例外少女とギルガメッシュのFate/EXTRA 作:雨宮ラキ
燈月が目を開けると、そこは保健室のベットの上だった。
予選時に居た学校と似ているが確実に何かが違う。
燈月は布団を綺麗に畳んでから立ち上がる。
ふと、目の前に何かが現れた。
黄金の鎧をまとった絶対的王者、ギルガメッシュ……。
彼が隣にあるベットに足を組み、腕を組み座っていたのだ。
「遅いぞ!もっと早く起きれんのか、待ちくたびれたぞ!」
「……そんなこと言われても…。」
燈月は自身の服装を整える。
予選の時に着ていた月海原学園とは違い、黒いドレスのようなワンピース。
そして、首元に巻いてある黒いマフラーに黒い靴。
すべて黒。夏のような、冬のような格好はこの月だからこそできる格好と言ってもいいだろう。
季節という概念が無い世界だからこそだが、やはり少しばかり異端だ。
端から見たらセンスがないと言われるであろう恰好なのだ。
「そんなことではないのだ、燈月よ。起きなければ聖杯戦争に参加できないではないか。
我はコレに参加するために召喚されたのだぞ?ずっとここで座ってろというのか、貴様は。」
聖杯戦争…それは聖杯であるムーンセル・オートマトンが用意した電脳空間での戦い。
その戦いに勝ち抜けば聖杯が願いを叶えてくれるという。
「それにしても、勝ち抜け戦とは……7人のマスターと英霊の乱戦だったら楽しいのだが…。
まぁ、128人もいるのだ。無理もない、か。」
「乱戦?何、それ。」
「貴様が気にすることではない。今は目の前にある聖杯戦争を勝ち抜くことだけを考えよ。」
そこでふと、燈月は疑問に思い、その疑問を口に出してみた。
「そういえば、ギルガメッシュ。
真名隠さなくていいの?正体、バレバレだけど…。」
「ん?問題あるまい。正体がバレてもどうせ我には勝てぬからな。」
ニヤリと笑いながら答える。流石というべきか、何と言うか、ものすごい自信だ。
まだ、対戦者も発表されて居ないというのに。
「さて、そろそろ行こうか、十分休めたし。」
燈月がギルガメッシュにそう問うと、ギルガメッシュは頷くと姿を消す。
姿を消しているだけで普通に側にはいるようだ。
保健室から出ようと、扉に手をかけようとすると、扉が自動的に開いた。
別に、その扉が自動ドアだったと言う訳ではない。
ただの来訪者だ。いや、白衣を着ているから、元々は彼女の場所だったのかもしれないが。
そこに立っていたのは、月海原の制服を着て、その上に白衣を着た、髪の長い少女。
その上の長さは燈月のは比べ物にならない。地面につくのではないかという程だ。
「あ、天宮さん。目が覚めたんですか?良かったです。」
そう声をかけてきた少女は予選でも見かけた事のある人物だった。
間桐桜。間桐慎二の妹という役割を持っていた少女だ。
「体の方は異常ありませんから、もう自由に散策などして頂いても構いませんよ。
それと、セラフに入られた時に預からせていただいた記憶は返却させていただきましたのでご安心を。」
元々用意されていたような文を淡々と喋り、彼女は予選について説明し始める。
どうやら、予選は一生徒として日常を送り、仮初の日常から自我を呼び起こし、
自分を取り戻した者のみがマスターとして本戦に参加する、というものだったらしい。
燈月は初めの方に自我を呼び起こしてはいたが、それからも仮初の日常を過ごしていたせいで少しばかり混乱を起こしてしまっていたようだ。毒されたというべきだろうか。
「貴方も名前と記憶を取り戻しましたので、確認しておいて下さいね。」
名前と記憶…燈月は自身の記憶を巡る。
学生だったこと、不登校になっていたこと。
などの簡単な記憶は見つかる。
しかし、なぜ聖杯戦争に参加したのか、自分の願いが何なのか。
そして……自分の記憶が多々欠落している。
「…待って。記憶、戻って来てないんだけど。」
「不備、ですか?すみません。
それは私には何とも…
それは、燈月も知っていた。だが、ムーンセルがこんな不備をするだろうか?
ムーンセルについても、少しばかり抜けているところはあるが、燈月の調べたムーンセルはそんな失敗をするモノではなかった気がするのだが…。
「あ、それからこれ、渡しておきますね。」
燈月の思考を遮るようにして桜がこちらに端末を渡してきた。
「表示されるメッセージに注意するように、とのことです。」
燈月は端末を出現させたバックに入れ、保健室を後にした。