東方幻聴論   作:土壁 茜

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謎めいたスキマと憑依術

「……ッ、煩い……」

 

【起きろ―!!起きろ!起きろ―!!起きろ起きろ起きろ起きろ起きろーーーーー!!!】

 

「ッ、ああああもう!煩いって言ってるでしょ!?」

 

そう言って私は毛布から起き上がり、誰もいない部屋で叫び声をあげる。はたから見れば独り言にしか見えないであろう。しかし、彼女の今いる部屋にはもう一人、一人とは言えないのだが、上手く表す事の出来ない、何かが居た。

 

【いや~にしてもよく寝てたね~。私はずっと起きてたから暇だったんですよ~】

 

「このっ、私が何もできないからって何でもかんでもしやがって……」

 

【別にいいじゃないですか。もう朝なんですし】

 

「……はいはい。分かったわよ」

 

そう言って私は、見えない何かの指示通りに動く。実際は動きたくないのだが、コイツには何を言っても無駄だと言う事を私は知っているので、半ば嫌がりながらも起きる。ちなみにこの頭の中で響く声の名前は『花夜美』。実は私の名前、『暦(こよみ)』のこ、をか、に変えただけである。見た目も私そっくりで、二人並ぶとどっちがどっちだかわからない。

……まあそれが起こるのは、この幻聴が実体化した時だけであって、実際の姿はない。形を持っていない。だからこのように、私の体の中で遊んでいるか何かしているのだ。

暇なときは私の睡眠の邪魔をしたり、と……何故、悪質なものが多いものだから、昨日の夜で一回。今日の夜で三回怒ったのは今日の話である。ちなみにこの部屋は魔理沙に借りている。

 

【それで!今日はどこ行く!?】

 

多分私より幻想郷に居る日数の多いはずの花夜美が、早く早くと急かす。何故私よりこんなに外へ行きたいのだろう。私より活発に動いているから、もしかしたらコイツのせいで私の使用するエネルギーが吸い取られてるんじゃないか?

そうも思ったが、頭の中で動いている花夜美の無邪気な行動を見ていると、そんな考えは知らず知らずのうちに消えてしまっていた。何だかこうしてみると、まだ幼い少女みたいな雰囲気を漂わせている。それを見ていると、どうしても罪悪感が湧いてしまった。

 

【早く!外!外!】

 

「はいはい。分かったわよ。行けばいいんでしょ」

 

……ホントに、随分と無邪気な子ね……なんでこんなに素直に出来るのかしら……

 

そう思いながら、私は着替えたりなどと、外に出るための準備をする。

ついでに魔理沙からもらった薬(今度は間違いないようだった)をゴクリと飲み干す。

ちなみにこの妖怪の森は、非常に厄介な空気がうようよと漂っているらしく、普通の人間ならそれで普通に体調を崩してしまうらしい。つまり私みたいな初心者ごときがこの薬を飲んでおかないと、命に危険が及ぶ可能性があるらしい。

この魔法の森に住む人間達が少ないのは、それが原因だ。

 

「……ん?なんだ暦?もう出かけるのか?」

 

椅子に座って、本をまくら代わりにしてた魔理沙が、私が出しているものお気に反応して問いかける。私はそれを「うん。ちょっとね」と言って、そそくさと外へ出る事にした。

 

「薬飲んだか?」

 

「飲んだわよ」

 

そう言うと、私は玄関に設置されている、少し歪な形をした扉を開ける。

その瞬間、とっても美味しいとは言い難い、嫌な臭いのする空気が流れ込んできた。

私はその空気にむせ込んで、ゴホッと二回咳をしながら、顔を歪めて言う。

 

「あ、安定の酷さね……」

 

【そうですか?私は普通ですけど】

 

花夜美は先ほども言った通り、実態を持っていない。しかし自我はある。

実体がない分、相手の記憶を除き込んだりと、相手を勝手に操ったり出来るなどと、昨日の博麗神社でウソ臭い話を並べていた。

ちなみに昨日、私と魔理沙は、博麗神社で倉庫の片づけを手伝っていたのだ。

無論、この私の中に居る花夜美は、昨日までは居なかった。

急にある一枚のカードが光ったと思えば、一気にこの状態までに至ったのだ。

ついでに能力は私自身の物らしい。

 

『幻聴を現す程度の能力』

 

花夜美に何度も説明されたことで、散々、嫌なほど耳に入っているが、幻聴を操ることは元から基本の能力として、操る事が出来るらしい。ただ単に私の力がまだ弱いだけで、強くなれば、十分幻聴を操る事が出来る。

しかしこの、幻聴を現す能力は、元々形が無い幻聴を形にすることができる。

妖力の消費が地味に激しいが、それを花夜美の能力、『憑依を操る程度の能力』が加わることで、その現れた幻聴を私に憑依することができ、人一倍の力が加わるらしい。花夜美曰く。

 

【ちょっと、何私抜きで考え事してるんですか?】

 

「ああ、どうでもよくて忘れるところだったわ」

 

【……怒りますよ】

 

「冗談冗談」

 

花夜美の怒っている様子が、頭の中に浮かぶ。こう、花夜美の姿を見る事は出来ないが、自分の今の状態を脳へ送ることができるらしい。つまり、様子が分かる。とは言え、意識に無理やりそれを送るような物だから、ハッキリ言って気味が悪いとしか言いようがない。いつでも私の記憶を探ることは可能らしいし、寝てるときにこっそり記憶をのぞこうかなんて私が寝た振りをしていたときに花夜美が独り言で呟いていたのを聞いていたのは内緒の話だ。

 

なんだかんだで花夜美と喋りながら歩いていく。その時、声が聞こえた。

 

まだ、上手く聞き取れない。でも確かに聞こえる謎の声。

 

【どうしたんですか?】

 

「……いや、多分気のせい」

 

【だからどうしたんですか?】

 

「空耳が聞こえただけ。気のせいよ」

 

そう言って、花夜美には覚られないように適当に話をうながす。

しかし、私は未だに引っ掛かったままだった。

 

(……あの声は一体……)

 

花夜美には聞こえなかった。だけど、私は確かに聞こえたのだ。

『助けて』と……

あの声は、何処かで聞いたことある。いや、声の主とは全く違うのだろうが、その声に含まれる感情と言うものが、どうも心の隅で引っ掛かっていた。

 

この罪悪感は一体……

 

【今日はボーッとしてる回数が多いですね】

 

花夜美の発言により、私は一瞬で現実に引き戻される。私はそのまま苦笑い。花夜美は呆れたように、

 

【とりあえず、博麗神社に行きましょう。まだスペルカードが何なのか聞いてない筈ですよ】

 

そう言って、やれやれとでも言いたげに手を挙げ、首を左右に振る。

 

そう言えばそうだ。私は、この世界の事をまだ知らない。知っていると言えば、ここは私の常識とは違う、非常識が常識の世界なんだ。もっと、もっとたくさん知らないと。

 

そう思い私は、足を前へ一歩踏み出す。その途端。

 

 

 

地面が、割れた。

 

 

 

「【は?】」

 

 

 

※※※※※

 

「……暇ね」

 

お茶を飲みながら、ある数枚の紙をひらひらと仰ぐ程度に振り回す少女。

博麗神社の巫女であり、名は博麗霊夢。

彼女は昨日、突如幻想郷に訪れ、そして博麗神社にやってきた少女が見つけ出したスペルカードという物を、一時預かっていた。

勿論、私が使えるようなものではないし、一番暦が使えそうなスペルカード。

彼女をここに連れてきたのは多分あのスキマ妖怪なんだろうが、その肝心のスキマ妖怪は今、この寒さの状態であるときっと未だに冬眠中である。

アイツならきっと、時々起きては何処かへ式をすっぽかしてウロウロし始めるのだろうが、昨日に限ってこなかったものだから、彼女を連れてきただけなのだろう。何の意味があるのかは知らないが。

と、その時、神社の外では春のものとは思えないような突風が吹き起こった。

木ぞ建築の神社の隙間から、先ほどと同様、春のものとは思えないような冷たさの隙間風が霊夢の足に降り注いだ。

 

「……ッツ、寒っ」

 

この寒さは、暦が来る少し前からこの調子だ。

大分温かくなってきて、春らしくなってきたと思えば、一日一日と日が進むにつれ、少しずつ寒くなって言っているのである。異変では無いと信じたい。こんなに寒いとこっちが冬眠したくなる。

そう思いながらも、未だに昨日約束していたハズの『花夜美』が来るのを待っている。

暦はその時にはいなかったが、彼女が具現化している状態の時に、実は二人でひっそり話していたのだ。このスペルカードの件で。

 

早く来ないかな――――――……

 

その時―――――………

 

『キャア!』

 

気の聞いたばかりの声と、地面に落ちたような鈍い音が私の耳に入る。

どうせ、あのスキマ妖怪が勝手に連れてきたのだろうと思い、スタスタと外へ向かって歩いてゆく。そこには予想通り、あのスキマ妖怪の例のアレが浮いており、下には勿論、私が待っていた客が居た。

 

「あら霊夢。お久しぶり」

 

「アンタは客じゃないから帰ってちょうだい。私はこの気絶している子が客だから連れていくけど」

 

「あら?私だって彼女を連れてきた身よ?」

 

「あら残念。私は目的の客以外を中に入れるような主義では無いの。予約入れるまであっちの式の所で冬眠でもしてなさい」

 

そう言って私は、違う方向に居た紫の方を向く。彼女はもう、姿を消していた。

 

 

……何がしたかったのよ

 

 

※※※※※

 

「……で、そう……そ…………」

 

「………こう………え………………」

 

「………うっ、うぅん………」

 

私は一体何の会話をしているのかと、うっすらと呻き声を挙げながらゆっくりと目を開ける。その呻き声に、霊夢『達』は気がついたらしく、

 

「あっ、起きましたよ」

 

「あら、本当ね」

 

としらっと言ってきた。私は、勝手に私から出てきているある人物を睨む。

 

「……もう何があっても驚かないわよ花夜美」

 

「え?何がですか?」

 

そう言って花夜美は、『何か変なことでもしました?』とでも言いたげに首を横にかしげ、思いっきりすっとぼける。

私が言いたいのは、勝手に私の力を借りてまた具現化してるところだ。

もうそれも、慣れ始めてしまいそうなのだが。馴れちゃダメだろ。

 

「ああ、そうそう。花夜美にスペルカードの説明をしてたの。花夜美にも教えたけど、一応貴方にも教えておくわね」

 

「は、はぁ……」

 

そう言って、私は渋々と霊夢の話につきあう事にした。

 

「まずこれ」

 

そう言って差し出されたのは四つのカード。

霊夢はそれを見せながら淡々と説明をする。

 

「この四つのカードでは弾幕を出すことはできないわ。これ、全部自分自身の強化だけだったわ」

 

「弾幕?」

 

またしても謎の単語に、私は首をかしげる。

霊夢は、『ああ、そいえば説明してなかったわね。まあ、いずれ分かるわ』と言って、またカードの話に戻った。

 

「この四つのカードは、ノーコストで、つまりなんの力も必要なく花夜美を具現化できるわ。それも、通常の数倍力は上がってるわね。で、花夜美を貴方に憑依させることで自分の力を格段に、しかもコスト無しで力を上げる事が出来る……と。まぁ、スペルカードによって、上がる能力は少し変わるらしいけどね」

 

「は、はぁ……」

 

とりあえず返事を返しておきながら、私の脳内の中は

 

(マジで何言ってるか分かんないんですけど)

 

な状態になっていた。花夜美はそれを見てか、こっちを見ながらずっとニヤニヤしてる

 

「ああ、スペルカードを使用する時はカード宣言って言うものをしなきゃいけないから……話聞いてる?」

 

「ワカルワケナイジャナイデスカヤダー」

 

「ああ、そう」

 

(無視かい!)

 

……この後も霊夢の説明は淡々と続いた。

 

 

―――――――スペルカード説明――――――――

 

『憑符「完全憑依・喜」』

 

ノーコストで幻聴を具現化でき、それを自分に憑依することができる。

自分自身のステータスが一時向上し、弾幕の連射力が大幅に上がる。

 

 

『憑符「完全憑依・怒」』

 

ノーコストで幻聴を具現化でき、それを自分に憑依することができる。

自分自身のステータスが一時向上し、弾幕の攻撃力が大幅に上がる。

 

 

『憑符「完全憑依・哀」』

 

ノーコストで幻聴を具現化でき、それを自分に憑依することができる。

自分自身のステータスが一時向上し、弾幕に拡散効果が付属する。

 

 

『憑符「完全憑依・楽」』

 

ノーコストで幻聴を具現化でき、それを自分に憑依することができる。

自分自身のステータスが一時向上し、弾幕に追尾効果を付属する。

 




急な都合により、一時的に投稿を開けてしまいすいません。
前回までは6時と言う事の投稿で頑張っていましたが、今回の事情が事情で無理だと判断しました。
これにより、不規則投稿になる場合があります。極力毎日投稿していくつもりですが、それでも二日に一回のペースになるかもしれません。
読者の皆様には本当にご迷惑をおかけします。
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