いろはす色な愛心   作:ぶーちゃん☆

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どうも!かなりのご無沙汰でございます!

長い沈黙を破っての番外編&後日談の愛ちゃん編となります!



こちらは、本編で語られる事の無かったシーンや過去などを振り返りつつ、少しずつ後日に触れるような形で進めていく予定です。


なお、この第16話からは視点が変更となる為いろはすは殆ど出番が無いので、オリ主という形でやっていきたいと思っております!

真性のいろはすファンの読者さまにはご不満な点もあると思いますので、そういうのを求めていない読者さま、オリ主が嫌いな読者さまは、このままお戻りいただけたらと思いますm(__;)m
あくまでもいろはす色としては、ちゃんと15話までで完結してますのでご了承くださいませ!




愛川愛編
愛川愛は初恋と出会う


 

 

 

「まったく…………一色はともかくとして、愛川までが授業をサボるとは、一体どういうことかね」

 

「ちょっと先生!?わたしはともかくって、わたしこれでも生徒会長なんですけど……」

 

「だが生徒会長である前に一色だ」

 

「酷っ!?」

 

先生の容赦の無い口撃にいろはちゃんが崩れ落ちた。

 

 

今日2月14日バレンタインデーの放課後、私、愛川愛と、部活仲間で友達の一色いろはちゃんは、二人して一時限目をサボってしまった罰に、生徒指導教員の平塚先生に呼び出しを受けていた。

 

「すみませんでした、平塚先生。いろはちゃんは私と一緒に居たんですけど……その…………私がちょっと授業に出られるような状態では無くなってしまった為に、いろはちゃんが私に付き添っていてくれたんです……」

 

「……ん?出られるような状態では無い……?それは一体どういうことだ?」

 

「……あの……それは、その……」

 

……これはちゃんと言うべきなのかな?

でも、振られて泣き腫らしちゃったから授業に出られなかっただなんて言っちゃっても平気かな。

──でもこのままだと、私の為に付き合ってくれたいろはちゃんに迷惑が掛かっちゃうっ……

平塚先生は冗談めいてああ言ったけど、私なんかと違って、生徒会長のいろはちゃんが授業をサボるなんて問題になっちゃうもん。あくまでもいろはちゃんは友達の為に付き合ってくれただけの優しい被害者だって事にしなきゃいけない。実際にそうなんだしね。

 

とっても言い辛いことだけれど、ふぅ……と息を吐いて発言しようと思ったら……

 

「…………ふむ、まぁ愛川がそういうのであればそうなのだろう。……今回は、愛川の体調不良に一色が付き添っていた……と、こういう事にしておこう」

 

どうやら平塚先生は、言い辛そうにしている私に気を遣ってくれたみたい。

本当にこの先生は良い先生だなぁ……

 

「っ!あ、ありがとうございますっ」

 

「ありがとうございます!」

 

「ふむ。今後は十分に気を付けるんだぞ?一色」

 

「だからなんでわたしだけ……」

 

そうして今回に限り無罪放免とされた私たちは、二人並んで生徒指導室を出た。

 

「ひぇ〜……助かったぁ」

 

「うふふっ、ねっ!」

 

並んで廊下を歩きながら笑い合う私たち。

でも……呼び出されて生徒指導室で会ってからというもの、いろはちゃんは私と一度も目を合わせてくれようとはしないんだ。

理由は分かってる。言いづらいんだよね?

 

でもそれは心苦しいから、私に気を遣ってくれてる事は申し訳ないから、私の方からお話を振ってあげよう。

せっかくの素敵な日なんだからっ……

 

「……ねぇ、いろはちゃんっ」

 

私は立ち止まる。

するといろはちゃんも立ち止まって振り返ってくれた。

 

「……なに?愛ちゃん」

 

私はいろはちゃんの両手をしっかりと握り、精一杯の笑顔で祝福してあげる。

 

「おめでとう!幸せ掴めたねっ!」

 

「……ま、愛ちゃん……わたし、まだなんにも…」

 

「あっまーい!そんなの言わなくたって分かるよー。その顔見ればねっ♪」

 

いろはちゃんは俯き、複雑な表情を見せた。

 

「もーっ!せっかくの良い日を、そんな顔で台無しにしちゃダメだよっ?」

 

「ゴメンね、愛ちゃん……ちゃんと言おう言おうって思ってたのに、いざ顔を合わせちゃったらなんて言って良いのか分かんなくなっちゃって……」

 

私はいろはちゃんの手を離して、いろはちゃんの頬っぺたをむにっとしてやった。

口角を無理やり上げるように。

 

「はーい、笑って笑って〜?…………いろはちゃん!?いろはちゃんは今日はそんな顔してて許されると思ってるの!?そういう顔は、むしろ負けた女の子に失礼なんだからね!?」

 

めっ!って顔でいろはちゃんを叱ると、ようやく少しだけ笑顔になってくれた。

 

「…………い、いひゃいよ〜、まにゃひゃ〜んっ……」

 

「ふふっ」

 

私が頬っぺたから手を離すと、いろはちゃんは両手で頬っぺを押さえる。

ちょ、ちょっと強すぎちゃったかなっ……!?

 

 

「あいたたたぁっ……」

 

「……んん!ん!……い、いろはちゃんが悪いんだからねっ……?」

 

「うー……」

 

そうなのだ!全部いろはちゃんが悪いんだもん!

私はちょっとだけ罪悪感を覚えながらも、こほんっ!とひとつ咳払いをして、両手を腰に当てていろはちゃんを優しく叱る。

 

「私に気を遣ってくれるのはとっても嬉しいよ?正直、すっごい悔しいって気持ちがあるのも事実だし…………それでも、今日はいろはちゃんに笑顔でいて欲しいのっ。だって……誰よりも私が、いろはちゃんが今どれだけ幸せかって分かるんだから!だからそんな辛そうな顔なんてして欲しくないっ」

 

「愛ちゃん……」

 

「だって……そんな顔されちゃったら……」

 

私は、今の私の本音を思いっきりいろはちゃんに届ける。とびっきりの笑顔で!

 

「比企谷先輩を奪い甲斐が無いじゃないっ?」

 

「すっごい悪い笑顔してるよ!?愛ちゃんっ」

 

あれ?私、そんな顔しちゃってたんだ、えへへ。

 

 

それに私はこうなるだろうなって事なんて分かってたんだよ?いろはちゃん。

あなたが先輩に紹介してくれたあの日から。

あの日、比企谷先輩がいろはちゃんに向ける特別な眼差しを知っちゃったから。

 

分かってたけど、それでも私は告白せずにはいられなかった。

だって……私は比企谷先輩に、自分で思ってたよりもずっと惹かれてたみたいだから。

 

 

───比企谷八幡先輩。

私はあの人との出会いを思い出す。

私の初恋の記憶を……

 

 

× × ×

 

 

「え〜っと……文化祭実行委員に立候補してくれる人は居ないかな〜……まずこれから決めなきゃ次に進めないんですけど〜……」

 

教卓では、ルーム長さんがかなり困った様子で会の進行を見守っている。

文化祭実行委員かぁ〜……誰もやりたがらないモノだよね、こういうのって。

 

「えー、だって文実ったってさ、結局文化祭回すのは二、三年で、俺ら一年なんて雑用させられるだけだろー?」

 

「だよねー。てかアタシらだってクラスの出し物に集中したいんですけどー」

 

「そうそれ!」

 

そうなんだよね。文実に参加するという事は、つまりクラスの出し物にはあんまり参加出来なくなっちゃって、せっかくの文化祭を楽しめなくなっちゃうんだよね。

だから私も出来ればやりたくは無いな〜。

 

「……でも文実は文化祭でのクラスの代表みたいなもんだからさぁ、まずコレ決めないと次に進めないんだってば……このままだと、アミダとかじゃんけんで決める事に……」

 

「えぇー!?」「はぁ?」「んなの横暴だろー」「反対ー」

 

あ、あははは……みんな自由だなぁ……

 

 

 

はぁぁぁ……仕方ないかぁ……あんまりやりたくは無いけど、このままじゃ永遠に決まらなさそうだし、ルーム長さんも大変そうだし……

 

そして私はおずおずと手を上げた。

 

「あ、あの〜……じゃあ私がやりま〜す……」

 

この空気の中で立候補した私にものすごい注目が集まっちゃったっ!ひ、ひえぇぇ〜っ……

 

 

「えぇぇぇっ!?」「愛ちゃんはダメでしょー!」「そうだよー!愛川さんはダメだよ!」「愛ちゃんを文実なんかに寄越しちゃったら勿体ないってー!」「我がクラスの天使はあげらんねぇよー!」「うちの出し物のメインだろー!」

 

あ、あわわわわっ……

 

「ほか誰かやんなよー!誰もやりたがらないから愛川さんが犠牲になってくれてんじゃーん」「じゃあお前がやれよ」「やだやだ!私は無理ー!」「ねぇ、じゃあ誰か居ないのぉぉ?愛ちゃんに気ィ遣わせんのはダメだって!」「わ、私も文実はちょっとぉ……」

 

はわわわわっ……

 

「あ、あのっ……私はそんなんじゃ無いからっ!別に犠牲とか気を遣うとかじゃなくって、私、そういうのちょっとやってみたかったからっ……だからその、大丈夫……ですっ」

 

クラスが静まり返る。

うぅ……本心では無いことを言ってるから、正直居心地悪いっ……

 

「……まぁ愛がそういうんなら仕方ないかぁ……」「よくよく考えてみれば、クラスの代表って考えれば文句無い人選だしなぁ」「私さんせー!」「俺もー!」

 

ふ、ふぅ……なんとか意見が通ったみたい。

……うー、本当はやりたくない委員を自分から懇願する事になるだなんてなぁ……ホント私っていつまで経ってもこんななのかな……

 

 

───私は、こんな風にみんなに良くして貰ってる事はすごく嬉しいしすごく有り難い事だって思ってる。

 

……気が付いたら、私はずっとこうだった。

元々大人しくて引っ込み思案だったくせに、強くて格好良いお兄ちゃんの影響もあって、困ってる人を見ると思わず手を出してしまうという“大人しくて引っ込み思案な癖にお節介焼きという厄介な性格”になっちゃったものだから、気が付いたら周りから“愛ちゃんは黙って良い事をしてくれるいい子”って見られるようになってしまっていた。

 

だからと言って、別に周りからの期待に応えようと“いい子”を演じてきたりなんかしてない。ただ私は私らしく、やりたいって思ったからやってきただけ…………のつもりだった。

 

 

でも、実際はどうなんだろう……?

本当に私は周りの目を気にしてないのかな。周りからの期待に応えようと無理してないかな。

 

最初はそんな事なかったはずなのに、いつの間にか私は周りの目を意識しちゃったりしてないかな……?

“いい子”で居なきゃ……って、無意識に行動しちゃってないかな……?

 

 

でも、そんな風に考えてしまいながらも、やっぱりそう行動してしまう私は、少なくともみんなが言うような天使なんかじゃないんだよ。本当にただの普通の女の子なの。

だから今の私には、いい子とか天使とかって言ってくれて良くしてくれること自体が、本当はちょっと重い……私は、そんなんじゃない……

 

 

こうしてこんな自己嫌悪に苛まれながらも、会は着実に進行していく。

女子の委員が決まったことで男子も立候補しやすくなったのか続々と立候補してくれて、程なくして男女の文実が決定する。

そこまで決まってしまうとそのあとはスムーズに流れていき、無事その日の会は滞りなく終了した。

 

 

──数日後には文実が始まる。

私は、今までやったことのないようなそんな経験を糧として、こんな自分を少しでも変えられたらいいのにな……って、密かに願わずにはいられなかった。

 

 

× × ×

 

 

文化祭実行委員に割り当てられたのは会議室。

私はその日のLHRが終わると同時に、男子の委員の子に誘われて会議室へとやってきた。

 

普段はあんまり話した事の無い男の子だったんだけど、同じ委員になったからか積極的に話しかけてきてくれた。

んー、普段は話さないのにこういう慣れない緊張の場で気を遣ってこんなに話しかけてくれるなんて、実はいい人なのかな?

なぜだか今まで私はあんまり好印象は持って無かったけど、女の子たちにも人気のある人みたいだし。

うん!良く知りもしないのに、勝手に印象だけで決め付けちゃうのは良くないよねっ!

 

 

まだ会議室に到着した時点ではあんまり他の委員の人たちは集まって無かったんだけど、その男の子が話しかけてくれてる間に続々と集まりだしていた。

 

「わ〜!さがみんだー!さがみんも文実になったんだぁ」

 

「あー、ゆっこだー!」

 

「なになにゆっこー、友達ー?」

 

「そ。さがみ……あ、相模南ちゃん。一年ときクラス一緒だったんだぁ」

 

「どーも、相模南です!よろしく〜」

 

「こちらこそよろしくねー」

 

ふふっ、なんだかそこかしこで微笑ましい光景が生まれてる!

二年生の先輩方かな?なんだかいいよね、こういうのって。

最初は乗り気じゃなかった文実も、あんな風に楽しくなれればいいなぁ……!

 

 

ガラリッ……

そんな楽しげな光景をこっそり眺めていると、その遠慮がちに開かれた扉の音と共に一人の男子生徒が入室してきた。

 

 

なぜだかは分からない。分からないんだけど、みんなが楽しそうな様子でお喋りしている中、一人でやってきて、一人だけ目を曇らせて、猫背で面倒臭そうに室内を観察しているこの男子生徒が、私はとても気になったのだった。

 

 

 

続く

 







この愛ちゃん編は、まだどれくらい掛かるかとかは全然未定なんですけども、さすがに長い事はやらないかなぁ〜……?
まぁ少なければ4〜5話程度?言ってしまえば単なる後日談に、愛ちゃんの思い出話を添えただけのお話ですからねー。
ちなみに後日談とは言え視点が視点ですので、八幡&いろはすの初々しいイチャコラとかは一切……“一切”出てきませんよー。
イチャコラどころか八幡といろはすが一緒に登場するシーンさえも無いまである。

なので前書きでも述べましたが、「八色を期待して読んでたのに期待ハズレでつまんねー」となると申し訳ないので、愛ちゃん視点に興味の無い方は読まない方がよろしいかとっ><


それではありがとうございました!

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