別荘について早々、自室へ引きこもろうとする白夜を呼び止めるが、それも無視されてしまった。
(そ、そこまでしてわたしとは一緒に居たくないっていうの……?)
もう旅行を楽しむ余裕はすっかりなくなってしまいかけたが、なんとか、この旅行中はまだ話しかけるチャンスがある、となるべく前向きに捉える。
(まずは気分転換ね)
着いたばかりで泳ぎに行くのも慌ただしいし、何よりも心労が募っている今は、ゆったりのんびりと癒されたい気分だった。
(そうだ。散歩なんていいかもしれないわね)
徒歩ではそこまで遠くには行けないけど、ビーチ沿いの遊歩道を歩くだけでも気持ちが良いかもしれない。
さっそくお母様に散歩に行くことを伝えてみた。
「お母様。少し歩いてきます」
どうせならここで白夜も誘って、二人きりで話してみるというのも良い考えかもしれない。本当なら気分転換のために考案した散歩だったけれど、少しでも話しかけることができるチャンスがあるのなら、それを無駄にすることはない。
そこまで計画したところで、お母様の言葉が全てを台無しにしてしまった。
「そうですか。それなら深雪さん。達也を連れて行きなさい」
本当なら白夜と二人きりで――まだ白夜を連れて行けるとは決まっていなかったが――散歩に行きたいと主張したかったけれど、あまりお母様に余計な心配は掛けたくない。
「――わかりました。では、折角ですから白夜も呼んで行きますね」
「えぇ。それは結構なことです。姉弟二人水入らずというわけには行きませんが、楽しんできなさい」
「はい――とても楽しみです」
その言葉に楽しみを感じられたかどうかは、聞いていたお母様たち次第だけれど、少なくとも私としては楽しさを半減されられた気分だった。
「はぁ。薄々はわかっていたけれど……」
気を取り直して、兄と二人で白夜を散歩に誘いに行ったのだが、少し疲れたという理由で断られてしまった。こ絶対に嘘だと確信していたけれど、ここで私が怒ってしまっては、もう話しかけることすら出来ないかもしれない。
兄と二人で散歩するのは大変不満ではあるけれど、お母様に言われた以上は我慢するしかなかった。しかし、そう思っていたのも束の間――
「わぁ。とても綺麗!」
桜井さんに褐色の日焼け止めクリームを塗ってもらうことで、コンプレックスとも言える白い肌が好奇の視線に晒されることもなかった私はとても良い気分に浸れていた。
そこに沖縄特有の綺麗な砂浜や透き通った水面を目の前にしたことで、兄と二人きりだということもすっかり忘れて心を弾ませてしまう。
(やはり散歩に来たのは正解でしたね!)
気分転換としては上々の成果に満足して、景色を見ながら歩き続ける。
普段ならあまり履くことはないビーチサンダルに違和感を覚えるところだけれど、今となっては砂浜を踏みしめる度に砂粒を侵入させてしまうことすら楽しみを感じさせる一つのスパイスとなっていた。
「――お嬢様」
しかし、それも兄の言葉によって台無しにされてしまう。
私のことを名前ではなく、使用人のように呼んでくる兄にのほうを振り返ると、私の一歩後ろに待機していた兄と目があった。
「なんですか……?」
「白夜様のことで、何かお悩みですか?」
「――ッ!」
ずっと一緒にすごしてきたのだから、私が白夜のことで思い悩んでいるのはわかられてもしょうがないことだった。
なのに、この時の兄の言葉に、どうしようもないほど苛立ちを覚えた。
それはいわゆる図星なわけだけれど……。
「不愉快です。私や白夜のことについてこれ以上は詮索してこないでください!!」
「……申し訳ありません」
私の言葉に直ぐに頭を下げて謝罪をする兄。
その姿を見た私は、自分の身勝手さにほとほと呆れかけていた。
昔のように頼りがいのある兄を望んでいたのに、自分は今それを拒否してしまっているのだから。
「…………」
ようやく頭を上げた兄を見て、これ以上の話は終わりだと伝えるように、無言で振り返り、またあ砂浜を歩こうとした。
その時、突然腕を掴まれ、後ろへ倒れ込みそうになった。
今回は深雪視点の話となっております。
中々深雪の思い通りにいかないもので、可哀想になってきました……。
どないしよ……。
さて、今回も感想を頂きました。
GOD 様、ご感想ありがとうございました!
やっぱり書いていて感想をもらえるととても嬉しいものですね。
では、次話も宜しくお願い致します!