよ。
ほら、あの人ってさ。アーチャーにコソコソするのはやめろって言ってたでしょ?」
「ああ、言っていたな。」
ギルガメッシュは昨日の記憶を探りながら頷く。
「なのに、なんで今回みたいな命令を出したのかなって。」
「……いや、出してはいないと思うぞ。」
「へ?」
「多分、あのネズミの単独行動だ。」
「………ねずみ?」
「屋根裏を走り回るコソコソとしたやつには調度よいであろう。」
確かに人目に隠れて行動するというのはネズミに似ているとは思うが…。
そう頷きそうになる燈月は何だかんだ言ってギルガメッシュに汚染…この言い方は悪いかもしれないが…されているのではないだろうか。
「……そうだね。」
だが、反論すると話しが進まなさそうなので頷いておく。
「話戻すけど、単独って、ダンは今回の件に関しては関係ないってこと?」
「まぁ、そういう事だ。」
「……なるほど。食い違いが原因かな。」
そう結論づけると、燈月は一回戦が終了した自分へとご褒美だと作成した黒のリクライニングチェアを倒し、そこに寝転がる。
毎日毎日、椅子で寝ていたためか、体が回復出来ていないのだ。
ギルガメッシュにも大丈夫なのかと、聞いたのだが問題無いと一蹴されたので、玉座の隣に横になれるような大きめのソファを一応用意しておいた。
今日も疲れていたため、睡魔はすぐにやってきて、燈月はすぐに眠ってしまった。
ギル様が、仮にもマスターである人に傷を負わせるわけがないでしょう!
………あれ、守ってる姿なんてあったっけ…CCCではあったかも知れないけど…ステナイトとかで見たことない気がしないこともないかも…?