地雷に転生しました   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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 意識は突如として覚醒した。

 

「っ、あ、ああ……!」

 

 行ったことは呼吸だった。今自分がどういう状況なのか、何処にいるのか、そんなことは何かも頭になく、息を吸い、

 

「ゴホッゴホッ!」

 

 焦げた大気が喉を焼いた、

 

「うげぇっ!……え、あ、う……」

 

 思わず咳き込み喘ぎ、涎が飛び散る。

 

「な、なんだ……よ」

 

 うつ伏せに硬い地面にぶっ倒れていたのは背から伝わる感触でわかった。力が上手く入らず、震える腕で地面を押しながら起き上がり、世界を見れば、

 

「なん、だよ、これ」

 

 燃える世界だった。

 どこかの村だろうか。かなり古めかしい中世のような村が炎に包まれていた。物が焼け落ちる音、何かが壊れる音。それら破壊の音叉が鼓膜を打撃する。

 

「うあ……?」

 

 意味がわからない。なんで自分はこんな所にいるんだ。おかしいだろう。

 思い、そして。

 

「――ッ!」

 

 なにがあったのかを思い出す。

 ふざけた神様とやらによる転生。絶対に解り合えないだろう相手。それと話てどこかの世界に生まれりを強制させられたのだ。

 

「くそ、が……」

 

 力が入らない全身を動員させて無理矢理動かす。かなりの気だるさと煙によりかなり息がしづらいがそれでもなんとか動く。

 

「あん……?」

 

 視線が低かった。というより足が短い。いや足だけでなく手もだ。

 縮んでいる。

 その癖、服はサイズが合っている。

 吐き気がするご都合主義の展開だ。

 それでも、それに気を取られてはこんな炎の中では生き延びられないだろう。だから無理矢理疑問も驚愕も排除して、足を動かす。

 自分がいたのは村の通りだったらしい。最早炎しか感じられない村だが、見る限りそれなりに人が住んでいたのだろう。民家や店らしきものがあった。

 もっとも全て燃えているけれど。

 とりあえず足を動かす。

 周囲を見回して、村の出入り口或いは炎が少ない所を探して、

 

『なんじゃ、まだおったのか』

 

「……は」

 

 異形が視界に飛び込んできた。

 全長五メートルほどの巨大な身体。爬虫類のような甲皮。禍々しい角。蝙蝠の如き羽。それはまさしく、

 

「あく、ま……?」

 

『ああん? ソレ以外の何に見えるちゅうんじゃ坊主』

 

 思わず零れた言葉に、ソレは当然のように答えた。

 

『んじゃ、今時帝国の餓鬼は悪魔も珍しいんか? 平和じゃのう。平和ボケじゃのう。んじゃったら――平和を恨んで死んで往け』

 

 悪魔が腕を振った。

 それはまさしく破壊の一振りだった。

 

「あ……」

 

 ほんと一瞬後に自分に叩きつけられるであろう一撃。こんな身体で喰らえば即死は間違いない。

 

「いや、だ……」

 

 嫌だ。嫌だ、そう嫌だ。

 転生なんてふざけた目にあって、それなのにまた悪魔とか言うふざけた化け物に殺される? いやだ、なんだ、それ。どれだけ俺の生は軽いんだ。嫌だ、嫌だ。

 死にたくない。

 止めてくれ、関わるな。俺はただ生きたいんだから。だから、そんな死とか破壊とか無くなっちまえって、思い。

 

「は――?」

 

 悪魔が消えていた。

 

「え、は――?」

 

 つい先ほどまでに自分を殺そうとしていた悪魔が姿を消していた。

 意味がわからない。なにがあった。いい加減の脳が理解できない。

 これまで訪れたことのない場所に飛ばされたと思ったら、よくわからない悪魔に殺されかけて、そうしたら悪魔が消えた。

 

「意味、わかんねぇ……?」

 

 自分は何をした? 何もしてないはずだ。唯行きたいと思っただけだ。

 死にたくないって思っただけだ。

 死は遠ざかればいい。破壊は消え去ってしまえばいい。

 そう思っただけだ。

 ああ、そうだ。今周囲を染め上げる炎だって無くなっちまえばいいと、思い、

 

 視界に入る限るの全ての炎が消えた。

 

「――」

 

 炎だけが、消えた。

 無くなっちまえばいいと思った炎が無くなっていた。焼け焦げた家屋の骨組みは残っているが炎そのものは完全に消失していた。

 

「――」

 

 まさか、と思う。

 

『なんぞ。なんやワレは』

 

 新たな悪魔が出た。先ほどのとは角の形が違うが、自分を殺そうとしているのは同じで、

 

 それも消えた。

 

「――――――は」

 

 視界さらに二体の異形がいた。

 

 消えた。

 

「――――はは」

 

 横を向いた。

 さらに三体もいた。

 

 消えた。

 

「―――ははは、はひっ、ふ、はは」

 

 嗤いが漏れる。

 そして、消える。

 悪魔もその向こうの炎も何もかも。

 

「――ひひっ、ひひひ、ふはははっ」

 

 なんだこれは。なんだんだこの力は。

 これが特典か。これがチートスキルとかいうやつか。

 

「っひひひひひひ、ふはっ、ふへへへへッ」

 

 気持ちの悪い嗤いを止められない。そうでもしなければ精神が崩壊する。

 あぁ、そうかよ。どこまで、どこまであの神とやらは俺を馬鹿にしているのだ。こんなものを俺に与えるなんて。

 

 何もかも。俺の生を邪魔する全てにその力は左右する。

 

 例外はなく、俺の命に危害を加える可能性のあるものはすべて無かったことになるのだ。

 あぁ、なんて気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いーーーーーー!!!!

 

「おえっ、ぐふっ、うぁ……」

 

 胃液が食道を逆流し喉に不快感を催し、それすらも無かったことになる。

 

「ああ――くそったれ」

 

 そして――この村の全てが無かったことになる。

 残ったのは地面だけ。何もない。なにもかも台無し。吐き気がする。頭も痛い。

 こんな力要らないのに、この力が無かったら死んでいた自分の弱さに吐き気がする。

 こんな力で助かって、ホッとしている自分に吐き気がする。

 なにもかも嫌なる。それなのに自分は消えない。

 それでも、

 

「俺はまだ、死にたくない……!」

 

 無様にも、そう思ってしまった。

 

 

 

 

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