東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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前回のあらすじ
『金塊』発動
黎人「最高にハイってやつだ‼︎」
霊夢「誰かー!このバカ止めてー‼︎」




68 vs策略家魔術師

次から次へと黎人の落下地点に降りてゆく者が出てくる。敵の本拠地に向かうなら黎人も探し当てて共に行かなければならないからだ。

 

かなり強い衝撃で吹き飛んだようで、土煙がかなりの量巻き起こってる。この中で黎人を探し当てるのは至難の技だ。

 

「……あ!あの影、ひょっとして黎人じゃない?」

 

翔聖が何かを見つけたようで、それを見ると確かに人影が見えた。全員一斉に『それ』に近づく。そうした彼らが見たものは…

 

 

 

「…………」

 

何故か意気消沈しまくっている黎人の姿であった。

 

「……えーと……黎人さん?」

 

一体どういう状況なのか、多くの人が持っているであろう疑問を口にしたのは、惣一だった。

 

「……いやよ……流石に……『金塊』になってた時の俺のテンションが流石に可笑しいと思ってよ……自分で何がしたかったのかわかんねぇんだ。金塊の能力が解けて、ハッと我に返ったとき余りにも恥ずかしくて……」

 

「……あれはやはり元からの性質じゃ無かったのか……あの『金塊』とやらの能力か?」

「……ていうか、あんたに恥なんてあったのね」

「あるわそんぐらい‼︎もう穴があったら入りたい気分だよクソッタレェェェェ!!!」

「……泣き出した…」

 

やはりさっきのアゲアゲになったテンションに落ち込んでいるようだ。確かに恥ずかしくなるのも当たり前だろう。

 

「……とりあえず、今は置いときましょう。これから敵の本拠地であろうあの砦に攻め込もうと思っています。もしよろしければ黎人さんも一緒に来ていただきたいです。…さっきの事は水に流しましょう」

「……オメーは相変わらずかよ惣一…」

 

坦々と話す惣一。相変わらずといえば相変わらずである。仕方ないと踏み、黎人は座り込む足に力を入れて立ち上がった。

 

「あーあ、博麗の巫女の奪還に失敗してんじゃないか、あの脳筋戦士」

 

声が聞こえる。人を蔑むようなこの声は…

 

「良也……‼︎」

「僕の名前ぐらい言われなくても分かってるよ。全くあのガイラも相変わらず間抜けだねぇ。こんな大人数に追われてちゃ上手く行かないに決まってるだろ」

 

どこか蔑んでるようにしか聞こえない口調。もはや口癖になっているのだろう。

 

「お前がいるという事は…やはり此処が本拠地というわけか」

「そうだね。さて、本拠地だのバレたり奪還に失敗したりのガイラの尻拭いでもやりますか」

 

良也は本を取り出した。その本は、魔道書。魔法で相手を蹴散らそうとしているのだろう。

 

「魔獣【王蛇を模した雷(サンダースネイク)】」

 

良也の下から蛇の形をした雷が現れる。その後雷は、それこそ蛇の動きをするかの様に黎人らに襲いかかる。

 

「不味い!散れ‼︎」

 

雷を避けるように四方八方に逃げる。その後、雷が狙ったのは霊夢だった。

 

「殺すんじゃねぇぞ?後で連れてこれなくなるからな」

「しまった…霊夢‼︎」

 

慌ててどうにかしようとするもののもう遅い。既に雷は霊夢に届いて…

 

《バチン!》

 

と思いきや、雷の方が途絶えた。

 

「な…⁉︎」

「私を誰だと思ってるの?博麗の巫女が、あんなヒョロっちいの防げる結界が貼れないわけないでしょ」

 

どうやら、結界で防いだようだ。良也や黎人はすっかり霊夢が博麗の巫女であることを忘れていた。

 

「……取り敢えず、黎人は後で死刑ね」

「は!?なんで!!?」

「失礼極まりないから」

 

今更な気がするが、黎人はそうされても文句は言えないと思う。

 

「く……くそ!」

 

良也は新たに蛇型の雷を作り出そうとしている。だが、それは秦羅によって止められた。

 

「目算を誤ったな。博麗の巫女とお前の魔法じゃ、相性が悪いらしい」

 

刀の柄で思いっきり殴り飛ばす。良也は砦の扉に思いっきりぶつかった。

 

「良也さま‼︎」

「お下がりください!ここは我々が!」

 

どうやら増援が来たようだ。良也の前に立ちはだかる様にその者らは立ちふさがる。

 

「あ…ああ!覚えておけよ‼︎この僕をここまでコケにして、タダで済むと思うな‼︎」

 

負け犬のようなセリフを言い残して、良也は去った。

 

「不味い!逃げられる……」

「慌てるな翔聖!取り敢えずこいつらを倒してからだ」

 

慌てる翔聖を落ち着かせ、目の前の敵に集中しようとする…が……

 

「ぎゃああああ!!」

 

その者らは突然倒れた。黎人や翔聖、秦羅、惣一、霊夢の誰かがやったわけでは無い。こんな芸当が出来るのは……

 

「取り敢えずこんなところかしらね」

「咲夜‼︎」

 

時間を止める事が出来る、咲夜ぐらいだろう。

 

「何でここに?」

「あんなに動き回られたら、気になるでしょう?だからついて来たの」

 

言われてみると、惣一及び秦羅は紅魔館近くを探索していた。その時に、レミリアあたりに不思議に思われたのだろう。

 

「取り敢えず、ここの敵の足止めはやっておくから、あなた達は逃げた人を追いなさい。急がないといけないんでしょ?」

「あ!そうだ…」

 

確かに、今は良也の後を追ったほうがいい。このまま放置すれば、何が起こるか分かったもんじゃないからだ。ここは、咲夜に一任したほうがいい。

 

「分かった。任せたぜ」

「ええ」

 

咲夜を置いて、黎人らは良也の後を追った。

 

 

 

逃げた人の後を追うのはそんなに難しくは無い。黎人の『水』の探知能力があれば、逃げた良也の後を追うのは容易いだろう。今、それを元に良也を追っている。

 

 

「……」

「…どうしたの?秦羅」

 

突然何かを考え込む秦羅に違和感を持ち、一体どうしたのか翔聖は尋ねた。

 

「あの男…見る限り魔法使いとしても策略家としても半端者に近いと思ってな」

「……どういうこと?」

 

幾多もの強敵と戦ってきた秦羅なら、敵の技量を評価できるのは疑いようは無いだろう。だが、良也が()()使()()として劣ってるとはどういう事だろうか。先程から放ってくる魔法は、かなり上手としか言えないほどの出来なはずだが…

 

「……姉さんに聞いたんだが…魔法は魔力の大幅な消費を伴う。だから、無闇に魔法を使いまくるのはNGだと言われてる」

「…姉さん?」

「あ、秦羅はアリスのことを姉さんと呼ぶんだ」

「あいつの使っていた魔法は、基本無駄遣いばかりだ。それは、戦闘する魔法使いにはあってはならない事だ」

 

良也の使っていた魔法は、蛇型の雷や大量の雷を降らす雨、そして結界…どれも魔力をかなり使う魔法だ。それを躊躇うことなく次から次へと発動するのは愚行としか言いようがない。

 

「策略家として、というのは今の状態だ。あいつは策略家を名乗ってるが、敵の力を見極めたり、戦い方を考えたりというのがかなり出来ていない」

 

少なくとも、霊夢に雷の魔法が効かないと分かれば別の方法を考えるべきであり、続けて同じことをしようとはしてはいけない。

 

「なるほどな…それで?」

「……もし僕が敵の大将なら、あいつを戦場には立たせない。正直、足手まとい以外の何物にもならないからだ」

「え…?でも秦羅はミレイを戦場に立たせたりしたじゃん」

 

秦羅と翔聖は輝月との最終決戦の時…まだ戦場に立ったことの無いミレイという女性を戦場に向かわせた。それを推したのは秦羅だ。その秦羅が、『足手まといだから戦場に立たせない』というのは可笑しな気がする。

 

「あの時のミレイは覚悟があった。だから僕も異論を唱えたりはしなかった。だがあいつは違う。自分の力を見せつけたいがために戦場に立ってる気がする」

 

その場の全員は何となく秦羅の言いたい事が分かった。良也は戦場に立たせるほどの器ではない。あの超再生の能力があってもそれには限界がある。戦場で優位に立てるとは到底思えない。それなら何故、彼を此処に立たせたのか……

 

 

 

そんな事を考えていると、一つの大きな建物が見えた。

 

「あの建物だ…あの中に、さっきの奴がいる。きっとなんかの策があるかと思うが……」

「敵の本拠地であるならそれは当然だろう。躊躇わずに行くぞ」

 

建物の扉を開く。中は仕切りとか無くかなり開放的だ。フルで戦えるようにセッティングしたのだろう。

 

「やっぱりここに来たか。何も考えず突っ込んでくるなんてとんだ馬鹿野郎だねキミら」

 

やはり良也は中にいた。高いところにいるのは…気分的なものと記しておこう。

 

「まぁそれはともかく…さっきの恥、ここでスッキリとさせてもらうよ。こんな狭い空間の中じゃ、存分に避けられないよね」

「……避けることは無理かもしれないが、防ぐことは出来るぞ」

「それすらもさせないんだよねぇ。さぁ、防げるもんなら防いでみろよ‼︎」

 

大声で叫んだ後、良也は雷を放つ。だが、それは標的を真っ直ぐ捉えるのではなく壁の方に行く。

 

「…まさか!壁を伝って…⁉︎」

「そうだ!避けきれるもんなら避けてみろ!」

 

良也の放った雷が壁に当たった後、その姿を消す。だが、消えたわけではない。壁を伝って黎人近くに向かう。

 

「ぬお!!」

 

地面から雷が姿を現わす。それにいち早く気づいた黎人は危機一髪で回避する。

 

「気づいたか!この建物はな…合金で出来ているんだ!金は電気を伝う性質がある。壁に雷を伝わせてこの建物の四方八方から雷を放つことができるのさ…さぁ、避けてみろよ‼︎」

 

良也が数多くの雷を放つ。それは殆どが壁に当たり、それを伝って壁から、天井から、地面から黎人らに攻撃する。

 

「不味いよ!これどうする⁉︎」

「確かに……こんな数多くの雷に邪魔されちゃあいつの下に近づけれない」

 

翔聖も秦羅も避けるのに必死になってる。

 

「雷を相殺する、ていう手ならやめた方がいいよ。その分追加すれば良いだけだから」

 

雷の数はざっと見て10。一人当たりに2発の雷が襲いかかる計算だ。

 

「避け続けても雷は消えることは無いよ。いずれ貴様らが体力切れて追いつかれると思うけど?」

 

自信満々に言う良也。全く手の打ち用の無く必死で避け回る者らが滑稽に見えたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ」

 

黎人が突然『土』の姿になり

 

 

 

《ドガッシャアアアン!!!》

 

壁一面を粉々にするまでは……

 

 

 

 

「その手があったか!!」

 

壁一面が破壊されたら、そこに雷を伝わせることは出来ない。黎人はそのまま建物の外に出て……

 

 

「土符【ロックブラスト】!」

 

岩石を良也目掛けて放つ。

 

「う……うわぁぁぁぁぁ!!」

 

岩石はそのまま良也を直撃…しなかった。

 

 

 

 

良也の前に白色の結界が貼られ、岩石はそれに防がれた。

 

「何……?」

 

その白色の結界…黎人は見覚えがあった。かつて鵞羅が使ってたものと同じ……

 

 

 

 

「そこまでだ!俺の部下に手を出すのは止めてもらおう!」

 

 

この場を止めるような威圧する声。その声の主は、黎人らが入ってきた扉とは別方向から聞こえた。だんだんとコッチに近づく足音がする。靴音から、革靴であると分かった。

 

その姿を露わにしたのは、緑色の髪をした、メガネの男だった。服装は白衣、そして雰囲気から研究者であると思われる。

 

「り……リヴァル⁉︎何故ここに」

「当然、敵襲があれば様子見もするだろう。疑いようは無い」

 

良也の隣に立ち、リヴァルと呼ばれた男は大きな声で言う。

 

「この俺の名はリヴァル・シュバーン!!元生態学者、現在は『DW』の研究者だ」

 

(DW…?)

 

突如出された固有代名詞……それの説明を聞く機会は無かった。

 

「ちょっと待てよ…あいつらは俺が必ず仕留めるから」

「いや必要ない。それよりもお前はもっと重要な役割がある」

「重要な役割……?」

 

リヴァルの言う『重要な役割』……それは今まで良也には知らされていなかった。

 

「ああ、これはお前にしか出来ない重大な任務だ。他に頼れる人がいなくて困ってたんだが…良かったらやってくれないか?」

「今更何言ってるんだよ!僕にしか出来ないことなら何でもやるって!言ったじゃないか、僕の価値を知ってる者には全力で応じると!」

 

意気揚々と答える良也、どうやらこの人物は信頼に弱い。

 

 

 

 

「そうか……なら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

《ドブシュッ!!》

 

 

「……え……?」

 

リヴァルの手が、良也の身体に貫いた。その光景に、黎人や翔聖、秦羅、霊夢、惣一…そして、良也でさえ呆気としている。一体何をしてるのか。

 

だがそれは、直ぐにでも分かることだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「生贄になってくれ」

 




リヴァル登場…と思いきや良也が生贄に⁉︎一体どういう事なのか、次回をお楽しみに
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