地雷に転生しました   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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 ある森では修羅と羅刹が殺意を刻みあいながら神楽を舞っていた。

 あるステージの舞台では表舞台の役者が雌雄を決しつつあった。

 ある塔の頂点ではこの世の法則から外れかけている少年が眼下を睥睨していた。

 そしてそれら全てを観劇する彼女の視線は、

 

「……なによあれ」

 

 ステージに突如として現れた二人組の青年へと注がれていた。

 『創世神』とか修羅の介入までは彼女は揺らがなかった。むしろがっつりドヤ顔して現れた『創世神』が即首を撥ねられたときは飲んでいた紅茶を吹きだして腹抱えて爆笑していた。笑いすぎてちょっと吐いたのは秘密だ。

 この程度ならどうでもいいのだ。よくあることだ。勘違いした転生者があっさり死ぬのは。むしろザマぁと笑いたい。

 エキストラというのは前触れなしだからこそ盛り上がるわけだから。

 それはいいのだが。

 その後に現れた二人組は見過ごすことはできなかった。

 

「……」

 

 広げた手のひらに金色の蝶が集まって、古風なキセルに形作る。それを口にくわえて、息をゆっくりと吸い込んで、

 

「ごほ、ごほっ! まっず! おえっ! ……いやぁこの肉体年齢で吸うのはまずいか」

 

 後方へキセルを放り捨てる。放物線を描きながら再び金色の蝶に還っていくのを構わずに、ワンピースのポケットからせんべいを取り出して頬張る。

 

「あーうん、やっぱこっちね」

 

 恨むべきは肉体年齢。二十歳程度ならキセル加えていれば退廃的な感じが出ていいのだと思うのに。幼女状態では吸うのが不可能だ。その点せんべいなら年齢なら関係ないし。

 

「ふう」

 

 どうでもいい現実逃避をここまでにして。

 

「臭い……けど臭くない……? んん?」

 

 古津凛華は首をかしげる。不可解そうに。変なものを見るように、二人組の青年を見る。

 ヘルマンたちの戦闘は終わりかけていて、彼の敗北は最早避けようがないし、ここで彼が勝つパターンがあったためしがない。そしてその様子を彼らはまるで頓着せずに眺めていた。自分と同じように観劇していたのだ。

 

「物語の調整者気取り? それだったら顔出すのはおかしいわね……」

 

 思考を張り巡らす。傍観者だか観劇者気取りで顔を出すというのは珍しくないとはいえ、

 

「気になるわね」

 

 転生者なのは間違いないのだ。それでもこれまで遭遇してきたのとは違う。闇の災厄とか零の保有者とか言うまでもなくて。あの二人、ついでに言えばいきなり現れた妖怪っぽいのも含めて三人。

 あんな三人はこれまで見た存在ともまるで違う様で――、

 

「ふ、ふふふふふふ、イレギュラー、だとでも? この期におよんで? 今更? この私に見せるというの?――不愉快、だわ」

 

 故に観劇者は立ち上がる。己の意志で舞台上へと上がっていく。

 

「何を驚くのでしょうか観劇者の皆様方? 黒幕っぽいから、ラスボスっぽいから、見透かしたようなことをいうから。最後まで私が観劇者でいると思いましたか? 何を馬鹿な。ラスボスなんていうのは最終的は倒されるだけのそんな枠回りですのに」

 

 だから私は。

 

「転生者であり」

 

 観劇者であり。

 

脇役(エキストラ)であり」

 

 役者(アクトレス)であり。

 

「そして何より――魔女。無間の魔女フレデリカ。出番が早いとか異議異論は一切合財無視させてもらいます。超ウルトラ重要主要キャラクターがこんな序盤で終結するという奇跡――実現させてみせましょう。くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす!」

 

 

 

 

 

 

『領域構成、対象回収、法則形成――宣誓・幻想法廷、開廷!』

 

 そして世界が一変する。

 表舞台も裏舞台も。筋書き通りに進んでいた者も進んでいなかった者も。何もかも関係なく。

 魔女に選ばれた存在のみが現実の世界から切り離され、幻想の中へと取り込まれる。

 そこは文字通りの法廷だった。

 天上は遥か高く、優に数百人は同時に参列することができるほどの広さ。黒と紫、白の三色を基調に意匠がこらされ、絢爛豪華という言葉では片付かないほど。

 二階部分のバルコニーには多種多様な客が存在していた。赤髪の魔術師、金髪の女性、銀髪の女、片眼鏡の執事、露出の多い女、同じ服装の七人の少女。銀髪と騎士甲冑の少女にそれに伴う二人の補佐官。互いのそっくりな青髪と橙色の髪の二人組。角を持った和装の女とお菓子を抱えた金髪の少女、紫の鎌を携えた少女。黄金の杖を振り回す幼女と童女と少女。刀を背負った青年。さらには老人や中年の男女、若い青年や少女たちもいた。

 爆笑したり微笑したり哄笑したり無表情だったり興味なさそうにふるまっているがみな一様に眼下、一階部分の三人を品定めするように見ていた。

 三人とは言うまでもなく。

 なるようにならない最悪七篠流。

 時空を超えた英雄那須与一。

 断頭の処刑人にして名を持たぬ修羅。

 

「……どこだここ。俺、確かあの女とヤりあって……傷もないし。どういうことだ」

 

「これはまた面妖な。どうにもこういう化外の術には慣れませぬ」

 

「あ? つか誰だお前ら。これお前らの仕業か、ふざけんな元いたところに戻しやがれ首落とすぞ」

 

「とまぁ、実に剣呑な御仁だがどうするつもりで?」

 

 にらみつけてきた修羅の視線を流しながら与一が流に振る。

 

「どうするもなにも……向こうから説明があるだろ」

 

「Good.よい判断よ」

 

 上空から聞こえてきた声へ三人とも見上げる。

 視線の先には、

 

「初めましてこんにちわ。無間の魔女フレデリカよ」

 

 正面の王座から三人を見下す魔女の姿だ。

 

「それであなたたちは何ものかしら? 完全なる世界? 紅き翼? 白き翼? 神鳴流? 関東呪術教会? 西洋魔法教会? 魔界の住人? 未来からの逆行者? 過去からの来訪者? 異世界からの迷い子? 人間? 悪魔? 獣人? 人形? 応えなさい、答えないさい。この法廷で嘘は許されない。比類なき、偽りなき赤き真実で語りなさい」

 

 魔女の糾弾に修羅は眉をしかめ、英雄は肩を竦め、

 

「人間だ、それ以上でもそれ以下でもない」

 

 人間は当たり前の用に答える。

 

「ならば目的は? 何のためにここにいるのかしら?」

 

 矢継ぎ早に飛来する魔女の質問()。それはただの言葉ではない。虚偽も虚飾も装飾も禁じられている言霊の一種。

 嘘をついた場合、周囲の見学者によって全身が切り刻まれるという末路が待っている。

 むろん彼はそんなことは知らない。

 だが、それでも。こんな状況に落とされても己を見失わぬ精神は、問われた言葉に正直に答えた。

 

「ーーー」

 

 その答えは、魔女を満足させるに足る赤き真実だった。

 

 




なんかよくわからにことになっていますけど安心しましょう私もです!
すっげー大雑把なプロットしか練れていないですハハハ。

最後ちょっと修正
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