ISが衰退を始めある程度経った頃、UNISが遂に実戦投入された。
過去に起きた暴走事件は隠匿され、軍や関係機関では上層部だけが事件の全容を知っている。
IS学園では、マザーベースの異常によって起きた事件だと生徒に説明した。
UNISにマザーベースなどなく、そもそも独立兵器と認識されているため嘘っぱちであるが。
なお、UNISの開発に携わった企業はこの事件には関与していないと述べた。
勿論、非難の嵐だったが。
「我々の行いに異を唱えるなら、こちらからの支援は打ち切らさせてもらう」
この一言で、マスコミは軍や関係機関の圧力により沈黙した。
「調子はどうかな《S》」
「………良好だ」
「君には期待しているよ」
赤と黒色を基調としたフレームのISのような物に身を包んだ少女が財団のふざけた問いかけにふてぶてしく返答する。
カタパルトのような場所で黙想していた少女は不機嫌だ。
「期待だと?そんなもの塵ほどにしていないだろう」
財団の言うことは大体が煽るような問い掛けが多い。
こんな茶番に興じるのも嫌気がさしてくる。
「つれないね。まぁいい」
財団は笑みを浮かべる。
「君の大好きなお姉さんのお願いだ」
思い出すだけで腹が立つ。あの女狐め………。
「存分に暴れてくれとのことだ」
「任務了解。すべて殺す」
そう呟き、武装を展開させる。
上半身を包む装甲は皆無に等しい。
しかし、その反面、腰から爪先にかけて少女を囲むように四つの兵器がくるくると優雅に浮いている。
そして、頭部に装甲が付けられた。
場所は変わり、UNISだらけのなんの面白味もない戦場に移る。
戦場では国連軍所属である数機のISがUNISに指示を出し戦闘を行っていた。
今回の戦場は中東におけるテロ組織の殲滅作戦のまっただ中にあるとある市街。
住民はすでに戦闘区域外へ避難済みであり、テロ組織、国連軍は思う存分重火器を放っていた。
テロ組織の戦力はUNISを中心に歩兵や装甲車が多い。
反対に国連軍はUNISとISのみ。
戦況はやや国連軍が有利。
恐らく、UNISのプログラムが優秀なのだろう。
テロ組織はテロ組織でUNISを囮にISを引き付け、手薄になった敵側のUNISを歩兵や装甲車が攻撃している。
しかし、どちらも決定打がなく泥沼化しつつあった。
《あーあー!聞こえるかなゴミ虫ども?》
突如、テロ組織側の無線がジャックされる。
当然、テロ組織は騒然となる。
《君たちに朗報があるんだよねぇ》
テロ組織のトップが謎の声に応答する。
「要求はなんだ」
《要求なんてないさ。ただちょーっとお手伝いしてあげる》
そう言うなり、上空から青い装甲を纏ったISのようなものが降下してきた。
《ゴミ虫はそこで見てろよ》
そう言い、ヒュージーキャノンを展開させる。
背後には後退してきたテロ組織がいる。
《こういう愉しいことに仲間はずれは良くないなぁ》
射線上には国連軍。
「や、奴等だ!IS部隊は撤退しろ!!」
国連軍は試作4号に気付くなり撤退を開始する。
しかし、行動が遅すぎた。
《俺はさぁ、人間を愛してるんだよね》
「………どういうことだ?」
テロ組織のトップは反射的に聞き返した。
チャージが8割完了し、トリガーに指をかける。
《人間の可能性は世界を変えられるからさ》
そう言い、トリガーを引いた。
目の前で撤退を開始した国連軍は、塵をも残さず消え去った。
《そうそうテロリストの諸君提案があるんだけど聞く?》
試作4号は、試すように銃口をテロ組織に向ける。
《君たちの行動理念は称賛に値する》
銃口に怯えながら、テロリストは言葉を発することなく聞く。
《君たちに力を与えよう》
その提案はどこか、悪意に満ちたもののように聞こえた。
元々、このテロ組織はISが今後もたらすであろう危険性を訴えるために出来たデモ団体だった。
しかし、デモ運動をする内に代表であった人間はIS関係機関により殺害されてしまった。
この事件を元にデモ団体は言葉だけではISに目が眩んだ連中は止まらないと気付き、武力を持った。
そして、代表の敵討ちのようにIS関連の施設を攻撃していた。
ここまで彼らを動かせたのは今は亡き代表の影響でもある。
それこそ宗教過激派のようなだ。
そこに、試作9号は目を付けた。
この組織は利用価値がある。
今研究している《強化人間》の尖兵になってもらう。
実に好都合だった。
今、兄弟たちに似たような組織を勧誘させている。
財団の言う革命を起こすために。
下準備は整いつつある。
何も知らない人間共はそれでいい。
濁り水はゆっくりと侵食していくのだ。
それこそ毒のように。