地雷に転生しました   作:柳之助@バケつ1~4巻発売中

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ヘルマン編は後回しで。
もうすこしオスティアでにいますよ



9

 旧オスティアの廃都市群。その夜。

 日がある内から高位の魔物が蔓延る超難易度のラストダンジョン。周辺付近に立ちいるのに許可が必要であり、どんな物好きでも立ち入ることはまずない。

 魔獣や龍種、さらには一部の精霊等のざわめきと気配が夜の廃都を占める中で、

 

「ハァ……ハァ……!」

 

 青年が駆けていた。

 二十歳程度、黒の長髪を背中で人括りにした男。蒼の着流しと袴。腰に矢筒、背には和弓を背負っていた。女の如き整った顔立ちで汗を流し、髪を振りみだしながら駆ける。速い。魔力や気で肉体強化でもしているのか足場の悪い瓦礫の上を風を切りながら駆け抜ける。

 勿論いくら速度があるからといって、他の何にも相手にされないわけではない。

 

「……ッ!」

 

 進路上に飛び出してきたのは龍種。上位種ではないが、強固な魔法障壁と爪や牙は人間を殺すには十分すぎる。

 

「----!」

 

 夜の空を震わす絶叫を放つ。飛翔し、顎から尾まで矢の如くに直進。顎を開き、牙をむき出しながら青年を喰らおうと翼をはためかせ突進し、

 

「――邪魔だ」

 

 顎から腹にかけてまで風穴があく。

 

「――」

 

 何をしたかは簡単だ。腰の矢筒から矢を抜き、背の弓を構え、弦を引き絞り、放つ。ただそれだけの動作。だがそれは龍種の飛翔よりも早く、 極限まで無駄をそぎ落とされた動きで行われた。そしてそれだけでなく。木で作られているはずの何の変哲のないはずの矢は弓に番えられた瞬間に光を帯びて放たれ――飛竜の身体をぶち抜いたいた。

 魔法か気による奥義か。しかし己の為したことに青年はまったく気に掛けず瓦礫の上を走り抜ける。

 

「……」

 

 ようやく足を止めたのは周囲よりも高く飛び出た塔か灯台かなにかだったと思われる建物。劣化の激しく、斜めに地面に突き刺さっているようだが、構わずに駆けあがり頂点まで行く。劣化いしているとはいえ、青年一人分の重さを支えるのには十分だ。数度不安定な足を踏みしめ確認。

 そして見定めたのは――天上だ。

 

「……ッ」

 

 中空に浮遊する巨大な城。視線は厳しく、握りしめた両の拳は白くなるほどの憎しみが込められている。

 そこは――墓守り人の宮殿。

 彼は知らぬが悪の秘密結社、完全なる世界の本拠地である場所だった。

 

 

 

 

 

 

「あー、いや、違う。そうだ、もう少し右……行き過ぎだ。そう、そこ。よし、接ー着」

 

「ががごご」

 

「うむ、よくやった。次はあっちだ」

 

「ぐごがが」

 

「なに疲れた? ぬぅ、魔力供給は十分なはずだが……まぁよい、他のものにも伝えろ、休憩だ」

 

「ぐが」

 

「うむ、三十分したら再開だぞ」

 

 会話だけ聞けば実に普通だ。労働者と指導者。この程度の会話は旧世界でも魔法世界でもよく見かけるものであり、前世においては自分だって似たような会話をしたことがある。だからそれはいいのだ。それは。よくないのは、その会話を行っているのが、召喚魔と召喚士だから違和感が半端無いのだ。

 

「……」

 

「ん? どうしたリュウよ。そんな呆けた顔をして」

 

「……お前、召喚魔と話できるのか」

 

「いや、できん」

 

「じゃあなんで会話で来てたんだよ」

 

「筋肉の動きで大体わかる」

 

 筋肉ぱね。

 この筋肉馬鹿は無駄にスペック高いからいろいろ文句付けにくい。とりあえず服を着てほしいのだが。普通に気持ち悪い。この前の仮契約してた時は流したけど、ずっと全裸だったし。最近服着ているのを見てない。

 まぁ、この気持ち悪い変態は置いておく。

 周囲を見渡せば、修復中の城の下層部。昼過ぎに頑張りすぎた四人がアーティファクトで崩壊させたがデュナミスの召喚魔で修復中だ。すでに日が落ち、廃都オスティアは夜に包まれ魔獣たちの時間だ。かなり活発化するので急ピッチで修復作業が行われているが、

 

「一日じゃ終わらねぇか……」

 

 まぁ、当然だろう。融解したり、切り刻まれたり、焼け焦げたり、凍結したりと被害は様々。頭が痛くなる。

 

「ぬあぁ……」

 

「……これいつまでやってればいいんだい」

 

「あぁ、御無体をマスター……もう、限界、です……」

 

「おいこら変な声だすな!」

 

「……」

 

 絶賛反省正座中の五人。頑張りすぎた五人だ。

 

「お前らなぁ……」

 

 かける言葉も見つからない。反省中とはいうが、実際こいつらは頑張りすぎただけなのだ。元々造物主の使徒として莫大な魔力を保有している。魔力量なら旧・魔法世界においてもトップクラスだろう。そんな五人が始めて使うアーティファクトに頑張りすぎた魔力を込めたのだ。大変な事になるなんて決まってる。まぁさすがに自分の家ぶっ壊してお咎めなしというのもどうかということで正座させているのだ。

 要修行だ。流水のはともかく他のは被害が酷い。そもそもアーティファクトそのものがかなり強力だった。デュナミスですら知らないような超レアなアーティファクト。偶然、ではないだろう。契約者五人が全員超レアなアーティファクトゲットするなんてまずあり得ない。

 つまり――これも特典(・・)か。

 そう思うと吐き気しかしないが、それでも出たものに罪は無い。

 俺が使うわけではないし。

 まぁ、出力間違ってフレンドリーファイアなんてなったらシャレにならないからそれだけは勘弁だ。ついで、万が一俺にぶつけたらアレ(・・)が発動しかねないのだから。それだけは、絶対に御免だ。

 

「ほら、次気をつけようと思うなら立てよ。俺たちも手伝いに行こうぜ」

 

 肩をすくめながら苦笑し、五人を立つように促し、

 

「うぺろもぐぇ!?」

 

 身体の右に強い風を感じ、

 

 ――立ち上がりかけた焦が光の塊にぶち当たり吹っ飛ばされた。

 

「……」

 

 全員が悲鳴をあげながら飛んでいく焦を見送り、

 

「やれやれ、あのえせ炎筋肉には反省が足りなかったのですね」

 

 流水がしみじみと呟き、突然目の前の出現した魔力式のホロウィンドウに気付く。表示されているのはAとLとEとRとTの単語の羅列で、

 

「おや……これはなんの表示でしょうか?」

 

「敵襲だぁーー!」

 

 次の瞬間、巨大な光の塊が雨あられと城にぶち込まれてその場がハチの巣をつついたような騒ぎとなった。

 

 

 




安定の筋肉。

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