惣一と瑛矢の戦い
勝者:惣一
人里でお守りが反応し、黎人が『水』を発動させた時、博麗神社の前で何個かの気配を感じた黎人はトップスピードで博麗神社に向かっていった。手遅れになる事は彼は1番避けたいものだからだ。
だが向かっている最中で黎人は妙な事に気がついた。博麗神社の前にいたその連中はそこから全く動こうとしない。そうかと思うと2人がそこから動き出して妖怪の山に向かっていった。
敵の狙いが分からない黎人は、いち早く博麗神社の前にたどり着いた。博麗神社の前では1人の女性と何匹かの驥獣が見えた。
驥獣を引き連れていた女性…リーフから話を聞いて、黎人はその理由がハッキリと分かった。彼女の目的は黎人だ。理由はよく分からないが、黎人に会うために博麗神社の前で立ち続けていたのだ。
だとすれば戦う以外の方法はない。場所は博麗神社の近くだ。リーフの行動によっては霊夢に被害が及ぶ可能性もある。それを避けるためにも戦わなければならない。
「で、最初は誰が俺と戦うんだ?お前自身か?それとも後ろのゴロツキどもか?」
「焦る必要は無いわよ。いずれは分かるのだから」
さっさと黎人は戦闘を始めようとしている。それに対してリーフは構えるどころか動く気配すら無い。黎人がこのまま仕掛ければリーフを倒せそうなぐらいリーフは隙がある。
だが黎人は攻撃を仕掛けようとしない。攻撃の準備が整っていないわけでは無い。攻撃なら今すぐにでも出来る。だが、一見隙だらけのリーフが少し不気味なのだ。何かが彼女の周りに潜んでいるかのように。
こっちから攻撃を仕掛ける事はせずに、黎人はリーフの様子を伺っていた。
「神社の前で何しに来たのかしら?お賽銭以外の客はお断りなんだけど」
緊迫した空気に1人の少女が声をかける。それは通称博麗の巫女である霊夢であった。
「…霊夢!」
「アレが博麗の巫女ね…思ったよりも普通そうな容姿じゃ無い」
黎人とリーフは霊夢の姿を見つけ出した。リーフも幻想郷にいる重要な人物はあらかた頭に入っているので、『博麗の巫女』の事も知っている。実体を見ることだけは初めてのようだが。
「黎人、一言だけ聞いていい?コイツは敵で間違い無いのよね?」
霊夢は黎人に1つ聞いた。とは言っても殆ど確認のようなものだ。驥獣を引き連れている時点で味方では無い事は明らかだし、勘が鋭い彼女は、リーフが敵であると直感的に理解している。
「ああ、敵だ」
「そう。…じゃあ、ここで退治してやるわ」
霊夢はお祓い棒と札を手に持ち、戦闘の準備を整えた。それでもリーフは何の動きも見せなかった。
「あら、お嬢さんも戦う気?私の相手は少し難しい話じゃないかしら?」
「一つ警告しといてあげるわ。私を侮らないことよ」
霊夢は針をリーフに向けて飛ばす。
それに当たるとは思ってはいない。十中八九防がれると分かっている。だが当たることが目的ではない。
今のリーフの状態では躱すのはかなり難しい。その針を防ぐならば能力か、そうでなくても何かしらの力を使うだろう。その力を確認したいのだ。相手は黎人の事を知っているが、こちらは相手のことを全く知らない。それだと不利だと思った霊夢は、せめてどんな力を持っているかを知るためにその攻撃を仕掛けたのだ。
針は一気にリーフの元へ近づく。このままだとリーフは串刺しにされてしまう。リーフは一体どのように動くのかと注視してた霊夢は、リーフが指を鳴らしたのが見えた。
一体何が起こるのか、と思っていたが、彼女は…いや、彼女と黎人は思わぬものを見た。
リーフの目の前に1人の男が現れて、その針を体で受け止めた。
「え…!?」
「……!!?」
針が体に刺さった男はそのままバッタリと倒れて動けなくなってしまった。まともに攻撃を受けたのだから、無事では済まないというのは明らかだ。
男が倒れても、リーフは顔色1つ変えなかった。倒れた男を一度見下すだけで、再び視線を戻す事はしなかった。
「…甘いんじゃないの?博麗の巫女。この男、まだ死んでないわよ」
リーフは一度見ただけでその男が死んでない事が分かった。確かに死んではいない。もともと霊夢はリーフを殺そうとしてなかったから、リーフを庇った男が死なないのも分かっていた。
だがそれで全く気にもかけないリーフの事が信じれなかった。その男はリーフを庇ったというのに、その事に何も思っていない。それどころか、先ほど指を鳴らしていたことから、男に自分を庇えと命令したのだと分かる。
他人に傷を負わせて、それで平然としているこの女が、霊夢には信じられなかった。
「どういうつもりよあんた。あんたの事を庇ったのに、何であんたはそんな平然としているのよ」
「どういうつもりですって?単純な話よ。攻撃が当たるのはごめんだし、避けて無駄に体力を消費したくないもの。だから
「代わりですって…?ふざけないで!他人を平然と傷つけて、偉そうな事を言わないでよ!」
霊夢はいま、かなり怒っていた。それもそうだろう。リーフのやってる事や言ってる事は、他人の命を踏みにじる行為だ。
彼女は人妖問わず他の者の命を奪う事を嫌がる。どのような種族であっても、どのような生き方をしようとも、生きていることそのものに価値がある。だから誰であろうとも、嫌悪感を抱いて接する事はない。もし嫌悪感を抱くような事があるとすれば、それは他人を弄んで平然としている者を見たときだ。そして、目の前にいるその女はその類の者だ。
「あらそう。貴方と私は相容れない存在という事ね。ならここで消してあげるわ。私たちの可愛いペットたちが」
リーフが話し、もう一度指を鳴らすと、リーフの後ろに控えていた驥獣らが霊夢に一斉に遅いかかる。霊夢はそれに対抗すべく札を手に取った。
だが霊夢は攻撃の手を止めた。彼女の目の前に1人の男が立ったからだ。
「黎人…!?」
黎人は霊夢の声に反応せず、その手に持つ『火』の双剣で敵をなぎ払った。数匹はいたであろう驥獣は一気に倒れた。
「あら、少し前までは1匹でも手こずってた男が、一気に何匹も倒したじゃない。格段にレベルが上がってるわね。やはり、
驥獣を一蹴する黎人の姿を見て感心そうにリーフは呟く。幻想郷に来たばかりの頃の彼は一体の驥獣でもかなり手こずっていたが、今の彼は数匹をいっぺんに相手にしている。鵞羅やリヴァルとの戦いで彼のレベルが上がったのは疑いようがない。
「ったく…鵞羅といいリヴァルといい、とことん人を怒らせるのが好きな奴らばかりだな。
リーフと言ったな。テメェが他人を利用する事にイチイチ腹を立てるつもりはない。
だがな、テメェ自身の手で戦わないで俺に勝てると思うなよ」
黎人は静かに言った。その様子に味方である霊夢でさえ寒気がするほどだ。たまに出る彼の殺気は、幻想郷の中でも一、二を争う怖さを漂わせている。
「へぇ、言うじゃない。良いわ、貴方は私が相手をしてあげる」
リーフは少し笑い、上着を脱ぎ捨てる。ドレスだけを身につけている彼女を、黎人は警戒しながら観察している。
こうして、黎人とリーフの戦いが始まった。
◇
場所は変わり妖怪の山。
倒れている瑛矢が苦しそうな声を出しながら、新たにその場に来た2人を見ている。それに倣って、惣一や早苗もその2人を見た。
1人は細身の男で、服装は普通のtシャツを着ている。下は半ズボンを履いており、足はガッチリとしている。それを見て惣一はその男の脚力の強さを感じ取った。
もう1人はかなり太っており、顔つきも少したるんでいる。見た目だけでは戦闘気質とは全然思えないし、寧ろあまり動こうとしないような男に見える。
「やれやれ、あんだけ自信満々に言っておいてそこまでボコボコにやられるとはね。カッコワリー。最初っから俺たちも来れば良かったじゃんか」
細身の男が笑いながら話す。その様子から瑛矢をバカにしている事は明らかだ。
「ロッタ…何笑ってやがる。これは不意を突かれただけだ。負けたわけじゃない」
「は?」
「俺が本当にコイツにやられると思ってんのか。多少やられはしたが俺が勝つ事になるんだ。俺は…英雄になる男だぞ」
少しドスの効いた声で瑛矢が喋る。言っている内容は言い訳以外の何者でもない。早苗から見ても今の戦闘は惣一がちゃんと勝ってたし、そのまま戦っても瑛矢が勝つ事はない。だというのに『負けてはいない』と言う瑛矢に対して少し苛立ちが募った。
その時細身の男…ロッタは何も言おうとせずに倒れている瑛矢に近づく。瑛矢はうつ伏せになり、全く動けていない。その彼の隣に立ったかと思うと…
瑛矢の背中を思いっきり踏んづけた。
「がっ…!?」
背中を踏まれ、瑛矢は苦しむ。ロッタの足の力は異常で、背骨や内臓を潰そうとしているのではないかと思わせる。ただでさえ大怪我をしている上にそのような攻撃をされている瑛矢は、動く事は出来ずただ悲鳴を上げるだけだった。
「何言ってんだよテメェ。言い訳する英雄がいるかよ。命令無視した癖にコテンパンにされ、挙句の果てには言い訳しやがって。それで何偉そうな口聞いてんだよクソが」
罵言を言いながらロッタは足の力を強くしていく。そのロッタの表情はとても怖いと早苗は感じた。
「あーあー、ロッタを怒らせた〜。ロッタ凄く怖いのに〜」
「ウルセェんだよデブ!その語尾を伸ばす癖止めろって言ってんだろうが!」
すると太っている男…ファトラスが喋る。喋り方がのんびりしている上に語尾を伸ばすクセが、ロッタはイライラするようだ。
一瞬だけファトラスに怒ったが、ロッタは直ぐに怒りの矛先を瑛矢に戻し、踏んでいるその足を一旦あげて再び踏みつける。
「おいなんか言えよ!クズ!ガキ!ボケ!タコ!カス!」
蹴るように何度も瑛矢の胸を踏みつける。地面ごと割れるんじゃないかと思わせる並の勢いがある。そんな攻撃を喰らい続けている瑛矢はかなり苦しそうにしている。
「そこまでです!」
するとロッタに銃弾が飛び出してきた。発砲音から銃弾が飛んでくることが分かっていたロッタはその場から離れて銃弾を避けた。銃弾を避けたロッタはいまロッタに向けて発砲した男を睨んだ。
「一体何をしてるんだい、お兄さん。人に向けて銃をぶっ放つとかバカじゃないの?」
「…覚悟の上です。あなたこそ、あのような暴挙に出るとは思いもしませんでした。瑛矢さんは今の今まで戦って、疲労がかなり溜まっているのに、そんな状態の彼に追い打ちをかけるとは…どういうつもりですか」
惣一はロッタを睨みつける。どう見たってロッタは瑛矢の味方のはずだ。戦闘している時味方は支え合うもの、というのが彼の信念であり、さっきの険悪な雰囲気も今の暴挙も、惣一にはあり得ない事だった。だから惣一はロッタを睨んでいる。いつでも攻撃が出来るように。
「疲労が溜まってる?そりゃそうだろ。戦ったあと疲れるのは当然だ。けどな、それは別に関係ねぇよ。
本当は俺とファトラスとコイツでここに来る予定だったんだけどな。このバカが粋がって『俺一人で良い。お前らは手を出すな』とか言っといてよ。そんな事言っておきながら、ボロボロにやられてんの。クソダセェよな。しかもその上負けた事に言い訳しやがったんだぜ?
その時点でコイツはカス野郎だ。負けを認めねぇ英雄なんか誰が憧れるんだ。
分かるか?俺はその事に怒ってたんだ。ビックマウスなカス野郎の根性を鍛えなおすのは、体に直接叩き込むのが1番だ。例え疲れてようが死にそうだろうが、俺に刃向かった罰は無くならねぇんだよ」
ロッタはめんどくさそうに話す。彼は瑛矢が疲れているという事については正直どうでも良いのだ。反抗した挙句成果も出せなかった瑛矢に対して思っている事は苛立ちだけであり、労いの感情は全くない。だから彼は、惣一の言ってる事は理解できない。
「…これ以上の論議は意味が無さそうですね。仕方ありません。あなた方も私の手で捕らえます。覚悟してください」
惣一はその手に持つ銃に力を込める。その手には少し汗が垂れている。
彼も内心では焦っていた。先ほど瑛矢と戦っている時に機械の動作を止める電磁波を作動してしまったため、GARDERは使えない。つまり、それに頼らないで目の前のロッタという男に挑まないといけない。それで勝てるとも思わなかった。だから惣一は焦っている。勝算がない試合は何度経験しても慣れたりはできない。
「ナメた口聞くなよ、三下が」
ロッタは惣一に向かって一言言い放つ。さきほど惣一が言った言葉はほぼ宣戦布告のようなものだし彼もそのつもりで言った。ロッタはそのような売り言葉を聞いて黙っていられる正確ではない。売られた喧嘩は買って当然、それが彼の信条だ。
ロッタが戦闘態勢に入ったと認識した惣一はその手に持っている銃の引き金を引いた。先に仕掛けて様子見をしようとする作戦だ。その銃弾にロッタは躱すかどうか、その目で測ろうと見ていた。
だが惣一は、気づけば腹を蹴られていた。
「…が…!」
蹴り飛ばされた惣一は後ろに大きく吹き飛んだ。体制を低くして突進してきたロッタの蹴りは、走っていた勢いも合わさってかなり強烈な衝撃を惣一に与えていた。ロッタを撃ち抜かなかった銃弾は遠くの方で岩にぶつかり、埋まった状態になってしまった。
地面に激突して体制を立て直した惣一に、ロッタは再び攻撃を仕掛けた。誰の目にも止まらないほどのスピードの速さに、その場の全員がロッタの異常な速さを思い知る。
惣一は反射的に腕でロッタの蹴りを防ぐ。農作業や日々の訓練で腕の筋力はかなりあるというのに、それでも防ぎきれているとは思えない。
「甘いな。吹き飛べ」
ロッタがその足にもう一度力を込めた時、惣一の腕は弾かれた。体制を崩し、隙が生じた惣一の腹に渾身の蹴りを放つ。鳩尾に強い蹴りを受けた惣一は、数歩だけ後ろに下がって膝をついた。その姿でもかなり苦しそうに見える。
たった数分間の展開を見て、早苗はとんでもないものを見ているような顔をしていた。惣一は、肉弾戦はかなり強い。その訓練をいつも見てたし、瑛矢との戦いでもそれがハッキリと分かった。
だがロッタは、惣一とは比べものにならないほどの強さを持っている。目にも止まらぬスピードと、大の大人を退かせる脚力。それを持つ相手に、惣一は手も足も出ないように見えた。
「…!足技…ッ!」
「そうだ。俺は足技が専門でね。足を鍛えるうちに跳躍力も鍛えられた」
「…先程の早い移動は、前方へのジャンプだったのですか」
「そうだ。こう見えて元アスリートでね。スピードの重要性は痛いほど思い知った。どのような競技にしてもスピードは命。強くなるためには素早く動く事が近道だ」
早苗は焦っていた。どのように見ても惣一が明らかに不利。このままでは敗れてしまうと悟った。ならば自分も参戦するべきだと思った。例え力及ばずとも、何もせずにじっとしていたままでいることが何よりも怖かった。
ロッタに向けて弾幕を放つ。こちらを見てないロッタは早苗が弾幕を放った事に気付いていない。願わくば当たってダメージを負わせたいし、そうでなくとも数秒間の隙を生じさせる。それを狙っての弾幕がロッタに近づく。
だが彼の前に1人の男が立ち塞がった。さきほどロッタと一緒にいたファトラスという男だ。
「え…!?」
自らその弾幕を受けるつもりなのか、と思った矢先、早苗の目の前で信じられない事が起こった。それもそのはず、早苗の放った弾幕がファトラスに当たったかと思うと、その弾幕はそのまま別方向に跳ね返った。壁に当たったボールが跳ね返ってくるように弾幕は飛び散り、そのまま消えていった。
「ダメだぞ〜人の戦いに横槍を入れる事は」
ファトラスは早苗がロッタに向けて弾幕を放った事が分かったようだ。それを見て早苗は浅はかだったと後悔する。瑛矢の助っ人として現れた敵は2人で、自分の方も戦える戦力は2人だ。ロッタが惣一と戦っているのならば、もう1人の男は自分の方に向かってくるという事は直ぐに分かりそうな物だというのに、判断を誤ってしまった。
「どう?『弾幕を跳ね返す程度の能力』は。敵の得意とする弾幕は僕には聞かないんだよ」
ファトラスの能力は『弾幕を跳ね返す程度の能力』のようだ。その名の通り、弾幕を跳ね返すのだろう。その効果は今さっき目の前で見たので疑いようがない。
だがその能力は敵の攻撃を防ぐ事は出来ても、こちらを攻撃する事は出来ない。彼はどのようにして攻撃するのだろうかと早苗は構える。
「今度はこっちから仕掛けるよ〜」
するとファトラスが動き始めた。ファトラスがそう宣言すると、その場で軽くジャンプする。そして空中に浮いている間、ファトラスは体を丸めて、前転するように縦に回転した。高速で回転するファトラスが地面についた瞬間、物凄い勢いで早苗に向かって突進する。
「え!?そんな…」
まるで車のタイヤのように突進してくるファトラスに、早苗は呆気としている。そのためファトラスの攻撃に対処出来ず、突進を受けてしまい、吹き飛ばされてしまった。
「ちょ…なんなんですか、アレ!?」
早苗がそう言うのも無理はない。ファトラスのように綺麗に回転しながら、しかも勢いを止めずに突進する事が出来るものなどいない。だからファトラスのしている事が理解できなかった。
だが待つ暇はない。ファトラスは再び早苗に近づいてきている。それを避けるために早苗は空に飛んだ。地上を転がるのなら、空中には攻撃できないと思っての行動だ。
そして読み通り、ファトラスは回転を止めた。そのままでは空中にいる早苗に攻撃する事ができないのだ。
「空中に逃げるとは卑怯だぞ。そんな卑怯な奴には…」
ファトラスは空中にいる早苗を睨んだ。そしてそのまま攻撃に移る。屈んだままじっとしている。
するとファトラスは空中に飛んだ。足にバネが付いているかのような跳躍力で、かなりの速度を出している。
「うわ…デタラメな動きをしてますね…」
デタラメな行動をするファトラスに驚いてはいるが、早苗はその攻撃を避ける事は出来ないと知った。あまりにも速すぎるから躱せないのだ。
早苗は弾幕を放ってみるが、ファトラスの能力により弾幕が跳ね返ってしまう。もはや止める術なしと悟った彼女は来るべく衝撃に耐えるために結界を張る。そのままファトラスは自分の方に向かってきた。
「へぶ!?」
だがその結界に当たる事は無かった。不意をつかれ、声を出したファトラスは地面に叩き落とされた。
早苗は何もしていない。彼女は結界を張っただけだ。そしてロッタと戦っている惣一も何もしていない。ではファトラスを叩き落としたのだろうか。
「なんだ?割と蹴りやすい奴だな。ひょっとしてお前の正体ってサッカーボールなんじゃねぇか?」
するとファトラスをかなりバカにするような声が聞こえた。さっきまでこの場にいなかった人の声だ。つまり、誰か加勢に来たのだ。早苗はその声の主が誰かを見るために、その声が聞こえた方を見た。
「あ…あなたは…?」
その人物を、早苗は知らなかった。彼女は彼を見た事ない。彼が現れた現場には、彼女は居ないのだから。
彼は神の三児の1人、イシューの部下。
劉と名乗った男だ。
劉さんが登場しました。コラボ章で出たのですが、覚えているでしょうか?
次回は劉さんが大暴れ
そして黎人とリーフの戦いの結末は?