「よいしょ、暦、でいいのよね?とりあえずこの荷物あっちに置いてくれる?」
「は~い。って魔理沙。それそっちじゃなくてあっち」
「あ、スマンスマン。こっちだったぜ」
倉庫の中で響く三人の声。中にいる少女三人が、左方向に進んではステンと転んだり、右方向に進んではハクションとくしゃみをする、何とも見てて楽しい風景が描かれていた。
「なあ霊夢。何でこんなに散らかってんだ?」
つい先ほどくしゃみをした魔理沙が、霊夢に疑問を投げかける。
「いつもは萃香が手伝うんだけど、アイツ酒を途中で飲んでは散らかすから今年は呼ぶの止めたの。で、散らかっちゃっても面倒だから放置してた」
そう言って、霊夢は「やっぱり呼ばなくて正解だったわね」と言って、面倒くさそうに荷物を持ち上げる。私はつい先ほどこけてしまったせいで、せっかく整えていたところがまた散らかってしまった。
「あ~……またやり直し~……」
何でこんなことが毎回起きるんだろと思いながらも、散らかってしまった木材や骨董品などを、元の棚に直していく。時々、箱の蓋の上に、『絶対にあけるなよ』と書かれた物があったが、霊夢がキッと睨んできたため、すぐに片付けておいた。
「とりあえずここに……と……キャッ!」
棚の上の隙間に箱を差し込んだ途端、今度は私の頭の上から大量の本が落ちてきた。
「もしかして暦、ドジッ子か?」
それを見ていた魔理沙が、私に向かって少し心に突き刺さる発言をする。
確かに昔からよくこけていたような気がしたが(あくまでそんな気がしただけ)流石に酔い止めの薬と試薬品の区別がつかない魔理沙だけには言われたくなかった。
「はぁ~……何でこんなに本があるの……」
そう言って私は、落ちてきた本を拾い集める。
どれもこれも大分古くなったもので、その本自体がどうしようもないくらい腐敗しており、ところどころに虫食いの穴があった。きっとゴキブリかウジ虫が湧いたのだろう。
本のページを開いてみたが、どれもこれも読めると言うものは無かった。
「霊夢~。これもう読めないくらいに壊れちゃってるから、捨ててもいいよね?」
「適当にそこら辺に置いといて。まだ使えるかもしれないから」
霊夢の貧乏癖があるのか、そこら辺に置いとけだそうだ。
そりゃ散らかるわと思いながらも、落ちてきた本を一個ずつ、読めるか読めないかの区別をつけながら別けていく。暫くの間、本の区別を進めていると……
「ん?これだけ題名があるわね」
そう言って取り出した本。外見を見ると、まあ、まだ読めるレベルの、あまり傷が無い本だった。
「えっと……『禁書・憑依術』?」
「なんだそれ?新しい魔法か?」
それを聞きつけた魔理沙が、その本を覗きに来る。それに合わせて霊夢も近づいてきた。
「貸しなさい」
そう言って、霊夢は私が見つけた謎の本を取り上げる。暫くその本とにらみ合いをした後、それを私に返した。
「とりあえず、呪いが無いか確認したわ。多分開いても大丈夫よ」
「そう……」
魔理沙が少し茶化すように「お得意の直感か」と言って、霊夢に睨まれているのを無視し、その本を開く。
……何も書いてないわね
「どう?何か書いてあった?」
「いや、真っ白」
「じゃあ要らないわ。そうだ。それ、あげるわ」
「良いの?つい先ほど、まだ使うかもしれないからって聞いたけど」
そう言って、ホントに貰っていいのか聞いてみる。霊夢は「別にかまわないわよ」と言いながら、掃除をし始めた。魔理沙も、「何も書いてないんなら要らないんだぜ」と言って、霊夢と同じように掃除を始めた。
私は「せっかくだから」と、独り言を言い、掃除を再開する事にした。
※※※※※
「やっと終わった~」
そう言って私は、片付けると意外と広くなった倉庫に寝転がる。溜まっていたホコリも、ハタキなどで落とし、雑巾などで綺麗に拭きあげたから、ホコリが舞う事は無かった。
「それにしても、今日は寒いんだぜ」
そう言って、魔理沙は寒そうに外へ出る。確かに春だと言うのに、この寒さは秋の終了のような寒さが感じられた。霊夢は片付けが終了した後、ゴミを何処かへ持って消えてしまっていた。
「へっくち!!……本当に寒いわね……」
実際、私はここの世界じゃない方の世界の服を着ているため、薄着でここに来ている。
こんなのだったら制服でも来てくれればよかったと思うが、あいにくヘッドフォンを首に装着してるのが一番の救いだった。赤いスカートで、上は淡い赤色のTシャツ一枚に黒いパーカー一着は結構寒い。寝てる体制で体を猫みたいに小さく丸めても、寒さが感じられるくらい寒かった。
(パチ……パ…………パチパチ……)
と、どこからか、物が燃えている音がした。何気にあったかそうな音のために、気がつけば無意識に起き上がっていた。
「何をしてるの……?」
そう言って、倉庫から離れる。気がつけば、空は星空が見えるまで暗くなっていた。
早いわね、と思いながらも、火の音がする方向へと足を進める。どうやら、神社の裏で音がしているようだ。
「ん?暦?どこに行くんだぜ?」
魔理沙が倉庫から顔を出し、私の後をついてくる。段々魔理沙の目が見開いていき、やっと意識が覚醒したところ、「あ、火の音か」と言う。神社の裏で音がしているところと、霊夢がゴミを持っていったのを考えると、ゴミを燃やしているのだろう。
神社の陰から顔を出す。そこには予想していた通り、霊夢が火でゴミを燃やしていた。
「なんだよ霊夢~。一人で温まってないで、私も混ぜるんだぜ」
魔理沙がそう言うと、霊夢の側によって、火に手を近づける
「は~温かいんだぜ……」
そう言って、魔理沙は幸せそうに目を細める。私も一緒に混ざろうかと思ったが、
(ドサッ)
手に持っていた、霊夢に貰った一冊の本が、私の手から滑り落ちた。
「そうだ……これの存在忘れてたわね」
そう言って、私は霊夢と魔理沙の間にねじり込み、その本を開いて眺め始める。
別にどこか変わっているわけでもなく、いくら眺めても、すべて白紙だった。
「う~ん……ホントに何も書いてないわね……」
「暦?そんなの見てないで、温まろうぜ?」
そんな魔理沙の声も、私にはうまく届かず、私はその本を食い入るように眺めていた。
(なーんか、違和感があるのよね……)
そう思い、本を最初のページに戻し、また捲り始める。
なにか、どこか普通の本とは違うのだ。それがあまりにも地味過ぎて気が付いていないだけで。
そう思いながら、ひたすらページをめくる。一枚一枚めくるのに、少し時間が掛かるが、ひたすらめくり続ける。その途中、暇そうに魔理沙が、
「あ~……そろそろ熱くなって来たから、離れるぜ」
そう言って、魔理沙は火から少し離れる。
その時、私は一気に閃き、無意識のうちに体を立ち上がらせ、声を出していた。
「そう!そうよ!!この本は一枚一枚の紙が厚いんだわ!!」
「「…………」」
急に大声で喋り出したため、二人は茫然と私を見る。暫く時間がたって、私が「ハッ」と気がついたように言うと、渋々だがその場に座り込んだ。霊夢が聞いてくる。
「どう?もしかして、何か手懸りがあったの?」
私は咄嗟に、
「そう!そうなの!!」
「分かったから、落ち着くんだぜ」
私は咄嗟に声を張り上げるも、眠そうにしていた魔理沙に落ち付けと突っ込まれる。
私は、「あ、ごめん」と言いながら、本の説明を始める。
「この本のページを捲っていくと、時々捲るのに違和感があるのよ」
そう言って、私は霊夢に本を貸す。霊夢はその本のページを勢いよく捲り始めた。
最後まで捲り終わると、
「確かに、ところどころ、『普通の紙より分厚い紙』があるわね」
と言った。魔理沙もその本を貸してもらい、一ページずつ、丁寧に本のページを捲っていく。
「確かに分厚い所があるんだぜ。でも、どうやってその余分に付いている紙を引きはがすんだ?」
魔理沙は、どうやってこのページの謎を解くか、疑問を問いかける。残念ながら、そのことについてももう解明してあった。
「霊夢。もう火は大分消えてきてるよね?新しいゴミとかはない?」
「もう全部燃やしたわ。後は少し火が残ってるだけね」
「じゃあ、水を持ってきてくれる?」
そう言って、私は本の分厚い部分のページを丁寧に破っていく。魔理沙はまだ上手く理解が出来ていないようだが、霊夢は直感で、私がやろうとしていることに気がついたようだ。
「アナタ、まさか……」
「うん。このページを燃やす」
「なっ!?」
魔理沙が驚いたように言う。
「火で炙って文字を浮かび上がらせるのはよくあることだけど、燃やすって本気か!?」
「うん、本気」
そう言って、自信ありげな眼で魔理沙を、そして霊夢を交互に見つめる。
魔理沙は未だに動揺していたが、霊夢は決心したように、そのまま何処かへ歩いていく。すぐに魔理沙が霊夢を止める。
「お、おい霊夢。オマエどこ行って―――」
「―――水を取りに行くわ。私の直感がそうしろって言ってるもの」
そう言って霊夢はスタスタと、何処かへ歩いて行った。魔理沙の方を見ると、未だに動揺している。
「どうしてそんなに驚いてるの?」
すると、魔理沙が呆れたように、
「そりゃあお前、今までなかった方法で謎を解こうとしてるからだぜ……こう言うのは火で炙ったりすると、掛けられていた魔法が解除されたりするもんだぜ?その私達の常識とは違うやり方で解かれても、動揺するしかないだろ……」
そう言って、すぐに笑った。
つまり、ここには無い常識を、私が住んでたと思われる常識?な方法で解いたわけだ。
そんな考えを巡らせていると、大きめの桶に水を汲んで来た霊夢が戻ってきた。
「これくらいでいいかしら?」
「うん。十分よ。これくらいあれば」
そう言って私は、火が消えかけている炎めがけて、先ほど破ったページを投げ捨てた。
すると炎は、私が破ったページに引火した。私はどのくらい燃やせばいいか時間を計り、そして水の入った桶を持ち上げる。
「今!!」
そう言って、水を勢いよくぶちまける。すると一瞬にして火は消えていき、残ったのは、ゴミを燃やした灰と、黒い煤まみれになった数枚のカードらしき物。霊夢はそれを拾い上げ、煤を手で払い落す。
「これは……スペルカードかしら?」
「「スペルカード?」」
何故か魔理沙も声を上げる。
「なんでスペルカードがこんな本から出てくるんだぜ?」
「私に聞かれても困るわ。文句ならこれを作った人に行ってちょうだい」
「あの……スペルカードって何?」
全く話がついていけず、私だけキョトンとした表情で首をかしげる。
霊夢は、あ、しまったとでも言うように頭を叩き、私に説明し始める。
「まあスペルカードってのはね……ええと……弾幕ごっこ、この説明もしなきゃね……まあ、後で説明するわ。その、弾幕ごっこで使うカードよ。何故これが出てきたか知らないけど……」
そして霊夢は一言追加する。
「私には使えないわね」
そう言って、私に返してきた。
「使えないってどういう事?」
霊夢なら使えるだろうと思っていたのだが、霊夢自身無理とでも言うように顔を横に振る。
「何も反応しないわ。何か条件が必要なんでしょうね」
「条件……かあ……」
そう言って、私は霊夢に渡された五枚のカードを眺める。そのうち四枚はなんて書いてあるか分からなかったが、一枚だけでかでかと「覚醒」と書かれてあった。
「……覚醒?」
そう呟いた途端、そのカードだけが勢いよく発光し始めた。
「わ、わわッ、な、なによこれ!!」
「暦!?いきなりどうして!?」
凄まじい発光に、霊夢、魔理沙、私も手で顔を覆い隠す。数秒経ってもカードは未だに発光し続けていた。一体全体、何が起こるって言うんだ……?
そう思った瞬間、強く光っていたカードが急に光が収まる。一体なんだったんだと、覆い隠してた手を退かすと……
「消えた……」
光を出していたカードは、跡形もなく消えいた。
しかし次の瞬間、私の頭は理解不能な文字が浮かび上がっていた。
『幻聴を現す程度の能力』
……何だったの?今の……
【……え…………る……もし…し………………もしもし?聞こえる?】
急に頭に響く声。私はそれが何者の声かは知らなかった。分かることと言えば、女性の声と言う事だろうか?咄嗟に返事を返す。
「……誰?」
【あ、そう言えば名前言ってなかったね。そうね……あえて……花夜美、カヨミで言いよ】
「いや、誰よ」
【言ったでしょ?花夜美で良いって】
「どうしたんだぜ暦?急に一人で喋りだして」
魔理沙が心配したように呼びかけてくる。私は驚いたように、
「えっ、聞こえないの?」
と言ってしまった。
「さっきからお前独りで喋ってるんだぜ?なんだ?幻聴でも聞こえるようになったのか?」
まさにその通りの発言をする魔理沙。霊夢の方を向いてみるも、霊夢すら不思議そうな顔をしていた。声をひそめながら、頭の中で響く声に喋りかける
「もしもし?花夜美?何で私にしか聞こえてないのよ……」
【だって君に憑依したんだもん。仕方がないじゃん】
「な……憑依って、アンタ……」
【とは言っても、取り憑いただけだけどね。君に完全に憑依した訳じゃないし。あ、でも一応貴方の能力を使えば、具現化できないわけでもないよ。ちょっと、ただでさえ少ない妖力を借りるね】
そう言って、通称花夜美の声が急に聞こえなると同時、私に入っていた活力が抜き取られるような感覚を覚え、一瞬足がフラつく。一言余計な言葉が多かった気もしたが、力が抜ける感覚には、私もうまく対応できなかった。それを見て魔理沙が心配したように言ってくる。
「大丈夫か?」
するとその瞬間、また何かが発光した。その発光源はどこかと言うと、私の体からだった。
「お、おい。本当に大丈夫か?」
「う、うん。多分」
すると、私の体から無数の光が飛び出してきた。霊夢と魔理沙は驚愕の目で染まりっぱなしだ。ちなみに私もである。その私の体から飛び出した光は、一気に何処か一か所へ集中していき……
私の、瓜二つの顔をした少女が現れた。
「……こんばんは。暦と随分瓜二つの顔をしちゃってるけど、花夜美って呼んでくれる?」
「「「……は?」」」
花夜美……彼女がそう言って、何気ない挨拶をするが、ここにいる誰もが皆、同じ素っ頓狂な声を出していた。
※※※※※
幻想郷。木枯らしが響く春の夜に、博麗神社で二人の少女が迷いこみ、そして出会った。これが一体何を現しているのか、まだ本人すら分かっていない。
春。今日も何処かで異変が起きていることを、彼女達はまだ知らない。
記憶を失った少女と幻聴は、一体この先、この世界で何を見る?
それが悪夢か、幸せな夢か。それとも、全ては幻か。
最後に僕たちは、この二人に伝えよう。
【僕らは成功できることを、願っているよ】
見た目はまだ幼い三人の声が、彼女を飲み込んだ海に向かって、それを追いかけて行った彼女へ向かって。
本来嫌われていたハズの彼女の消えた場所には、三つの花束が置かれていた。
途中で駄文になったかもと心配している作者です。
集中力って大事ですよね。
ちなみに私は、明日投稿できません。
いつか二連続投稿する時があるかもしれません。
今回は特別な用事がありますので、ご了承ください