魔法科高校に訪れた白い夜   作:マーボー

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「魔法科高校の劣等生」を原作とした二次創作になります。

他作者様の「魔法科高校の劣等生」ssを読んでノリで書き始めました。
一応、アニメ・原作知識はありますが、魔法理論などの細かい設定は曖昧にしていますので、本格的なものをお望みの方々は、ブラウザバックをお願いします。



プロローグ

 

 

「ん、んん……」

「あ。起きたみたいね」

「……?」

 

どうやら俺は眠っていたらしく、目を覚ました俺の視界に写ったのは一人の女性の顔。

彼女はこちらを見下ろしながら微笑む。

 

(女神みたいだ……)

 

未だ意識が覚醒していないボーッとした頭でそんなことを考える。

ウェーブがかった朱色の髪と相まった水色の瞳。透き通るような白い肌は雪原を彷彿とさせ、とても綺麗に見える。第一印象としては「浮世離れをした女性」だった。

 

「…………」

「ふふふっ、ぐっすり眠っていたけど、起きたくなくなるような夢でも見ていたのかしら?」

 

愛しいものを見るような眼差しをこちらに向けながら、細い指先で俺の鼻先を突いてくる。

 

(なんだ。この幸せ空間は……)

 

まだ夢の中なのでは?

そんなことを思いながら、今の心地よさに身を任せるように意識を手放そうとした。

したのだが、そこで俺はあることに気がつく。

こちらを見下ろしている彼女に、後頭部に感じる微かな弾力。

この体制はもしや……膝枕でもされているのでは……?

 

「~~っ」

「あ~ん。そんな急に離れなくっても……」

 

初対面の女性、しかも女神のような美女に膝枕をされていた事実に、羞恥心を感じた俺は、その場から勢いよく離れた。

心中、ちょっと惜しいことをしたかな、なんて思ってしまったけど、そんな邪な思いはすぐに追い出した。

 

「あ、あのっ、あのあのっ!」

 

予想外の出来事に上手く呂律がまわらず、言葉を噛んでしまい、余計に恥ずかしい思いをしてしまう。

 

(な、情けねぇ……けど、こんな綺麗な人に膝枕をされたら誰だってテンパるよな!)

 

自分でも誰に言い訳をしているのかわからないが、とりあえず、これは自分を落ち着けるための言い訳だと無理矢理納得する。

 

「……って、あれ?」

 

ふと、俺はそこで初めて違和感に気がついた。

立っている場所から辺りを見わたす。

 

「どこ、ここ?」

 

視界に写る物はなにもなく、ただただ広がり続けている真っ白な空間。

そこには俺の知る世界――空や木々、建物などといった"物"が一切なかったのだ。

こんな一大事なことにようやく気がついた俺は、さっきまでどれだけテンパっていたのだろうか。

そんな疑問に応えるように、彼女は立ち上がると俺へと歩み寄ってきた。

 

「ごめんね。そこまでびっくりさせちゃうとは思わなかったのよ。まず、ここがどこだか教えてあげる」

 

眼前までやって来た彼女は、辺りを見わたしながら教えてくれる。

 

「ここはね、私だけの世界なの。まぁ私だけのって言っても、たまに仕事関係で私以外の人もくるんだけどね。基本は私だけの世界――私以外の存在が長くいることは許されない世界」

 

そこで一旦言葉を句切り、こちらに、俺に視線を合わせて続けた。

 

「あ。貴方は例外よ。唯一、私以外でこの場にいることを許された存在♪」

「は、はぁ……」

 

急にそんなことを言われても、間の抜けた言葉しか返せない。

ここは俺の知っている世界ではなく、彼女だけの世界。

 

(そして俺は、唯一彼女に認められた存在?)

 

「そういうこと♪ふふっ、ちゃんと理解してくれたみたいで嬉しいわ!」

「えっ、今俺の心の中を――」

 

(私にかかればこんなこと造作もございません♪)

 

「――っ!」

 

俺が言い終える前に、今度は俺の脳内に彼女の声が響く。

何が何だか……連続して起こる不思議な出来事に、まるで理解が追いつかない。

 

「混乱しちゃうのもしょうがないか。それじゃあ詳しく教えてあげちゃおうかな」

 

そう言うとその場に腰を下ろし、俺の袖口くいくいと引っ張る。

どうやら隣に座れと催促しているらしい。そんな一つ一つの可愛らしい動作に、ドギマギしながら、俺はその場に座った。

すると、辺り一面の景色が変化した。

 

「う、うわぁ……」

 

頭上に広がるのは見ていて澄み渡るような晴れ晴れとした青空。

眼下一面には若草が広がり、心地よい風がそれを撫でるように優しく吹く。

さっきまでの何もない空間が嘘のように、目の前には俺の知る世界があった。

 

「こっちのほうが落ち着いて話せるでしょう?」

「う、うん。って、やっぱりこれも貴女が?」

 

やはりと言うべき、これはこの世界の主である彼女の仕業らしい。

最初は微笑みながら聞いてきた彼女だったが、俺の返答に少し眉を顰めた。

 

「あ、あのどうかしました?」

「もう。貴女なんて他人行儀な呼び方しないで、名前で呼んでよ」

「え。な、名前……?」

 

そうは言われても、俺は彼女との面識はない。

むしろ過去に彼女ほどの魅力的な人に会っているなら、忘れようにも忘れられないだろう。

身に覚えがないとなると、この場で初めて会ったのは確かだ。

 

「あ……そういえば、自己紹介してなかったっけ」

 

彼女も彼女で勘違いだったことに気がついたのか、ごめんごめんと照れ笑いをしながらこちらに謝ってきた。

 

「えっとね。改めまして、私は――。この世界の主でもあります」

 

(あ、あれ。今なんて……?)

 

聞き漏らさないようにはしていたけど、彼女の名前の部分だけが不自然に聞こえなかったことに困惑する。

そんな俺の心中を察してくれた彼女は、またもや謝ってきた。

 

「そっかそっか。ごめんね。たぶん貴方たちには私の名前が理解できないのね」

「俺たちには理解できない……?」

 

彼女の言葉によってますます困惑するが、気にしないでと言うように、彼女は言葉を続けた。

 

「それじゃあ、気軽でレイって呼んで♪」

「レイ、さん?」

「もぅ、レイでいいってば~」

 

呼び捨てにされないのが気に入らなかったらしく、彼女は俺の両頬を掴んでは左右に伸ばしながら抗議してきた。

 

「ふぁにふるんれすか……」

「むむむ~……」

 

半眼でこちらを睨み付けられるも、そこに本気の怒気は感じない。

だからだろうか。俺はまたしても「こういう表情も可愛いなぁ」なんて場違いなことを考えてしまっていた。

 

「ごふぇんなさい。ふぇ、ふぇい」

「~~!」

 

照れはあったものの、意を決して彼女の名前を口にしてみる。

言葉になってないなかったけど、俺の言葉を理解したらしく、満足げに頷いた彼女は俺の両頬を解放してくれた。

本気で引っ張られたわけでもなかったから、痛みは感じなかった。

けれど彼女は、先ほどまで掴んでいた頬を優しく撫でてくれた。

 

「ごめんね。痛かったかしら?」

「そんなことないですよ。とっても優しい力でしたし」

「そう? でも、それもこれも、恭一くんが意地悪をするからなのよ」

「意地悪だなんてしてま――ん? どうして俺の名前を?」

 

出逢ってから一度も名前を呼ばれていなかったから、俺の名前を知らないと思い込んでいた。

もしかしたら俺が忘れているだけで、実は彼女と面識があるんじゃないだろうか?

 

「あ、ううん。勝手に私が知っているだけだから、気にしないで?」

 

こちらの思考を遮るように、彼女が言葉を挟み、そっと俺のことを抱き寄せてくる。

 

「ちょちょっ、レイ!?」

「ん~?」

 

彼女の豊満な胸の弾力を感じる。

その今までに感じたことのない弾力に、慌てふためき、その場から引こうとするも、それは許されなかった。

 

「こら、暴れないで。私に恭一くんを感じさせて?」

「――ッ!」

 

ゆっくりと頭を撫でられながら、彼女の胸に顔を埋める。

少し息苦しいけど、仄か感じるレイの香りが鼻腔をくすぐり、そんなことどうでも良いと思えることを忘れさせてくれた。

 

「~~♪」

 

表情は見えないけど、抱きしめる力や雰囲気で機嫌が良いことを悟った俺は、その心地よさに身を任せることにした。

 

 

 

 

 

「恭一くん、可愛いわね♪」

「……」

 

あのあとからしばらく経ち、拘束していた力が緩まるのを感じたのを機に解放された俺は、今思い起こしても恥ずかしすぎる体験談に身悶えていた。

 

「そんなに私の胸、気持ちよかった?」

「だ~もう! それ以上は言わないで!!」

「別に、私は嫌な訳じゃないし、むしろ大歓迎だからいいでしょう?」

「レイは良くても、俺としては良くない!!」

「本当に?」

「…………」

 

隣に座る彼女はこちらを覗き込んでくる。

そうするとどうしても、前屈み気味になったことによって強調された胸に視線が釣られてしまうのはしょうがないと思う。

その視線を感じ取ったのか、彼女の表情には満面の笑みが浮かんだ。

 

「ふふっ♪やっぱり好きになってくれたんだね!」

「…………」

 

俺の口から否定の言葉が出ることはなかった。

 

 

 

「さてと。それじゃあまずはなんで恭一くんがこの場にいるか、なんだけどね」

 

彼女はゆっくりとこれまでの経緯を話してくれる。

曰く、既に俺は人生を終えてしまったらしい。どうしてそんなことになってしまったのか。

俺にはその辺りの記憶が全くと言っていいほどなかった。

生まれてからそれまでの記憶なら微かに覚えているのだけど、肝心の最期の記憶だけが思い出せない。

レイに聞いてみたけど、のらりくらりとはぐらかされてしまい、そのことについては話してはくれそうになかった。

その態度に違和感があったけど、まぁ、きっと口にはしたくないほど壮絶な死を迎えたのだろうということにしておく。

だからそれ以上のことは聞かないようにして、次の質問をしてみることにした。

 

「なんで人生を終えた俺はここにいるの?」

 

たしかさっき、レイは言っていた。「仕事関係で誰かがやってくる」と。

考えるに、ここは俺みたいな、死後、魂だけとなったものがここに立ち寄るんだろう。

その仮説は正解だったらしい。

ただし、他の人――魂――は本当に立ち寄るだけで、俺みたいにこの場にとどまり続けはしないとのこと。なんで俺の場合はここでのんびりしていられるのか。

それもさっきレイが言っていた。「俺がこの場にいることを許された存在」というのが関係してきた。

これもまた詳しくは教えてくれなかったけど、どうやら俺は彼女のお眼鏡にかなったらしい。

 

「ということはさ、俺ってこの先ずっとここで暮らすことになるの?」

「う~ん。それはと~~っても魅力的なものだと思うんだけど……そうもいかないのよねぇ」

「え。そうなの?」

 

てっきりそうなるかと思ったものだけど……。

そうか。いくらこの場にいてもいいということになっていても、この後はみんなと一緒で天国やら地獄に行くのかもしれない。地獄とかあるのかわからないけど、進んで行きたくはないなぁ。

そんな俺の心配を読み取ったレイは、慌てて教えてくれた。

 

「大丈夫大丈夫! 恭一くんは地獄には行かないから! というか、もし行くことになっても、この私が絶対に行かせないんだから!」

「そ、それは良かったよ。ありがとう、レイ」

 

そこまで言ってくれるレイの言葉に安堵したけど、どうしてそこまで気にかけてくれるのだろうか?

生前、特にこれといった悪意あることはしてこなかったけれど、かといって、彼女のような存在に気に入られるようなこともしてこなかったはずだ。

いったい俺の何が、彼女にそうまでさせてくれるんだろう。

 

彼女にちらっと視線を送ってみる。

 

「…………」

 

たぶん、今思ったことも彼女には伝わっているはずだ。

それでも口にしないということは、これもまた言いたくないことなんだと割り切るしかない。

 

「それで、この後のことなんだけど……」

 

話題を変える意味で、今後のことを聞いてみる。

すると、彼女の口からはあ想像してもいなかった言葉がでたのだ。

 

「そうね。その、恭一くん。転生って知ってる?」

「は……?」

 

 




次話でプロローグは終わる予定です。

感想等、お待ちしております。
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