まあいいか。
前回ことりおばけとエンカウントしたシオリ達。
絶体絶命かと思ったその時、白い鳥が現れます。
いつの間にかことりおばけは消え、シオリ達は小鳥のあとを追いかけました。
辿り着いたその場所は・・・
三章 夜明け鳥
小鳥のあとを追いかけ、走り続けていたソナタ達は、一軒の家の前に辿り着いた。
少しボロボロになった家、というより小屋の外には薪がつまれている。
古井戸のようなものがあり、その隣には溜め池があった。
池の中で度々見える銀色の光る影は、恐らく魚が発する光だろう。
小屋の周りには鳥達が集まっており、物語に出てくるような小屋に見えた。
ソナタ達が興味津々で小屋の様子を見ていると、突然小屋の扉が開いた。
「・・・ああ、君達か。よく来てくれた、中へ入るといい。君達のよく知っている子も、中で君達を待っているよ」
「え・・・?」
首をかしげるソナタ。
そんなソナタに男性は優しく笑いかけ、小屋の中へと誘う。
素直に小屋の中へと足を運んだ三人は、そこで予想だにしなかった人物と出逢うこととなる。
男性に案内されるまま中へ進んでいくと、リビングらしきところに辿り着いた。
「ここで、少し休んでいくといい。何か飲み物を入れてこよう、何がいい?」
優しく尋ねかけてくる男性に、三人は慌てて返事を返す。
「あ、じゃああたしココアね」
「んーと……私もココアでお願いします」
「私、コーヒーで大丈夫です。あの、いれるの手伝いましょうか?」
「ありがとう、私一人で十分だよ。ゆっくりしていてくれ」
そう言い、男性は奥の方へと消えていってしまった。
男性がいなくなったとたん好奇心が芽生えたのか、佐久間が二人に「小屋の中、探索しない?」と声をかけてきた。
シオリは渋ったのだがソナタが意外にもその案に乗ってしまい、渋々ついていくこととなった。
小屋の中は見た目とは違ってなかなか複雑な作りとなっていた。
一歩間違えれば迷ってしまいそうな気がする。
にもかかわらず、二人は楽しげにどんどん前へと歩いていくため、シオリは道を覚えることより二人とはぐれないようにすることに必死となってしまった。
だからこそ、この結末は必然のものと言えるだろう。
結果から言えば、三人は見事に迷ってしまったのであった。
「あー、もう!ややっこしすぎよ!」
「佐久間ちゃん落ち着いてよ。あの男の人が探しに来てくれるよ、きっと」
「その後に怒られそうだけど。。三人で一緒にお説教されようか。勿論、須賀さんや望月巡査にもね」
望月の話を繰り出せば、佐久間が一変して嫌そうな顔をする。
その事にクスクスと笑っていると、ふとソナタがある部屋をみて笑いを止めた。
「どうしたの?ソナタちゃん」
「なんか、気になることでもあんの?」
二人が尋ねかけるも、ソナタは反応しない。
そして、ソナタはなんのためらいもなくそのドアを開いた。
「・・・え?」
その部屋は、すべてが黒かった。
窓も、机もなにもない。
唯一おかれていた黒いソファーの上に、小さな人影がポツンとある。
その子どもも黒い髪の持ち主だったため、なかなか気づくことができなかった。
にもかかわらず、ソナタは一瞬でその人物を見つけていた。
だからこそ、ソナタはその人物の名を呼んだ。
「ー・・・朱音、君……?」
ソナタの呟きに、シオリと佐久間は驚いたようにソナタをみる。
二人の瞳はまだ、朱音の姿をとらえていなかった。
ソナタの呼び掛けに、朱音は答える気配がなかったらしい。
ソナタはどうにか気づいてもらおうとし、もう一度彼の名を呼んだ。
「あ・・・むぐっ」
否、呼ぼうとした。
しかし、ソナタのその声は突然出てきた大きな手によって、遮られてしまった。
驚いて後ろをみれば、そこにいたのはあの男性。
男性は無言で首を振る。
男性はソナタの口元から手を離すと、三人をその場において朱音の元へと歩み寄る。
そして、そっと声をかけた。
「朱音、お前のよく知る者達がここに来た。・・・話はできそうか?」
「・・・かわいい可愛いぼうや。お兄ちゃんもいるからね。守ってあげるね。可愛いね、ぼうや。ちっちゃいね、守らなきゃね。約束だもん、約束。お母さんとの、ヤクソク…………」
朱音は男性の声に聞く耳を持たず、何かを大切そうに抱き抱えている。
そっと近づいてみてみれば、彼が抱き抱えていたのは古びた赤ちゃん人形だった。
今にも崩れてしまいそうなほど寂れた人形。
その人形にたいして、朱音はまるで本当にその人形が生きているかのように接していた。
ぞっとして数歩離れれば、男性はまた朱音に声をかけ始めた。
「朱音、朱音。・・・朱音、赤ん坊を抱くのはいいが、そろそろ眠りにつく時間だっただろう?」
ぴくりと朱音の体が反応し、朱音は男性を見上げる。
「・・・うン、そウだッタね。。オやすミボうや……」
朱音は素直にそう言って頷くと、人形を優しい手つきで小さなベッドに寝かせた。
「♪かわいいかわいい わたしのぼうや はようはよう でておいで いとしきおまえをむねにだくひを うたいかぞえてまちましょう♪」
子守唄のようなものを謡い、朱音は満足したように男性を見上げる。
その頭をくしゃりと撫で、男性は朱音をつれて部屋からでようとする。
その様子をじっとみつめるソタナ。
ソナタの中で、またしても記憶の欠片が甦ろうとしていた。。
それは、まだ幼い頃の記憶。
小さな少年が、女性のお腹に抱きついている。
少年のとなりには、同じくらい小さなソナタがいる。
女性は優しく微笑みながら、二人を見守る。
「ソナちゃん。僕ね、もうちょっとしたら、お兄さんになるの。でね、おかーさんと赤ちゃん、まもるの!」
「そーなんだ!~~君はしっかりさんだから、だいじょーぶだね!!」
クスクスと笑い合う二人に、女性は微笑みながら言った。
「ふふ……さぁさ、二人とも。今日はいいお天気だから、お外で元気に遊んでらっしゃい・・・」
女性にそう言われ、二人は仲良く手を繋いで外へと駆けていく。
ふと後ろを見たとき、女性はまだ微笑みながら二人を見つめていた。
それを見たとき、何故かソナタはほんの少しだけ恐怖を感じた。。