東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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前回のあらすじ
妖怪の山でドベルに会う。


104 狂気

数時間前

 

妖怪の山で、天狗たちは見張りをしている。かなり強烈な異変がたて続きで起こっており、妖怪の山でも警戒の色は隠せなかった。

 

「そいや知ってるか?少し前に死者が蘇ったみたいだ」

「そうなのか?」

「そうよ。映姫が特別に許可したとか言ってたわ」

 

彼らが話題にしているのは特例として蘇った豺弍の事だった。人間の里にはその話は広まってないが、天狗たちは耳にしていた。

 

「閻魔も落ちぶれたもんだな。死者を蘇らせるなんて、節度を徹底的に守っていた姿はどこ行ったんだか」

「でも、異変解決のためじゃなかったか?」

「そんな事で破る必要あるかよ。人にギャーギャー言うくせに自分では…」

 

天狗たちは映姫にかなり不満を感じているようだった。しかしそれはしょうがない事でもある。映姫は出てきては説教をする。正論ではあるので、反論できずに黙って聞いてはいるが、快く思ってないのも当然である。

そしてそんな説教をする人が、規律を破る行為をすれば、偉そうな事を言うくせにと思ってしまう。彼らは悪態をついていた。

 

 

 

 

「すみません」

 

 

 

そんな彼らに、声がかかった。彼らが通ろうとする先に、1人の人間が立っている。見るからにひ弱そうで、彼一人でこの妖怪の山に来れるとは到底思えない。

 

「ここから先に進むのを止めてはくれませんか?色々と困りますので…」

 

人間の話を聞いて、さらに苛立ちが募る。なぜこんな弱そうな人間に指図されなければならないのか。そんな怒りを向けていた。

 

「うるせぇぞ人間。いまイライラしているんだ。あんま調子に乗るんじゃねぇ!」

 

剣を抜いて、勢いよく振る。首を斬り落とそうと動かした剣は、後ろに避けた人間の首を捉える事なく空を切る。

後ろに退いた人間は、何も動く気配も無かった。反撃する様子もなく、かと言って逃げようとする様子もない。なんの反応を見せない人間は、天狗のプライドを刺激した。

 

「そうか、テメェ死にてぇのか?死にてぇんだよな。俺らを徹底的に馬鹿にしたんだもんな」

 

話をしても、答える様子もない。地蔵か何かに話しかけているような気がして、イライラし始めている。もう殺してしまうかと、何も言わずに足を進めようとした時、異変に気づいた。

 

「あ?なんだこの白いの」

 

剣を持っている腕の、肩に近いところに白い物が付いていた。ゴミか何かが付いているのかと思い、それを払おうともう片方の手を近づける。

 

 

 

その瞬間

 

 

 

 

 

満開して命散る(ブルーデッドローズ)

 

 

 

 

天狗は破裂するように体が飛び散り、辺り一面が赤色に染まった。

 

 

「な…!」

「ひっ……!」

 

周りの天狗たちは、突然の事に驚きを隠せないでいる。つい数秒前まで全く異変のない天狗が、一瞬でバラバラになったのだから。一体彼が何をしたのか、予測することも出来ない。

 

 

「ふふっ…はは…あはははは!」

 

 

不吉な声が聞こえる。それを発しているのは、その人間以外いなかった。

 

「…綺麗だ。やっぱり綺麗だ。人間も妖怪も同じ、中身が凄く綺麗だ。真っ赤で、ドロドロしていて、形のない崩れた姿。それを見ると心が弾んでしまう。やっぱり、身体をバラバラにしてしまうのは最高です」

 

たった数秒間で、天狗たちは悟った。この人間は危険だ。鬼なんて言うレベルではない。

 

鬼なんかとは比べものにならないくらい狂っている。

 

 

 

 

 

その事を悟った天狗たちは、先ほどの天狗と同じ運命を辿る事から逃れることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

「ぐ…」

 

持ってきた包帯で、惣一は切られた腕を縛りつける。これ以上血が溢れ出ないようにするためだ。

 

「惣一さん、そんな無茶なやり方をしたら…」

「無茶ではありません。元より、その覚悟でここに立っているのですから」

 

早苗は惣一を心配していた。寧ろ心配しないはずがない。腕を失った男を心配するなという方が無理な話である。

 

(それにしても、どうやって腕を斬り落としたのでしょうか…?弾幕のようなものを放った様子も無かった様ですし…)

 

そんな中、惣一は何を使って腕を斬り落としたのかを考えていた。ドベルの手には刀のような物はない。そして弾幕を放った様子もない。

 

 

 

その疑問が浮かび上がっている間、戦闘は刻一刻と進んでいる。

 

 

 

黎人は『火』の形態になっている。戦闘モードに移り変わったと言うところだ。実のところ、彼はそれに入るのが遅かったのではないかと思っている。

 

「あなたが五行の男ですか。あなたの身体の構造、とても興味があります」

「頼むから黙っててくれ。最近妙な奴らに興味持たれてばかりなんだよコッチは」

 

ドベルの話す言葉を聞くだけで、背筋が凍るような感覚を覚える。声とかにその気味の悪さがあるわけではないが、ドベルの纏っている雰囲気がそういう風に感じさせてしまう。

 

「…行くぜ」

 

合図としての掛け声と共に、ドベルに斬りかかる。遅い攻撃では無いのだが、ドベルに難なくかわされてしまった。

距離を開けたドベルに向かって、更に攻撃を仕掛けようとする。その時、ドベルの指先が若干動いた事に気がついた。

そして、彼の勘が1つの予測を出した。まさかと思い、目に力を入れて、まるで小さな物を見ようとしている時みたいになっている。

 

そして黎人は見た。ドベルの指から、細長いものが現れている事に。

 

そしてそれが自分に向かって伸びているのが見え、黎人は刀で弾いた。

 

弾いたお陰で、黎人はなんとか無傷になっている。何しろ、気づいてなかったら、惣一と同じように腕を斬り落とされていたのかもしれなかったのだから。

 

「…チッ、気づきましたか」

 

黎人がそれに気づいた事に気付いたのか、ドベルはかなり悔しそうな表情をしている。

それを見ている霊夢たちは、一体何が起こっているのかが分からずに困っている。そんな彼女らを他所に黎人は話し始めた。

 

「…糸がお前の武器か?」

 

「…はい。正確には、鉄の糸です。この糸は見ての通り丈夫でして、多少重い物がぶら下がっていても千切れる事はありません。僕はこれで色々な物をズタズタにしてきました」

 

ここまでの説明を聞いて、先ほどの抱いていた疑問の答えが分かった。

細長い糸はかなり強力な殺傷力を持っている。鞭のようにしならせれば表面に傷を残すことは造作もなく、巻きつけて力を入れれば物を両断してしまう。

そして何より一番の特徴は、細すぎて見えにくいところだった。防御として本陣にワイヤーを何本も張っておいて、突撃してくる敵にダメージを負わせるという戦法も存在する。

 

先ほど、惣一の腕が斬り落とされたのは、その糸によるもので間違いない。

 

「それが分かったとしても、あなた方は何もできない。何故なら…

 

 

 

どんなに注意深くても、糸を完璧に見る事は出来ないのだから」

 

 

 

 

 

 

ドベルの手を振り下ろす動きに、糸を飛ばしたのだと全員が認識した。

その糸の攻撃を受けないように移動して、ドベルとの距離を詰める。

手に持っている刀で斬りかかろうとした時、ドベルは両手を合わせて、広げる。その両手の間を刀がすり抜けるかと思いきや、何か硬いものに当たったような感触と共に刀は止まってしまった。それだけで両手の間に糸が張っていると分かる。

 

ドベルの親指が、少しだけ動いた。それを見た黎人は刀を持っていた手を離す。そして遠くに移動した。

 

「…勘が鋭いんですね」

「クソが…」

 

黎人が見ているのは、離しているにも関わらず空中に浮いている刀だった。

 

「なんで…?」

 

霊夢はポカンとしている。刀を離したら当然落ちるはず。なのに空中で停止しているのが全く訳わからない。

 

それを見て、ドベルは説明を始めた。

 

「『糸を縫い付ける程度の能力』それが僕の能力です。針で通す必要はない。指から出す糸の先端につけるだけで糸が結びつきます。どれだけ固い物であっても意味はありません」

 

説明をしながら、指を動かす。すると空中で止まっていた刀が黎人に向かって飛んでいく。もう1つの、縫い付けられていない刀で防いだものの、勢いを殺さず黎人は遠くに吹き飛ばされた。

 

「そしてこの糸は変幻自在です。つまり、縫い付けた物は自由自在に操る事が出来るんですよ」

 

 

 

 

ドベルの説明を聞きながら、周りにいる霊夢、魔理沙、早苗はどう攻めるか考えていた。だがそれを思いついた者はいなかった。そもそもドベルの武器が見えないし、能力も厄介で近づく事すらも難しい。糸をかいくぐって攻撃を当てる方法がわからない。

 

「…!こうなったら」

 

だがこのまま呆然としているわけにもいかない。

霊夢は札を投げつける。近づくと危険なら、遠距離から攻撃をし続ければいいのではないか、そう考えた故の攻撃である。

 

だがそんなに上手くいくはずもない。操る糸は一本ではなく、数本の糸を使えば、投げ出された札を叩き落とす事も不可能ではなかった。

 

「こんな物ですか?博麗の巫女とは、意外と簡単な戦い方しかできないんですね」

 

札を叩き落とされたことで攻撃の手段が無くなった事を悟ったドベルは、心底残念そうな顔をしていた。呆気なさすぎて話にならないという事である。

ドベルは右手を開いた。そこから糸を出そうとしているのだろうかと思い、霊夢は警戒する。

 

だが、警戒するのが遅すぎた。

 

 

 

「うぐ…!?アッ…は……」

 

 

 

締め付けられるような圧迫感と、意識を持っていかれそうな衝撃から、霊夢は苦しみ始める。武器として持っていたお祓い棒を落とすが、霊夢はピクリとも動く事が出来なかった。

 

「れ、霊夢さん!?」

「オイ!テメェ一体何を…!」

 

霊夢の豹変ぶりに、早苗と魔理沙は焦り始めた。魔理沙はいつも使っているミニ八卦炉をドベルに向け、弾幕を放とうとする。

 

「…うっ…!?」

「ウア…!」

 

しかし、霊夢を助けようとした早苗も、ドベルに攻撃しようとした魔理沙も、霊夢と同じように苦しみ始める。

その時、魔理沙は理解した。ドベルが何をしているのかを。

 

「苦しいでしょ?糸で首を締め付けられる感覚は。体も動かせる筈がない。あなたたちはそうやって苦しみ続ける事しか出来ません」

 

体を拘束され、糸で首を締め付けられている。糸を千切ろうと思っても、ちぎる為の腕は使い物にならなかった。

 

「その苦しそうな表情、凄く良いですよ。僕は、苦しむ表情を見るのがとても好きなんです。一気に殺すよりも、ジワジワといたぶる方が、気が唆るんですよ」

 

ドベルの声が、だんだんと遠くで話しているように聞こえてくる。もちろんドベルが遠くに離れているのではない。離れているのは自分たちの意識の方だ。やがてその意識が途切れそうになる。

 

 

 

 

 

そう思った時、ドベルの声とは別の音が耳に入った。歯切れの悪い、ブツリとした音だった。

 

 

 

 

 

すると締め付けられている感覚も消えていく。それによって止められていた呼吸が再び出来るようになり、漸く解放されたかのようになった。

 

呼吸を整えて、霊夢たちはドベルを見た。さっきの音の正体は何なのか、なぜ解放されたのか、それを知るために。

 

「…っ!な……」

 

ドベルが漏らした声を聞いて、そしてドベルの姿を見て、全員が気づいた。

 

ドベルの腕が斬り落とされている事を。

 

腕が無くなれば、能力によって手から出している糸も消える。そのため首の拘束が解けたのだ。

ドベルに近づいている者が出た。先ほど吹き飛ばされていた黎人である。凄まじい速さから、ドベルを斬り裂こうとしているのだと想像がついた。

それはドベルも同じ、そしてノコノコとやられるはずも無い。遠くに飛んで黎人の攻撃を躱し、黎人に向かって糸を放つ。今度は手応えあり。完全に捉えたという事だ。

 

だが、ドベルは信じられないような顔になる。何しろ、自分の能力で操っている筈の糸が、勝手に動き出して彼自身を斬り裂こうとしていたのだから。

 

慌てて黎人に付けている糸を消す。これで自分を斬り裂こうとする糸もない。

これでドベルは先ほどなぜ自分の腕が斬り落とされたのかが分かった。数分前、黎人の持っていた刀に縫いつけていた糸、それを使われ、自分の腕が斬り落とされたのだと分かった。

 

「糸を、操っているのか?」

「黎人さんって、そんな能力を持っていましたっけ?」

 

近くで見ていた魔理沙や早苗も、糸そのものは見えないまでも、ドベルの慌てようからドベルと同じ考えに至った。

そして彼女らは疑問に思う。糸を操る能力など、全く聞いていない。どうしてそんなことが出来るのだろうかと。

 

(ん?待てよ…)

 

しかし、ただ1人だけ心当たりがある者がいた。霊夢は唯一、その能力を見たことがある。

ドベルの指から出されている糸は、イメージによって作られた物だといっても、材質は存在する。ドベルは頑丈さを求めたため、鉄の糸を使っていると言っていた。

 

 

 

 

つまり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鉄は、()()の一種なのだから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「HERE WE GOOO!! LET'S PARTYYY!!」

「あのキチガイモード出たーー!!」

 

 

 

 

 

 

そう、今の黎人は『金』の能力の上位種、『金塊』となっていた。有する能力は、鎧を纏い、金属を変形する能力である。よって鉄の糸も操ることが出来たのである。

 

「ACTIVE DIVE!!」

 

右手に持つ刀で再び斬りかかる。感情が上乗せして凄まじい勢いを出していた。振り抜くと風がビュン、と音が出るほど強く吹く。

ドベルは先ほどのように、距離を開けて攻撃を避ける。一定の距離で立ち止まり、お互いに動かない状態になる。

 

「…なるほど、糸をつけても意味がないんですね。だったら…」

 

攻撃が効かない事を認めるドベル。だが勝負を捨てる訳ではない。糸でバラバラに解体するのはあくまで彼が拘っている殺し方で、それが出来ないなら別のやり方があるのだ。

再び手を開く。また糸を出そうとしているのだ。だが黎人を縛ろうとはしない。

 

ビキビキ、と何か硬いものが割れる音がする。かなり小さな音だが、たしかに聞こえる。

何をしようとしているのかと警戒している。未だにおっかないやつである事に変わりがなく、いまでも不気味に感じている。

すると、黎人は何かが自分に向かって飛んできているのに気づき、急いでその場から離れる。その黎人がいた場所に、途轍もなく大きな物が飛んできた。黎人を捕らえる事が出来なかったソレは、そのまま遠くに飛んでいくことなく空中で停止する。そのお陰で、その正体を知る事が出来た。

 

「おいおい、無茶苦茶すぎんだろ…」

 

もはや唖然とするしかないような感じで魔理沙が喋った。霊夢も早苗も、それに同感している。

 

妖怪の山の木が浮いているのを見て驚かない方が難しい。

 

 

「…糸で無理やり引っこ抜いたのか?随分CRAGYな事をやるんだな」

「笑わせないでください。こんなの幻想郷で珍しく思う事じゃないでしょ」

 

次から次に、ドベルの周りに木や岩などが現れる。それを細い糸で持ち上げるなんて事、普通は考えない。

 

「それじゃ、藻屑となって消えてください!」

 

浮いている木や岩が、黎人に向かって飛んでいく。かなり大きく頑丈な物をぶつけられれば無事では済まされない。

飛んでくる木や岩を、次から次に刀で斬り落とす。弾が大きい分、叩き落としやすいのだが、集中を乱すと防ぎ損じてしまう。

木や岩が打ち砕かれ、地面に落下していく。その様子はかなり壮絶とも言える光景である。

 

「ハッ!!」

 

そして、ドベルが浮かせている中で最も大きな木が投げ飛ばされる。これは叩き落とすだけでは意味が無い。

 

両手で刀を持つ。渾身の一撃を入れるためには片手よりも両手の方が良い。

本来の『金』の能力、『威力特化』は当然『金塊』にもあり、力を入れれば入れるほど威力は上がる。

刀を真っ直ぐ上に伸ばす。横に倒れながら近づいてくる木を斬り落とすなら、縦の方が良い。

 

「…銀風!!」

 

そしてひと思いに、刀を振り下ろす。すると、刀から斬撃が飛び、飛んできている大木に当たる。

切れ込みが入る。割れていく。木片が出てくる。刻一刻と大木は音を立てながら崩れていき、やがて真っ二つに割れた。

 

「ふぅぅ…なんとかなったか」

「ええ。ですけど終わりではありませんよ」

 

息をつく暇はない。ドベルが糸で浮かせている木はまだ尽きていない。今の攻撃はまだ続く。

黎人は体力が底をついたと言わなくても、大きく消耗している。『金』の大技『銀風』は体力を大いに削る技で、何発も打てる技ではない。

だが黎人は構わず打つ。中途半端なところで戦いを止めることなく、体力がカラになるまで戦おうとするだろう。側で見続けていた霊夢はその事を知っており、それ故に焦っていた。

 

「さぁ、第2幕です」

 

再び木が浮かび上がってくる。そのまま黎人に向かって飛び出してくるだろう。せめて大きな体力の消費を避けるために、霊夢は黎人に防御のための結界を張った。

 

 

 

 

「うっ!?うああああ!」

 

 

すると突然、ドベルが苦しみ始めた。集中力が途切れたのか、糸で浮かせていた木や岩が地面に落下する。何が起きたのかと困っている霊夢たち、それを他所にドベルはひとりの男を睨むように見ていた。

 

 

 

 

 

「あなたの能力には大きな弱点があります。それは、糸はあなたの指から離れる事は無い事です。おまけに鉄…つまり金属の糸なら、電気を流せる。そしてその電気は、あなたに伝わるという事ですね」

 

「…惣一さん!?」

 

その男は、惣一だった。ドベルによって腕を斬り落とされて以来姿を見なかったが、いま姿を見せたようだ。

彼の手には何やら機械がある。その機械は、河童のにとりが作り出したスタンガンという物だった。惣一はそれを使って、糸に電気を流す。そのため、常に糸と繋がっているドベルにも電気が流れたのである。

 

「く…!」

 

慌てて体制を立て直す。腕を失った男がまだ戦おうとするとは思っても居なかった。だからこそ惣一の攻撃にまんまとやられたのである。

 

「そしてこれはあなた自身の弱点のようですが…」

 

体制を立て直しているドベルに、惣一が話しかけた。なんの話をしているのかと思っているドベルの頭に物が当たる。ドベルおよび周りはその正体を知った時、唖然とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な…!さっきの腕…!?」

 

ドベルに当たったのは、先ほど斬り落とされた惣一の腕だった。黎人たちがドベルと戦っている間、惣一は自分の腕を取り戻していた。そして惣一は、それを使う事を決めたのである。

遠くから見ている黎人たちにはソレに気づかず、当てられたドベルは気づいた。惣一の腕に、爆弾がくくりつけられている事に。

 

 

 

 

「狂気に駆られると、周りが極端に見えなくなる。少し注意すれば気づく事でも気づかないほどに」

 

 

腕を斬り落とされていない手に、スタンガンとは別の機械が握られている。それが起爆装置であるということは簡単に分かった。

 

 

「ま…待て…まさか…!」

 

 

 

ドベルは、惣一が何をしようとしているのかが分かったが、今更どうする事も出来ない。何しろ、躱しようがないのだから。

 

 

 

カチッとスイッチを押す。それにより惣一の腕にくくりつけられていた爆弾が起動して、大きな爆発が、ドベルを巻き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 




ドベルに出したかったのはクレイジーな雰囲気です。それが少しでも出てれば良いなと思っています。

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