シオリはとあるバス停の前で、待ちぼうけを食らっていた。
阿座河村へ向かう唯一の手段らしいはずのバスを待ち続けて、早三時間。
バスが来る気配どころか、ひとっこ一人やってこない。
本当にバスは来るのだろうか?
不安になっていたシオリの前に、一人の少女が現れた。
黒い艶やかな髪の少女は、シオリを見ておずおずと言葉を発した。
「あ、あの……。阿座河村に向かうバスは、ここであってますよね……?」
「あなたも阿座河村に行くの?実は、私もなの。でも、ここのバスなかなか来なくって。。」
シオリが困ったように笑うと、少女はくすっと笑い返した。
少女はシオリの隣に座ると、自己紹介をした。
「私は、月光ソナタって言います。えっと、十四歳です。よろしくお願いします」
深々と頭を下げるソナタに、シオリは慌てて言った。
「あっ私は神崎シオリ。十九歳だよ!宜しくね、ソナタちゃん」
自己紹介を終え落ち着いた二人は、自分が何故阿座河村に来たのかを話し合った。
シオリは両親が死に、偶然見つけた写真を頼りに身内を探しに来たことを話し、ソナタは父親の書斎で偶然見つけた日記を見て、自分の無くした記憶とこの日記を書いた人物が何か関係しているのではないかと思い、つい飛び出してきたことを告げた。
「・・・あれ?ついってことは……親にちゃんと言ってきた?」
シオリが不安げにそう尋ねると、ソナタはてへっと舌を出した。
「内緒にしてね?シオリさん」
ソナタの言葉に、シオリは困ったように笑った。。
・・・あれから、何時間たっただろうか。
バスがいっこうに来ないまま、時刻は夕暮れを迎えようとしていた。
シオリとソナタは顔を見合わせる。
「・・・バス、遅いね」
「うん。。もしかして、明日の朝まで来ない。のかな?」
と、その時。
シオリ達の前に、一台のパトカーが停まった。
中から出てきたのは、若い男性。
男性はシオリ達を見て、言った。
「おい君達。見たところまだ子どものようだか、こんなところで何をしているんだ」
男性が警察官だと気づいたソナタが、シオリの後ろに隠れる。
そんなソナタの代わりに、シオリが問いに答えた。
「あの、私達阿座河村に行きたくて。。それでバスを待ってたんです」
「ん?ここのバスはもう廃業してて、いくら待っても来ないぞ」
その言葉を聞いた二人が、「えええ!?」と同時に叫び、男性に「一応この辺りに人はすんでないが、叫ぶのはやめた方がいいぞww」と笑われてしまったのは、言うまでもない。。
「そうか。。阿座河村に行きたいのなら、乗せていってやろうか?流石に、ここで一晩過ごすのはお勧めできないしな」
「え?いいんですか?」
シオリが尋ねると、男性は笑いながら頷いた。
「ああ、いいぞ。・・・あ、俺の名は望月洋介。阿座河村の警察官だ」