東方幻聴論   作:土壁 茜

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木枯らし響く春の日

まだ生き物たちが出てくることのない春の始まりに、一輪の花が咲こうとしていた。

 

「あら、もう咲いたのね。もうすぐ桜も咲くころかしら」

 

博麗神社の巫女が、いつも通り退屈に呟く。

 

「はぁ~……賽銭が入ることは無いのかしら?にしても暇ね。もうこの神社の花が咲くのを見ていることしか、春の楽しみは無いわね。あと一つは、花見かしらね……妖怪しか集まらないけど」

 

そう言いながらこの神社の倉庫にあたる部屋へ行き、いずれここで起きる花見のための下準備を開始する。もはや一年の風物詩となっているこの下準備。いつもなら萃香が手伝う……とはいかず、酒ばかり飲んでいるせいで、毎回倉庫がめちゃくちゃになるから今年だけはやめる事にした。

 

「にしてもッ、と。最近は異変も起きないし、退屈だわ~」

 

そう言って、酒を降ろすわかたずけるわで降ろしたり登ったりの繰り返しで、そろそろ腰が痛くなってきた。一旦縁側の方でお茶でも啜ろう。そう思った霊夢は、倉庫の扉を開け、また外に出る。

その瞬間、冷たい真冬のような風が博麗神社を襲い、いつの間にか散らばっていた落ち葉が虚空を舞った。腕で顔を覆い、目に砂が入らないようにする。

腕を下ろし、目を開けた。風が止まったのだ。

その時、博例の巫女の目の前で、先ほど咲いた一輪の花が花弁となった状態でハラリと落ちてきた。

 

「今年もまた、変なことが起きそうね……」

 

相変わらずの、お得意の直感で

 

※※※※※

 

「はぁ、はぁ、はぁ、こ、怖かった……」

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫じゃないわよ!!何回木にぶつかりかけたの!?危うく心臓が口から飛び出るところだったじゃない!!」

 

そう、この魔理沙とか言う奴、急に箒が空に浮いたと思えば、いきなり猛発進したのだ。しかもそのあと、魔理沙はなんか凄いものを取り出して、それを空中に放ったせいで、風に箒から振り落とされそうになっていたのだ。ペタンと木にもたれかかって、目のクラクラが止まるを待っていた私は、あまりにも人を気にしない破天荒な行動に怒りを感じていた。

 

「もう少し、ウェッ、くそ、吐き気がする……」

 

どこぞの誰かが、木々を避けるためにグネグネと周波みたいに曲がりくねって進んでいたものだから、酔ってしまったらしい。乗り物で酔うのは分かるが、箒で酔うのは初めての経験だった。

いや、他にもこの森の特徴の影響があるのか、息を吸うだけで目眩がする。服を利用して、火災が起きた時みたいに鼻と口をふさぐが、あまり効果は無かった。

 

「そこで休んでると良いんだぜ。ちょっと酔い止めの薬を持ってくるぜ」

 

そう言って、魔理沙はまたどこかへ箒に乗って飛んでいく。

帰ってくる間には酔いもさめてると思い、木にもたれかかった状態のまま目を瞑る。

 

「取ってきたぜって何で寝てるんだ?」

 

「早ッ!?寝てないわ!て言うか薬は!?」

 

そう言うと、魔理沙は「これ」と言って、不気味な色をした薬品と、不気味な色をした薬品のせいでかなり安心できない水?と思われるものが出てきた。

 

「……飲んで大丈夫なのよね?」

 

「命に保証はしないけど、飲むか?」

 

「遠慮しとく」

 

「冗談だぜ。ただ、私しか飲んだこと無いから、吐きたいんだったら飲まなくてもいいんだぜ?」

 

「うぐ……わ、分かったわよ……飲めばいいんでしょ」

 

そう言って、渡された薬と水?を受け取り、一気に口へと運んで飲み干した。すると魔理沙が急に、

 

「あ、間違えたんだぜ」

 

と言ったものだから、ブッと薬は吹き出さなかったが、水が噴き出た。

 

「わっ、汚いんだぜ!!」

 

「アンタのせいでしょうが!!何の薬を飲ませたのよ!?」

 

魔理沙の発言が、私の予想していた方向とは真逆のルートを辿ってしまったので、思わず魔理沙に聞き返す。魔理沙は手で後頭部を掻き、必死に笑ってごまかしながらこう言った。

 

「実はそれなんだが……魔力や妖力を増加させる薬を改良したものなんだけど、あまりにも飲むのが怖すぎて、アリスとかに飲ませてみようかって悪戯で考えてたものなんだぜ……」

 

「悪戯の発明品を私に飲ませたんかい!!」

 

そう言ってビシッと魔理沙に突っ込む私。もうなんか、酔う以前の問題で、死ぬんじゃないかとの心配が出てきた。死んだらどうしよう。マジで。

 

「と、とりあえずそれでいいんじゃないか?今の所、元気だし……目立ったことは起きてないし……それに、力が増加する薬を改良しただけだから、死ぬことは無いと思うんだぜ……」

 

「そ、そう……だと良いんだけど」

 

「……多分」

 

「今多分って言わなかった!?多分って!」

 

慌てて魔理沙の方を向き、指をさしながら「馬鹿野郎!!」と叫ぶ。少し意識がくらくらしてきたため、足元をふらつかせて叫んでいた。あれ?この光景、何処かのアニメの死のノートとかで有ったような気がする……

そう思っている間に、視界はどんどん曲がっていき、立つこともままならず、木にもたれかかった。

 

「だ、大丈夫か!?今解毒剤持ってくるんだぜ!!」

 

「ゴメン……ちょっと急いで……」

 

そう言って、私の意識はそのまま途絶えた。

 

※※※※※

 

「今年もまた、変な事が起きそうね……」

 

そう言って、私は「寒い寒い」と言いながら、火で沸かしたお湯と、魔理沙がたまに持ってくるレアなお茶っ葉を用意し、どこぞのスキマ妖怪が引っ張り出してきた「紙コップ」を取り出した。使い捨てのためにゴミが増えるのが問題だが、一回一回食器を洗わずにすむのは本当に便利だ。紙コップの中にお茶っ葉を入れ、お湯を注ぐ。

 

「それにしても寒いわね。異変でも起きてるんじゃないかしら?」

 

そして出来上がったお茶を啜ろうとした時、上空からお馴染みのアイツの声が聞こえてきた。

 

「お~い!霊夢!!助けてくれ~!!」

 

私はまた何か泥棒でもして、アリスとかの人形に追いかけられているのかと思った。

 

「あら、早速物騒な事が起こったのね」

 

何も知らない私は、そのまま声の死と方向へと歩いていき、寒いからと締めてあった扉を開け、

 

「どうしたの魔理沙?また泥棒でもしたんじゃないでしょうね?」

 

と、半ば呆れ気味に言い放った。

 

「なっ、」

 

※※※※※

 

(ホント、魔理沙馬鹿なの?今回の相手が妖怪だったから何とかなってたけど、これが人間だったらアンタ人を殺してたかもしれないのよ?)

 

(分かった、分かった。だから落ち着くんだぜ霊夢。もう二度と変なことしないから)

 

「ン……ッ……ウン?」

 

「お、霊夢。起きたみたいだぜ」

 

「起きたってアンタ……もういいわ。どうせまた懲りずにやるんでしょうし」

 

「さ、流石に今回は例外だぜ……霊夢。一応私もわざとじゃないんだ……」

 

「…………えっと、今どんな状態で?魔理沙」

 

目が覚めた瞬間、喧嘩してるのが視界に入って上手く状態を理解できず、魔理沙に聞いてみた。魔理沙が冷や汗をかきながら言う。

 

「えっと……その……死にかけたところを霊夢が助けた……でいいんだよな」

 

そう言って、魔理沙が通称霊夢の方を向くも、霊夢は未だに魔理沙を睨みつけたままだった。急に大きな溜息をつき、半分脅した感じで言う。

 

「いいわ。今回はこれで許すわ。だけど今度やったら……解かるわよね?」

 

「……言わずとも」

 

……状況から察するに、かなり怒っていたらしい。

私が理由だったのかどうか知らないが、魔理沙の言うところ、霊夢はお前の命を救ったとの事。

 

「は、はぁ……状況が上手く読めませんが。とりあえず助けてくれてありがとうございます。霊夢」

 

「……いいわ。今回は貴方じゃなくて、この馬鹿魔理沙のせいだもの」

 

「馬鹿じゃないぜ」

 

魔理沙が思わず反論する。しかし霊夢は物凄く冷静な口調で、

 

「相手に処方する薬を間違えた挙句、人を殺しかけてしまうような薬を飲ませて家が散らかり過ぎて解毒剤も見つからず真っ先に私の所へ飛び込んだのはどこの誰かしら?」

 

と、見事に論破した。

 

「ウグッ……暦、頼む、許してくれ……」

 

と、魔理沙らしかぬ、両手を合わせながら拝むように誤る行動は、私どころか霊夢も驚いていた。

 

「意外ね。魔理沙のことだし、すぐに立ち直ると思ったんだけど……」

 

「魔理沙がこんな率直に謝るなんて、やっぱり私を運んでる途中で頭を強く打ったのかな?」

 

「なあ、暦や霊夢の目が見てる私の第一印象って何だぜ?」

 

「「情のない人間」」

 

二人口を揃えて、当然のように言う私と霊夢。魔理沙は衝撃過ぎてガックリとうなだれた。

 

「もしくは泥棒ね」

 

更にそこで霊夢が追い打ちをかけたため、魔理沙は「ガハッ」と言ってその場に倒れこむ。これがゲームだったら、二人の間にKOの文字と、ボクシングでありそうなゴングが三回鳴り響いていたであろう。霊夢はそれを見ながら、少し満足げにニコニコと笑っていた。あ、この人アリスと一緒だ。

 

魔理沙が少し涙目になりながら、起きあがる。そして私に意味不明な発言をよこしてきた。

 

「暦。多分気がついてないと思うが、オマエは妖怪だぜ。しかも私の薬で更に強くなっちゃった奴な。……ある意味私が妖怪にしたのも同然なんだが。って言うか死んだ?って言うか……」

 

「……はい?」

 

そう言って、私は思わず首をかしげる。魔理沙は帽子を脱いで、「ああ、もうじれったいんだぜ」と言った後、

 

「霊夢パス」

 

と言って、話をぶん投げた。コラ、何気に意味深な発言を自分で相手に投げかけたくせに、自分で伝えずにどうする。

魔理沙はそのままあははと笑いながら、隠すように頭を掻いた。

 

「……アンタが説明しなさいよ。面倒くさい……と言っても、無駄ね」

 

私とアリスの時と同様、霊夢は魔理沙の事を大分呆れ、そして諦めながらそう言った。

……まあ、毎度のことなのだろう。霊夢の顔を見れば。

なんだかんだで二人が面倒くさがっているところを見ると、二人は結構似た者同士なのかもしれない。

……魔理沙は自分の都合のいい方向にもっていってるだけだが。

 

「まあとにかく、妖怪くらい知ってるはよね?それになったって事。納得した?」

 

「酷く大雑把」

 

「もう説明しないわよ?」

 

「はい、ゴメンなさい。……現状が理解できませんけど、お願いします」

 

この世界がなんなのかどうかも知らないのに、説明なしでここを出るのはきついと思い、咄嗟にお願いをする。実際、私に急に妖怪とか言われても、非現実すぎて通用しないと思うし、ここの常識と私の常識は、どこか微妙なズレがあると思う。

 

その後、霊夢の説明を聞く限り、意味不明の文字が発せられたことが多かった。

「幻想郷」だの「妖怪」だのなんだのと、多分元々私の居た世界では無かったと思う話ばかりだった。実際に魔理沙が箒に乗って空を飛んだり、霊夢自身空に浮けたりするらしい。その所を見る限り、ここは非現実が現実になったと考えてもいいだろう。

 

「とにかく、貴方は外から来た人間で、魔理沙の馬鹿が変なくするを飲ませたせいで妖怪になった……と言うより、築けない程妖力が少ない妖怪だったのを魔理沙やアリスが勘違いしたのもあるわね。普通の人間にこんな事が起こったら、急な対応ができなくて体が爆発するでしょうし」

 

何気にグロテスクな事を言う霊夢に、少し寒気がしたのだが、それ以前に魔理沙が私を殺しかけたことに寒気がした。

 

「魔理沙?」

 

私は後ろを振り向いて、こっそり忍び足で逃げようとする魔理沙を止める。

 

「な、なんだぜ?私はこれから……」

 

「ここで帰るんだったら、いつか私が魔理沙の家に忍び込んで、私に飲ませた薬を夜に飲ませてあげようと思ったのだけれど。残念だわ」

 

「…………」

 

魔理沙は渋々と元の座っていた位置へと戻り、座る。正座で。

私は正座と言ったつもりは無いのだが、私自身が発してる殺気で気がついたのだろうか?まあ、そんなことはどうでもいい。魔理沙の弱みを一応握ったんだ。それを有効活用しなければ。

 

「ここに来たのは良いけれど~、家が無いのよね~」

 

あからさまにわざとらしく言う。霊夢もニヤニヤしっぱなしだ。

魔理沙はもう察したかのように、苦笑いしながら言う。

 

「……家に連れてけってか?別に良いぜ?家が散らかってること以外は気にしなければ」

 

「あ、そう。じゃあ良いわ。頼むわよ」

 

そう言って、私は魔理沙に向かってにっこりと笑う。霊夢もずっと笑いをこらえているが、一人だけ、魔理沙本人があまり笑えていない奴が居た。まあ、当然でしょうね。

そう思い、私は魔理沙の気が楽になるように発言を促す。

 

「ほら、部屋のかたずけ手伝ってあげるから。実験も手伝ってあげるから、安心して」

 

「大歓迎だぜ!!」

 

「やっぱり毒キノコでも食べさせようかしら?」

 

あまりにも魔理沙が調子に乗ってきたために、少し強烈な発言をピシャリと言う。

魔理沙は渋々、ガッカリしたフリを懸命にしていた。顔がニヤけてるからバレバレなのだが。

 

「もういいわ。とりあえず、私も説教は疲れたし、他にもすることあるから……」

 

そう言って、霊夢は閃いたように言う。

 

「いつか来る花見の準備を手伝ってもらおうかしら」

 

「「却下」」

 

「なによ。釣れないわね」

 

説教や長話に付かれている私達は、速攻で口を合わせて却下と言う。まあ、薄々予想はついていたが。

それでも一応霊夢には感謝しなければならない。100のうち、99は魔理沙が原因なのだが。私は少しの笑顔を浮かべながら、霊夢に感謝しているつもりで言う。

 

「冗談。今日ほどお世話になった日は無いからね。特に魔理沙には」

 

そう言って私は魔理沙の方を向き、クスクスと笑う。

魔理沙は仕方がなく、諦めたように手を挙げ、

 

「暦が言うのなら仕方がないぜ」

 

そう、言った。

 

「じゃ、準備をしましょうか!!いつ花が咲くかは知らないけど」

 

そう言って霊夢は喝を入れるように、手を二回パンパンと叩く。

 

木枯らしの風が吹く春。異変に気付くのは、まだ先の話である。




基本的に作者はのんびりやっていければいいと思っています。
まあ、こちらとて受験も来ますので、そうやすやすと顔を出すわけにもいかないのですが。
投稿ペースは、毎日6時……と言いたいところなのですが、先ほど言った通り、この長い休暇が終わったら、投稿ペースが二日に一回となるでしょう。
その時は、まあ……忙しいんだな、と、温かい目で見守ってあげて下さい。

最近の小説を書くたびに悩んでることは、自分の書いた小説が面白いのか全く分からないことですね。コメントで面白いとか書いて下さると、私も安心します。
やっぱり自分で書いたものは面白くないんでしょうか?
小説を書くのは楽しいのですが……どうなんでしょう?
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