「……暇だなぁ」
とある休日の比企谷家。長男の八幡は信女と共に出かけ、両親は仕事でいない。暇を持て余していた小町は膝にカマクラを乗せて、その頭を撫でていた。人一人と猫一匹しかいない家に、ピンポーン、と呼び鈴の音が鳴る。宅配便かと思った小町は判子をポケットにしまって玄関に向かう。
「はーい!」
元気よく返事をしてドアを開くと、そこにいたのは宅配便の人ではなく、男三人女一人の四人グループであった。
「やあ小町ちゃん!用事で近くまで来たから顔でも出しておこうと思ってな!」
「あ、近藤さんじゃないですかー!土方さんに総悟さん、ミツバさんもこんにちはー!」
「オゥ」
「ちーっす」
「ふふ、こんにちは」
八幡のメル友、近藤勲、土方十四郎、沖田総悟、沖田ミツバが比企谷家へと訪れたのであった。
「いやー、わざわざ来ていただいたのに申し訳ないんですが、生憎と兄はお出かけ中でして…」
「お出かけっつったって、どーせまたデートだろ?折角来てやったっつーのに…」
「あら、未来のお嫁さんと仲睦まじいのは良い事よ?」
「そうそう、嫉妬は見苦しいですぜ近藤さん」
「俺、なんも言ってねーけど!?」
「まあまあ、折角来ていただいたんですから、是非ともあがっていってくださいよ!小町も一人で暇してたとこですから!」
「そうか?ならあがらせてもらうか。皆もそれでいいよな?」
特に反対する理由も無く、四人は小町にリビングに案内された。
「待っててください。今、飲み物持ってきますから」
「あ、なら私も…」
「いえ、どうぞ座っててください!お客様ですからね!」
手伝おうとしたミツバを座らせ、パタパタとキッチンに向かう小町の後姿を見て、勲がしみじみと呟く。
「いやー、小町ちゃんはホント気が利く子だよな。あの子は将来、良いお嫁さんになるぞ」
「そうですねェ。少なくともゴリラの嫁にはなりそうにねェや」
「ワッハハハハハ!そうだな、小町ちゃんには俺なんかよりも良い男ができるに決まってるもんな!」
総悟の皮肉を笑い飛ばす勲を見て、十四郎が深い溜息を吐く。
「ったくアンタは…。まァ、小町の気立ての良さは俺も認めてるがな…」
「はい土方さん!マヨネーズどうぞ!」
「おう、サンキュー。ほれ見ろ、マヨをちゃんと小皿に分けるなんてできた子だ」
「いや、それはお前が特殊なだけだから…」
十四郎にマヨネーズを盛った小皿、ミツバにタバスコ一瓶を差し入れた後、持ってきた飲み物を配る小町。総悟がコップに注がれた茶色い飲み物を見て、眉をひそめた。
「……ていうか、このコーヒーってもしかして、アレ?」
「はい!MAXコーヒーです!」
満面の笑顔で答える小町とは反対に、総悟はげんなりとした表情をしていた。
「うへェ…こんな甘ったるいの出されて喜ぶの、坂田の旦那くらいですぜ…。八幡の野郎、よくこんなモン愛飲してるなァ…」
「それは小町も同感です…。この間も50ダースまとめ買いしてましたから…」
「600本!?アイツどんだけ好きなんだよ!!」
「だから皆さんにも消化のお手伝いをしてほしいのです!」
「いくら減らしたって、また買ってくるだけだと思うがな…。こんなモン毎日飲んでんなら、アイツはあの天パーと同じく将来糖尿病確定だな…」
「そうね…まだ若いのに偏食は良くないわ」
「いや、アンタらは自分の食生活改めろよ!何そのマヨフロート!?ミツバ殿、コーヒーってそんなに赤い飲み物じゃなかったよね!?」
コーヒーにマヨネーズを浮かべた、通称マヨフロートを一気に飲み干した十四郎は、手持無沙汰そうに部屋を見渡した。
「んで、どうする近藤さん。アイツが帰ってくるのを待つのか?」
「そうだな。どうせこの後やることもないし…」
「じゃあ、お兄ちゃんを待ってる間、ブルーレイでも見ますか?お兄ちゃん、いっぱい持ってますし」
「勝手に見て怒られないかしら…」
「平気でしょ。妹がこっちについてるんだから。……お、これは…」
大量のブルーレイを漁っていた総悟が、一括りに分けられたブルーレイBOXを見つけた。パッケージには何やらキラキラした女の子の絵が書いてある。
「これ、アイツが好きなプリキュアってやつですかね。試しに見てみましょうか?」
「ガキ向けのアニメだろ?見る気しねェな…」
「まあまあ、たまには良いじゃねェか」
「そうよ、十四郎さん。童心に帰ったつもりで…ね?」
「あー、分かった分かった…」
女児向けアニメということで見るのを渋る十四郎だったが、勲とミツバに押されて渋々見る事になった…。
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「……グスッ……クソ……ガキ向けだと思って舐めてたぜ…近頃のガキはこんなモン見てんのか…」
「はい、十四郎さん」
「ああ…すまねェミツバ…」
全部見ると時間がかかるため、飛ばし飛ばしで最終回を見た後、号泣する十四郎にミツバはそっとハンカチを差し出した。その様子を総悟は冷ややかに眺める。
「まったく土方さんは、心ン中がいつまでも中二のままでいけねェや」
「そう言うなよ、総悟。俺だってちょっとウルっときたぞ?プリキュアってのも案外馬鹿にできないな」
「ま、面白かったのは認めますがねィ…」
「しかしあれだよな、こういう五人組って誰が一番かっていう話題になること多いよな。ちなみに俺はリーダーのピンクの子かな!いっつも前向きで元気いっぱいなとこが気に入った!最後、ボロボロになりながらも皆のために戦う姿は素晴らしかったな!」
「多いよな、って自分でその話してちゃ世話ねェや…」
「なんだよ、そういうお前は好きな奴いないのか?」
「俺ですかィ?俺はあの黄色ですかね。戦ってる時や必殺技出す時のピーピー泣き喚いてる姿がたまらねェ。最後、ボロ雑巾みてェな格好で醜いツラして喚いてるのなんて爆笑ものでさァ」
「お前どんだけサディスティックな見方してんだァァァァァァァ!!!!同じシーンでもお前の言い方じゃ全く別のモンになってんじゃねえかァァァァァァ!!!」
勲が大声でツッコんだところで、玄関の扉が開く音がした。
「あ、お兄ちゃん帰ってきた!」
「じゃ、全員でお出迎えといきましょうかィ」
小町達が玄関へと向かうと、そこには…
「小町さんただいま帰りました……おや」
「ただいま小町。お客さん?……あ」
比企谷八幡と今井信女がいた。そして…
「うーっす、邪魔すんぞー……は?」
「すまない、偶然一緒になってな……む、ぬしらは…」
「お、お邪魔しまーす…え?」
「オウ、遊びにきてやったアルヨー……ん?」
坂田銀時、月詠、志村新八、神楽がその後ろに立っていた…。
銀魂っぽさを出すのって難しい…。