東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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前回のあらすじ

ガイラが魔理沙の家に出現
魔理沙「何で屋根を破壊すんだよ!」
ガイラ「そうした方がカッコいいだろ」
霊夢「……駄目だこりゃ」


66 『乱暴』が持つ力

崩れた屋根から木片が溢れる。その音だけが、部屋中に響く。

 

「なぁ、こいつってもしかして」

 

魔理沙は敵の素性を知らない。だが察しはしたようで、確認のつもりで霊夢に聞いた。

 

「そう、こいつがさっき言った、敵よ」

「やっぱりそうか……おい!一体私の家に何の用だ⁉︎」

 

大声を出す。その事から、魔理沙の怒りが感じ取れる。

 

「そう騒ぐな。別にお前に用があって来たわけではない。用があるのは…博麗の巫女だけだ」

「私…?」

「おう、俺も詳しい事は知らんが博麗の巫女でなければならないらしい」

 

狙いが霊夢だとわかり、半歩足を退いた。と、ここで一つ気になった事があった。

 

「あんた…右手は?」

「ん?あぁ、惣一とやらに受けた傷の事か。それなら心配するな、もう治ったわ」

「え……?」

 

そのことを証明するように手を開いたり閉じたりする。もはや疑う余地はない。

 

「そんな……まだ1日もたってないのよ?いくら何でも早すぎる」

 

そう、傷を治すにしても1日未満は早過ぎる。少々の怪我でさえ、完治に一週間かかるのは珍しくない。

 

「そのあり得ないを可能にする男がいるのだ」

 

だが霊夢は知らない。傷を一瞬で完治する男を。いや、正確には、肉体を作り変える技術を持つ男を。

 

「さて、長々と話はしたが…もういいだろう、大人しく縄についてもらおうか」

 

威圧するように言い捨てる。だがそれに対する答えは、魔理沙や刃燗、そして要求してきたガイラまでもが分かりきっていた。

 

「そう言われて…捕まるわけ無いでしょ!」

 

予想通りの解答と共に霊夢はスペルカードを発動する。

 

霊符【夢想封印】

 

無数の陰陽玉がガイラを襲う。霊夢は、ガイラの実力をその目で焼き付けたのだ。手加減すれば逆にやられてしまう。

 

「おお!いいじゃねぇか…てか私の家で戦うなよ!」

 

感嘆の後に文句を言う魔理沙。どっちにするかハッキリしてほしい。

 

そして、今のでガイラが今程度の攻撃で止まることないのも事実。

 

《パラパラ…》

 

夢想封印は確実に当たった。だが、ガイラに致命傷どころか傷すらつけれていない。

 

「……魔理沙、一旦外に出るわよ!」

「合点だ!!」

 

家の外に出る2人。狭い空間で戦うと選択肢が限られてしまうため外で戦おうという戦法だ。

 

そして読み通りガイラは外に出た。

 

「なめんじゃ…ねぇ!!」

 

渾身の力を込めてスペルカードを使う。ミニ八卦炉を取り出したということは……

 

「恋符【マスタースパーク】!!」

 

極太レーザーでガイラを飲み込んだ。

 

「いよっしゃあ!」

 

歓喜する魔理沙。だが彼女は一つとんでもないことをしている。

 

「…ねぇ、あんたの家が藻屑になってんだけど」

「……あ…ああああ!!!」

 

そう、あんな高威力な弾幕をぶっ放せばそこら一帯が消し飛ぶ。近くにあった魔理沙の家が消えて無くなった。ついでに、あの中にいた刃燗も居ないのだが…

 

「中々の威力を持つなぁ。流石幻想郷、常識に縛られん戦闘スタイルだ」

 

だが、肝心のガイラにはダメージを与えていなかった。

 

「嘘…でしょ……」

「…マジかよ」

 

今のスペルですら傷をつけられない。その事実は流石にショックだったようで2人とも呆然と立ち尽くしている。

 

「まだだ!!」

 

…とそこに、ガイラの後ろから拳を振る男がいた。

 

「ぬっ!?貴様は…」

 

ガイラはその男を知らない。先ほど瘴気に当てられて少し気分が悪くなったその男は、暫く休憩した後調子が戻った。そう、その男は刃燗だ。

 

「何処の馬の骨かわかんねぇ奴に…姉御を連れて行かせるかよ!」

 

捷疾鬼の力を借りて、刃燗はガイラに立ち向かう。だが、彼は知らない。化け物の力を借りてるのは、刃燗だけじゃないことを……

 

 

暫く時間が経ち、その場についた黎人と翔聖が見たのは、藻屑と土煙の山だ。若干熱が通っているのか、少し臭い。

 

「おい……ここ、魔理沙の家だよな」

 

そう、魔理沙の家だ。黎人は直接魔理沙の家に行った訳じゃ無いが、『霧雨魔法具店』と書かれている看板を見れば誰の家か一目瞭然だ。

 

「酷い…こんなの……」

 

酷く悲しそうに翔聖は呟く。ここまでメチャクチャにされて、かなり残酷だと感じる。実際は家主がこれを生み出しているので、所謂自業自得と言う奴だが、彼らはその事実を知らない。

 

だが、そうじっとしてられない。元々霊夢らが緊急信号で呼び出した。それならば霊夢たちが被害を被ったわけでもあり、当然魔理沙もいるはずだ。

 

「チッ…しゃあねぇ、霊夢らを探すぞ!」

 

黎人らは霊夢たちを探すために藻屑や瓦礫をどかす。焼き跡が付いているようで触るとかなり熱い。もっと言うと墨と化しているので、手が黒く汚れる。

 

それでも構わず瓦礫をどかす。だが中々見つからないので黎人は「水」の力、所謂探知能力を使う。

 

「!あそこだ!」

 

見つけることは出来た。1人は森の中に、1人は瓦礫の中…それも、中央付近にいた。よく見るとそこら一帯は、何らかの衝撃で飛び散っている。家が破壊された後、更に衝撃を加えられた、というわけか。

 

黎人は瓦礫の中からその人物を探し出す。翔聖は森の中に倒れた人を探しに行った。少なくとも、その場にいるはずの人物に比べて、1人少ないのは分かりきっている。

 

やがて見つけ出した。出てきたのは青い髪が特徴の…刃燗だ。

 

「おい!刃燗!!しっかりしろ!」

 

揺さぶって起こそうとする。どうやら効果ありのようで、うっすらとだが、刃燗は目を開けた。

 

「……すいません…アニキ……姉御を…連れてかれました」

「霊夢が…?」

 

途切れ途切れになりながら、必死で伝えようとしたのは霊夢が攫われた事だ。ちょうどその時、魔理沙を抱えながら翔聖も来た。

 

「申し訳…ありませ…」

「もういい、それよりもそいつらは何処行った」

 

謝罪を述べようとする刃燗にその口を止め、代わりに何処に逃げたのかを聞く。時間によっては急がなくてはならない。

 

「ここから…南東の方に…」

 

南東…そこに何かしらの地名がある訳では無いが、恐らく本拠地に向かった、という事だろう。

 

一刻も早く負わなければならない。

 

「翔聖…先行っててくれるか?」

「え…どうして……」

「刃燗と魔理沙を永遠亭に連れて行く。安心しろ、直ぐに行く。ここまで派手に逃げる奴なんだ。それならこっちも打つべき手、て物がある」

 

『打つべき手』と言うのが何なのかは翔聖は知らない。だが、諦めた訳では無い黎人の顔を見て、余計な心配は無用だと知る。

 

「……分かった」

 

翔聖は翼を広げ、刃燗が指し示した方向に向かって飛ぶ。

 

 

 

森の中を走って行く怪物がいる。白く、巨大なそれは目にも止まらぬ速さで駆け抜ける。

 

その背中に1人の男、そしてその男が抱えている女性がいる。男の方は、ガイラだ。魔法の森で霊夢達との戦闘を終え、目的である霊夢を本拠地に連れて行こうとしているところだ。

 

そして乗っている怪物は、ガイラが呼び出せる獅子、レオードだ。彼の足ならどんなに離れてても1時間以内で着く。だからこそそれで移動している。無論、他の理由があるようだが…

 

「ぬ…?」

 

突如顔をしかめる。何故なら彼の目に、見慣れぬ物があるからだ。

 

煙を出しながら不規則に移動するそれは、グングンと近づいていく。

 

《ドゴォォォン!》

 

ガイラはそれを叩き落とす。剣で側方を叩くだけでそれは爆散した。爆風によるダメージもそんなに無く、スピードを緩めるわけにはいかない。

 

 

「そこまでだ、怪物」

 

走っているレオードの後ろを駆ける男がいる。そう、さっきガイラと戦った男、秦羅だ。その男が走っている自分についていこうとする理由は、一つしかない。

 

「ほほう!俺を止めようと言うのか!面白い!受けて立とう!」

 

今更だが、ガイラは戦場で奮い立つタイプだ。それは非常に珍しいと言える。戦闘を、競い合いを、殺し合いを楽しむなど、ほとんどの人では考えられないレベルまで楽しむ。何かと競争となった時、心が昂ぶって熱くなる。それは、長所でもあり時に短所となる。

 

『秦羅さん、あの猛獣の前足を攻撃します。その際、あなたは霊夢さんを』

 

秦羅の耳につけた通信機器、惣一から連絡ように渡されたそれから惣一の声が聞こえる。

 

「…分かった」

 

その内容に了承の返事を言って、秦羅はそのまま追いかける。

 

少し離れた木の上で、惣一は『ロンガ』を構える。狙いはレオードの前足…では無くそれよりかなり前の地面だ。

 

撃った弾はその地面に突き刺さった。特に何か起こった訳ではない。

 

その地面をレオードの足が踏んだ。すると…

 

《ドゴォォォン!!》

 

爆風を生じさせ、地面が崩れていった。

 

「……何⁉︎地雷か…!?」

 

そう、地雷。正確には圧力に反応して爆発するもの。ロンガで撃った場所に埋め込まれ、そこに力を入れると爆発する。それを使ってレオードの足を一瞬止めた。

 

「貰った!」

 

その隙を狙い、秦羅はスピードを上げてガイラのもとに近づく。一気に霊夢を奪還する策だ。

 

「フッフッフッ…中々早いな、秦羅。その速さ、レオードよりも上であろう。だが、お前のような純粋な走力では無いのでな!」

 

だが、そううまく行かなかった。秦羅が近づいたと同時に、レオードは再び走り出す。MAXで走り続けてる者と、0からMAXに加速しようとしているもの、普通に考えると前者の方が有利になる。だがそれは、スピードだけの話だ。

 

「ぐあ!」

 

吹き飛ばされたのは、追いつけた筈の秦羅だ。この二者の間に生まれる優劣はもう一つある。

 

それは、体格。

 

人間と猛獣では、体格では大きく差が出る。そして、体格が大きければ大きいほど衝撃力が大きくなり、他を跳ね飛ばす威力を持つのだ。

 

加えて、レオードにはもう一つの強みがある。

 

「あの程度でレオードのスピードは緩まん。強引に、且つ強気に。乱暴さこそがレオードの最大の武器よ!」

 

強引、強気……その気の強さこそがレオードの力だ。決して緩めること無いその精神は、力くらべの場で大きく成果を出す。

 

「まだだ!」

「ぬ…!?」

 

上空から、1人の男が襲いかかる。先ほど魔理沙の家にいた翔聖だ。ガイラに向けて剣を振り下ろす。その剣は、ガイラの剣によって防がれる。

 

「軽いわぁ!この程度で止まると思うなよ!」

 

ガイラは力を入れて翔聖を跳ね飛ばす。ガイラの怪力に耐え切れず、翔聖はかなり飛ばされてしまった。

 

その間に、惣一は次から次にレオードに向けて発砲する。命中はしてるものの全く意味を成さないと言わんばかりにスピードは緩まなかった。

 

(駄目だ…あのレオードの皮膚も硬い。止めるどころか緩める事すら出来ない)

 

 

このままでは霊夢を奪還する事が出来ずに終わってしまう。その推測が、惣一らに焦りを招く。

 

 

《ブゥゥゥゥ!!》

 

「……ん?」

 

すると幻想郷では余り聞きなれない、エンジンの音が聞こえる。その音につられて多くの人が後ろを振り返る。そこから、見慣れない物がこっちに近づいてくる。

 

正確には、物では無い。近づいている『それ』に1人乗っているのだ。その人物を、彼らは知っている。

 

 

 

 

「黎人!!?」

 

そう、黎人だ。そして彼の乗っているもの、それは彼が1度だけ使ったことがある金色のバイクだ。彼は永遠亭に患者を預けて後、スキマ妖怪から渡された『スキマポケット』に入れておいたバイクを取り出し、エンジンをかけてこちらの方に近づいた、というわけだ。

 

「乱暴か……それなら、俺も持ってるぜ」

 

黎人は前輪を持ち上げる。するとそのバイクは見る見るうちにスピードを上げて距離を縮めていく。地面に接着するタイヤの数が少なければ少ないほどスピードは速くなる。加えて、そのバイクは作りが異常で、その上がり方も尋常ではないのだ。

 

「誰一人攫わせねぇよ。猛獣の走りとバイクの走り、どっちが強いか白黒つけてやろうじゃねぇか」

 




はい2回目のバイク登場で〜す。次回はいよいよ私が書きたかった、バイクや獣で駆けながらの戦闘です。疾走感あるバトルにしていきたいと思います。

そして、いよいよ一周年が経ちました。活動報告にて『質問募集』を行っておりますのでそちらをご覧下さい。
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