地雷に転生しました   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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「――何をしてくれる!」

 

 突然の奇襲に真っ先に反応したのは、デュナミスだった。雨あられとぶち込まれる巨大な光弾が修復したての城の内装を次々に破壊していくのを見て、

 

「我らの労働ーー!」

 

 褐色の全裸に黒衣が纏う。いやそれは衣服ではなく、帯状の黒い影。鍛えこまれた筋肉に巻き付き、外殻として構成される漆黒の鎧。デュナミス自身の腕だけではなく、さらに一対の腕も生まれ、その顔は仮面に隠される。

 

「デュナミス――大幹部モード!」

 

 そして生まれるのは漆黒の魔人。膨大な魔力と反則的なまでに強力な魔法障壁。まさしく旧・魔法世界において最強クラス。完全なる世界(コズモエンテレケイア)内においてもフェイトと並ぶ実力者。二十年、いやそれ以上の経験値は今の完全なる世界デュナミスにしか持ち得ない大きなアドバンテージ。今この場にいる面子では間違いなく最も高い戦闘力を持つ。

 それを持って拳を光弾に叩きこみ、

 

 デュナミスの障壁と外殻はまとめて粉砕された。

 

「な――!?」

 

 驚愕。ありえない。造物主の使徒として与えらる曼荼羅障壁は伊達ではない。最高位クラスでもない限りは障壁のみで防げるほどの高性能を有するのだから。

 にも関わらず障壁は紙のように粉砕された。障壁だけでなくデュナミスの外殻まで粉砕された。せっかく全裸でなくなったのに再びの全裸。

 そしてさらに光弾は迫る。

 これまでのような乱弾幕ではなく、障壁や外殻を失ったデュナミスを狙い撃ったような一閃。

 それが全裸に迫る。

 

「ぬぅ……!」

 

 だが全裸は焦らなかった。障壁も外殻も失ったからこそ、彼には遺されたものがあった。

 そう――筋肉だ。

 

「フッ……!」

 

 短く息を吐きながら中空にて身体を動かす。身体は右半身を前に突き出し、左手は右手首を握りしめる。両膝は軽く曲げて、胸の厚み、腕の太さ、そして背中と足を真横から見せつけるそれは、

 

「――サイドチェストガァード!」

 

 褐色の筋肉が光弾を弾いた。

 

「ヌハハ! 二十年間鍛え続け、術式として完成させた我が筋肉には効かぬわぁ!」

 

「うわアホがいる」

 

 あの光弾を防いだのは見事としか言いようがないが、それでもアホだろ。二十年間もっとやるとこ無かったんかい。ともあれ、敵襲だ。

 

「颯、精霊使ってサーチ頼む」

 

「すでにやってるよ」

 

「ニィ、焦の回収頼む。意識無かったら叩き起こせ」

 

「わかった」

 

「デュナミス! しばらく防げるか!?」

 

「無論だ、半日労働をこれ以上壊されてたまるか! それよりも貴様は狙撃手を叩け!」

 

「わかってるよ!」

 

「見つけた。かなり遠い。南南東、十五キロほど。一人だ」

 

 その情報に僅かに戸惑う。十五キロ。颯の言う通りかなり遠い。そんな距離からあのレベルの光弾を連発させているということを考えると信じられないが、待っていてはやられる。

 

「水晶、流水デュナミスのサポート頼む」

 

「……了解した」

 

「御武運をマスター」

 

「じゃ、行くぜ颯」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 青年は城から二人が跳び下りるのを見た。十五キロ先の天上に浮かぶ巨大な城。そこから黒髪の青年と白髪の少年がオスティアの廃都に降り立ち、自分の方向へと迫ってくる。

 

「ハッ」

 

 青年は口端を歪める。上等だというように。先ほど全裸に防がれたのは驚きだったか、それすらも面白い。

 こんなわけのわからぬ世界に落とされてから、訳のわからぬ化生しか相手にしかしてなかったから――人間を相手にするのは久しぶりだ。

 矢筒から二矢を引きぬき、弓につがえ、

 

「やはり、射抜くのは人間に限る」

 

 放つ。放たれた閃光は二つ。迫る少年と青年へと。

 

 

 

 

 

 

「来る」

 

「受けるなよ!」

 

「もちろん」

 

 全身を魔力で強化させた俺と颯が夜の廃都を駆ける。十五キロ。普通に走ればそれほど遠い距離ではない。それでも今この状況ではもっと遠く感じる距離だ。相手は曼荼羅障壁を軽く粉砕する光弾を連続で放てる相手だ。あの全裸ではない俺や颯では一撃喰らっただけでアウトだろう。

 だから避ける。

 

「っと!」

 

 眼前から迫る閃光。足場から跳ね、中空で身を躍らせながら回避。光弾も速いが、なんとか避ける。身体のすぐそば破壊の塊が通り過ぎ、背後で瓦礫を爆散させる。生じた爆風を追い風にしてさらに加速するも、

 

「遠いなくそったれ」

 

「まだ一キロ……来るよ」

 

 再びの狙撃。僅かな感覚しかないから回避の度に速度は落ちてしまう。同時の城への狙撃も続けたままだから恐れ入る。

 

「つうか、なんだよ。まじいきなりすぎるだろ」

 

「ま、こっちも悪の組織だしね。奇襲されても文句は言えない」

 

「悪の組織もままならねぇな」

 

 言っている間にも光弾は連続して降り注ぐ。だが、距離は未だに遠く、いつまで避け続けられる確証はない。そして当たれば終わりだ。

 だから、

 

「使うよ」

 

「あぁ、加減要らないだろうしな」

 

 颯が学生服もどきの中から仮契約カードを取り出す。先ほどは出力を決め切れずに被害を大きくさせ過ぎたが、この廃都で、この相手ならば問題ない。

 

『――来たれ(アデアット)

 

 

 

 

 

「……?」

 

 矢を連続で放ち続ける青年は、微かな違和感を感じた。少年の方が懐から何かを取り出して呟いた。にもかかわらずなにも起きない。眉をひそめ、少年の方に焦点を合わせるも、何かが変わった様子もない。だが何かが変わったはずだ。いくらなんでもこのタイミングて無駄なことをやるような奴はそうはいないはずだ。

 何かがあるはず。

 確かめるために矢を放ち、少年へと視線を凝らせば、

 

「――へぇ」

 

 自らが放った光が切り刻まれるように霧散した。

 

 

 

 

 

 

「どうだ?」

 

「うまくいった……と言いたいところだけどね」

 

 颯のアーティファクト――『見えざる殺人鬼(ジャック・ザ・リッパー)』。

 不可視のナイフだ。刃渡り十数センチ程度の見えないナイフ。魔力に応じて斬れ味と数を増していく刃だ。昼過ぎの時は魔力出し過ぎて何百本で出て来て周囲の建物バラバラにさせたが、今は気にしている場合ではない。今は迫る光弾にナイフを次々に当てて言って切り裂いたのだ。

 

「攻撃一つ消すのに五十本近く必要だ。結構疲れるし、きついね」

 

「おし、辿りつくまでがんばれ」

 

「話聞いてた?」

 

 言っている間にも光弾が飛来し、

 

「とっ」

 

 颯が腕を振り、光弾を切り刻み、霧散させる。しかし本当に見えない。近接系からすればかなり鬼門の能力だ。、あぁ、そんな考察はどうでもいい。とりあえず、もうすこし半分だ。

 

「ん?」

 

 そして狙撃のリズムが崩れたことに気付いた。さきほどまでほとんどの感覚無く放たれていた光弾が途切れた。僅かに空白が生まれる。だが、それは空白だと気付いた瞬間には次の矢が放たれた。

 先ほどまでのよりも細く小さい閃光。だが――数は数百にまでも及んでいた。

 

「――!?」

 

 驚く間もなく。さながら流星群の如き矢は最早回避もままならほどの広範囲で俺と颯に迫る。

 

「リュウ、下がって!」

 

 颯が前に出て、両腕を広げる。魔力が高まり、不可視の刃のはずの刃の存在を感じれるほど数を増やしていく。

恐らく軽く見積もって数百、或いは千以上にまで届くほどの刃。大魔法にすら匹敵する広範囲殲滅の攻撃。並みの高位魔法使いならば一瞬でひき肉にされるであろう刃群が、

 

「ッ……!」

 

 破壊の流星群と激突し、

 

「くうあああああああああああああああ!!!」

 

「颯ェ!」

 

 乾いた破砕音と共に不可視の刃が瞬く間に粉砕され、颯が流星群に飲み込まれる。

 そして刹那――、

「――」

 

 颯の背後にいたから流星群からかろうじて逃れた俺に、特大の流星が迫った。

 

 

 

 




筋肉すげぇ

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