大きな夜光石の置かれている奥の部屋で、二人が見たものとは?
『開かない 開かない……内側のせい…………』
「佐久間、ちゃん?」
そこにいたのは、夜光石をなんとかどかそうと奮闘している、佐久間だった。
佐久間はぶつぶつと呟きながら、夜光石を動かそうとしている。
シオリが声をかけるも、声が小さかったためか反応はない。
「佐久間ちゃん!」
くるっ
ソナタが少し大きな声で佐久間に声をかけると、佐久間は勢いよく振り返った。
佐久間は二人に向かってにたりと笑いかけると、そのまま走っていってしまった。
「「待って!!」」
慌てて追いかけるシオリとソナタ。
そのまま追いかけていくと、佐久間は玄関から外に出ていってしまった。
外に出るが、すでに近くに佐久間の姿はない。
二人は顔を見合わせ、考え込んでしまった。
「佐久間ちゃん、どこにいったんだろ。。」
「もしかしたら、森の中?」
霧雨が降り続けている森は、うっそうと生い茂った草とゆらゆらと不気味に蠢く木々に阻まれ、一寸の光さえ見えない。
この森に入ってしまえば、二度と帰ってはこれないのではないだろうか?
そんなことすら考えてしまうほど、その森には生気がなかった。
ごくり……と唾を飲み込んだのは、一体どちらだっただろうか。
震える手をどちらからともなく握りしめ、二人は覚悟を決める。
「行こう、ソナタちゃん。佐久間ちゃんを、探さなくちゃ」
シオリが震える声を圧し殺してそう投げ掛けると、ソナタもまた「うん、大丈夫。だって、私達には須賀さんがくれた御守りがあるもん」と言い、無理矢理な笑顔を見せた。
そして、二人はそれぞれ手渡されたお守りをもう片方の手で握りしめ、森の中へと入っていった。
森の中は、やはり外から見たとき同様薄暗く、不気味だった。
生き物の気配はまるでなく、自分達の息づかいのみが嫌に耳に入ってくる。
・・・否、何かの気配は感じる。
しかしそれは、生き物の気配とはとてもでないが思えない。
いきているものではない、もっと何かおぞましいものが蠢いているような、そんな感覚を二人は感じ取っていた。
やっぱり、須賀さんか望月巡査についてきてもらえばよかった。。
そう後悔したところで、後の祭り。
そもそも、須賀はここに来ることに反対していた。
ついてきてくれるはずも、ここにいることを許すはずもなかった。
進むにつれ、嫌な汗が二人の頬を撫で落ちる。
時々なぜ自分がここにいなければいけないのかと、叫びたくなった。
けれど、片手に触れる夜光石のお守りと、もう片方の手の中にある人の温もりのお陰で、なんとか耐えることが出来ていた。
暫く森の中を歩き続けていた二人の視界に、緑と灰色、そして焦げ茶色以外の色が飛び込んできた。
「「佐久間ちゃん!!!」」
見覚えのある紫に、二人は大声をあげて走り寄った。
シオリが軽く方を揺すれば、佐久間のまぶたがピクッと動き、やがてそのまぶたがゆっくりと開かれた。
「佐久間ちゃん!よかったぁ~」
佐久間が目を覚ましたことと、怪我をした形跡がないことに安心したソナタが、安心したように胸を撫で下ろす。
「佐久間ちゃん、大丈夫?心配したんだよ、急にいなくなったって聞いたから。。」
ソナタと同じように安堵したシオリは、少し問い詰めるといった形で佐久間にいなくなった理由を問いかけた。
佐久間は少しうつむき、小声で「ごめんなさい……」と謝ると、自分がなぜいなくなったのかを話し出した。
狸じじいの言ったことが気に入らなかったこと。
自分がちょっと森に入って行方不明を装い、狸じじいを困らせてやろうとしたこと。
そこまで話したところで、佐久間はなにかを思い出したかのように、顔を青くした。
「佐久間ちゃん?どうしたの?」
「思い出した!!私、この森でことりおばけに遭ったんだ!!お姉さん、ソナタ、逃げて!ことりおばけは、お姉さんとソナタを狙ってる!!!」
佐久間がそう叫んだ、次の瞬間。
『ワタシノ子ドモハドコカイナ。ワタシノ坊ヤハドコカイナ。オイデ、オイデ。コッチニ、オイデ』
聞こえてきたのは、不気味な声。
鼓膜ではなく、脳内に直接話しかけているような、そんな感じがした。
その声は、少しずつ近づいてきているように感じられた。
「逃げて!!」
佐久間の絶叫と共に、シオリとソナタは佐久間をつれ、走り出した。
「ど、どうしよ……まだ追いかけてきてるよ!」
「どうして、私達を追いかけてくるの?」
「お姉さんたちは、ことりおばけと約束したんだよ。ことりおばけに、"命をあげる"って!!」
そんなことを言い合いながら、三人はことりおばけから逃げ続ける。
けれど、ことりおばけはどんどん追い付いてくる。
無我夢中で逃げ続けていた、その時。
「きゃあ!!」
石に躓いたソナタが、悲鳴をあげて倒れ込む。
「ソナタちゃん!」
「ソナタ、大丈夫?」
ソナタが転んだことにより、シオリと佐久間は一旦足を止めることとなる。
その間に、ことりおばけはその姿を確認できるほどまでに近づいてきた。
もうだめだ。
三人は覚悟を決め、ぎゅっと目を瞑り、互いを強く抱き締めた。
〈ピュイ〉
突如として聞こえてきた鳥の声に、三人は驚いて目を開けた。
目の前にいたのは、美しい純白の小鳥。
ふと気づけば、ことりおばけの姿はなかった。
純白の小鳥は、呆然としている三人を賢そうな瞳で見つめている。
その姿をぼうっと眺めていたソナタは、あることを思い出した。
「そういえば。。朱音くんが白い鳥を探してって言ってたけど、もしかして君なの?」
ソナタがそう尋ねかけると、小鳥は〈ピュイ〉と一声鳴いた。
小鳥はもう一度鳴いて見せると、突然飛び立ってしまう。
「待って!」
ソナタが鳥の後を追いかける。
その後を、慌ててシオリと佐久間が追いかけていった。
長かった。。
今回から、できる限り長くしていきます。
佐久間を見つけたものの、二人はことりおばけに追われてしまいます。
絶体絶命のピンチへと追い込まれた三人でしたが、突如として現れた純白の小鳥のお陰で、難を逃れます。
そして、ソナタ達は飛び立った小鳥の後を追い、森の奥深くへとはいっていくのでした。。