多分2000文字前後程度。
1
生きるってことはどういうことだろう。
人間だれしも一度は考えるだろうこと。
そんな問いに意味はないと気付かなくても。
そんな問いに意味がないと気付いていても。
生きるってことを。
自分ということを。
人生ということを。
そんな考えたってどうしようもないことを飽きもせずに考えているのだろう。
実際、自分だってそうだったし、二十歳を超えたけれど今だって考えている。これから先、大人になって、社会に出れたとして、結婚して、子供を作って、平平凡凡とした日々を送ろとも考えるづけるのだろう。
そして二十年と少しの人生において、俺はこう思うのだ。
生きるってことは、生きようとすることなのだ。
自分ってことは、自分であろうとすることなのだ。
人生ってことは、人として生きようとすることなのだ。
屁理屈といえば屁理屈で。言い訳といえば言い訳で。
答えになんかなっていないけれど、俺はそう思うのだ。
だから俺は、自分の生に真摯でありたかった。
自分という存在に正直でありたかった。
人生という事に真面目でありたかった。
魂を全力で燃焼させて、本気でありたかったのだ。
何をすれば偉くて、何をすればみっともないのか俺にはわからなかったから。何か決めたことには本気であろうとこれまで生きてきた。何をすれば、ではなくて、どうすれば、という考えだったのだ。
仮に一国の大統領とその国の農夫。どっちが偉くて凄いのかと問われれば、俺は本気でやっている方が偉いと答えただろう。いいや、まず間違いなくそう答えると断言できる。
だってそうだろう。本気でやることが、本気でないことよりも凄くないんてあってはならない。何かをやる以上は本気で。それが俺の数少ない人生の指針だったのだ。
そうやって、生きることにも本気でありたかった。
それなのに俺の生は、無残にも奪われた。
神などというふざけた存在に。
その日はそれまでと何一つ変わらない一日だった。何一つ変わらない日常。穏やかな陽だまり。それなりに友人もいて、恋人こそいなかったけど、幸せだった。
時間が止まればいい、そう思ってしまえるくらいには自分の日常を好いていたんだ。
それでも、何の変哲もない日に俺は死んだ。
死因は、なんだっただろう。交通事故か通り魔か、それこそ空から隕石でも降って来たのか。
ともあれ俺は死んだ。
呆気なく、無様に、意味も無く死んだ。
未練はあった。後悔もあった。理不尽な死に抗いたいという思いもあった。もっと日常を味わいたかった。
それでも、それでも。俺は死んだのだ。ならば仕方が無い。いいや、仕方が無いんてことで済ませられるものではないにしろ、死んだ以上を受け入れなければならないだろう。
喪ったものは帰ってこないのだから。
喪って、それなのに簡単に帰ってくるものなんて、よっぽどそれが些細な事であるか、喪失に対する冒涜なのだ。
だから俺は、死に往く意識の中で自らの死を受け入れた。
どこかの地面にぶっ倒れて、吸い込まれそうなくらい真っ青な空を眺めていた記憶があるから、交通事故とか真昼の通り魔だったのだろう。全身から熱が消えて、血という命の滴が零れ落ちる中、蒼穹の美しさを冥土の土産として死んだ。そして、意識を失い。
次の瞬間目に入ったのは白い空間そして自分を見下す、老人だった。
いいや見下すといっても、実際には俺に五体投地と言わんばかりに土下座していた。上下左右、床の概念すらも曖昧な空間で俺に頭を下げていた。
だから見下すといったのはその目、そのもの。
混乱したままでも、それだけが気に障った。そして、その老人の言葉にも。
――私は神だ。
――お前は自分のミスで死んだ。
それは、俺は受け入れていた。神様にミス。まぁ、仕方がないだろう。神様だって万能ではないのだなぁ、とか死んでしまったんだからしょうがないと思い、
――だから他の世界に転生させてやろう。
――なにかしらの特典を付けてもいいぞ?
――その言葉に激昂した。
ふざけるな。ふざけるな。ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!!!!!!
他の世界? 転生? 特典?
なんだそれは、馬鹿にしてるのか?
俺は死んだんだ。お前が殺したんだろう俺を! なのに転生とか訳の分んないこといってんなよ! 天国でも地獄でもどこでもいいから連れて行けよ!
そう、俺は叫び、
――な、なにを言っておるんじゃ、お主は。転生だぞ? 特典着きじゃぞ?
神とかいう爺は、心底不思議そうに言った。
言葉を失った。
気持ち悪い、吐き気がする。あり得ない。なんだこれはコレが神か。こんなの神っていうのか。こいつは俺の憤りを、まったく理解していない。
ああ、そうだ。こいつの目はそういうことなのだ。謝っているし、申し訳ないと思っているけれど、この神とやらは俺を見ていない。
単純に自分が失敗したから、仕方ないから無かったことにして他の世界に転生させてやろうという、本当にそれだけのことなのだ。俺たちがゲームのセーブデータをいじるのと変わらない。攻略がうまくいかなかったから、最初からやり直そうという感覚で――俺の生は弄ばれているのだ。
話が通じていない。顔を合わせているのに、何も理解できない。
神と人間はどうしようもなく不理解なのだ。
――やれやれ。めんどうじゃのう。適当な世界に色々突っ込んでおくかの。
最早そんな言葉は耳に入らなかった。会話に意味なんて無い。
だから、俺は無力な人間らしく。
呆気なく、無様に、意味無く――理不尽な生を与えられたのだ。
――そして俺の新たなる生が始まる。
与えられた力はこの世の全てを無かったことにする力。どこまでも俺の主義に反した力。この世のすべてに対する冒涜。自分がこれを保有しているという事実に吐き気がする。できるのならばさっさと死にたいけれど、自殺なんかして自分の生を穢すこともできない。
だから生きよう。
望まぬ生を与えられたからこそ、今度こそは悔い無く、他人の介入する余地がないように死ねるように。恵んでもらった力を使うことはないように、せめて人間らしく。
生きて、生きぬいて――死んでみよう。
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