例え逆行したとしても変わらないものはある。
それは当り前の様のな麻帆良の生徒たちの日々。前世においても今生で青春を謳歌している若者たちの活気は変わらない。アクの強い麻帆良の生徒なら尚更だ。広大な土地の中、毎日がお祭り騒ぎのように騒いでいる。前世では十数年後には魔法の学園都市から魔法と科学が入り混じった学園都市になり、宇宙エレベーターが置かれる大都市にま発展するが、人々の営みだけは変わらない。
穏やかな日々と優しい空気。変わってほしくない日常。
今も昔も過去も。ここの生徒たちは変わらない。単純にいって箍が外れている。学園に施された認識阻害結界。それがあるからある程度おかしい行動を取っても不思議にも思われない。世界樹を基点して展開される結界の効果は確かだ。そんなんだから現行科学を十数年単位で先取りしたロボットやオリンピック選手も顔を青ざめる運動神経の持ち主がゴロゴロいる。
つまり、異常者は異端者としてなりえない。
これまで
人間は異常を異端として排除する。
極端まで辿りついた者は人間ではなく化け物で、頂点に立ってしまった者は人外なのだ。よくわからないものを人は弾劾し、出る杭を潰して平坦さを求める。それがこの世界であり地域によって程度の差はあれど結局は変わらない。己を研ぎ澄ませることは己以外の何かを捨てるということなのだ。
だからこそ認識阻害結界はある。
世界樹の下にあるからこそ、麻帆良の生徒は所謂“力”に覚醒しやすい。魔力、気、才能、才覚。簡単に目覚め、簡単に普通を超えてしまう。自らの性質が研ぎ澄まされ、本来ならば辿りつけるはずの無い領域にまで至ってしまうだろう。
だからこそ認識阻害結界がある。
これがあるからこそ、越えてしまったは凄い人で、外れてしまった人は変な人で済むのだ。もし認識阻害結界が無かったらこの都市はどうなっていただろうか。
変態と変人のカオスというのは変わらないだろうけど、もっと殺伐としていたんだろうなぁとか思う。誰もが孤独で、孤高で、こんなに温かい空気ではなかっただろう。
「……ま、僕が言えたことじゃないんだけど」
役体の無いことを誰にも聞こえない声で呟く。呟きながら目の前に机の上に肉まんを手に取る。
「あちちっ」
今の自分の身体は麻帆良の認識阻害結界でもどうしようもないような領域だ。ここの生徒や教師たちがいくら外れてしまったものに寛大でも、
それでも、だからこそ食事の温もりを感じられるのだが。
「はふっ」
かぶりつく。少し厚めの皮を破って中から肉汁と十数種類は入っているであろう野菜のエキスが溢れる。超包子の肉まん、四葉五月の特製。不味い訳が無い。それでも記憶にあるのより若干劣っている気がするのは前世で食べたのが忘れられないからだろう。学生時代においてもプロ級だった彼女は後々もさらに腕を上げる。
すぐに一個食べきり、時計を見る。
七時四十分。
始業は八時半で今日は一時間目の授業は無い。だからこそゆっくり超包子で食事ができるわけだが。もう少し時間がある。だから、
「すいません、肉まんもう一つ」
「了解あるヨー! でも、ネギ坊主は小さいんだからもっと食べたほうがいいネ! 私のお小遣い的にもその方がいいネ!」
早朝超包子のウェイトレスをしている古菲さんのあっけカランとした物言いに思わず苦笑し、
「じゃあ、肉まん二つと、シュウマイもお願いします!」
「よく食べる子は好きネ! ちょいと待つあるヨー!」
ローラースケートで素早く動きながら厨房へと駆けていく。超包子の早朝出店。生徒や教師にも人気のグルメスポットだ。現に随分と人が増えて来て、三十人分はあるだろう客席はほとんどが埋まりつつある。部活の朝練終わりや、朝食代わりに多様する生徒がにぎやかに食事をしていた。
こういうのも変わらないことの一つだ。
古菲の元気さもかわらない。この世界でもそれなりに仲良くできていてよかったなぁと思う。
前世と違って、ほとんどの生徒は魔法に関わっていない。図書館島の一件は先に噂を潰して、臨時補修で乗り切ったし、惚れ薬も作っていない。修学旅行の一件では木乃香さんをさらわれて鬼神を召喚させられるとい不覚を取った。彼の父である近衛詠春の意向で魔法について説明がされて魔法の一端を知ることになったが、明日菜さんやのどかさん達が関わるのはなんとか阻止できた。カモは仮契約しようと画策していたが当然却下。シキも賛成してくれたのは助かった。さすがに三十一人を全員魔法から遠ざけるのには骨が折れる。ただでさえ破壊特化しすぎて補助系の魔法が使い難くなってきているのだ。そのせいで木乃香さんをさらわれてしまったのだけど。神代龍一がいなければ護りきれたというのは結果論か。過ぎてしまったことはしょうがない。
巻き込む必要が無い人を巻き込まなかったのだから良しとしよう。
普通に生徒と教師としては仲良くできてるわけだし。
「お待たせあるヨネギ坊主! 肉まん二つ、シュウマイ一つネ!」
「あ、ありがとうございます」
「あー、あと、混んできたから相席いいかネ?」
「えぇ、別に構いませんけど……」
「助かったアル! おーい、コッチあるヨー!」
古菲が元気よく手を振り、相席者を呼ぶ。
それは、
「……っ」
「……あ、どうも」
「そんなに固くならんでイイネ! 仲良くなるといいアルヨ、んで、注文はどうするネ?」
「あーお粥を頼む」
「了解ネー」
注文を済ませた彼女が僕の正面の席に。
少しだけ眉をひそめつつ、座るのは――
『デ■■悩みな■吹■■るな、抱■て進め……以■■』
『■ん■が■■てくれ■だろ?』
『あ■■■身が■ぶ■だ! ……■■たがあん■■身で■■■す一■だ! ■■だとか■係ね■、■■って■■んだ■? ■■……■■■と見■けて■■から■』
『■っ……■■――■んか■ケェー■!』
『■■なハ■ねぇ■■! こ■日……あ■■に芽■えた■■……』
『……■■さんに■■■も■にいて欲■■つっ■ろ』
『■■殴■て■い■■せにゃと■■■わけだ。何■■お前の■■■■■で、何を■■■に気■■てんのって■■をよ』
亀裂だらけの在りし日の刹那。もう見えないし、聞こえない。――それでも忘れていないだけのかつての残照。
かつて僕が、ネギ・スプリングフィールドが駆け抜けた生において、常に背中を押してくれた彼女。
「長谷川、さん」
「……おはようございます、ネギ先生」
●
「……」
「……」
気まずい。非常に気まずい。元々自分も千雨さんそれほど口数が多い方ではない。いや、千雨さんは素はツッコミ体質というかズバズバ鋭い意見を言ってくれるのだが今は完全に猫を被っているので会話がない。
それにしても完全に不覚。ここで千雨さんと会ったことは無いからまったく想定してなくて、思わずかつての記憶がフラッシュバックした。
もう正確には覚えていられない、虫食いだらけになってしまった記憶。細部はどこかへ消え去り、かつて抱いた想いだけが遺っているだけ。それでも、それで十分だと思う。
元々魔法とかの異常嫌いの千雨で前世においてはかなり巻き込んでしまったから、今世には絶対に関わらないように気を付けていたが、今の不意打ち過ぎる。
なるべく距離を置いていたのに。儘ならない。
「あの……」
「え、はい?」
「その、邪魔だったかな、と」
「い、いえ、大丈夫、ですよ」
「そう、ですか」
「……はい」
「……」
そして会話が続かない。ただ二人で黙々と食事を進める。僕は肉まんとシュウマイをほおばり、千雨は運ばれてきたばかりのお粥を口に運ぶ。時計を見れば八時直前。もう少ししたら時間だ。残っていたのを平らげる。すぐに立ち去ろうとしたが、
「結構、食べるんですね」
その前の千雨さんが声を掛けてくれた。
「え? え、ええ、まぁ。教師も体力が大事ですから。食べないと始まらないです」
「その……大丈夫、なんすか?」
「え?」
「いや、だから。いくら飛び級で兄弟一緒って言っても、先生みたいな十歳の子供が教師なんて、大変じゃないですかって……あぁ、すいません。出過ぎたこと言いました」
言い難そうに、ほんの微かに照れるように、頬を掻く。視線は僕から外れてあらぬ方向に。自分の言葉が失言だったと言わんばかりだ。
そんなこと、ないのに。
「……いえ、そんなことないですよ。ありがとう、ございます」
懐かしいなぁと思う。当り前の事だ。僕にとって昔は今この世界では今なのだから。
長谷川千雨は優しい人だ。優しくて厳しい人。厳しくて優しい。そうしてかつての世界ではずっと影で支えてくれた。今とかつての絆は失われたけれど、僕自身は忘れない。
それで十分だ。
「僕は……大丈夫ですよ。えぇ、至らぬ身ですけど、教師として頑張らせていただきます」
「そう、ですか」
「はい、ありがとうございます。では、また学校で」
「あ、はい」
立ち上がり、会計をしに古菲さんの下へ向かう。
そう、僕は教師だ。年がどうこうなんていうのは関係ない。大体精神年齢でいえば百歳越えているんだから、子供だからという免罪符は無しだ。何も知らなかった頃はもう終わった。もう何もかも知ってしまったから。在りし日に駆け抜けた日々の想いは未だこの魂に刻まれている。ならばそれでいい。堕天し、魔そのものに堕ちた身には過ぎだ閃光だ。
今のネギ・スプリングフィールドには、それでもう十分だから。
――護る、護り抜く。彼女たちの陽だまりは絶対に失わせない。
というわけで先に言っちゃとこの話ネギ×千雨
あと認識阻害結界てそんなに悪くないと思うの
主人公は知らない。男祭りでホモホモすればいいんじゃね(
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