超古代、この星はウミという塩辛い水がこの星の大半を覆っていたそうです。
『それに例えるなら、ここは辺境のウミの底のようなものだ。技術の卓越したよほどの暇人で、なおかつバカな
ここを教えてくれた彼はそんな風に言っていました。
ここはこのPTの最深部のサーバールームです。
だから、このテキストを見ている貴方はとても優秀で、心と時間に余裕のある方なのでしょう。
でも心苦しいですが、これはレアアイテムでも重要な情報でも何でもありません。
ただのメッセージ。
大昔でいう『メッセージボトル』のようなものです。
メッセージボトルとは、メッセージを書いた紙を、ガラスの瓶に入れて封をして、ウミやカワなど流れる水辺に流す『お手紙』だそうです。
誰かにあてるものではなく、水に流されるまま、誰かに届いたら幸せ程度のものなのでしょう。
だから、今これを読んでいるあなたはともかく、私は幸せなヒトということになります。
お時間がお有りなら、このお手紙を読んでいただけたら嬉しいです。
私は、元二級市民のミーティア・リュティといいます。
元、とつくのは私がPTから完全に離脱、幸福を希求する権利と義務を放棄したからです。
叔父に連れられこのPT社会に入ってから約十五年、今日はその最終日になります。
PTを出ることに後悔はありません。
ただ、何かを残したいと思ってテキストを綴っています。
この十五年、本当に様々なことがありました。
ストリートチルドレンだった私を見つけて導いてくれた叔父が死に(私はロストという言葉を使うのが嫌いです)、その叔父が遺したアクセサリも廃棄処分となり、私は嘆き悲しみました。
それでも、いつの間にか友人ができて後輩の指導をするようになりました。
数年前の天罰の時に一緒に戦った女性リーダーたちとも仲良くなり、私の世界は少しずつ広がっていきました。
まさか、フェローカードのやり取りができなくなるとは思ってもいませんでしたが。
私には腐れ縁としか言いようのない、性根も性癖も最悪の幼馴染の男がいます。
でも、彼の知恵と力なくしてここまで来ることができなかったのも事実です。
このテキストを残せるのも、彼のおかげですから。
恐ろしいことに、今後も彼との関係は続いていきます。
どこまでいっても、彼の手のひらの上。
エスパーとかそういう類いなのかと本気で思っています。
話が逸れました。
では何故、このPT社会を抜けるのか。
理由はいくつかあります。
一つは、私がこのPT社会において能力が頭打ちになったこと。
一つは、私がこのPT社会が、いえ、この世界の在り方そのものが嫌いなことに気づいたこと。
もう一つは、私は自分の意志で命の在り方を、幸福を決めたいと思ったことです。
私は生まれつき体内のウィルオーの生成が普通の人と比べると大分遅いです。
今まではそれをフィジカルの面で補ってきました。
しかし年を取り、伸びしろは少なくなって維持の方に注力するようになりました。
今はまだいいですが、加齢とともにフィジカル面でのフォローはできなくなります。
ウィルオーを生成することは、PT社会にとって必要不可欠。
このままPTにいても私は二級市民以上にはなれず、いずれは咎人に降格し、戦えなくなったらこの社会にはいられなくなります。
そうなる前に、ウィルオーの生成が弱くとも大丈夫な社会、つまりモザイク街やその外の世界へ行こうと決意したのです。
PTの在り方は変わりませんからね。
そもそもPTを出ることはできるのか。
できるのです。
実はPT法には、彼らが声高に謳う幸福のための権利と義務を破棄する項目がありました。
私の所属するPTでは、破棄する条件として九百九十九万九千九百九十九年分のポイントを稼ぐこと。
つまり刑期カンストからゼロへ戻すことです。
PT社会から出ていった話は、内外問わず聞いたことはありますが、その方法で実践している人は見たことはありませんでした。
PTによって違いもあるでしょうが、賢く法の抜け道をかいくぐった人が大半でしょう。
律儀に正直にそんな面倒な方法を実践するほうがおかしいのです。
しかし、それにチャレンジしている人が身近にいました。
数年前の天罰の時に一緒に戦った、優秀な怠け者であるはずの女性リーダーの一人です。
意外にも面倒極まりない方法を取っていました。
曰く、
『非合法な手段を使った場合、未来での立ち回りが面倒になる可能性があるから。よらばタイジュの陰があるならともかく、そんなものないただの小市民は、幅広く情報を集め、慌てず焦らず合理的に、正規の手順で王道を行くべしってね。未来のことも考える時間もできるし、裏で資産も稼げるし』
塩ナトと炭酸水を嗜みながら彼女は笑いました。
『それに終わらせるなら後腐れなくいきたいじゃない、何事もね』
そんな彼女ですが、去年、刑期をすべて払いきりこのPTを出ていきました。
優秀な怠け者の彼女は、今まで病気で臥せっていたお母さんのために戦っていたのです。
そのお母さんが数年前に亡くなり、戦う目的を失くした彼女は、PTを出ていくことを決意。
今はお母さんの残した手芸店を再開すべく頑張っています。
そんな彼女に勇気づけられた私は、その権利と義務の放棄へと目を向けたのです。
ガソリンには、青い薔薇が咲いているそうですね。
私にはそれは見えません。
いつもは適当に話を合わせて、見えないことは誰にも言いませんでした。
……幼馴染の彼は気づいていそうですが。
それが、私にはこう思えてならないのです。
私はこの社会に必要ないのだと。
ウィルオーだけを尊重し、その生成のためにヒトの思いを徹底的に利用し、それ以外を蔑ろにする社会。
私は結局好きになるどころか大嫌いになりました。
その社会が、私の年上の後輩にして大切な友人だったハリエットさんを死に追いやったから。
『やっとその結論が出たのかよ。気づくのが遅すぎ。ま、お前らしいか』
憎らしい幼馴染の発言です。
そう言った彼のスネを蹴飛ばしたかったのですが、私は温厚で優しく、少なくとも彼よりは大人な性格だと思っています。
なので我慢してやりました。
実際にやったら、その何十倍も蹴飛ばされるとか、スネが砕けるまで踏みつぶされるとか、そういう予想に屈したわけではないです。
本当ですよ。
ハリエットさん、ビルさん、オリヴィエさん。
私の初めての後輩たちで、今でも強い思い入れがあります。
優秀だったハリエットさんは瞬く間に二級市民なり、皆より先に市民に昇格。
咎人や二級市民たちのために働いていました。
性別や年齢、生い立ちに関係なく、胸を張って生きていける社会を作りたい。
年老いて死にゆく運命に抗うのではなく、それらを肯定的に受け入れる人生を送りたい。
そう言っていたハリエットさん。
しかし、彼女のそんな思想と高い能力に危機感をいだき、その能力を手にしようとした同僚によって謀殺されたのです。
表向きは事故として処理されましたが、彼女の高いウィルオーの臓器は、その同僚が意図したとおり引き継がれました。
当然、この事実を知っているのは一部の上級市民だけのはずでした。
私と後輩たちが真相を知ることができたのは、幼馴染の勤め先のおかげです。
私達は深く悲しみ、激しい怒りに燃えました。
その同僚に復讐してやろうとも思いました。
でも、幼馴染の勤め先と上司である上級市民に止められ断念せざるを得ませんでした。
その同僚を殺しても、何も変わらない。
これから先も、PTは急激に変わることはない。
焦らずに少しずつ変えること。
そのために辛抱強く生きることこそが、変革への第一歩だと諭されたのです。
私には、その力はありません。
ですが、後輩二人にはハリエットさんに勝るとも劣らない力があります。
彼らはこの社会を変えるべく、二級市民から市民へと昇格し、それぞれの立場から頑張っているようです。
『俺達の代では無理かもしれない。でも次の世代へつなげて、いずれはこの社会を変える。それが、ハリエットの死の報いになるはずだ』
二人はそう言っていました。
本当に初めて会った時、咎人時代の彼らからは想像もできない成長ぶりが、本当に眩しく、頼もしく見えました。
私はPTを出ますが、手助けが必要な時は手を差し出すことにしています。
ちなみにハリエットさんを謀殺し、高い能力を手に入れた市民。
幼馴染の話では、その能力をフル活用すべく過労死寸前まで働かされているとのこと。
今でも怒りを覚える存在ですが、PTのためにレッツ貢献すればいいと思います。
さて、幼馴染はPT社会をこんなふうに評していました。
『承認欲求を肥大させ、幸福と名付けた快楽に依存させる、究極の管理監視のタテ社会。ただ穴はある。完全完璧な社会などない。モザイク街とお前がその証拠だ』
更に続けて言いました。
『俺の勤め先は、通商信託結社。契約と信用を柱に対等な関係を築くヨコ社会の組織であり、それを補助する組織でもある。資源やポイントという信用を形にしたキンユウ商品を取り扱い、モザイク街を根城に活動中。今は半分くらい形骸化しているがな』
そうしてタテ社会とヨコ社会とで世界のバランスを取りながら、ウィルオーを搾取する天獄という存在。
何故そこまでウィルオーに固執するのか。
一説には、天獄でウィルオーを集めてカミサマとやらを作るのだ、という説があります。
カミサマとは何か。
私は苦労して調べた結果、それは目に見えぬ親のようなものではないかと思っています。
衣食住を与え、育てて守ってくれる拠り所。
時に営利目的のための精神的な支柱。
私達ヒトの欲望を受け止め、補ってくれる存在。
『ヒトは本能的に群れを作り、リーダーを求めるそうだ。カミというリーダーを作るという説が正しければ、天獄の連中も俺らヒトと変わらん存在ってことになるな』
幼馴染はそう言っていましたが、そのリーダーであるカミサマを作ることが、本当に幸福に繋がるのか。
リーダーのいない状態の天獄のヒトたちは、不安で不幸で欲望が満たされていない状態なのでしょうか。
ここまで読んだあなたはどう思われますか?
ハリエットさんの死から今日この日まで、私は権利と義務の放棄のために二級市民をしながら、中層から最下層の住人を対象に理容師をしつつ研ぎ師の仕事をしていました。
そうして日々を過ごす中、私の理容師の顧客に凄腕の研ぎ師さんがいて、私の使う刃物の状態を見て、後継になってみないかと誘われたのです。
私はその誘いに乗り、まだまだ修行中の身ですが、それでも少しずつ認められることが多くなりました。
刃物は道具として、超古代から始まりいつまでも廃れることはないでしょう。
自分で選んだ仕事をし、お客さんに感謝されながらお金をいただけること。
そこで自分で食事を選択して食べ、家事をこなして眠りにつく。
その技術を身に着けた事実も、PTから離れてもやっていける自信に繋がりました。
この約十五年、時に辛く苦しく、この世のすべてを呪いたくなった時もありました。
絶望して引きこもりもしましたし、怒りに任せて八つ当たりもしました。
それでもこうしてPTを出ていき、新たな生活が送れるのは、幼馴染を始めとした友人や師匠、兄弟弟子、市民となった後輩たち、上級市民の上司のおかげもあります。
そして、様々な理由で過ぎ去ってしまった過去の大切な人たちのおかげでもあります。
その人たちに贈る思いは感謝です。
この感謝の日々を送れることこそが、幸福なのではないのかと思うのです。
幸福とは苦難や困難、迷いの中で、人と関わることで感じるものなのではないのでしょうか。
私は幸せをそのように定義しました。
そして自分の命も、他人の命も、己の意志を持って扱いたいと思っています。
己の殺意をもってヒトを殺す。
自分が必要と感じれば手を汚しますが、そうでなければ共存していけばいい。
自分の命も、他人が管理するのではなく自分自身で管理したい。
自殺も殺人もよくないことですが、その意志は己で決定するもの。
命はそれだけ貴重であり、取り扱いには覚悟が必要なもの。
ストリートギャングを経て二級市民となった私は、そう思うのです。
そしてこの思いは、PT社会とは真逆のものであり、相容れません。
そう、十五年という長い時間の中で、私はようやくそれを言語化することができたのです。
天獄の求める幸福とは何か、それはわかりません。
しかし、幸福のためにカミサマが必要だというのなら、それを作ることを特に止めたりはしません。
できれば天罰以外の方法をご検討頂きたいところですが、なんで複数の方法を取ろうとしないんですかね。
エネルギーもウィルオーだけだと、枯渇したときに悲惨なことになりそうなのに。
でも、ヒトの思いが枯渇するなんてことないからいいのかな。
この世界、わからないことが多すぎて、一生をかけても知り得ないこともあるのでしょうね。
長々と書きました。
そろそろ閉めようと思います。
ここまで読んでくださりありがとう。
感謝しています。
ああ、やっと未来のことを躊躇うことなく相手に伝えることができる。
その一言をあなたに贈ります。
名も知らぬPT社会に適応した優秀で強いあなた。
あなたの明日が感謝のあるよい一日でありますように。
十万二千二十二年六月二十六日
ミーティア・リュティ
◆◆◆
一息つき、ミーティアはディスプレイから顔を上げた。
簡素な折りたたみのパイプ椅子に座ったまま、腕を上げて大きく伸びをする。
その度に、椅子はギシギシと音を立てたが、周囲の機械音や排気音にまぎれて、またたく間に消えた。
ミーティアのいる場所は、彼女の目の前にあるディスプレイと、彼女の身長を優に超える幾つもの筐体の光でぼんやりと照らされている。
その光は天地四方ともに無機質な材質に覆われ、出入り口と排気口はあるようだが窓は一つもない。
さながら、簡素で真っ白な箱の中のようだった。
ここは、このPTの脳みそと言っても良い場所、PTの地下最深部のサーバーエリアである。
二級市民であるミーティアが、決して入れない場所にいられるのは、彼女の足元で横になっている黒いヘルメットを被った黒服の男のおかげだった。
フラタニティの構成員である彼は、はっきり言ってしまえば上級市民、それもトップレベルの実力とウィルオーの持ち主である。
彼にかかればPTで行けない場所などどこにもなかったし、それどころか、ご丁寧に枕と毛布を持ってきて昼寝までできるほどだった。
ミーティアはストレッチを続ける。
そうして体を動かしていた彼女だが、やがて腰をひねると、彼女の足元で眠っている男の肩を突いた。
「ハルカさん、終わりましたよ」
男の商売上の名を呼ぶが、起きる気配はない。
今度は軽くその肩を叩いた。
「トト、起きて。終わりましたよ」
男の本名を呼ぶと、トトと呼ばれた男は身じろぎをした。
呻き、そしてミーティアを見上げる。
「……終わったっすか?」
「はい。言われたとおりロックもしましたよ」
「はいよー」
言いながらトトは体を起こした。
すると彼の目の前にディスプレイが展開される。
「……一時間も経ってないっすね」
「ええ、書くことは大体決まってましたから」
「ふーん。まあ昼寝にはいい時間っす」
愛想なく応じながら、彼は小型化したウィルオードライブを腰につけ、毛布と枕を放り込んだ。
そして黒い煙が立ち上るようにゆらりと立った。
「最終チェックと諸々の作業は俺がするっすよ。お前は先にドアの前に行って待ってるっす」
「わかりました」
ミーティアは立ち上がり、ドアに向かって歩きだして、ふと足を止めた。
振り向き、今しがた彼女の座っていた椅子に腰を掛け作業を始めているその背に声をかける。
「トト」
「ん?」
「トトは今、幸せですか?」
「んなの知らんすよ」
トトは手早くキータッチをしながら即答した。
「俺には幸せなんてもんはわからねーっす。でもそうっすねえ、満たされてはいるっすよ」
「満たされている」
「ああ」
トトは作業の手を止め、振り向くと彼女の方を見た。
「仕事も順調だし、何よりこれから毎晩お前を枕に眠れるっす。約十五年近くっすか。ようやく人並みの、ガキの頃と同じ安定した睡眠にありつけるんすから」
フラタニティのヘルメットを被っているにも関わらず、ミーティアはゾッとするものを感じた。
ヘルメットの向こうで彼は笑っていると感じた。
それも悪意とか狂気とかあまりよくない情を──。
ミーティアはあからさまに眉をひそめた。
「その十五年近くの間に自分でなんとかしようとしなかったんですか」
「したっすよー。薬使ってみたり、女を取っ替え引っ替え抱いてみたり、アクセサリをぶっ壊して改造したり」
「何故そこにアクセサリが出てくるんですか?」
「あれの機能を利用しようとしたんすよ」
問いかけるミーティアに背を向け、彼は再び作業をしながら応じた。
「でもあれ、本当にPTのためにだけにあるんすねえ。全く使えなかったっす」
「……はあ」
「ま、徐々にぶっ壊れていくAIを見るのは楽しかったすけどね。とある一体がヒトを悪と断じて、咎人や市民を殺して回るようになったの痛快だったっすなー」
その言葉に、ミーティアは露骨に顔をしかめて小声で呟いた。
「最悪……」
「何か言ったすか?」
「はい。でも独り言なのでお構いなく。それじゃお先に待ってますよ」
一つため息をつき、ミーティアは彼に背を向け今度こそ歩き出した。
今後もこの最悪な幼馴染と関わるのか。
関わらざるを得ないのだ。
トトの力と属する組織は、PT社会を離れる彼女にとってあまりにも有益すぎた。
何よりミーティア自身、彼が救いようがないほど本当にひどい男なのに見捨てられない。
幼馴染とかその他言葉にできない情に、完全に絆されている。
ふいに、ミーティアの命の恩人だった女主人を思い出した。
最下層で餓死寸前だったミーティアを拾った、身も心も美しいミーティアの憧れの女性。
しかし、その実態はギャングのリーダーの情婦だった。
どんなにひどい扱いを受けても離れられず、ギャングのリーダーも女主人を利用し尽くすため、巧妙に彼女をコントロールしていた。
疲れ果て、嘆く女主人に寄り添いながら、なぜ別れないのかとたずねたことがある。
『違う。違うのよミーティ。私が悪いの。弱い私が悪いのよ』
『ミーティ、私のようになってはダメよ。優しくて素敵な人と一緒になってね』
泣きながら、しかし儚げな笑顔を作って言った女主人の言葉。
当時は理解できず受け止めることしかできなかったが、今ならよく理解できる。
『命の恩人』『女主人』『憧れの女性』という垣根をこえ、今なら彼女と良い友達になれそうな気がした。
脳裏に浮かんだ美しくも弱かった女主人に苦笑いを向け、何度目かの諦めの思いを胸に顔を上げると、扉へと足を進めた。
足音を立て遠ざかる彼女を感じながら、トトは作業を続ける。
ミーティアの施したロックを解除すると、彼は手を止めた。
彼女の残したメッセージを特に感慨に耽る風でもなく確認する。
そしてしばらく沈思したトトは、ヘルメットの向こうで唇のはしを少し上げた。
ミーティアが見たら、渋面を刻んだに違いない悪意に満ちた笑み。
その彼女の渋面を想像しながら、トトはそのメッセージの最後に文字を付け足した。
そして、またたく間にプログラムを組んでテキストに組み込むと、丁寧にロックをし直す。
一通りの作業を終えたトトは、椅子を折りたたんでウィルオードライブに放り込んだ。
程よく痕跡を消し、ドアの前に立って待っている彼女の元へと向かう。
ドアの先は、まだPT内部である。
しかし、ミーティアとトトにとって、新たな生活の第一歩となるのは間違いなかった。
◆◆◆
おい、そこの優秀な暇人。
薔薇になれず、その薔薇を見ることも叶わず、堆肥にすらなれなかったPT社会の役立たずな女の話はこれで終わりだ。
これを読み終えた直後に
今まさに怖い怖い上級市民様達がそちらへ向かっている。
PT社会に適応し、ここまで来れたあんたなら余裕で逃げ切れるだろ?
さあ、尻尾まくってさっさと働きに行け。
≪薔薇と堆肥 -message in a bottle- 完≫
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字言い回し等、修正がありましたら都度修正します。
こちらでお知らせなどを語っておりますので、よろしければご覧下さい。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view_list&uid=68614
始まりは怒りでした。
発売当初のFWは快適さのかけらもなく、アクセサリの介護職に甘んじ、第七階層の試験でのあまりに難易度の高い内容、ストーリーの中途半端さ、制作側のあまりに拙い対応に怒りを持ったものです。
褒められるのは、世界観とキャラクリだけ。
発売日前まであれだけ盛り上がり、期待値を上げるだけ上げて、いえだからこそ、大きく炎上したのでしょう。
彼らが望んだ『祭り』は確かに起こったのです。
それが彼らの目指した『祭り』だったかはわかりませんが。
バージョンアップと共に快適性は上がり、武装関係の運頼みは改善されなかったものの、ようやく1ゲームとして体面を保てるようになりました。
そして賛否両論のVITAのゲームとして名を残すことになったのです。
私はそのように認識しています。
怒りを昇華すべく書き始めたFWの二次創作、8周年記念の今回の話で一区切りとさせてもらうことにしました。
一番大きなきっかけは、VITAでのゲームのサーバーが閉鎖されたことです。
怒りは持っていましたが、当時遊んで下さった野良の方々は皆いい人たちでした。
言葉は一切なく、身振り手振りのアクションでコミュニケーションを取って遊んでくださった方のことは、今でも記憶に残っています。
あれは楽しかったなーw
だからこそ、制作陣の対応の残念さをことさら感じたのですが。
そのサーバーが閉鎖され、一つの時代の幕が下りたのだと実感し、こちらの話も区切りをつけようと思った次第です。
気が向いたら小話を書くかもですが、可能性は限りなく低いです。
男主人公の咎人の話は、ゲームと連動しているため動かすことはないです。
今回の話も、一つ一つエピソードを書く気力もなく、強引にダイジェストとしてまとめさせて頂きました。
申し訳ありません。
このシリーズに入れていない、二級市民の話をまとめました。
ありふれた女の武器の話
https://syosetu.org/novel/148258/
ありきたりな女たちの見かけの話
https://syosetu.org/novel/165247/
連れ込み宿の一室にて
https://syosetu.org/novel/173695/
こちらをご覧いただけますと、今回の話も理解しやすくなるかと思います。
ここまでご覧頂きありがとうございました。
また別のお話でお会いできればと思います。
それまでお体には気をつけて、お過ごしくださいませ。
それではまた!