東方幻聴論   作:土壁 茜

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一章:最初の創造力
記憶喪失と違う予感


【……まあ、予想はしてたけど】

 

【一緒に付いていけばいいじゃん】

 

【別に止めるつもりはないし、ずっと前から知ってたし】

 

【……ありがとう。行ってくるね】

 

※※※※※

 

「頭痛いわぁ……」

 

私は頭に撒かれた包帯と一緒に頭を抱えながら、一人嘆いた。

 

「記憶が無いのによく喋れるわね」

 

そう言ったのは、金髪の人形みたいな服装をした少女。名前はアリス。たまたま私がビショ濡れ、なおかつ頭からの出血が激しい状態のところを見つけたらしい。

状態によれば、かなり高い所から落とされた様子だが、特別目立った外傷は無いらしい。頭部の傷以外は。

結論で言えば手当てされて意識が復活した状態になるわけだ。今の状態は。

 

「そりゃ当然じゃ?赤ちゃんみたいな言葉になっても困るし」

 

「それもそうね。記憶が無いのはただ単に思い出だけ無くなるのであって、言葉とかそういうものは入らないのかも」

 

「ご明答。きっとそうだよ」

 

ところどころ人形の作りかけが置いてある部屋で、面談の様な二人向き合った状態で、私達二人は少し不思議そうな話をしていた。

 

記憶喪失は、ただ単に思い出が無くなる話なのだろう。多分。テレビを見る時、記憶喪失なのに何故会話が成り立つのかは知らないが、実例が私自身のために、その内容が否定できないでいた。

 

(だけど、物の名前とか映像とかは覚えてるんだよね……アリスにテレビって言っても通用しないから、まだ一言しか言ったことないけれど……思い出せないのは、今まで一緒にいた人の顔形や名前程度なのよね……)

 

と、少しばかり悩んでた間に、急に視界に移ったフヨフヨ浮いてる人形が、目と鼻の先くらいの至近距離で急に出てくる。

 

「人形って浮く物だったかしら?」

 

「そうじゃない?」

 

「まだ私の頭が壊れてるのかしら?もう一回頭をぶつけた方が……」

 

「次やったら放置」

 

「冗談冗談。さっきから頭痛いもん」

 

その後、アリスは呆れたように「誰のせいだと思ってるの」と呟いた。私のせいです。自重します。と、頭を抱えながらそう、心で思う。

アリスはこの通り、不思議な力を持っている。まさに不思議の国のアリスと言ったところだろうか。

 

「ホント、破天荒で気分屋な性格ね」

 

急にアリスがそう言ってくる。当然のように言われたため、少しムッときた。急いで抱えていた頭を挙げて、

 

「そりゃあ記憶失ってるから」

 

と、思わず反論。しかしアリスは当然のごとく、

 

「当然ね」

 

と、言い返してきた。私はアリスが混乱するような発言を促し、少し茶化すことにしてみた。

 

「いや、だったら言葉話せないのと矛盾してるから違うと思う」

 

「そう……えっと……つまり……もういいわ。頭痛くなってきた」

 

「ご愁傷様」

 

「誰のせいだと……ってなんかデジャヴ……」

 

「狙ってた」

 

そして私は抑えきれないかのように、顔を覆いながらクツクツと笑う。それを見ていたアリスは、かなりイラッと来たようで、私に対して殺人鬼のような言動と行動を起こした。

 

「上海に裁縫用のハリでも持ってこさせて、コイツの頭の傷を縫ってもらおうかしら?そうすれば少しは賢くなると思うわ」

 

「冗談冗談。さっきから頭痛い……ってデジャヴ……」

 

アリスが急にどこから取り出したかも分からない、なかなか昔の注射針並の針を取り出して近づいてきたため、咄嗟に食い止める。そのあとすぐに仕返しされたのだと気がついた。アリスは馬鹿にされると仕返しをする、意外と好戦的っぽかった。

私はもう無理と伝えるように、両手を上にあげて降参のポーズをとる。

 

「アリスも賢いねぇ~。負けるよ」

 

「一日中本を読んでるんだもの。記憶を失った貴方に負ける気は無いわ」

 

「なにそれ酷い事言うわね」

 

「狙ってたもの」

 

私はそのまま「煩い馬鹿」と、大声で叫んでいた。すぐさまアリスに「煩いわね」と言い返される。しかし、思われていたとおりに動いてしまうのは、誰であろうと腹が立つ。たとえ、それをした本人が同じようなことをされてもだ。

……結論上、賢さでは負けた。

 

「だけど……」

 

「だけど、何かしら?負け惜しみなら外で言ってくれる?」

 

「違う違う。今まで背負ってた何かが無くなった。軽くなった感じがするのよね」

 

「記憶喪失なのに?」

 

記憶喪失なのに、不思議な発言に首をかしげるアリス。確かに、記憶喪失患者がここまでハッキリ言う事はおかしいと感じても仕方がないだろう。しかし、今、ここに実例が居るのだから、それが本人なのだから決して否定できはしない。そして、あり得ないわけでもないのだ。それに……

 

「言ったでしょ?軽くなった感じだって。記憶が抜けた分軽くなっただけかもしれない」

 

と言って、冗談混じりの小さな可能性と結論をアリスに提示する。アリスはそのまま、「発想が豊かね」と言って、私の事を軽く馬鹿にしながら笑ってくれた。が、

私はその笑顔が、その何処かで見たことあるような感情が、上手く読みとれず少し動揺していた。その状態を見てアリスが急に話題を変えてくる。

 

「そう言えば」

 

「どうしたの?」

 

動揺の表情を見せている中、すこし放心状態のまま、適当に返事を返す。

 

「貴方はどこから来たの?服装から大体予想はついてるけど……」

 

「言う必要がないじゃない」

 

「確認よ。確認。一応、思い出せるのなら言ってみて」

 

と言われたものだから、仕方がなく悩んでみる。景色などは覚えているのだが、人の顔など、他人のことは全く思い出せなかった。特に名前や地名は。

 

「…………思い出せるんだけど、名前は知らない」

 

「見た目は思い出せるのね?」

 

と、再確認するようにアリスが問い詰めてくる。あまりにも顔を近づけて睨んでくるため、ついうっかりそのままハイ、と答えてしまっていた。ちなみにデカイ針は相変わらず、アリスの手中に収まっていた。これでその針を持っている方の手を上に上げたら、外から見る人は脅迫しているようにしか見えないだろう。とりあえず早く閉まってください。ハイ。

 

「ゴメン……あのさ」

 

おどおどと、しかしはっきりした口調で。

 

「なに?」

 

「その手に持ってるの怖いからしまってくれる?」

 

そのまま思っていたことを伝えた。

 

「…………」

 

無言で針をしまいに行くアリス。それがどうしてもクスッと笑えてしまった。

 

「さあて、本題に入りましょう」

 

「話をそらすのね」

 

「話をそらしたのはあなたでしょ!?」

 

私に突っ込まれて、アリスは多少ばかりムキになる。やはり馬鹿にされてると感じているのだろうか?しかし私はそれでも懲りず、あざ嗤うかの様に馬鹿にし続けることにした。

 

「ええ、それがどうしたの?」

 

「…………も、もういいわ。随分と惚けるのが上手いのね……」

 

面倒になるだろうと思い、話をそらした結果、アリスに酷く呆れられた。

なんせ行動に示してまで手を少し上にあげ、やれやれとでも言うようにあからさまに分かりやすいジェスチャーをしているのだから。

 

「とりあえず、貴方には何を言っても無駄ね」

 

「記憶喪失の人間に何を言っても無駄に決まってるじゃん」

 

「……貴方の発言は一回一回鋭いわね。実験で口に布でも張らせると、布が破れるのかしら?今すぐ実験しましょう。そうしましょう」

 

「遠慮しておくよ。今度はその裁縫針と明らかに息を出来ないようにさせる布をしまってくれる?」

 

「それも遠慮しておくわ。せっかくの実験材料だもの。反省の色を見せるまで、しっかりと材料として使わなきゃ」

 

今度は裁縫針と人の鼻と口を覆い隠せるくらいの大きさの布を持ったアリスを止めようとするも、見事に拒否、言えば死刑の判決が言い渡された。

 

「ゴメンなさい」

 

自分の命を守るには已むを得まい。少しずつにじり寄って笑みを浮かべるアリスに、つい椅子あら立ち上がって二、三歩後ずさりした私はすぐさま壁に追い込まれ、すぐに謝った。

 

「最初からそう言ってくれればいいのよ」

 

そう言って、針と布を元に戻すアリス。一気に安心した。しかしアリスは愚痴るように続ける。

 

「もう少し恩人として敬って欲しいものだわ……これじゃ魔理沙にそっくりね……別に望んでる訳じゃないけど」

 

そう呟いた途端、何かしらドッカーン!!と、凄まじい音が聞こえた。

 

「噂をすれば、ね」

 

驚く気配もなく、呆れたように、毎度同じように立って何処かへ行くアリス。私も気になると言えば気になるし、大きい音がしたものだからついていくことにした。

 

「ついてこなくていいわよ」

 

「好奇心と言うものが働いて無意識に」

 

「そう……魔理沙ー!!今日は良い実験材料が転がってたわよー!!盗み働く前にこっちあげるから、盗むならそれを盗みなさい!!」

 

アリスがそう叫ぶと、効果音がつけばドドドドドド!と付きそうなくらいの勢いで突進してくる、金髪でthe 魔法使いの恰好をした少女、呼ばれ方、通称、魔理沙が駆け寄ってきた。

 

「実験材料って何なんだぜ!?」

 

第一感想が男口調が強い女子。現実で世界で言えば、それなり女子の厨二病の分類に入るのだが、この世界ではもはや関係ないだろう。常識のラインを越してしまっている。

あまりにも興奮しすぎて疲れる事を忘れている魔理沙は、息を荒々しくしながらアリスに問い詰めた。

 

「どこにあるんだぜ!?」

 

「ここよ」

 

そう言ってアリスは、くるりと半回転し、目の前にあるものを指差した。

そう、私を。

 

「「は?」」

 

私と魔理沙、二人揃って呆けた声を出す。魔理沙が慌てて言う。

 

「どうしたアリス?遂に一人で居すぎて頭が壊れたのか?これ、外来人だぜ?こんなの、まだ試していない試薬品を飲ませて実験台にすることしか思い浮かばないぜ」

 

「貴方に人間の情という物は無いんですか!?」

 

悲観の声を挙げるも、アリスと魔理沙はそれを無視して淡々と話を進めていった。

 

「この子、時々喋ってると、口から巨大な針が出るの。十分な実験材料になると思うわ」

 

「そうか!確かに良い実験材料だぜ!!お持ち帰り確定だぜ!!」

 

「ちょっと!勝手に話進めるな!!」

 

そう言った途端、急に首の襟を引っ張られ、箒に無理やり乗せられた。そしてその状態のまま降りる事も出来ず、急に空高く私と魔理沙が乗っている箒が浮き上がった。

 

「ゴホッ、ゲホッ、ちょっとアリスさん!助けて!!何言ってるの!?って笑ってるんじゃないわよ!!降ろしなさい!まだ死にたくないわ!!」

 

下を見てアリスの顔を見てみると、凄く顔が笑っていた。悪魔だ。コイツ。

 

「じゃあ頑張ってらっしゃい。魔理沙。良い実験ができる事を楽しみにしているわ」

 

「良いじゃない!!って言うか高すぎ高すぎ!!落ちるから!!」

 

そう言った途端、今度は箒が凄まじいスピードで急発進した。

 

「どうだぜ?カッコ良いだろ!!」

 

「カッコ良くないし!て言うか私絶叫系は嫌いなのってキャアアアアアア!!」

 

急に箒が起動を大きく変え、グワングワンと周波でも計るような状態の運転が行われた。

 

「一応人が乗ってるのよ!!一般人が!!魔法使いじゃないの!私は!!」

 

「落ちなければいい話なんだぜ」

 

「そんな簡単に済ませるなぁぁああああああああ!!」

 

いつの年代か知らない、まだ生き物たちの目が覚める気配のない春。

頭に包帯をつけている少女の絶叫が、知らない世界で響き続けた。




記憶喪失って何なんでしょうね?
言葉がしゃべれるわけですから、完全な記憶喪失とは何だろうか?
最近の最も興味がある疑問です。今日はそれを題材にしました。
記憶喪失……とは言い切れない、風景の記憶があると言う事は、記憶喪失とは言えないのか?
私は、記憶が無くなっていれば記憶喪失だと思います。
おっと、長話してしまいましたね。
次会うときは、頭の中で。
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