東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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前回のあらすじ
ディルが現れ、黎人の気を失わせる。
ディル「…鼓膜が破れそうですね」
イシュー「影響あるんだな」


83 正しさとは…

爆音をディルが鳴らして黎人の気を失わせ、暫くの時間が経った。今そこには霊夢、輝月、魏音、ディル、イシュー、劉、清嗣、ドガンがいる。意識を失った黎人はバッタリと倒れている。意識を失ってからピクリとも動かない。

 

「…ねぇ、黎人に何をしたの?」

 

霊夢はディルに、一体何をしたのかを聞いた。彼女はかなり不安そうだ。意識を失うほどの事をしているのを見て、不安を感じずにはいられなかった。ディルのした事によっては黎人に支障をきたす可能性もある。

だが、ディルはその疑問に対し、肩を竦めた。

 

「ご心配なさらずとも、殺したとか毒を盛ったとかじゃありませんから。本当に、意識を失わせただけです。

意識は、波長のようなものです。その人の精神状態を波で表現します。波が小さければ無関心、波が大きければ動揺になります。因みにそれは、周りの刺激に反応して揺れ始める。

私は先ほど、彼の後頭部で爆音を鳴らしました。意識は特に突然の事に敏感に反応します。そして意識の揺れには、許容範囲があり、それを超えると意識を失う。だから黎人は意識を失った。

それだけですよ。その程度の気絶でしたらすぐ意識を取り戻すでしょうし、目覚めた頃には()()()()()になってる筈です」

 

ディルの言ってる事の意味は分からなかったが、とりあえず心配する必要は無いと分かり、霊夢は若干ホッとした。霊夢はディルの近くで意識を失っている黎人を移動させている。

 

「簡単に言ってくれるが、そんな事普通は出来んぞ。意識を失うほどの轟音など、そんなに無い。まして、手を叩いて鳴らす音でやるなど無理難題だ。きさま…ただ者では無いな」

 

すると、魏音がディルに話しかけた。彼はこれまでで1番警戒している。目の前でディルがやった事がどれだけとてつも無い事なのか、彼の目はそれを語っているかのようだ。

 

「これはこれは、魏音さん。初めまして。あなたの事は、紫さんとシャガルから聞いてますよ」

「…その名を出すって事は、神の三児か」

「ご名答。私は神の三児の長男、ディル キリシアンです」

 

魏音は、神の三児を知ってる。それもその筈、それは魏音が最も厄介な集団である。

 

「…神の三児ですか。イシューさんもその1人でしたね」

 

輝月はイシューの方を向いて話す。彼女もイシューから大体の事は聞かされた。その際、神の三児についても聞いたのである。

 

「ええ、今回の件を担当してました。なので私は見物する予定でしたが、()()は別の話ですからね。その為だけに、最初っから船に乗ってました」

「あの船に…?気づきませんでしたが」

「ええ、気配と姿を消して船に忍び込んでました。大変でしたよ。リヴァルが船を半壊させた時も、黎人が船を落とした時も、自分の身だけは守らなくてはなりませんでしたから」

 

口では大変だったと述べているが、顔は余裕そうだった。まるで、大した苦労ではなかったと語ってるようだった。少なくとも、この場の全員はそう思った。

 

「…結局、あなたは何をしたんですか。気配や姿を消すとか、船の半壊や落下から自分の身を守るとか…先ほど、黎人の意識を失わせるとか、やってる事は次から次に不可解すぎる。…あなたの能力ですか?」

「…いいえ、これまでの事は私の能力で行った訳では無い。姿と気配を消したり船の半壊や落下に耐えたのは魔術、黎人の意識を失わせたのは身体能力です。

私の能力は『力を授ける程度の能力』であり、そのような事が可能な能力では無い」

 

ディルの説明を受けて、輝月が疑問については納得した。だが、別の事に違和感を感じた。

 

「魔術に、身体能力…?どっちも極めてるんですか?」

「当然でしょう。上に立つものならば、全ての事を極めなければならない。得意分野はあっても苦手分野は無いですよ。全範囲で死角など、ありません」

 

さも当然、というようにディルは語る。上に立つものであるならば、より優れてなければならない。それに関しては輝月も納得している。しかし、ディルの言ってる事は極端すぎる。全てを極めるなど、ほぼ不可能だ。

 

「…分からんな」

 

突如、イシューが話しかけた。その場の全員が彼を見る。彼らは全員思った。イシューは今までの中で最も迫力を出している。元々威厳こそあったが、情けなさの方が上回ってた感じだった。しかし、今はそのような雰囲気は、全く醸し出していない。

 

「上に立つために極めたのならば、なぜ外の世界の崩壊を見過ごした。お前の力があれば、DWにも引けを取らない…いや、圧勝する筈だろう。

何故だ。何故未だに動こうとしない。お前のやる事は、黎人に戦わせる手段を与え、黎人の実力を上げる事だけだ。どうしてそこまで、監視に徹する」

 

イシューの目は、真剣だった。彼は紫から聞いた。何故自分が動かないのかと聞いたところ、この男は『面白くないから』と答えたと。それは、人間に対する侮辱行為だとイシューは受け取った。多くの命が失われ、残った者も未だに苦しんでいる。この幻想郷にしても、今回の件のように滅亡せざるを得なかったのだ。

ディルが動いていれば、そのような事は絶対起きなかっただろう。それを、『面白くない』と理由で動かないで、結局は世界が滅んだ。いや、今でも戦場に出たりはしていない。それに痺れを切らしたイシューは、今回は自分が受け持つ事にしたのだ。

そして、世界が滅ぶ寸前までに至ったのに、彼は動かなかった。彼が動いたのは、黎人の元の人格を戻させるためだけにだった。

イシューは聞いた。どうして未だに動かないのかと…どうして、人間をそう扱えるのかを…

 

 

 

 

 

「相変わらず、今しか見えてないですね。だから、あなたは失敗するのですよ」

「なに…?」

 

それに対するディルの返事に、イシューは顔を顰める。こちらが聞いていることに対して返す言葉が、自分の批評になるとなれば、少しばかりイラつくのはしょうがないだろう。

 

「戦争の怖いことって言ったら、何と答えます?多くの命が失われることですか?敗北した時のリスクですか?まぁ確かにそれらも恐ろしいことですよね。

しかし私にはそれ以上に怖いことがあります。狂った論拠が成立してしまうこと、私にはそれが1番恐ろしいと思いますね。

あのリヴァルが典型例です。『人を大量に殺せる兵器こそ至高の存在』という悍ましい理念、普通なら同意するものはいないでしょう。ですが、戦争においてはそれがまかり通るんです。何故なら…勝てば正義になるのだから。

さっきまで生きていた彼を見て思ったでしょう。あのような人間がいるなど考えられない、そのように考えるなんて馬鹿馬鹿しいと。特に霊夢さん、あなたは強く感じた筈だ。

そのような狂気を生み出すような戦争は避けて然るべきもの、それ故、戦争が起こらないようにする努力の必要性は、あなた方も納得するでしょう」

 

 

ディルの言ってる事を聞いて、霊夢はなるほどと思った。リヴァルが今までやって来た事を振り返っても、彼のやってる事は不気味でしょうがなかった。己の野望のために、如何なる犠牲も払わない…そのような考えを持つ人間なんて、彼女は受け入れられない。

 

 

「ですが…大抵の人間は、その恐怖に至らない」

 

 

「……!?」

 

 

 

 

その次にディルが言った言葉に、誰もが息を呑んだ。ディルの話が突然、人間に対しての批評になったのだから。

 

 

「…時代って恐ろしいものですね。戦争の感覚を忘れていき、いつの間にか平和である事のありがたみが薄れていってる。

所詮人間はそのようなものだ。人間は恐怖なくしては動けない。人は、失う事の恐怖を知って初めてそのありがたみを知る。自由を失って初めて自由のありがたみを、家族を失って初めて家族のありがたみを、命を失って初めて命のありがたみを知る。

その恐怖に至ったものは失わない努力をするが、大抵のものは失う事はないと楽観的に考えて行動しない。恐怖を目の当たりにしないと思い知らない、それが人間ですよ。

人間に世界の秩序は保てない。しかし世界の運命を担うのは人間しかいない。ならば我々の為すべきことは何か?

 

恐怖を脳髄に埋め込むことです」

 

ディルのその言葉に、霊夢は気持ちが暗くなったのを感じた。ディルの言う通り、失って初めてそのありがたみを知る経験は、彼女もあった。突然、姿を消した母親だ。何時ものように、当たり前のように母親がいると思っていた。しかし、突然母親は居なくなった。それを機に、霊夢は博麗の巫女としての職務を全うしないと行けなかったし、何より、家に1人しか居ない環境が辛かった。そこでやっと、母親がいる事の幸せに気づいたのだ。

 

「動かなかったから世界が崩壊した?違いますね。崩壊させるために動かなかったんです。

外の世界の者たちは多くの死を見て、恐怖が染み込んだ頃でしょう。生き残った者らは生きるために力を尽くして頑張ってるみたいですね。

もちろん、敵の思い通りにはしません。私は斐川 黎人に『五行を司る程度の能力』を授けた。そして能力を覚醒させるために幻想郷に飛ばした。

彼の因縁の敵、薗田 鵞羅と戦うために彼に己の無力さを肌で感じさせ、エルサを向かわせて能力の質を上げるきっかけを作った。狙い通り、彼の能力はレベルアップした。

黎人が強くなればなるほど、DWは更に強い刺客を送り込む。今回でリヴァルでしたから…次は幹部辺りが出るんじゃないですかね?冷酷女王のリーフか、剣士暗殺者のシュバルぐらいが。…いや、クロロという選択肢もありますね。

強い敵が来れば来るほど、黎人には試練が続く。そして黎人は試練が高ければ高いほど、実力を上げてきます。

ご覧の通り、私の計画は何の問題も無く、かつ順調に進んでおります。この調子ならば1年以内には…」

「ふざけるな!」

 

ディルがこれまでやって来た事を淡々と語る。世界を崩壊させ、黎人に力を与え、黎人の実力を上げた。さの1つ1つを、ただ平然と語る。そうして行くと、イシューが叫んだ。

 

「それを…恐怖を、少数に教えるためだけに、多数を生贄にしただと…?筋が通らん!それの為に命を落としてきた者はどうなる!それではリヴァルがやってる事と変わらんではないか!」

 

イシューは考えられなかった。人にその恐怖を植え付ける為だけに、多くのものを犠牲にするディルの素行を。人をまるで消耗品のように扱うディルが、ただ許せなかった。

 

 

 

 

 

 

「残酷…と言いたいんでしょうね。1人を救うために99人を殺す計画が。しかし、そうしなければ人は分からないんですよ」

 

イシューの怒声を聴いて、それに答える。その時のディルの顔は、何も思う事がない、と言っているようだった。

 

「あなたは人間に何を期待しているんです?過度な期待は判断を鈍らせる。もしあなたが世界を守る立場ならば…確実な方法を選ぶべきですよ」

 

イシューに語り、話す事は全て話したのか、ディルは手を前に伸ばす。するとディルの手から…いや、手を含んだ領域から歪んでいく。

 

「…それではサヨナラです。今回の件は全て終わった。ここから後は再び私が統制します。イシューは再び、村をブラブラ歩いて、仕事を探してください」

 

ディルがそう語ったあと、空間の歪みが大きくなり、収まった頃にはディルの姿は消えていた。

 

 

 

 

「…ディル、お前は…そこまで人間を、信用してないのか」

 

イシューはディルが去った場所を見て、悔しそうに語る。ディルは人間を、1ミリたりとも信用していない。世界の秩序を保つ事など、人間には出来ないと割り切っている。その点で、イシューとは真逆だ。

 

「おいイシュー、何時までボケッとしてやがる。終わったんだったら帰るぞ」

 

そのタイミングに合わせ、劉はイシューに声をかけた。彼もディルの言う事に思うところがあるが、そんな事は口にしなかった。

 

「……………ああ、そうだな。帰るか」

 

劉の声に従い、イシューも帰る支度をする。劉が手をかざし、ディルが去ったのと同じように、空間が歪み出す。

 

「…ご苦労だった。この世界に住んでいた者も、別世界から救援に来てくれた者も、よくやってくれた。だからこそ、幻想郷の崩壊は免れた。

しかし、これで全てが終わった訳ではない。これからも戦いは続く。これからも、精進願うぞ…」

 

イシューが語り終わり、空間が大きく歪む。歪み終わった頃には、イシューらの姿も無くなっていた。

 

 

「イシュー…辛そうな顔をしていたわね」

 

霊夢はイシューが去っていくのを悲しそうに見ていた。

ディルの言ってることはかなり厳格だ。正論なので言い返す言葉もない。効率的にことが進むぶん、統制者としては正しいのかもしれない。

しかし、彼の言ってる事に同意したくはなかった。『思い知らせるために周りを殺す』という残酷な方法が、果たして正しいと言えるのだろうか。

 

「…結局、なにが正しいの?」

 

あの言い合いを聞いて、霊夢は訳が分からなくなった。彼女は他人に無関心だが、同時に『死』には敏感だ。例え関係のない赤の他人であっても、時に残虐な妖怪でも、目の前で死ぬのを見ると、悲しく、苦しくなる。

考えが甘い、とは思っている。人間は死ぬ。これは絶対の法則だ。妖怪になったり不老不死の薬を飲まない限りではいずれ死ぬ事になるだろう。だが、それでも嫌なのだ。そんな彼女にとって、ディルの言ってる事は苦痛でしかなかった。

 

 

「馬鹿馬鹿しい」

 

 

そう思い詰める中、1人の男が別方向に歩き出した。魏音だ。

 

 

「…なにが正しいか、の疑問に解答が出るわけが無い。人の数だけ正義はある。だから衝突は起こる。お前の正しさはお前だけが信じれる。自分の思いが揺らいだくらいでヘコむな。

 

 

 

…見てるとイライラする」

 

 

それだけ言って魏音は去っていった。霊夢の方に全く視線も向けずに、足を運んでいく。霊夢は彼が遠ざかっていくのをただ見てた。

 

 

(…なんだかんだ言って励ますんですね)

 

その様子を見て、輝月はそう思った。

 

 

 

 

「…自分の…正しさ…。私には分からないけど…」

 

魏音の言葉を聞いて、霊夢は迷いからは脱した。彼女は、未だに起きない彼の顔を見る。

 

「ねぇ黎人…あなたは、どう思ってるの?この先戦いが終わったとして、その後も、平和は長続きしないかもしれない。あなたは…何のために戦うのかな…?

 

私には…わからないよ…」

 

《ピチャン》

 

水の落ちる音がする。霊夢の涙が黎人の顔に落ちた。だが、涙が落ちるだけではその音はならない。

 

その音は、意識が覚醒した証だ。

 

「……ッ?………ん…?…ここ…は……?」

 

途端、黎人の瞼がゆっくりと開いた。眩しそうに瞼を開ける。彼の視界には、彼を見ている見知った少女の顔が。

 

「……霊夢?」

 

彼のその言葉に、霊夢は意識を取り戻した。目を閉じながら涙を流していた彼女は、目を開けた。視界の先には、さっきまで意識を失っていた男が、確かに起きていた。

 

「…黎…人……?ホントに…黎人なの?」

 

さっきまで別人のような黎人を見て、本当に黎人なのか確信がつかなかった霊夢はそう聞いた。確かに、さっきまでの雰囲気は全く出てないが、不安に感じるのは仕方の無い事だろう。

 

「……?あぁ、俺だ。てか、なんでお前が…ってか此処は?アイツは?あの後、どうなった?」

 

何故そんな事を聞くのだろうと思いながらも、黎人はその疑問に答えた。そうしていくうちに、意識がだんだんと戻ってきた彼はハッキリと思い出した。黎人は最後、リヴァルの攻撃を受けた。それ以降の記憶は全く思い出せない。リヴァルは倒せたのか、幻想郷の危機は終わったのか…黎人は不安でいっぱいだった。

 

「……バカね、もう終わったわよ。あなたのお陰で、リヴァルを倒して、無事解決したわよ。…本当に、良かった…」

 

その様子を見て、霊夢はこの黎人が本物だと確信した。危険な時に心配そうにするのは黎人らしいものだった。黎人の疑問に答えながら、不安が払拭されてホッとした。またもや涙をこぼす。

 

「…?倒した記憶は無いんだが…本当に、終わったのか…?………ていうか」

 

霊夢の言ってる事が理解できないのか、黎人は訳わからんといった顔をした。確かに、辺りにリヴァルは居ないが、リヴァルを倒した記憶が無い彼は、その事実に半信半疑だった。

それを見て霊夢は、恐らくあの状態の時の記憶は無いのだろうと察した。『向こう』の黎人は『コッチ』の黎人の記憶を持っていたが、逆は無いらしい。

だが、それでも良かったと思っている。霊夢の信じている黎人が、いま此処にいるのは確かなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なんか、近くねぇか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

《ピシッ》

 

 

 

その時、世界は止まった。

 

 

 

 

 

と見えるのは霊夢だけである。黎人が言った事を聞いて霊夢の思考が一時固まったのだ。

その後すぐ意識を取り戻し、状況を確認する。霊夢の目の前には黎人がいる。それも霊夢が上で黎人が下、端から見ると押し倒しているようにも見えるこの体制。

先ほど、彼女は迷いを紛らわすために黎人の顔を見た。その後、黎人が意識を取り戻し、色々聞いたり答えたりする中で彼女は無意識に顔を近づけていき、今ではもはやキス間近。

 

 

 

 

 

 

「い…」

「…い?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イヤアァァアアア!!」

 

霊符 夢想封印

 

「ドファアアアアアア!!?」

 

全弾命中、効果はバツグンだ。

 

 

 

 

 

 

「ハッ!」

 

霊夢がハッと我にかえるが、放ってしまったものはしょうがない。弾幕を食らった黎人は足をピクピク痙攣させている。

 

 

「キャーー!黎人、大丈夫!?」

 

 

慌てて霊夢も声をかける。恥ずかしさのあまりやってしまった事だが、それとこれとは関係ない。霊夢は思いっきりヤバイことをしてしまったと反省している。

 

 

「イテテテ…」

 

どうやら無事なようだ。全弾命中して『イテテテ』で済んでいるあたり、黎人は最早化け物レベルだ。

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだ?なんかあったのか?」

 

 

 

 

 

 

突然、黎人から声をかけられた。

 

「…え?」

「いや、お前…目が赤いじゃねぇか」

 

黎人に言われて、目の下に手を触れると、手に水の感触があった。先ほど流したばかりの涙が、まだ流し終わってはいなかった。

 

 

 

「…俺が寝てる間に、何があった?…魏音か?魏音になんかされたのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズルい…と霊夢は思った。

 

先ほどまで、1番危なかったのは黎人だったと言うのに、涙を流してるだけの彼女を心配している。霊夢は、さっきまで黎人の事を心配していた。なのに今は逆に心配されている。

そんな彼に対して、怒りと妬みと…安心を抱いた。たぶんこの男は、自分のことなんてどうでも良いのだろう。そんな彼に文句を言いたくても、文句の1つも、思い浮かばない。

 

 

 

「…何でもないわよ。ちょっと気が抜けただけ」

「本当か?別にムリに…」

「何でもないったら。でも…ちょっと良いかしら」

 

霊夢の言ってる事が訳分からずに黎人は呆然とする。そんな彼に近づき、霊夢は彼の胸に頭を置いた。

 

「…?オイ、どうし…」

「いいから動かないで。ちょっと借りるわよ」

 

霊夢のやってる事が不可解で困惑している黎人を…霊夢は放って胸に顔を押し付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ…ううっ…うああ…うわああああ!」

 

 

 

霊夢の嗚咽が鳴り響く。黎人が死んだかもしれないという不安、別人格のような黎人の姿、ディルの論拠による自分の感情の揺らぎ、そして黎人が戻ってきたことへの安堵…それらを全部込めて、霊夢は泣き始めた。

黎人は何が起こったんだ?と思ったが、次第に黎人は泣く霊夢の頭に手を置く。

そうして、この異変は全て終わった。1人の非道な研究者が巻き起こした、口では語れぬほどキツめの異変。それが終わったことにより、一時の平和が訪れた。




黎人が元に戻って異変解決!やっと終わったァァ…
次回でコラボ回ラストです。是非みてください!
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